雀聖の器 作:マージャンスキー
夕日が見えている、中学時代は運動部……もっと暗くなってから帰るのが当たり前だった……。
でも、ここにいるのは僕以外全員女の子、これ以上の活動は色々とダメだ……でも、卓は白熱している……。
「カン! 嶺上開花のみ……逃げ切りですね……」
「おお……すごいじょ……」
「す、凄い確率ですね……」
「……欲しい」
ソファーから立ち上がって卓を覗いてみる。
咲がトップ、次に原村さん、部長と優希さんが続いている。
なんだろうか、僕が卓に入った時と同じような……そんな感じ、咲も何か思い入れのある役があるのだろうか? 咲ってミステリアスな部分があるからな、案外……自分を語りたがらない……。
「皆さん……もう時間も時間なので……」
「じょ? 京太郎が敬語チックなの……変な気分だじぇ……」
「咲、ごめんな……僕の変わりに……」
「だ、だだ、大丈夫だよ! 困った時はお互い様だから……」
部長が考え事があると戸締まりを引き受けて、一年生四人は帰宅していく。
「じゃあ、わたし達はここで」
「京太郎! 咲ちゃん! またな!!」
「うん、またね……」
「明日は僕がちゃんと入るから気にしないでね」
分かれ道、そこで四人が二人になる。
空は茜色、太陽は山に隠れて夕日は見えない。
ふと咲の表情を見てみる、少し寂しそうだ……。
「咲……ごめんな、麻雀嫌いなのに打たせちゃって……」
「もう、京ちゃんには色々な……なんでもない!」
「?」
咲の歩く速度が早くなる、僕の変に気にかけた言葉に嫌気が差したのかもしれない。
でも、純粋な感謝の気持ちを持っているのは……わかってくれると思いたい……。
流也だったら……どうするのかな……。
「でも――麻雀部の本は面白そうだと思うな……」
「打たされるかもしれないからなー……部長に言って借りてこようか?」
「うん、そうしてくれると嬉しいかな」
しばし無言の時間が続く……神代小蒔を思い出すまでは……。
もっと、饒舌に語れた気がするのにさ……やっぱり、自分を偽り、そして無理をしていたんだって理解できる。
本来の僕は、俺なんて言いながらケラケラ笑ってる存在じゃない。こう、いつも落ち着いていて……寂しさに支配されているような、そんな感じ。
先をあるく咲が振り返る。
「……でも、少し楽しかったかも」
「なら、次は僕が入るよ……変な麻雀かもしれないけど――咲と打ってみたい」
驚いた表情を見せたかと思うと……優しい笑顔を見せた……。
綺麗だね……すごく……。
2
中学時代の友人が僕のことを引き止めて長話を延々と、そのせいで部室に入るのが遅くなってしまった。
今日は染谷先輩が来ているかどうか気なる。来ていないのなら打てる部員は三人、四人打ちはできない、これは申し訳ないことをしてしまったかもしれない。
部室の引き戸に手をかける。
「すいません、遅れました」
四人が卓に腰掛け、麻雀を打っている。
だが、染谷先輩の姿はなく……昨日、僕の変わりに卓に入ってくれた咲が今日も来てくれていた……。
「あっ、京ちゃん」
「咲? 今日も来てくれたんだ。ここって冷蔵庫あるから買い置きなら飲み物もあるよ、僕のスペースは水と烏龍茶しかないけど」
「じゃあ、お水で」
「わかった。はい、どうぞ」
小型の冷蔵庫から水を取り出して、咲に渡す。
――四万点超え、もう南入してるのか……?
『宮永咲・手牌』
{34③④⑤三四五六六西西西}
片和了の三色、西が暗刻になって断么九を付けられないけどリーチで化ける手……だけど、河を見る限り三巡はリーチを拒んでる。
あるとするなら、逃げ切りを意識しているか、西がドラということ……。
『ドラ表示牌』
{①裏裏裏裏}
違うのか……なら、リーチしない理由……。
確かにこの点棒状況ならダマで片和了の{5}を待つ価値は十分にある。だけど、それよりもずっと恐ろしいのは――暗刻になっている{西}……これの存在が妙に気になって堪らない。何か起きる……ッ!
「カンッ!」
部長がツモ切りした西をノンタイムで明槓? 点棒状況的にドラを増やす必要性は低い、それに暗槓ならまだしも、明槓は牌を叩かない限り新ドラは捲れない。門前の三色を強引に鳴きの三色に変えた……何を――ッ!?
嶺上牌{赤5}
りんしゃん……かいほう……。
「ツモ、嶺上開花……嶺上開花・三色同順・赤一枚、親の40符3翻は……ここって責任払いは?」
「さ、採用してるわ……」
「なら7700点です」
「「部長がトバされた……ッ!?」」
部長がトバされた? 防御力に定評がある部長がマイナス……僕の七対子戦術も完璧とまではいかないが防いでいた部長が……。
咲、本を読むこと以外にこんな趣味……いや、特技があったんだね……。
この感覚、僕と同じ……僕と同じ、役を愛した打ち方……ッ!
「あちゃー……私がトビなんて何年ぶりかしら……」
「お気になさらず、そういう時もあります」
「部長! ファイトだじぇ!」
「アハハ……」
卓から立った部長に肩を叩かれる、そのまま廊下に出て事情を説明される。
「咲を麻雀部に? でも、彼女は麻雀をあまり好きじゃありません……考え直しては……」
「でも、「わたしをトバせたらいいですよ」って……結構、狙い撃ってたんだけど……」
「……もしかして、昨日の団体戦とかいうのですか? 確かに部長は三年生、団体戦と個人戦、どっちも出たいですよね……でも、相手が悪すぎます……」
「相手が悪い……?」
「咲の手牌を見ました。常人ならリーチする手を強引に嶺上開花で和了した……言うならば、役を愛した打ち方ッ、僕と同じです」
「……須賀くんなら勝てる?」
わからない、七対子ってのは走攻守揃った役だと自負しているが、その攻撃の部分は振れ幅が大きい……抱えられるドラというのが七対子の場合、カンが無い場合はリーチしても最高四枚、赤ドラが三枚入っているとしても七枚……。
リーチ・一発・断么九・七対子・ドラ4・赤3……三倍満止まり。
「……部長命令、一半荘で宮永さんをトビ終了させなさい」
「……無理難題ですね、最低でも二千半荘は欲しいですよッ」
部長と一緒に部室に入り、にこやかに笑う咲を見つめる。
嶺上開花、七対子より遥かに確率の低い和了……それすら愛する打ち方……。
確かに、欲しいだろうな……。
「須賀くんと話し合って敵討ちしてもらえることになったの♪ 流石男の子!」
「うー……京太郎の七対子殺法かー……」
「ごめんな優希……今度タコス買ってやるから……」
「うひょー! 京太郎の奢りか! 何個まで!?」
「そうだなー……役満の13翻、十三個までで」
優希が十三個という途方もない数字に狂喜乱舞している。
まあ、役満を出す覚悟ってところだ……ッ!
「京ちゃん……楽しもうね……」
「ああ、おまえと打ててないしな……」
出目は{北}……ラス親……。
【東一局0本場・親:片岡優希】
東:片岡優希 「25000」親
南:宮永咲 「25000」
西:原村和 「25000」
北:須賀京太郎「25000」
『ドラ表示牌』
{白裏裏裏裏}
『宮永咲・配牌』
{⑤⑦⑨四六2455赤5南北西} ツモ{発}
(宮永さんの配牌……パッとしない、{5}が暗刻で入っていることしか見入る部分は少ない、でも、この手をどこまで伸ばすのか……)
『須賀京太郎・配牌』
{一二三①①②246東東南発}
(須賀くんは東が入って……普通ならリズムを作るために一翻で局を流す……)
{一二三①①②246東東南発} ツモ{西}
打{二}
(流石は鳴き率0%……見てるのはあくまで七対子……)
『宮永咲・手牌』
{⑨⑨四六2455赤5南西発発} ツモ{発}
(――ッ!? ドラの発を暗刻……須賀くんの手は……)
『須賀京太郎・手牌』
{一一三三①①26東東南南発}
(七対子一向聴だけど……ドラの{発}が枯れてる……それに、その発をカンされる可能性も……)
「よし、決めた! リーチ!!」
「「…………」」
(優希がリーチしたけど……この場は宮永さんッ!?)
{一一三三①①26東東南南発} ツモ{①}
打{発}
(須賀くん!? なにしてるのー!!)
「…………」チラッ
(スルーした? 優希のリーチに警戒……いえ、この場合は――一枚目の嶺上牌で和了ることが出来ないから大明槓しなかったッ!?)
「ツモです……門前自摸のみ、300・500」
{一二三②③④⑥⑦⑧89白白} 自摸和了{7}
「じぇ!? のどちゃんそりゃないじょー……」
(和と優希は気づいてないようね……この二人の高度な心理戦に……)
僕もある程度は山が見えるタイプだけど、咲はそれ以上に山が見えてる……多分、嶺上牌は有効牌だったんだろうけど、有効牌を加える過程で優希に放銃してしまう。
この打{発}……誘ったのに乗らなかった……それが証拠……ッ!
優希がリーチしてなければ、確実にカンしてた……そして、二回目のカンで和了してただろう……。
まあ、僕の手は咲に直撃出来るほど……強くはない……。
切り替えていくか……。
(須賀くんは優希のリーチがあったから{発}を落とし、宮永さんの放銃を誘った。でも、それに乗らなかった……和の自摸和了は予想外だったけど、多分、この二人が放銃することは万、いえ、億に一つもなかった……)
咲、なんか久しぶりな感覚……優希だけじゃない、もっと前にこういうオカルトな打ち方をしてる人と何度も打った気がするよ……。
そして……何度も勝ってきた……ッ!
今日が……本当の意味で――復帰戦ッ!
【東二局0本場・親:宮永咲】
東:片岡優希 「23500」
南:宮永咲 「24700」親
西:原村和 「27100」
北:須賀京太郎「24700」
朝に投稿したら一日投稿が空いても一日一話投稿になるのでは(謎理論)
雀聖編はキャラストーリーに移行したので、ちょっち七星編を書いてみたらメッチャ面白い感じになっちゃった♪ こりゃ、七星編を優先するかアンケートしますね!
キャラストーリーの投票は置き場に終了せずに置いておきます。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
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愛宕親子再び
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京ちゃんの小学生時代希望
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テレビ番組出演(はやりん☆)
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BADENDとかある? 見たい
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おまけの中身 以下略