雀聖の器   作:マージャンスキー

37 / 38
覚醒する七星4

【東三局0本場・親:原村和】

 

東:片岡優希 「23000」

南:宮永咲  「43700」

西:原村和  「21100」親

北:須賀京太郎「12200」

 

『ドラ表示牌』

 

{南裏裏裏裏}

 

 

 

 点数状況は悪くない、自分以外は親倍以外ではトバない……。

 酷く冷静、頭の中の老廃物が完璧に排除されたようなスカッとした感覚、今までモヤのかかっていた目がスッキリとクリアになる。

 だが、記憶はまだ取り戻せてない……神代にナニカされたのを思い出しただけ……。

 でも、今日は綺麗な七星が見えそうだ……ッ!

 

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏}

 

(須賀くんの雰囲気が変わった……圧倒的な場の支配力、そして――漂う気配ッ!)

 

{六九23357①②④⑤⑨西}

 

(あれ、あれれ? あんなに雰囲気あったのにこの配牌……?)

 

 まあ、感覚が取り戻せたとしても跳満を捨てて放銃を選んだんだ、卓が怒るのもわからなくはない。

 これは一種の試練、卓が支配者として下剋上のチャンスを与えるかどうかの是非を問う瞬間ッ! 僕はこの配牌の意味を答えなくては勝利することができない。ましてや――咲をトバすことなんて絶対に無理だ。

 まず最初に考えなければならないのは、この手は和了することができるかどうか? この手を七対子に持っていくことは大して難しいことではない。なんなら七対子に向かってくださいと言わんばかりの配牌、変に良型聴牌に持っていこうものなら、確実に何かしらが起こるだろう。

 

 ――こいつが鬼{西}ッ!

 

 ドラの{西}、こいつから漂う圧倒的な気配、こいつを叩いた瞬間に不吉が起こることを感じさせる。

 処理するなら第一打、それか雀頭になるまでひたすら我慢。

 ……だが、確実に待っている。この{西}は主の元に戻ろうと磁石に引っ張られるように対面に座る咲、彼女の下に下ろうとしているッ!

 感じる、圧倒的に感じる気配……暗刻でこそないが――対子で持ってるんだろ?

 

『宮永咲:手牌』

 

{六七4赤5689⑧⑧中中西西}

 

(これは……卓に試されてるわね、速さと高さを両立した良い配牌、でも……この形ならこういう風に進めるんじゃないかしら?)

 

{中中中}or{西西西} ポン系

 

{中中中}ルート:カンせずに両面待ちの中・ドラ2+赤1

 

{西西西}ルート:中に期待せず、嶺上開花・ドラ4+赤1

 

(まあ、出来過ぎと言えば出来過ぎ、須賀くんが七対子系を目指すのなら西も中も出てこない牌、出るにしても冷静さが失われてきてる優希から、和はドラポンをした時点で親番を諦める可能性が大……)

 

「ポン」 {中中横中}

 

(えっ? 和から……初手で{中}を落とすなんて珍しい、少し場のことを考えて特急券は数巡待つことが多いのに……でも、これで宮永さんの手が一歩進む、辺張の{89}を処理するか、{⑧}を対子落とし、これだけ順子が入ってるなら、対々和系の聴牌は望み薄、積極的には――ッ!?)

 

 ――打{六}

 

(まさか! 須賀くんの手が悪いと見越しての混一色狙いッ!? 確かに、配牌を確認した時に若干悩むような素振りを見せたけど、それだけで速さより高さを求める……フツー……)

 

 まあ、そう出ると思っていた……。

 この場、僕が跳満を捨てたことによって卓が咲に肩入れしている。

 言うならば、和さん、優希、僕は宮永咲という存在が冷房の効いた部屋で読書をしている間に、真夏の炎天下で水も飲めないマラソンの授業をしているようなもの……点棒の差が余裕を生むッ!

 麻雀の性質上、捲りってのは成立しづらい。確かに自摸和了なら平等に点棒を奪うことが出来るが、ここまでの点数差になってくれば、基本的に直撃を意識してしまう。そして、直撃を意識するが故に手が裏目、安めに行ってしまう、負のスパイラル……。

 

 そして、何よりも点数差がある状況での鳴き、これはかえって防御力が上昇することもある。

 

 鳴き、晒し、喰う、色々な表現があるが、この場合は晒し、晒すという表現が正しいだろう。

 自分は鳴きの速攻で仕掛けます、お気をつけて、そうダイレクトに表現しているようなもの……東発親番でリズムが掴めない最大の要因と言っても過言ではない。

 鳴きというのは平たい場と渓谷が生まれた瞬間に高いエネルギーを発生させる。

 

 ――言うならば、富むものに集まる……ッ!

 

 最初の一手、最初の布石、最初の何か、それの切っ掛けとして鳴き手というのは暴力的だ……。

 門前手、平和系、暗刻系、七対子系、色々とあるが……それでも鳴きの手軽さには見劣りする……。

 喰い断系、染め手系、役牌系、この喰い断だけでも平和と七対子を飲み込むだけのパワーがある。あまりにも手軽、そして赤ドラが絡めば平然と満貫、下手すると跳満の領域までジャンプする。

 

 ――現代麻雀の真髄、ドラを集めて喰い断で殴れッ! 特急券で殴れ!!

 

 これが立ち上がりで決まれば勝負の主導権が和了者のモノになる。

 言うならば、昭和の打ち手がなしなしを好むのはコレが理由、現代麻雀は鳴き手の暴力性が二倍、三倍に膨れ上がっている……。

 そして、鳴きが嫌いな人が口を揃えて言う言葉……。

 

 ――枚数制限ッ!

 

 鳴くことによって晒された牌はチーなら三種一枚づつ、ポンなら一種三枚という枚数制限が発生する。

 平和系聴牌を目指すのなら、一番嫌な部分……手作りの過程でポン・チーによってシュレディンガーの猫である待ち牌、有効牌が晒される。これは精神的な負荷が高い……。

 僕のような七対子一辺倒なら使えないと見限ることが出来るが、平和系、一向聴の時にこの形。

 

{四五45} 有効牌{三六36}

 

 これを引き入れることが出来ればリーチして裏ドラを待つ。だが、これがポンによって晒されたらどうだろうか?

 

 ポン{三横三三} ポン{3横33}

 

 言ってしまえば、一枚こそ残るが、他家が使っているかもしれないという予想をしつつ、実質枯れている{三3}とギリギリ山に一枚使えるかどうかの{六6}を待つ状態。

 大体、老頭牌とオタ風以外は良型八枚待ちだとしても、使える枚数は約2枚程度、それだけ低い確率。

 そして、牌を晒されることによって、使える枚数は限りなく0に近づいていく……。

 

 この結果生まれる最大の悪手{45}のような形を崩す、そして{6}が入ってくる。

 弱気になる、数学的になるからこその裏目……鳴き故の裏目が発生してしまう……。

 門前打ちの弱点、数学的思考、数学的行動、確率の計算、それが意図せず裏目を誘発する。

 

 この感じ、向聴数を落として高い手を狙いに来たと言ったところだろうか? なら、答えは筒子か索子の混一色、浮いている{西}を考えると満貫クラス……鳴き混一色と中という優しい手ではないだろう……。

 付け加えて、咲は嶺上開花を得意としている。無理に混一色に引っ張らず、ドラ含みの嶺上開花で満貫以上の手を完成させる可能性も大いにある。

 

 ……圧力が酷い。

 

(須賀くんが消極的になってる……ドラがネックで自由に手作りが出来ない状態、それに宮永さんの手、見た目は{中}を使用した速攻手、中身ドラ絡みの痛い手、消極的になるのも頷ける。だけど、この状況で切り返しの何かを打たないとダントツトップをトビ終了なんてありえない……)

 

 六巡目、手が重い、対子も作れないし、平和系に逃げることも出来ない。

 なら、いっそのこと和さんに連荘してもらいたいが――この場で一番手が早そうなのは優希、ただ、少しの切っ掛け、理由が必要になる。それは鳴くだとか、そういうのじゃない……手の目標というのを理由付ける。自分の手を誇るだけの理由……それがあればいい……ッ!

 

 ――離し時ッ!

 

 打{西}

 

「ポン!」 {西横西西}

 

 やっぱり食いついてきた。そして、次の鳴きッ!

 

「それもポン!」 {⑧⑧横⑧}

 

『宮永咲:手牌』

 

{裏裏裏裏} {⑧⑧横⑧}{西横西西}{中中横中}

 

 豪快に食い荒らしたな、だが、見た目は対々和だが……中身はそこまででもない……。

 中・ドラ3、これくらいだろう……だが、トップにその手を和了されるのは厳しい、だからこそ――やれるッ!

 

「カンッ!」

 

 加槓{中中中横中}

 

 もし、この嶺上牌が和了なら、無難に親番で点棒を稼いでトップを狙うが……こんなことを聞いたことはないか……?

 流れは……和了った者に継続される……ッ!

 

 タンッ{9}

 

(一回目の嶺上牌は不発? いえ、良い形に変化……)

 

『宮永咲:手牌』

 

{34赤56} {⑧⑧横⑧}{西横西西}{中中中横中} 待ち{36}

 

(ノベタン、単騎よりずっと良い待ち、そして……次の嶺上牌の形……)

 

 さあ、咲、次は嶺上開花だろ……やってみなッ!

 

「カンッ」 {⑧⑧⑧横⑧}

 

 さあ――優希! 頼むっ!!

 

「咲ちゃん! その嶺上牌まって!! えっと……部長! 聞きたいことが……」

「どうしたの? ツモをとめる――ッ!?」

「えっと、部長? この場合、確かなんだっけ……一翻役があったような……」

「ろーん! 槍槓・ドラ3」

「うえぇっ!? そうだじぇ! 槍槓って名前だった!!」

 

{四五六八八567⑦⑨南南南} ロン{⑧}

 

『ドラ表示牌』

 

{南東裏裏裏}

 

「ちゃん……かん……ッ」

「ご、ごめん! 狙ってたわけじゃ……」

 

 そう、偶然の産物……だが、咲の加槓で優希に和了の流れを作ってしまった……このドラ3が確かな証拠、優希だってベタオリが出来ないわけじゃない、ただ、ドラ3をオリに使うのは少し勿体ない、字牌切りで少し回してみようという感情が芽生えた。

 言うならば、欲によって欲を制したッ!

 良型に変化するまで待とう、{⑧}をポンされたどうしよう、加槓でドラ3、リーチはしなくとも、薄い門前を待とうかな? その意識の変化によって生じた一瞬の光……美しい瞬間の一つだ……。

 

「うんうん、良い手だよ……片岡さんの和了り……」

「ほ、ほんとう? じゃ、じゃあ……槍槓とドラ3、40符4翻は満貫!」

 

 

 

【東三局0本場・親:原村和】

 

東:片岡優希 「23000」

南:宮永咲  「43700」

西:原村和  「21100」親

北:須賀京太郎「12200」

 

 

 

【東四局0本場・親:須賀京太郎】

 

東:片岡優希 「31000」

南:宮永咲  「35700」

西:原村和  「21100」

北:須賀京太郎「12200」親

 

 

 

 

 さて、咲? 射程圏内に入って……僕の親番だよ……!




 鳴き裏目は持論です、真に受けないでください。

 次回は流石に雀聖編かなぁ? 少しコメディー書きたい。

 あ、塩気足しときました!

【追記】

 なんか、うちの京ちゃん誰かに似てるなぁって思ったら……。

 ガンダムWのカトルだわ……京太郎の中身は彼だったんですね……。

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。