雀聖の器 作:マージャンスキー
親番、点数状況は非常に好ましい値。
ここで流れを掴めれば確実に部長命令を完遂することができる。
だが、気を抜けば一瞬で喰われるのも確か、この点棒状況をみて思い当たる節はいくらでも考えられる。
【東四局0本場・親:須賀京太郎】
東:片岡優希 「31000」
南:宮永咲 「35700」
西:原村和 「21100」
北:須賀京太郎「12200」親
見ればわかると思うが、僕以外は基本的には平たい、和さんは満貫+αで捲りが成立するし、優希は三翻手を自摸和了でトップ、その後に軽い手を重ねれば逃げ切り。
東場逃げ切りが出来てないとは言えど、基本的には純度の高い麻雀打ち、ある程度は理的に立ち回ることによって計算高いトップを手に入れることも可能。
……咲をトビ終了で終わらせる。麻雀部に入ってくれるという条件、これを知っていても麻雀打ちとして器用にそれをできるかどうか、まず無理だろう。
言ってしまえば、麻雀を打っている時に自分以外を考える器用さがまだ足りない。この人を狙おうという意識を割くだけのリソースが育っていない。
「……うぅ」モジモジ
「……少し休憩を入れるか? 僕は入ったばかりだけど、他は打ちっぱなしな訳だし」
「う、うん」
「お供するじぇ!」
咲と優希が笑顔でトイレに向かう。
和さんは点数状況を睨みつけ、優希が倒した槍槓に意識を割いている。
珍しい役だが、なんとなく気配は感じていた。
「須賀く~ん♪ 作戦会議」
「廊下でいいですか?」
「じゃあ、ベランダで♪」
「高所恐怖症だったらどうするんですか……苦手ではないですけど……」
部長に案内されるまま、部室から時折ビーチチェアーとパラソルが設置されてあるベランダに出る。時刻はまだまだ太陽が明るい光を届けている、晴天、酷く晴天。
部長の表情を見るに、三万五千点という点棒は大き過ぎるのだろう。
「須賀くん……勝てそう……?」
「少なからず、あと二回の親番が残ってます。勝利条件を忘れていません」
「……次の半荘でもいいのよ?」
「次があるという考え方が勝負感を鈍らせます。今回は条件達成できなくても、今回は勝利することができなくても、次があるという考え方は痩せ細った考え方……勝負は今しかない、今しか今の勝利は存在しない。それくらい追い詰められないと……強者の濁流に呑まれる。勝負師の感性を持っている部長になら――わかってもらえると思いますが……?」
暗い表情を落とす部長、自分のワガママに付き合わせているという自覚は存在しているようだ。
インターミドル・ウィナー原村和、全国の強豪犇く有力校ではなく、無名のこの場所に舞い降りた天才。言ってしまえば宝の持ち腐れ、優希や染谷先輩も有力校トップの実力を有している。
それを束ねる竹井久、この人も並みの打ち手ではない。
この学校で麻雀を打っていることが不思議になるくらいの粒揃い、開幕ダブル立直とも表現できる戦力。
「……僕が女の子だったら、よかったんですけどね」
「いいえ、須賀くんが女の子でも――私は宮永さんを欲しいと思った」
「……椅子が無くなりますよ」
「いいのよ、この学校で悔いのない一日を得られるなら――私はベンチでもいい」
これは諦めじゃない……決意ッ!
この人は決意を持っている。だからこそ、決意のまま行動している。
言ってしまえば夢芝居、夢を語っている状況、だが、それは叶えられない夢ではなく……酷く現実的、現実的な夢の皮を被った提案、夢というより道と思えるくらい堅実。
案外、深く考えてる人なんだな……。
「むぅー? 今、私のことチャランポランだと思ったでしょ……」
「黙秘します」
「まあ、いいでしょう! こんな峰麗しい美女にお願いされたら断れないのが男の子だからね!!」
「……案外、人誑しな部分がありますね」
否定も肯定もしなかったからか、顔を真赤に染める部長。
人誑し、古今東西、どんな時代にも存在する人を集めることに秀でた逸材。
指導者、悪くない。
昔から、率先して人の輪に入ったり、自分が一番に飛び出るタイプじゃない。だからこそ、こういうハツラツとした人に憧れてしまう。
「……帰ってきたみたいです。親番が流れないことを祈ってください」
「期待してるわ……」
――風が吹き抜けた。
2
【東四局0本場・親:須賀京太郎】
東:片岡優希 「31000」
南:宮永咲 「35700」
西:原村和 「21100」
北:須賀京太郎「12200」親
「ロン、3900です」
「のどちゃん容赦ないじぇ……」
「……こりゃ参った」
「す、須賀くん! なにやってんのぉぉぉぉ!?」
【南一局0本場・親:片岡優希】
東:片岡優希 「31000」親
南:宮永咲 「35700」
西:原村和 「25000」
北:須賀京太郎「8300」
なんか、凄くカッコイイ会話してたのに締まらないなぁ……。
まあ、現状が異質だったんだ。咲と優希があまりにも出来すぎていた。本来なら東場の時点で二着目を確信できるだけの点棒を蓄える打ち手、それが前に出られない。場の支配、それが顕著。
だが、優希の東場パワーが弱まり、僕が跳満を捨てたことによって……苦しくない麻雀を打てるようになった。
「す、須賀くん……格好良く「親番が二回あります」って言ったじゃない……」コソコソ
「いや、八巡目にダマの平和・ドラ・赤とかわかりませんよ、点数状況が平たいのが原因でしょうが」コソコソ
「わ、わかってると思うけど、和は須賀くんを狙ってるわよ? 優希だって……少なからずラス回避の動きを見せてるから……」コソコソ
「僕、銀行家にでもなろうかなぁー」コソコソ
焦る必要はないが、焦燥感は持たないといけない状況。
焦りは自滅、慢心は崩壊、難しい状況だというのは周知の事実。
火力のある七対子で翻弄しなければならない、だが、七対子ってのはダマで張るなら放銃を誘えるが……リーチを宣言するなら難しい。単騎待ちしか選べないのだから……。
(須賀くんの言っていることもわからない訳じゃない。逆に最高の七対子を聴牌していた)
『京太郎・手牌』 ドラ{四}
{⑦⑦⑨⑨四四赤五五六六66北} 和了牌{北}
(須賀くんの七対子・ドラドラ・赤の満貫、宮永さんだけが一枚打った{北}それも四巡目という絶妙な時に叩いた牌、もう一枚が宮永さんに巡ってきたら確実に出る牌、狙っていたのは理解できる。だからこそ、ケアを怠った。確かにダマテンというのはリーチや鳴き手の数倍、いえ、十倍、聴牌の気配を感じさせない)
親番だったからかな、すこしばかり慢心が走っていたのかもしれない。
この状況、どう考えても狙われるのは僕だ。どう考えても僕が美味しい獲物、目の前に好物が並べられているような絶好の状態。
優希が咲に直撃した瞬間に僕以外がトップを狙える距離に浮上した。そして、浮上した存在は……沈む僕を助ける義理なんてない……。
【回想】
『ツモ、リーチ・門前・三色……』
『おっ? 珍しく京太郎が七対子じゃない』
『うん、重なる牌が見えなかったんだ……この{④}だけしか重なりそうになくて……』
『そうだよなぁ~七対子って七個対子を揃えないといけないし、一種四枚を他家と取り合ってる。そうなると対子ってのも成立しない時あるよな』
『うん、だから七対子作れなかった……』
『でもさ、麻雀ってのは色々な役を楽しむゲームじゃんか? 別に七対子を裏切ってるわけじゃない、七対子が疲れてるなら他の役に代わってもらうのも悪くないと思うぜ』
『代わってもらう?』
『そうさ、七対子以外を和了するのを裏切りだと思うなら、おまえさんは七対子に休みを与えていない。七対子が駄目なら次の七対子を狙う為に――他の役に代わってもらった方が、七対子も喜ぶんじゃないか?』
『七対子に休んでもらう……いいね、それ……』
ああ、また……流也に怒られた記憶が出てきちゃった……。
ずっと、七対子に働いてもらってたからな……偶には休憩してもらわないと……。
そうだよね? 流也……ッ!
(京ちゃんの雰囲気がまた変わった? この点数状況だとトビ終了を恐れて他の人の邪魔をしないように立ち回るのかな……二人は部長さんとの約束は知らされていないようだし、少しだけショック、かな……? 京ちゃんはずっとわたしを見て、そして箱下を誰よりも狙ってた。部長さんも箱下を狙ってたけど、それは副産物的なもの……京ちゃんは――自分が出せるすべてを見せてソレを狙ってた。もしかして、お姉ちゃんやお母さんもこんな気持ちだったのかな? ――わたしよりずっと、ずっと……考えて麻雀を打ってた)
(須賀くんの闘志が消えかけてる……やっぱりこの半荘だと無理なのかしら……)
(トップ圏内、宮永さんの防御は高い……ゆーきに申し訳ありませんが、トップに立てる状況まで……)
(うぅ……のどちゃんの目が怖い……)
そういえば、どうして七対子が好きになったんだろう? 僕が七対子が好きになった理由……そうだった……。
対子、それが並ぶ姿が好きだったんだ。
昔から兄弟が欲しいと思ってた。隣り合う存在が欲しいと思ってた。
隣を許せる存在、隣にいてくれる存在、隣に……だから七対子が好きなんだ……。
でも、ずっと隣にいたら疲れちゃうよね? だから、偶には兄弟が別々に遊んでいいじゃないか……ッ!
『ドラ表示牌』
{白裏裏裏裏}
『京太郎・配牌』
{一二三六六六13②③⑤⑦⑨}
(須賀くんの配牌、七対子とは程遠い手……普通なら123の三色を狙っていく手なんだろうけど、七対子、ドラの{発}が入ってくるかの勝負になりそうね。でも、須賀くんの点棒は危険水準、満貫でリーチ不可、跳満で終了。普通なら七対子なんて狙わない……ッ!?)
兄離れ、弟離れの時期かなッ!
『京太郎・手牌』
{一二三六六六13②③⑤⑦⑨} ツモ{2}
打{⑤}
(須賀くんが七対子をやめた? いえ、まだまだ七対子をやめたという確信は持てないけど、普段の打ち方なら{六}を打って平和だろうが、三色だろうが無視して七対子に手を進めるのに……)
多分、僕はここにいる全員に比べても遜色ないくらい麻雀を打ってる。
言ってしまえば、土俵は同じ、土壌の違い。
どういう風に麻雀に向き合ってきたか、どういう風に麻雀を打ってきたか、どういう風に勝ち負けをしてきたか。
負ける時は負ける、常勝なんてありえない。
四人が戦って、一人が勝利する。
トップ率約25%、それを26%にし、27%にし、そして頭打ちになる数字がだいたい……30%ッ!
5%の技術介入、5%の超常現象、5%の神が与えるなにか……ッ!
「京ちゃん……ごめんね……リーチ」
(宮永さんがリーチを宣言した。多分、満貫以上、優希は南場に入って流れを完全に掴めてないし、和も聴牌まで遠い配牌、二人してベタオリ、須賀くんが掴んでトビ終了……)
「……カンッ!」 {裏六六裏}
「「「――えっ?」」」
「リーチッ!」
『京太郎・手牌』
{一二三123①②③⑨} 嶺上牌{北} {裏六六裏}
打{横北}
「すまない、捲り忘れてた……」
『ドラ表示牌』
{白赤五裏裏裏}
(和と優希はベタオリ、宮永さん須賀くんに使える安牌はあるはず……でも、リーチを宣言している宮永さんはッ!)
(早とちりしちゃったな……)
スッ――{⑨}……ポロッ
「それ、河に落としたってことでいいかい?」
「……うん」
「――ロン、リーチ・一発・三色同順・ドラ4……裏なし、子の倍満は16000」
『ドラ表示牌』
{白赤五裏裏裏}
{中8裏裏裏}
『京太郎・和了』
{一二三123①②③⑨} ロン{⑨} {裏六六裏}
【南一局0本場・親:片岡優希】
東:片岡優希 「31000」親
南:宮永咲 「35700」
西:原村和 「25000」
北:須賀京太郎「8300」
↓
【南二局0本場・親:宮永咲】
東:片岡優希 「31000」
南:宮永咲 「18700」親
西:原村和 「25000」
北:須賀京太郎「25300」
暑い、そして寒い(空調で風邪ひきそう)
最近は熱に浮かされて小説を書いていまして、家の中で危うく熱中症になりかけました()
子供部屋おじさんだから二次創作もネット麻雀も命がけですね()
オリ主と京ちゃん、どっちも最初の1000文字を書いて、筆がノッた方を投下しますね。
投稿ペースが落ちてすいません! 流石に35℃とか……考慮しとらんよ……。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
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愛宕親子再び
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京ちゃんの小学生時代希望
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テレビ番組出演(はやりん☆)
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BADENDとかある? 見たい
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おまけの中身 以下略