雀聖の器   作:マージャンスキー

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阿知賀1

 鹿児島の一件を機に出目徳の爺さんが仏像彫りに転職しやがった。

 たぶんだが、京太郎に多少の情はあったんだろう、そして、自分の行なった行為に憂い。

 タヌキ爺から腑抜け爺に変化して、爺の実家のある奈良県は阿知賀に住処を移した。

 

「京太郎よ……おまえは幸せか……?」

 

 なんとなくだが、そう問いかけてみたくなった。

 落とし屋の仕事もなくなり、本当に普通の小学生になっちまった。

 別に落とし屋の仕事が好きだったわけじゃねぇが、極悪非道が中道になっちまったら変化に戸惑う。

 

「流也? 不満か」

「ケッ、タヌキ爺が隠居しちまったら悪事は誰がするんだよ」

「ワシも歳じゃ……今までが若すぎたんだ……」

「これだから年寄りは嫌いだ」

 

 タヌキ爺さんに連れられて旅館に到着する。

 松実館、うっわー、アニメでみたことあるー……。

 

「松実さん、線香をあげにきました」

「ありがとうございます。滝川先生」

 

 先生だって、このタヌキがか? 世の中はわからん。

 爺の付き添いで旅館の豪華な廊下から生活感のある場所に通される。

 仏壇、若くして亡くなったのか美人な誰かが飾られてある。

 

「……流也、風呂にでも入ってこい」

「仏壇見たら線香あげるタイプなんでね」

 

 爺が線香をあげ終わった後に静かに正座し、礼儀正しく死者を弔う。

 一応、爺の孫だって触れっ回ってる。タヌキだが、地下から掬い上げてくれた存在でもある。

 まあ、井戸端会議で誹謗中傷されない程度には礼儀正しくしてやるさ。

 

 

 爺さんとサウナ対決をしてみたが、老人の痛覚はヤベーわ……それだけ……。

 にしても、卓球台の隣に全自動麻雀卓か? この世界は麻雀先進ってやつだな、気持ち悪い。

 まあ、その嫌悪感すら感じるそれで生き残った俺が言えたことじゃねぇか……。

 

「君……学校で会ったことある……?」

 

 黒髪ロングの少女が覗き込んでいた。

 あらら、ナルコレプシー発症しちまったか? 寝てたかもな、こいつ原作キャラじゃね? 松実玄じゃね?

 さて、どうしよう? モブらしく無視決め込むのもいいが、出目徳の爺さんが悪く言われるのいたたまれない。どうせ爺さんは十数分で風呂から出てくるだろ、その間だけだ。

 

「ええ、最近引っ越してきたんです。滝川流也です」

「松実玄ですのだ!」

 

 松実さんと世間話をしながら出目徳を待つが、どうにも出目徳が迎えに来ない。

 サウナ室で死んでんじゃねぇの? なんて思ってたら、淡い栗色の髪をした少女(厚着)が出目徳の爺さんが宴会をはじめたと教えに来てくれた。

 これだから爺さんは嫌いだ。しおらしくなったと思えば宴会かよ……。

 

「タヌキ爺……」

「あの、えっと……! トランプでもやる?」

「いや……アレ、三麻機能ある? 三人いるし」

 

 全自動麻雀卓を指差す。

 阿知賀のドラゴンロードの打ち筋みてぇし、あったかい打ち筋ってのも気になるもんだ。

 こちとら京太郎の七対子で耐性ついてんだ。原作キャラの理不尽を味わいたいもんだね。

 

「ツモ! 門前自摸・断么九ドラ4北ドラ4なのです!!」

「ツモ……三暗刻トイトイ……」

 

 うっわ、火力たけー……京太郎の七対子がいかに……いや、あいつも理不尽の固まりだわ。

 それにしても、三麻になると手の仕上がりが必然的に早い、四麻ならもう少し遅いんだろうが……っと、勝負手が来たな……!

 

「ポン」 {6横66}

「うーん……これ?」

「ロン、緑一色」

 

{22334488発発} {6横66} ロン{8}

 

 松実姉に最高にあったかくない役満をぶつけてやる。すると寒いのかプルプルと震えている。悪いスライムかなぁ?

 それにしても、すべての対局が対子場、面白いように暗刻になっていく。

 

「ツモ、四暗刻単騎」

「うへぇ?!?!」

「ろーん、大車輪」

「ひゃうっ……」

 

 相手の手が高いなら役満狙いで遊んでいたらこんな手が入ってきた。

 

{236①⑤東東南西西北白発}

 

 あーあ、懐かしい……。

 京太郎よ? おまえの真似をすると本当にすげーことになるな……。

 

{東東南南西西北白白発発中中}

 

「ペーなので「ロン」ほへ?」

「大七星……役満」

 

 京太郎、おまえってすげーな、本当にすげーよ、だからさ、俺は忘れないぜ……。

 

 

 トータルで見たら俺の完敗、だが、戦いに負けて勝負に勝ったと言ったところだろう。

 姉妹も役満をポンポン和了する俺に興奮気味なのか、次の半荘を要求してくる。

 だが、時間ってのは有限だと思う、酒臭い出目徳の爺さんがタクシーが来とるとか言って卓から引き剥がした。

 

「じゃ、次は国士無双狙うからヨロ」

「またね! 流也くん」

「またね」

 

 そして、後方から叫び声に似た驚愕の声がバックサウンド。

 そらそうだろう、あの手……一枚だけドラが入ってたんだから……。

 

「久しぶりの麻雀はどうだった?」

「まあ、つまむ程度なら楽しいもんさ……命の駆け引きはしたくねぇーが……」

「そうか、おまえがプロ雀士になるまで死ねんな」

「けっ、京太郎の方がプロっぽい打ち方してただろうが」

 

 爺さんの表情が酷く険しくなる。

 どうしたんだろうか? この人は基本的に気色悪い薄ら笑いしかしないのに。

 

「流也、おまえさんは天運を信じるか」

「天運? 運を通り越して天に愛された人間が持つ怒涛のセンスだっけか」

「おまえさん、ワシのお師匠さんに似てるんじゃよ……雀聖、阿佐田哲也先生に……」

 

 雀聖、阿佐田哲也……。

 伝説の麻雀打ち、

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
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