雀聖の器 作:マージャンスキー
雀聖の名前を告げられてから俺の毎日は若干だが変化した。
言ってしまえば、鹿児島の一件以来、出目徳の爺さんは俺と麻雀の距離を離そうと努力していたようだが、それでも麻雀を打つ姿勢に雀聖の姿を重ね合わせたらしい。
雀聖は強い打ち手を引き寄せる。
爺さんはなんやかんやで情報通、松実姉妹がえげつない打ち手だというのは事前に把握していたようだ。
で、俺が天運の導きで役満をバンバン和了するもんだから、これはもう二代目雀聖を目指すしかないと思い立ったらしい。
「にしても、十秒で山積みはキチーって……」
「哲さんは一秒で積んでたぞ」
「クソガキの小さな手に何願ってんだか……」
「はよ積め」
賽の河原かよ、調子崩れるなぁ……。
この後は学校で苦手な分数の勉強があるってのにさぁ、面倒くさいことこのうえない。
山を懇切丁寧の積み上げて体感十二秒、全自動卓ならぬ全手動卓になれそうだわ。
2
「お、てんこうせー」
なんだろう、人のことを転校生とか言うのやめてもらえます?
腹の底から出てきそうな言葉を理性で蓋をし、小さくおはようと返して机に教科書類をしまい込む。
それにしても、俺が死んだ時代は地方の小学校は一クラスが当たり前、一学年三十人いたら良い方なんだが、この小学校は三クラスもあるわ、すげーわ。
「もうー! むしすんなー!!」
「ナチュラルにヘッドロックやめい……てか、肋骨が当たっていてぇーって……」
「あててんのよ!」
「なにをだよ……」
河原に落ちてるエロ本に影響されたのか当てるもんも無いのに当ててるなんて……やめてもらっていいですか? やめてもらえます?
にしても、こいつは妙に馴れ馴れしい。
てか、こいつの名前しらんわ。
「てか、おまえ誰だよ? 俺は滝川流也」
「わたし高鴨穏乃!」
あ、こいつ原作キャラじゃん、阿知賀編の……。
てか、他クラスの転校生に馴れ馴れしすぎじゃね? こっちのクラスの人間もここまでフレンドリーじゃねぇぞ……これが雀聖の器ってことなのか?
「でさ、なんで高鴨は俺に馴れ馴れしいの? ワシ男よ、君女よ」
「うーん、お父さんと同じ匂いがするから!!」
「おめーは犬か」
「わん!」
なんだろう、父親の匂いに反応するのやめてもらっていいですか?
出目徳の爺さんに言われて読んでいる雀聖の自伝、麻雀放浪記を開く。
前世でも読んだことあるが、こっちの雀聖はあっちの雀聖より派手に大暴れしている。
「おっ、麻雀の本だ!」
「ナチュラルに頭に顎乗せるのやめてもらっていいですか?」
「りゅ~やは麻雀打てるの!」
「……打てますが何か?」
高鴨は酷くはしゃいで放課後に校門集合だとか、何いってんだか……ブッチしようかな……。
なんて思っていたが、レジェンドの打ち方というのに興味がある。出目徳も強いヤツとは積極的に打っていけとか……まあ、お試しで……。
「しず! 転校生に迷惑かけない!!」
「えー、りゅーやすごく良い匂いだよー」
「ほんとう?」
「流されて匂い嗅ぐのやめてもらっていいですか?」
なんで君までお父さんの匂いがするとか言うわけ? クンカー大量発生だな、おい。
3
放課後に半ば拉致されて阿知賀女学院、ランドセルがあるから許されてるんだろうが……妙に背徳感、感じちゃうッ!
なんていいながら、並べられている全自動麻雀卓に視線が移る。
「おお、しず! 今日は良いタクシーにのってるねー」
「新型のリューヤ号です!!」
「あの、ナチュラルに肩車させるのやめてもらっていいですか?」
「これで身長約3mです!!」
赤毛の大学生くらいの女性、これが阿知賀のレジェンド赤土晴絵か……。
まあ、出目徳の爺さんが連れてきそうな存在だ。焦る必要もないか? まあ、打ちたい気持ちもある。
「リューヤは麻雀の本を読むインテリなんです! 多分強い!!」
「ほほーう……これはこれは……」
「ちょ、しずとリューヤはやすぎ……」
「お、これで四人揃ったね! 早速やろっか」
息切れしてる新子の到着を確認してから卓を囲む。
まあ、松実姉妹のようなパワフルオカルトはねぇーメンツだから大丈夫か、大丈夫だよね?
親決めやらモロモロを済ませて西家、通常の三倍で勝ちますね。シャーですから!
東:赤土晴絵
南:新子憧
西:滝川流也
北:高鴨穏乃
さて、けっぱるべー……。
{一四五六②③赤589南発中白}
うへぇ、字牌整理に時間かかるやつじゃん……。
タンタンッと河に牌が補給され、俺のツモ番。
ツモ{一}
まあ、雀頭は固定されたな、字牌切りからの平和系の聴牌が狙えるな。
打{南}
「ダブル立直!!」
「うひゃーついてるねー」
「うーん、どうしたものかー」
配牌ダブリー、こいつは面倒くさい。
――だが、和了牌ガン見はいかんぜ……高鴨……!
タンタンと手作りを終わらせる。
「追っかけ立直」
「ほへぇ?」
「通し?」
「お通し!」
そして、当たり前のように一発で高鴨が掴まされる。
「ロン、立直一発平和赤、おっと裏1枚」
「うひゃー!? 満貫じゃん!!」
{一一四五六①②③赤56789} ロン{7}
【ドラ表示】
{七裏裏裏裏}
{⑨裏裏裏裏}
「ダブリーだったのになぁー、愚形だけど」
「どうせこのあたりに固まってるさ」
{七裏①南裏}
{⑨裏南3裏}
「うえっ!? なんで待ちがわかったの!!」
「俺の打{南}にちょー反応してたからな、どうせ七対子かダブリーのみの単騎だと思ってさ」
「ほー、新人くんは場馴れしてるねぇ……」
「こりゃ、シズが反応するわけだわ~」
あの、俺のことを新人とか言うのやめてもらっていいですか?
さて、この満貫でレジェンドがブーストしてくるさ、本気でかかってこいやレジェンド……小鍛治プロに劣るが、俺はタヌキ爺曰く雀聖の器だぜ……!
「ふふっ、立直!」
「とーらば、立直」
「――ッ!? 通し……」
「さあ、捲り合いますかッ」
目を見ればわかる、アンタの立直は俺の良型高め三色、つまりは満貫手を潰す為の愚形の立直。
俺の立直に対する恐怖感やら、形を崩すという諦めの心を推し量ろうとしたんだろうが……見え見えなんだよなー、この手――三巡前に張ってるわけだし……!
「ツモ、メンピン三色――裏! 満貫2000・4000」
「ねぇ……何巡前に張ってた?」
「三巡前ですね……そっちは?」
「ジャスト三巡前、こりゃ……いっちょ本気だすかー」
鳥肌が駆け巡り、そして体感する。
――雀聖は雀士を引き寄せる。
もし、天が俺を雀聖にしたいのなら勝手にしな、別にハーレムやらを求めているわけじゃない。
俺は今確かに生きてる。それだけだ。
「――ッ!?」
「せ、せんせー……?」
「どうしたのふたりとも?」
「こりゃ、玄以上の器かも……ね」
さあ、はじめようか……滝川達夫仕込み雀聖の打ち筋を……ッ!
【独白】
あの日、私を変えたのは確実に彼の麻雀。
鯉の滝登り、登った鯉は龍になる。
彼の麻雀はまさしくそれ、一度の和了で流れを掴み――月を喰らう龍になる。
「ツモ、門前のみ」
「うひゃー逃げられたー」
「役満直撃でも捲れないでしょー」
「あはは、こりゃ……」
ジャラジャラと音を立てる大量の点棒を並べて25000点にリセットする。
久しぶりの基本デジタル卓、オカルト使いがいない卓はしっかり押し引きが出来て楽しい限りだ。
てか、赤土さんや……大三元惜しかったねぇ? 俺が新子にアシストしたのも原因なんだけどさ!
「あー、半荘は疲れる」
「わたしはまだまだいけるよー!」
「自分ができることを他人に押し付けるのやめてもらっていいですか?」
「うとーよー! りゅーやー!!」
またヘッドロックかい! 肋骨が痛いんじゃい!!
「あれ……流也くん?」
赤いランドセルの松実妹が不思議そうな表情で俺の姿を眺めた。
あーあ、オカルト登場じゃん……退散安定!
「リベンジなのです!」
「やーやーなのー」
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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おまけの中身 以下略