孤児の私、親はどうやら魔法使いだったみたいです   作:Silkyy

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最初は原作のパクリです。ハリー達の時間と同じ時間ですが、あまり絡ませる気はありません。ちまちま書いていくつもりです。


第1話

0years ago

寒い寒いホワイトクリスマスの日。日本にある養護施設、菜夜学園に一人の子供が預けられた。いや、捨てられた、のほうが正しいかもしれない。その子供の親は眠る二歳の我が子を養護施設の門の前において去ってしまった。たまたま宿直である職員が見周りの際に発見し、施設内は一時騒然となった。その子供の来ていたダウンのポケットには彼女の名前が書いてあるカードがはいっていた。そのカードに書かれていた名前はエレナ・クレース。この物語の主人公となる女の子の名前だ。異国風の名前の通り、彼女は日本人とは程遠い容姿をしていた。青みがかったブロンドに、今は閉じているが、緑に近いヘーゼル色の瞳、ヨーロッパ系の顔立ち。日本では珍しい髪と瞳の色だ。はたして何人なのか。それは誰にもわからない。        

エレナは何も知らず、夢の中にいた。

now

施設で暮らして、八年がたっていた。六畳ほどの部屋の二段ベットの下でエレナは夢の中にいる。これからルームメイトに奇襲をかけられることも知らずに。ルームメイトがそっとエレナのベッドに忍び寄る。

「誕生日おめでとう!」

エレナは馬鹿みたいにでっかい声とおなかの上に感じる重みで目が覚めた。うるさいなぁと思いながらまだ重い瞼を無理やり開けると満面の笑みとさんさんと部屋に差し込む日光が目を直撃する。

「おきておきて!今日はエレナの誕生日でしょ!ほらはやく!」エレナのおなかの上で上下にゆさゆさとゆれる重みにたまらず体を起こして抗議する。

「うるさいなぁ。それぐらいわかってるよぉ・・・。おもいからはやくどいてよ」

「わかったから早く!誕生日おめでとう!そんでメリークリスマス!ほらサンタからクリスマスプレゼント来てるよ!一緒に開けよう!」

エレナのルームメイトであるカナによる奇襲は毎年のことだが一向になれない。毎年毎年、エレナの誕生日(つまりクリスマスだ)の朝はあの手この手でエレナを起こしてくる。エレナ自身は誕生日などさほど重要視していなかったのだが、このルームメイトにとっての誕生日は違うらしい。本人曰く、「誕生日は自分がこの世に生まれた日だよ?そんなん祝うしかないじゃん」らしい。

しぶしぶベッドから出て、タンスの前に置かれたプレゼントを開けにかかる。カナも嬉しそうに自分のプレゼントを開けにかかる。きれいな緑と赤のストライプの包装紙を破くと、なかからずしりとした本が出てきた。百科事典だ。

「やった!これ欲しかった辞典じゃん!しかもDVD付きのやつ!サンタに感謝だ~」

カナはそんなエレナをやばい人を見るような眼で見ている。

「エレナ・・・クリスマスにまで勉強しないでよ…何が面白いのよそんなの」

「カナ…あんたは知的好奇心を前世に忘れてきたんだね・・・かわいそうに」

エレナからすればお人形なんて何が面白いのかさっぱりわからない。新しいことを知っていく喜びに勝るものなんてないと思っていた。

ふと時計を見ると、針は8時20分をさしていた。

「やばいっ朝ごはんに遅刻しちゃう!」

「ゲッほんとだ!やばいやばい!」

この施設では朝と昼の食事は食堂で食べることになっており、朝は8時半までに食堂に来なければならない。さもないと朝ごはんを食べ損ねてしまう。食堂までは走れば20秒とかからないが、なんせ二人ともまだ寝間着姿だ。急いでパーカーを羽織りサンダルをつっかけて外へ出る。キンッと張りつめた寒さが体を覆うが、寒さなんかに構っていられない。全力で食堂へと走り、ギリギリでテーブルに滑り込む。

「あらおはよう。すっごいギリギリだけとまぁセーフにしといてあげるよ。」

と食堂のおばさん、シンさんが大きな体をゆすりながら二人分の朝ごはんをよそいにいってくれる。

「おはよう。こんな時間まで何をしていたの?プレゼントに夢中になってたのかな?」

少しあきれた声で宿直の中山さんがはなしかけてくる。中山さん、は50歳くらいのおばちゃん職員だ。ちょうどエレナが拾われた年に入ってきた。すると机をふいていた、エレナたちよりも三個年上の日向が

「どうせまたカナがエレナに奇襲かけてたんでしょ」

とからかい半分に声をかけてくる。

「正解。もー毎年毎年うるさいったらないんだから。日向部屋変わってよ」

「やだね。そんな小うるさいちびと同じ部屋にいたら私三日でおかしくなっちゃう」

「え まって私の扱いひどくない?泣くよ?」

「「勝手に泣け」」

もはや日常のおきまりとなっているやりとりそしていると

「ほら、おまたせ。お寝坊二人組。今日は洋食だよ」シンさんの持っているトレイにはあつあつのミネストローネスープとふるふるのオムレツ(しかもチーズがかかっている)、サラダ、カリカリのクロワッサン、デザートのマドレーヌが二人前乗っていた。

「やった!洋食とか最高!さすがクリスマスだね!」

「エレナは洋食派だもんね。私は和食派だからなぁ」

「ほんとにカナとは好みが合わないわ。じゃあクロワッサンいっこもらっていい?今度肉じゃが出たらあげるから」

「その取引乗った!ほいクロワッサン」

「ありがとー。じゃあいただきますか」

「「いただきます」」

二人で手を合わせ食べ始める。

「じゃあ二人とも食べ終わったらかえっておいでね~」

中山さんは二人にそういった後、厨房の奥にいるシンさんに向かって

「二人残していきます」

「はーい」

と報告だけして、寮に戻った

いつのまにか日向は寮に帰っていて、食堂にいるのはほとんどエレナとカナだけになった。

エレナはさっさとたべて百科事典を読みに帰りたかったが、カナがゆっくりと食べているため、すでに空になった皿とにらめっこをするほかなかった。カチャチャという食器の音だけが響く。ようやくカナが食べ終わり、お皿を重ねて厨房に返しに行くと、シンさんはちょうどおひるごはんの仕込みをしているところだった。

「「ごちそうさまでしたー」」

「お粗末様でした。それとエレナ、誕生日おめでとう。」

「ありがとう。」

「今年で10歳だったね。ほら、誕生日プレゼント。」

と仕込みの手を止めて、近くにあったマフィン(ちゃんとラッピングしてある)をくれた。

「ほかの子には内緒だからね。メリークリスマスアンドハッピーバースデー」

へたくそなウインクまで添えて。

「よかったじゃんエレナ。味わって食べなよ?」

「わかってるって。はやく帰ろ。シンさん、ありがと。メリークリスマス」

マフィンをパーカーのポッケに突っ込んで、食堂を出る。

寮について、靴を靴箱にしまう。さっさと自分の部屋に戻り、マフィンを食べながら百科事典をよもうと思っていると、中山さんに呼ばれた。

「エレナ!ちょっと公務室に来てくれない?」

なんだろう、と思っていると

「エレナなんかしたの?」

カナも不思議そうにしている。はいはーいと適当な返事をしながら。廊下の突き当りにある公務室に向かう。カナは「じゃあ部屋帰ってるね。」と自室に引っ込んでいった。

公務室について、ドアを閉めると、中山さんが今まで見たことがないほど真剣な顔で言った。

「エレナ、今からとても衝撃的な話をするわ。あなたの人生がひっくり返るくらいの」

「はぁ…」

「いい?落ち着いて聞いてね?実はね、エレンは魔女なの。」

「…はぁ?何言ってんの?」

本当に何を言っているのかわからなかった。私が魔女?新手のドッキリかなんか?疑問符で頭がいっぱいになった。

「それでねエレナ。あなたは来年の九月からイギリスに行って、魔法を学ぶ学校に入学するの。これが入学許可証。はい。」

もっと何を言っているのかがわからなくなった。

そして、差し出されたそれは、少し茶色い色の封筒に入った手紙だった。あて名は、英語で「菜夜学園、一番奥の二人部屋、二段ベッドの下。エレナ・クレース殿」とあった。

中を開けると、また少し茶色い便箋が出てきた。

【 ホグワーツ魔法魔術学校

   校長 アルバス・ダンブルドア

マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟

  

    親愛なるクレース殿

 このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、こころよりお慶び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でフクロウ便にてのお返事をお待ちしております。

敬具  副校長 ミネルバ・マクゴナガル                      】

こちらの方は日本語で書かれており、多少意味が分からないところもあるが、大方の内容は理解できた。

「え、いや、ナニコレ?ドッキリかなんか?なに魔法学校って。え?」

頭の理解が追い付かない。

「そうだよね。いきなり言われても混乱すると思う。エレナ、あなたは魔女で、ホグワーツに入って、きちんとした訓練を受ければ魔法が使えるようになるの。あなたが10年前、ここに捨てられていた日から、私はあなたをずっと見守ってきた。そしてついに今日、10歳の誕生日に入学許可証がとどいたのよ。これからあなたは私と一緒にイギリスに行って、来年の九月にホグワーツに入学するんだけど…どう?理解できた?」

「ちょっと整理させて。えっと私は実は魔女で、来年の九月にホグワーツっていうイギリスの学校に入学しなくちゃいけない。で、そのためにこれから私は中山さんと一緒にイギリスに行く。であっている?」

「うん。」

「いやいきなり過ぎない?初耳だし、超びっくりなんだけど。それに本当に私は魔女なの?今まで一回も魔法使ったことないけど」

「いや、エレナが小さいときは結構あったよ。初めて自転車に乗ったとき、飛ばしすぎて壁にぶつかったけど、そのとき、あなたゴムみたいに壁に跳ね返ったもの。」

「え」

「それに、学校からテレポートして帰ってきたときもあったわね」

「ええ?!」

「貴女が覚えていないだけでいろいろやらかしているよ。そしてそれらは紛れもないあなたの魔女の素質を表している。それに、あなたの名前は生まれた時からホグワーツの名簿にのっているわ」

「まじかぁ。じゃあ私は確実に魔女なんだね?」

「ええ」

「わかった。そのホグワーツとやらに入学するよ。イギリスにも行く。」

「そう。よかったわ。信じてくれて。今通っている学校は転校しちゃうけど大丈夫?」

「うん。へーき。どうせくそみたいなところだし」

中山さんは困ったような顔をした

「そんなこと言わないの。エレナの気持ちもわかるけどね。」

というのも、エレナは一年前から学校でいじめをうけているからだ。日本人離れした顔立ちと、施設の子、というだけで、無視されたり、陰口などをいわれていた。当の本人は慣れたのか、涼しい顔をしていたが、やはり気持ちの良いものではないようで、学校から帰ってすぐは無表情のままになってしまう。

「それで、イギリスに行く日なのだけど、いつがいい?正直、英語をしゃべれるようになるためには今すぐにでも行った方がいいと思うのだけど、エレナの気持ちとかもあるから…」

「んー。カナにちゃんとかにおわかれとかってしてもいい?」

「ごめん。それはできない。退園するときは子どものだれにも言っちゃいない決まりになってるんだ。」

「そっか。ならもういつでもいいよ。特に未練もないしね。」

「わかった。それなら、三日後にしょう。トランクとかはこっちで準備するから、心の整理とかちゃんとしておいでね。」

「うん。」

「もう帰ってもいいよ。楽しいクリスマスにこんな大変なことを言ってごめんね。でもきっと、ホグワーツも楽しいから。」

「うん。大丈夫。むしろちょっと楽しみだよ。」

「そっか。エレナは強いね。じゃあほら、カナが部屋で待ちくたびれてるだろうから、帰りな。」

「うん。」

公務室をでて、自室に向かうと、カナが待っていた。

「おかえり!長かったねぇ。怒られたの?」

「ううん。ぜんぜん関係ないことだった」

「なーんだつまんないの。」

「ふんっ。私はカナと違っていい子だからそんな怒られるようなことはないんだよ」

「うわぁひどーい。暴言だわ。訴えるよ」

「はいはい。すみませーん」

「てきとーだなぁ。まあいいや。いっしょに遊ぼうよ」

「うん。その前に、ちょっとトイレ行ってくる」

「はいよー。」

トイレの個室に入り、鍵をかけて、思考に没頭する。

(私が魔女?魔法が使える?それで三日後にはイギリスに行く?夢でも見てるのかな。。。

でも、、、イギリスに行くのは楽しみだな!イギリスのご飯は不味いってほんとかな?ビック・ベンとかみたいなぁ!あ、私英語話せないな。でもあと九か月あるし何とかなるか。てか魔法学校って何学ぶの?薬草の煮詰め方とかかな。箒の飛び方とか?なんかワクワクしてきた!)

 

(ああでも…カナと離れるのは悲しいな…。やばいなんか泣きそう。)

エレナは必死に嗚咽を噛み殺しながら泣いた。

十分ほど泣いてすっきりしてきた頭で、残りの時間をできるだけ多くカナと過ごすことを決意して、トイレの個室の鍵を開けた。近くの洗面台で手と顔を洗い、カナのまつ自室へと向かう。

泣いたことを悟られないようにわざと声をワントーンあげて笑顔でドアを開ける

「おまたせー。何して遊ぶ?」

「あ、おかえり!じゃあ将棋しようよ!」

「お、いいね~いつも通りぼこぼこにしてあげるよ」

「お手柔らかにお願いしますよぉ」

「はいはい」

すでに用意されていた将棋盤にむかい、カナと向き合って座る。

「「よろしくお願いします」」

お互いに礼をして駒を操っていく。

歩を進めて、角で攻め込んで、桂馬と金で守る。いつものエレナの戦法だ。対してカナは特に戦法をもたずに、適当に打ち込んでくる。そのせいで予測がしにくいのがカナとの戦いの醍醐味とエレナは思っている。

集中して無言で責め合って数十分。

「王手」

「まいりました」

エレナが角と飛車と成歩で完璧に王手を決めて、カナが負けを宣言する。

「やっぱりエレナは強いね。これで15連敗かな?」

「いや、17連敗だよ」

「ちぇっ。」

カナは少し悔しそうだが、楽しんでもいるのだろう。顔をしかめて見せるも、すぐに笑顔になる。

ふと、カナが真剣な声と表情になった。

「ねえエレナ」

「ん?」

「ここからでていくの?」

核心を突かれて、思わずエレナの目が大きく見開かれる。

「な、なんで…?」

平静を取り繕おうとするが、声が上ずる

「エレナ、さっき泣いたでしょ。目、少し赤いよ?エレナがなくくらいのことってなんだろうって対局中ずっと考えてたの。そしたら…考えたくないけど、ここをでていくっていう選択肢を思いついちゃって」

エレナから目をそらし、徐々に震えていく声でその考えの理由を話してくれる。七年来の友人の観察力を侮りすぎていたことに、エレナは自身をひどく恥じた。トイレで出し切ったはずの涙がまた滲んでくる。

「そっか。本当なんだね」

「っカナ…ごめんっ…なんかっ私魔女なんだって。だからイギリスに行かなくちゃいけないみたいでっ…」

いっきに涙と言葉があふれ出て止まらなくなる。ぼろぼろと涙をこぼすエレナに、

「まって。今なんて?」

とカナから突っ込みが入り、エレナの涙が止まる

「え?だからイギリスに行かなくちゃいけないって…」

「その前だよ。魔女って、何の冗談?」

「あ…なんか私、魔女らしくて」

「嘘だぁ…」

驚きを通り越して、少し引いているカナに

「私も同感。でも、本当なんだって。山本さんが言ってて…」

「マジかぁ…。でもエレナ、昔から変なこといっぱい起きてたもんね。なんか…納得かも」

「え?」

「ボールみたいにはずんだりしてたもん。」

「嘘だぁ…」

今度はエレナが驚嘆する番だった

「本当。でも、魔女ってことは納得できたけど…やっぱりエレナがいなくなっちゃうのは悲しいなぁ…」

またカナの声が震えだす。エレナもそれにつられて止まったはずの涙がまた零れる。カナを抱き寄せて

「大丈夫だよ…多分夏休みとかになったら帰ってこれるはずだし、いざってなったら箒で飛んできてあげるから」

少しほほ笑んで、冗談を混ぜると、カナの表情も緩んだ。

「そうだよね。エレナ、魔女なら魔法使って瞬間移動とかできるもんね!」

「うん。ビビデバビデブーであっという間だよ!」

強くカナをハグして、離し一息ついたところで、エレナは重大なミスをしたことに気づく。

「そういえば、このこと誰にも話しちゃいけないんだった!うわぁどうしよう…」

「え、中山さんにそのことばれなければいいだけじゃない?」

「たしかに?」

「ばれなきゃ犯罪じゃないっていうしね」

「わぁ犯罪者のセリフだ」

「えへ」

少し悪い顔をするカナに軽くチョップを入れる。少し止まって見つめあった後笑いあって、お互いの涙が止まる。

「いつ出発するの?」

「明後日のいつか」

「早いんだね」

カナの寂しそうな顔に、胸のあたりが痛みを覚える。

「じゃああと三日、いっぱい遊ぼうね。イギリスに行ってもつらくないように。」

「うん!じゃあ…もう一局やる?」

「えぇ…どうせ私また負けちゃうし。んー。お人形遊びは?」

エレナは少し迷うが、これも最後か、とカナに付き合うことを決め、そばにあった猫のぬいぐるみを手に取る。

「いいよ。私この子ね。カナがこのお姫様。どう?」

「賛成! 『こんにちは。あなたのお名前は?』」

「『私は…猫のキャシー!貴女は?プリンセス?』」

 

エレナとカナはその日一日中人形で遊んだ。時には海を渡ったり、空を飛んだり、宇宙にも行ったりした。よるは二人とも二段ベッドの下で抱きしめあって寝た。

 

あっという間に出立の日になってしまった。満月がきれいな真夜中、エレナは大きなトランクと不安と期待をもって学園の門に立っていた。

「エレナ、行こうか」

「うん」

中山さんが優しくエレナの背中を押して車にのるよう促す。見送りはいない(誰にも言っていないのだから当たり前だが)。エレナ自身、二日前はカナに戻ってこれると明るく言ったがその言葉が本当になる確証などないのだ。後部座席にトランクを押し込み、助手席に乗り込むまえに、おそらく最後になるであろう育ちの巣を目に焼き付ける。ドアがしめられ、中山さんも運転席に乗り込む。

「大丈夫。あなたの故郷に帰るだけ。きっと今までの生活よりも楽しく感じられるはずよ」

穏やかな声で言い聞かせるような中山さんの言葉にエレナの目から涙がこぼれる。

「またカナに逢える?」

「ええ。いつかきっと」

「そっか」

そのいつか、がいつになるかは聞けず、泣くエレナと少し悲しそうにした中山さんを乗せたまま車は夜の闇をくぐっていく。

 

 

 

 

 

 

「エレナ、ついたよ。」

優しい声と温かい手に揺り動かされてエレナは目を覚ました。泣きつかれて、いつの間にか寝てしまっていたようだ。

「おはよう…?」

「ええ、おはよう。」

まだはっきりとしない視界をこすり、窓をあけて外を見る。エレナが見慣れた日本の景色とはかけ離れたけしきが広がっていた。広い広い芝生の庭に、きれいに整備されたガーデン。こじゃれた机といすが置かれたティースペースの奥には、大きな豪邸がずんぐりと腰を据えている。

「え?なにここ…?」

絵本の中でしか見たことにない光景に、エレナの口はふさがらず、開いたままになっていた。

「ようこそ。中山邸へ。ここでこれから一年暮らすのよ」」

「待って中山邸?ここ、中山さんの家なの?!」

「そうよ。さあお腹がすいたでしょう?早く家に入って暖かいものでも食べましょう」

中山さんに促されるまま、庭をとおりぬけ、分厚い扉の前に立つ。ノッカーで中山さんが扉を打つなり、扉がひとりでに空いた。中は広く、二回まで吹き抜けになっていた。両サイドに階段があり、二階へと続いているようだ。エントランスには絵がずらりと並べられており、驚いたことにその絵は動いていた。

「中山さん!絵が動いてるんだけど?!!」

「ああ。魔法界では絵は動くものなのよ。それに会話もするの」

噓でしょ?、とおもいつつも絵に近づいてみる。すると、一番端にあった、上品そうな着物の初老の夫人の絵がしゃべり始めた。

「あら、かわいらしいお嬢さんね!こんにちは。お名前は?」

「エ、エレナ・クレース・・・」

「そう!エレナっていうの。いい名前ね。中山邸へようこそ。あの子(中山さんを目で指して)少し抜けてるとこもあるけど優しい子だから安心していいわよ。あそうそう、私が名乗ってなかったわね。私は幸子よ。中山幸子。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします。幸子さん」

満足したのか、ニコッとほほ笑んで幸子はどこかへ行ってしまった。先ほどから自分の常識の範疇を軽々と超えてくることばかりが起き、今すぐにでもエレナの頭はパンクしてしまいそうだった。動いてしゃべる絵に、勝手にあく扉?それによく考えたら車でイギリスなんでこれるわけがない。情報過多な現状を何とか整理しようとしていると、おもむろに中山さんが手をたたき、誰かを呼び始めた。

 

 

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