孤児の私、親はどうやら魔法使いだったみたいです 作:Silkyy
「この二人が、、、私のお父さんとお母さん、、、」
見てみれば、エレナの口を大きく開けて笑う笑い方はクインのとそっくりだし、エレノアの前髪がサイドにはねてしまう髪の毛の癖はエレナも同じだ。ほかにも目の形や顔の輪郭など、自分との共通点がいくつも見つかった。ああ確かに自分と血のつながった親なのだと、エレナはしみじみと実感した。
「そう。クインとエレノア。どっちも負けん気が強くてね。エレノアは運動神経がよくて、創造的。クインはいつも人の輪の真ん中にいるような人で、鋭い洞察力をもっていたわ。本当に、、、エレナは二人にそっくり。その写真はあげるから、大切にしてね。」
「うん。もちろん。大切にもってる。ありがとう、中山さん」
「いいえ、いいのよ。さ、ご飯も食べたしルームツアーの続きをしましょうか。さっきは書斎を見たから、次はバスルームと、二階に上がってエレナの部屋ね。バスルームは面白いわよ~?
私のひいお爺様が自分でいちから設計・製造までしたから、とにかく個性的なの」
苦笑しながら席をたち中山さんとエレナはバスルームに向かう。食堂を抜けて向かい側の少し小さめの扉をあけると脱衣所があり、右側にすりガラスをはめた木製の引き戸があった。戸は引きあけられており、中をのぞくとエレナが十人は余裕で入るであろう大きさの日本風の旅館のような湯舟があった。外国のおしゃれな空間に突如現れた昔懐かしいような日本の風景にエレナの頭は混乱した。
「え、中山さん、これ日本のお風呂だよね?なんで?」
「言ったでしょ。個性的って。ひいお爺様はイギリス育ちのくせに日本が大好きでね。勝手にこのお風呂を創っちゃったのよ。もともとはここは来客室だったのに」
「ええ…」
「あともう一つ、これはエレナも楽しめると思うわよ?」
といい杖を浴室の天井に向けて振るや否や、浴室中が夜空に包まれる。
「わっえっすごい!夜だ!これも魔法!?」
手を伸ばせば星をつかめそうな夜、という形容詞があるが、手を少し伸ばせばすぐそこで光っている蒼っぽい光の星をつかむことができた。
「そう。って言っても、誰でもできるのだけどね。エレナも来年には自分で景色を変えられるようになるわよ。私のお気に入りは、これ。」
また杖を振ると、今度は雪原が現れた。降ってくる雪は降れると溶けるが冷たくはなく、むしろじんわりと暖かかった。
「すごいすごい!!こんなこともできるなんて!!素敵!!」
「でしょ?だからお風呂入るときは言ってくれたら好きな景色に変えてあげるわよ?」
「ほんと!?やった!何にしようかな…」
「まあゆっくり決めたらいいよ。時間はいっぱいあるしね。さ、次はお待ちかね、エレナの部屋だよ。もう荷物は運びこまれているから、ついたらそのまま荷解きしちゃいな」
「わかった!じゃあ荷解きしたらお風呂入っていい?」
「いいよ。疲れてるだろうし、ちゃちゃっとお風呂入って寝なね」
エレナが頷き、二人そろって脱衣所から出る。玄関の正面にあった階段を上ると右と左それぞれに部屋があり、さらに奥にも部屋があった。中山さんが開けたのは奥の部屋の扉で、少し重そうな黒檀でできたものだった。
「ここが今日からエレナが成人するまでの部屋だよ。ていってもほとんど寮で過ごすから夏しか使わないんだけどね」
開けられた扉の奥に進むと、二十畳ほどの広さの部屋に、カナと二人で遊んでも落ちないであろう大きさのベッド、エレナの身長より優に高く大きく、びっしりと本が詰まった本棚、心地のよさそうな暖炉にソファー、その上にエレナのトランクがあった。
「これが私の部屋?なんか全部がめちゃくちゃ大きくない?」
「そうかな?まあ確かに学園と比べたら大きいかもしれないけど、すぐにエレナも大きくなってちょうどよくなるよ」
「そうなのかな…でも本棚あるの最高だし何でもいっか!」
「そうね。じゃあ、私自分の部屋にいるからなんかあったら聞いて。あとは名前呼んだらギルもくるから欲しいものとかしてほしいことがあったら言いつけてもいいし。」
「わかった~。じゃあまた後でお風呂でね」
「うん。じゃ、一人部屋満喫してね」
ドアを開けて中山さんが出ていく。しばらくは自分の部屋を歩き回って何があるかを確認していた。観音開きの窓の外にはバルコニーもあり、こじんまりとした机といすが置いてあった。
「わあすご…ほんとに貴族みたい…」
ソファーに腰かけ、荷解きをしながらこの一時間ほどにあったことを思い返していた。実際に体験した数々の魔法、中山さんの正体、エレナの両親のこと。どれもまだ10歳のエレナには一つ一つが重かった。ぐるぐると頭の中で考えているとエレナも気づかないうちにソファーに倒れこむように眠ってしまっていた。