赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

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目覚めと出会い

 あぁ、クソ、ここはどこだ?脱走した幻想体を叩きのめして、爪を二人倒した後は…たしかボロクソにやられた後、調律者を叩き切った…はずだ。正直その時点で死にかけと言うか、9割死んでた気がするから正直わからないが、少なくとも施設が崩壊して、仲間たちは…あの状況だと全滅だろうな。私はまたしても大切なものを取りこぼした訳だ。

 右手の使い慣れた武器が喚いている。こいつが今の状況を説明してくれたら助かったのだが、生憎そんな機能も知性も持ち合わせてはいない。

 ここは…屋内?少なくとも人工的な施設に見える。薄暗い通路の奥に何かの気配を感じる。人間ではなさそうだ。幻想体か?もしかしたら頭から送られてきた刺客かもしれないな。どちらにせよ私のやる事は変わらない。

 通路の奥の何かに向かって突撃する。私にはそれしかできない。ただの八つ当たりなのは理解しているがこの激情を抑えることができない。

 牛頭の化け物の首目掛けてEGOを振るう。予想よりも簡単に首を落とせた。

「あ!誰かがいる…あー、もしかしたら人間じゃないかも」

「ティオナ!そっちは…ちょっとヤバそうね、少なくとも雰囲気は完全に闇派閥ね」

 何者かが通路の奥から出てきた。明らかに只者ではない。フィクサーだとしたら一級だろうな。もしかしたら特色かもしれない。

「あのー、そこのすっごい物騒な武器を持った赤髪のおねーさん?あなたの名前と所属ファミリアを教えて欲しいなーって思うんだけど、おしえてくれる?」

「逃げたりするんじゃないわよ、恨むなら自分のその格好、主に怪しさ満点の武器を恨みなさいよね」

 どうやら相手は私のことを知らないらしい。自慢ではないが私はかなりの有名人である自覚がある。この武器と共に武勲を上げて特色にまで至ったのだ。この武器を見て一目で『赤い霧』と判らないならば少なくともフィクサーではなさそうだ。

「お前たちは何者だ?頭からの刺客か?それとも通りすがりの一般人か?」

 私のことを知らないならば少なくとも頭からの刺客ではないだろうし、この雰囲気を出せる人間が一般人であるはずもないが一応聞いてみるか。

「頭っていうのはよく判らないけれど一般人では…ないよね?」

「遠征帰りのロキファミリアの上位陣が一般人な訳ないでしょ。何不安になってんのよ」

「だって一応ふつうの冒険者だし、ダンジョン内だったらもしかしたら一般人枠かなってふと思っちゃって」

「何変な所で哲学的問題を出してるのよ。私はロキファミリアのティオネよ。こっちは妹のティオナ、わかったらさっさとこっちの質問に答えなさい」

 こいつらはふざけているのか?いや、妹の方が少し馬鹿なだけかもしれない。ロキファミリアか…判らないな、そんな組織があった記憶はない。口ぶりから察するにかなり有名な組織のつもりのようだが…自意識過剰なだけか?もしかしたら裏路地の組織かもしれない。もしくは外郭か。

「悪いがあんたらの事は全く知らないな。ここは裏路地か?それとも外郭か?」

「ふざけないで、ロキファミリアを知らない奴なんて今時オラリオ外を探しても少ないわよ。ましてやここはダンジョンの中なんだから私たちを知らないなんてあり得ないことよ」

「私もそう思うけど…嘘を言ってるようには見えないよ?もしかして本気で言ってるんじゃない?」

 ダンジョン…遺跡か?外郭のどこかという可能性もあるがさっきの牛頭…そうだ、さっきの牛頭はどうした?確かに首を刎ねたはずだが、死体がない。石ころが一個転がっているだけだ。何かしらの方法で消えたか?

「あーもう、さっさと質問に答えなさい!あんたの名前とファミリア!良い加減にしないとボコボコにするわよ!」

「私もそろそろ教えて欲しいかなー、団長たちも待ってるだろうしそろそろミノタウロスも倒し切ってるはずだしね」

 名前とファミリアか…名前はともかくファミリアの方はとりあえず特色としての呼び名を出してみるか?

「私はカーリー、『赤い霧』だ」

 私の名前を聞いた途端二人は怪訝そうな顔をする。

「カーリー…いや、赤い霧って何よ、二つ名?」

「えっと、ほんとのほんとにカーリーって名前なの?まぁこっちだとそこまで有名じゃないかもしれないけど…いやでも普通神と同じ名前って付けないよね?」

 どうやら名前を聞いても判らないらしい。赤い霧を名乗ってこの反応…そもそも知らない?法螺を吹くなと馬鹿にするでもなく、恐れるでもなく純粋な疑問か。少なくとも遺跡や裏路地ではなさそうだ。それよりもカーリーの名前の方に反応しているな。知り合いと同じ名前だったりしたのか?

「ここは外郭のどこだ?私はさっさと元の所に戻らなきゃいけないんだ。素直に話してくれると助かるんだがな」

「外郭って何のことよ。ここはダンジョンの上層よ、たしか7階層のはず」

「あ、そんなに上がってきてたっけ?他の冒険者いなくてよかった〜、さすがにこんな上層で狩りしてる人がミノタウロスにあったら逃げることもできなさそうだもんね」

 ミノタウロス…さっきの牛頭の幻想体か?そこまで強くなかったが…いや、流石に特色視点で見るのは酷か。

「ダンジョンっていうのは特異点か?それとも黒い森のような場所か?」

「…さっきから要領を得ないわね、もういいわ、とりあえずボコって…」

 

「ティオネ、僕が話を聞くから落ち着いて欲しいな?」

「はい団長!わかりました!」

 何やら小柄な、子供か?いやそれは見た目だけか。目の前の二人より強いな。団長という事はこいつらの元締めか。

「それで、何があったんだい?僕も今来た所でね、良ければ説明して欲しいんだけど」

「えっとねぇ、ミノタウロスを追いかけてたらそこの人が一太刀で倒してくれたんだけど、ちょっと…ちょっと?怪しいから話をきいてたんだ!」

「ありがとうティオナ、じゃあ、僕はロキファミリア団長『勇者』のフィン・ディムナだ。君の名前を教えてくれるかい?」

「カーリー、『赤い霧』だ」

「ふむ、赤い霧…悪いね、聞き覚えがないや。所属ファミリアとレベルを教えてくれないかい?」

 さて、どうしたものか。そろそろ此処を動きたい。かなり時間を食ってしまったし調律者のことも気がかりだ。ファミリアも何かわからないしレベルなんて新しい単語も出てきた。もう力ずくで突破するか?分は悪いが本気で戦えば勝ち目がない訳ではないはずだ。

「訳がわからない、うんざりだって感じの表情だね。それと焦っている。もしかして仲間の危機かな?いや、それにしては焦っていないね。怒りと諦めの表情か。そして僕たちのことを知らない…ちょっとわからないな、情報が少なすぎる」

 内心を見透かしてるぞと言わんばかりの発言だ。動揺させようとしている?いや、私のやる事は変わらない。さっさとここを切り抜けて施設に戻るだけだ。

「ちょっと落ち着いて欲しいかな。君の邪魔をする気はないけど色々と認識の相違がある事は君もわかっているはずだ。君に暴れられると僕たちは君を取り押さえなくてはならないし、ちょっと手こずりそうだからできれば話し合いで解決したいんだ。君も少なくとも闇派閥って訳じゃなさそうだから平和的に解決したいんだ」

 認識の相違…確かにお互いにわからない事が多すぎる。情報を引き出す意味でもいくつか質問を投げてみるか。

 

「『12協会』『五本指』『翼』のどれかに所属しているか?」

「どれも知らないね、聞いたこともない。僕たちは『ロキファミリア』の所属だ」

「ここは『都市』の『巣』か『裏路地』か?それとも『遺跡』か『外郭』のどっかしらか?」

「ここは『迷宮都市オラリオ』の『ダンジョン』の中だね。どうやら期待してた答えではなかったようだけど」

「…『紫の涙』イオリという名前の女に会ったり聞き覚えは?刀を持った長身の女だ」

「それも知らない。こっちからもいくつか質問するけど良いかな?」

「…ああ」

 アテが外れたな。いや『紫の涙』かどこかしらの『特異点』に巻き込まれた可能性はまだ消えてないか。そして相手は本当に何も知らなそうだ。フィンとやらの表情はあまり信頼できないがあのティオナとやらの表情はわかりやすい。

 

「一応聞き直すけど君は『ファミリア』かそれ以外のどこかの組織に所属しているかな?『神』からの『恩恵』は受けている?」

「今は外郭の組織の一員だが大元は『ハナ協会』から『特色』指定を受けた『フィクサー』だ。神と呼ばれるものはそこそこ知っているが恩恵については何もわからないな」

「その神の名前は?」

「しらん、興味がなかったからな。ただどれも『幻想体』を神と呼んで崇めているだけのようだったはずだ」

 

「…うん、何もわからないって事がわかったよ。君は何か心当たりがあるようだけれど…その表情を見るに手段に心当たりがあるだけでそれ以外は何もわからずここに来たっぽいね。少なくとも故意ではないようだ」

「ああ、さっき出した紫の涙が似たような事を出来たはずだがここに飛ばした理由がわからない。後は『特異点』の事故に巻き込まれたか『幻想体』の能力かだが、正直それを含めたら何でもありだな」

 一応W社の特異点が空間移動だったはずだが…あれは自由に使える物なのか?幻想体ならあり得なくはないが…なにのなにでここに来たかなんて全くわからないから考えるだけ無駄だな。

「うーん、少なくとも君がここの周辺のこと、いやこの世界の事かな?それを全く知らないと思われるから出来れば僕たちについてきて欲しい。ひとまず僕たちのファミリアで保護しようと考えているんだけど…」

「そうだな、ここにいた所で何も進展しないだろうし、もし何かしらの方法で異世界に来たとしたら今までの常識は役立たずだからな。とりあえずあんたたちについていこう」

 正直調律者のことを考えると知った事かと突っぱねてさっさと元の場所に戻りたいが…もし異世界だとしたら流石に私一人でどうにかできる問題じゃない。手がかりもないし現地民の協力を得られるなら受けておくことにしよう。

 

「団長!流石にこんなに怪しいのをうちのファミリアに連れて行くのは良くないと思うんですけど…ガネーシャあたりに押し付け、じゃなくて保護させたら良いんじゃないですか?」

「恩恵もなしにミノタウロスを倒した彼女から目を離したくないんだ、わかってくれるね?」

「わかりました団長、団長がそう考えるなら私は問題ありません!」

「あたしも団長がそう決めたならそれで良いんだけど…」

 ティオナが言葉を詰まらせているな。まぁ不審者を身内の近くに置きたくない気持ちはわかる。

「なによティオナ、団長の判断になんか文句あるっての?」

「いや、武器はどうするのかなって。流石に剥き出しのまま持ち歩かせるのはアレだし、鞘もなさそうじゃない?」

 どうやら武器の問題のようだ。まぁ確かに少しどころではなく個性的な外観なのは否めない。

「…あーそれはそうね、見ただけでやばいっていうか…レベル低い団員が見たらちょっとヤバそうな雰囲気すら出してるものね…」

「その武器を何かしらの方法でしまう事は…出来なさそうだね。ティオネ、一回戻ってこの武器が包めそうな布と…ガレスとリヴェリアも呼んできてもらえるかい?一先ずみんなにはラウルの指示で動いてもらうように言ってくれ」

「はい!すぐに帰ってきます!」

「団長〜あたしカーリーと話してて良い?」

「うん大丈夫だ、カーリーさえ構わなければティオナの話し相手になってくれないかな?」

「そうだな、私も色々と聞きたい事があるから構わないぞ」

「やったー!まずはやっぱりその武器について…」

 

 なぜこんなことになったのか、誰がこんなことをしたのか、これからどうすれば良いのか。何もわからない。ただ一つわかる事があるとするならば。

 

 私は何一つ守れず戦いに負けたということだけだ。




~なぜなに!プロムン教室~
プロジェクトムーン作品ってよくわからない専門用語ばっかり!そんなあなたをプロムン沼に沈める…もとい世界観に没入してもらうために専門用語をゆるっと解説していくよ!
初回は協会とフィクサーについて!
〖12協会ってな~に〗
何でも屋さんのフィクサーを管理する組織だよ!フィクサーを9級から1級に分けて仕事を割り振っているんだ!
1級のなかでもすごい能力を持ったフィクサーは特色と言って色と特徴を組み合わせた二つ名をつけられるよ!
今作の主人公の赤い霧はダンまちで例えるとオッタル枠だ!強い!
赤い霧の強さを知りたかったらプロジェクトムーンの〖調律者〗と〖爪〗を調べてから赤い霧を調べると少し分かるかも!
この作品では追加で最低でも〖何もない〗を一人で鎮圧している程度の強さだ!インチキだね!
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