赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

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アイズとの模擬戦

 ガレスと酒の話をしていると外から騒がしい足音が聞こえてくる。

「カーリー!食堂行こ!」

 応接室のドアを勢いよく開けたのはティオナだった。どうやら食事の時間の様だ。

「わかった、いくかガレス」

「おお、そうじゃな。せっかくだし酒も出してもらうか!」

 

「来たわね、さあそこに座りなさい。メニューはコレよ」

「じゃが丸くんもある。いっぱい頼む?」

「わしは向こうに行ってくる。なんかあったら呼んでくれ」

 ティオナに引っ張られて食堂に着くとティオネとアイズが居た。どうやら既に食事をとっているようだ。

「肉を食ってみるか。このステーキは…まあコレでいいだろう」

「…なんでちょっと溜めたのよ。ごめんやっぱ言わなくていい」

「いや何の肉を使っているのか気になってな」

「言わなくていいって言っただろうがバカ!」

「なんでカーリーが言うと意味深に聞こえるんだろうねーふっしぎー」

「?」

 そう言う意味ではなく普通に聞きたかっただけなのだが文句を言われてしまった。とりあえず適当な酒とステーキ、アイズがやけに推してくるじゃが丸くんを頼む。

 

「まったく、あんたの話を聞いたら誰でも菜食主義者に早変わりね」

「そう言えば武器はどんなのにしたの?最初見た時のミミックみたいな感じ?」

「そうだな、耐久性重視で作ってもらっているからそうそう壊れることはないと思うが、椿の技量に期待だな」

「椿はすごいよ〜?なんてったって大規模鍛治ファミリアの団長を任される程なんだから!」

「私たちはゴブニュファミリアの方を使ってるけどね…あ、やっぱ武器の話やめない?今後の出費が頭を過って気分が下がってきたわ」

 つくづく会話に地雷が多いな…では何の話をするか。

 

 次の会話の内容を考えているとフィンが私たちのテーブルの方に来た。

「アイズ、この後恩恵の更新に行ってくれるかい?僕たちはもう済ませたからガレスが帰ってきたら行ってくれ」

「…カーリーは恩恵貰った?」

「ああ、もうすでに貰っているぞ」

「カーリー、ご飯食べたら戦おう」

 いきなり宣戦布告されてしまった。私は別に構わないが。

「ちょっとアイズ正気!?カーリーはさっき恩恵を貰ったばかりでレベル1どころかステイタスすら1たりとも上がっていないのよ!?」

「大丈夫、手加減はする。それにミノタウロスを一撃で倒してるんでしょ。なら実際の戦闘能力はレベル2以上はあるはず」

「流石に私もどうかと思うけど…団長はどう思うの?」

「…わかった、許可しよう。お互いにゆっくりと本気を出す形にしてくれ」

「わかった、それでいい」

 随分と妙な条件だな。能力的には私の方が劣るはずだが…スキルの効果がどう作用するかはまだわからないから妥当な判断か。

「了解だ、食事を済ませたらやるか。ガレス!この残った酒を処理しておいてくれ!」

「嘘でしょ!?アイズのレベルは5よ!?」

「カーリーにそれほどの『何か』があるって事?」

「スキルを4つ発現している。そのうち2つは確実に能力を上げるスキルだ。あとカーリー、最後の方にはEGOも使ってくれ」

「わかった、調子は悪いが慣らしだと思って使おう」

 レベル5ならそう易々と倒されてくれる筈も無いからな。胸を借りるつもりでやろう。

「僕はみんなに声をかけてから準備をしておこう。別に急がなくてもいいからね」

 

「ちょっと!今からでも辞めておきなさいって!」

「なんだティオネ、そんなに不安か?フィンも言っていたがお互いにゆっくりと本気を出していく形だからそう酷いことにはならないと思うが」

「ええそうね!それがアイズじゃなかったらの話だけどね!この子ちょっと気分が乗ったらすぐはっちゃけるんだから!」

「ああ〜、それは確かに。私たちが言えたことでも無いけどアイズはもっとアレだからね」

「うぐ、うう…気を付ける」

 どうやらアイズにも自覚があるらしい。流石に始まってすぐに本気を出す、なんてことはしないと思うが常に警戒を切らさない様にはしておこう。

「気を付ける。でどうにかできたらリヴェリアもここまで苦労はしてなかった筈だけどね」

「ぐぅ…」

「ぐうの音しか出ないっぽいね」

 来たステーキを齧りながら話を聞く。このステーキ美味いな。牛か?

「カーリーも気をつけなさいよ?油断してたら死にはしなくても大怪我するかもしれないんだから」

「そこまで言うことはないと思うけど…多分」

 アイズはすっかり縮み込んでいる。心当たりもしっかりある様だ。

「まあどうにかなるだろ。イオリの修行に比べれば命の保証があるだけマシだと思うしな」

 じゃが丸くん美味いな。

 

「アイズ!くれぐれも本気になって怪我をさせるとかしない様にな!?」

 食事が終わり、訓練場で用意されていた武器を軽く振るう。少し小さい気もするが所詮は訓練用の武器だ。贅沢も言ってられん。

「わかってる。さっきティオナとティオネにも言われた…」

「そこまで口を酸っぱくして注意されているなら大丈夫だろう」

「まあいざとなったらわしらが割り込むから安心せい」

「素人でもないし何とかなるだろう。ではお手柔らかに頼むぞ」

 位置につき合図の様子を伺う。少し緊張している様だ、先程まで口うるさく気を付ける様に言われていたからかもな。

「ん、来て」

 

「それじゃ、よーい、スタート!」

 ティオナの合図とともに勢いよく突っ込む。とりあえず振り下ろしでいいか…?

「おわっと」

「…レベル1の速さじゃない。威力も凄い」

 異様な加速をしてしまった。アイズには回避されたが、おそらくスキルの効果だろうが予想以上に身体能力が上がるな。

「すまない。まだスキルに慣れていなくてな」

「大丈夫、それを確かめるための試合でもあるから」

 スキルの内容は戦闘時になって効果を発揮するものだったか。だから事前に素振りをした時と勝手が違うんだな。

 次の手はどうするか。もう少し抑えた横切りで慣らしていくか。

「さっきより軽い」

「そりゃ抑えたからな」

 また回避されたがそのまま突進する。アイズは受ける選択をした様だ。

「!予想より重い」

「私も予想より少し早くなっているな」

 お互いの剣で打ち合った瞬間にアイズを掬い上げる様に打ち上げる。このまま次の手を当てられればいいが。

「突進後に打ち上げて次の手に繋ぐ…対人の戦闘って感じ」

「そうだな、人間とは飽きるほど戦ってきたからな」

 空中にいるアイズに力を込めた縦切りを打ち込む。

「…テンペスト」

 アイズの剣と触れる瞬間、その少し手前で勢いよく弾かれる。

「アイズ!何やってんの!」

「魔法とか大人気ない!もうちょっと手心加えろー!」

 どうやら正体は魔法の様だ。ふわりと軽やかに着地している様子を見るに、重力操作…か?もしかしたら風かもしれない。そういう類の魔法の様だ。

「力はレベル3中程からレベル4の下くらい、速さはもう少し抑えめだけど、少なくともレベル1や2が出していい能力じゃない」

「そりゃどうも、フィン!EGO使っていいか?」

「大丈夫だよ、アイズも魔法を使っているしね」

 という訳で、遠慮なくEGOを発現させる。調子は一向に良くならないのでとりあえず速攻のつもりで仕掛けるか。

 

「それじゃ、改めて始めるか」

「それがEGO…いいよ、続けて」

 さっきと同じ様に突進を仕掛ける。次は突きを加えるか。

「はや、おも…」

 突進を加えた段階で大きく距離を離されてしまった。これでは追撃もままならない。

「予想をかなり超えてきたね…ちょっと本気出すね」

「ああ、好きなだけ攻めてこい」

 次はアイズが突進してくる。とりあえず剣で受け流しそのまま横切りで反撃する。

「ティオナとやってるみたい、ティオナより戦いにくいけど」

「こっちとしてもそうふわふわ浮かれるとやりにくいな」

 反撃は当然の様に回避される。そのまま近距離での打ち合いへと移行する。

「すごい、やり、にくい!」

「いくら何でも速すぎないか?この身体能力だけでも特色になれるだろ」

 相手の早さに対して持てる技術をフル活用していなしていく。時々ちょっかいもかけるが効果的ではないな。

 

「早すぎてよく見えんけどカーリーたんは変身したらアイズたんと全力でやりあえる程っちゅうわけか?」

「そうだね、お互いまだ余力は残しているけどスキル的にはカーリーの方が長期戦で有利になる筈だね」

「EGOが魔力か何かを使うものでなければ、だがな。ステイタス的にはアイズの方が上だがカーリーの対人戦の技量で差を埋められているな」

「本当ならアレにミミックが付いて来るわけか。そりゃ伝説で最強じゃな」

 

「嘘でしょ、魔法使ったアイズと打ち合えてる?」

「私じゃあの戦法は流石に無理〜、タダで負けるって訳じゃないけどもっと攻撃を受けてるな〜」

「バカゾネス姉妹は力押し一辺倒だからな。それにしたってあの技量はおかしいと思うが。どんだけ対人戦の経験を積めばあんなんになれんだろうな」

 

「すこし、慣れてきたけど、速度が追いつかれ始めてる?」

「…」

 やはり消耗が激しいな、ここまでガス欠が早いとは思っていなかったが。

「仕方ない、速攻を決めるか」

 アイズの攻撃の隙に合わせてEGOの出力を上げて切り掛かり奇襲の様な形で攻撃を与える。

「まず」

 今までの攻撃に慣れたのを利用した攻撃だ。全力で打ち込んだが手応えとしては…そこまで無いな。

「…赤い霧?」

 勢いよく吹き飛ばしたが全然堪えて無い。ああもうダメだ、マジでガス欠だ。ついでに剣もひしゃげているのでEGOを解除する。

「悪い、ガス欠だ。これ以上EGOを使えそうに無い」

「残念、でも楽しかった。今まで戦ったことがないタイプ」

 アイズはご満悦の様だ。満足させられてこちらとしても満更ではない。

 

 観戦席の方に行くと、ロキが笑顔で手を振って来る。

「赤い霧の由来って髪色って訳じゃなかったんやな。まさかアイズたんとバチバチにやりあえるとは思っとらんかったわ」

「本来ならばもう少し戦えたんだがな、流石にEGOの消耗が激しすぎる。早く原因を探らなければな」

 問題は原因が全く分からない事だが。無駄に力を垂れ流している気もするがなぜそうなっているのか検討もつかない。

「あれを長時間使えるようになったら最早向かうところ敵無しじゃな」

「取り敢えずこちらでも外的要因での不調じゃないか出来るだけ調べてみるけど期待しないで待っててくれ」

 

 私に勝ったアイズの方を見てみると、なぜか説教を受けているようだ。

「アイズ!何でレベル5が先に魔法を使っちゃってんの!」

「う、正面から受けたくないなって思ったら反射で…」

「あの威力を見たら言いたいことは分かるがそれでもな。少し油断しすぎじゃないか?」

「カーリーのステイタスはともかく対人技術が高過ぎた。流石にアレは想定してなかった、反省する」

「確かにレベル5と打ち合える技術って言うのは想定外だったね、スキルもとんでもないのがありそう」

「EGO有りでも俺なら速度で強引に押し込めるか…?いや現実的じゃねえな、まだバカゾネスが力ずくで押し込んだ方が現実的か?…どっちもどっちだな」

「一番手っ取り早いのはベートだろうけどね」

「時間と共に身体能力が上がっていってるから一番勝率があるのはあいつがEGOとやらを出す前にレベル5のステイタスで速攻決める、だな。EGO有りでも負けるつもりはないがな」

「…ベートが素直に褒めてる!?」

 

「良い汗かいたな、シャワーとかはあるのか?」

「あるよ!一緒にお風呂だ~!」

 ティオナが後ろから抱きついてくる。一緒にとはどういう事なのか。

「ウチのファミリアの浴場は大きいのが男女別で一つずつ、つまり共用よ」

「…そうか、まあ大丈夫だろう」

「覗きとかの対策は十分よ、団長なら何時でも何処でもウェルカムだけどね!」

 私の懸念は奇襲とかなのだが。とは言え都市ほど治安も悪いわけでは無いし、周囲の者にそういうのを狙っているようなやつは居なさそうなので気にしないことにする。

 

「これは…!デカイな!」

「ソーダネートッテモオッキイネー」

「ティオナは何処見ていってんのよ。取り敢えず汗流しちゃいましょ」

 ティオナの刺さるような視線は無視して、浴場を見渡す。随分と豪華な造りだな。

「カーリー、こっち。背中流すよ」

「ああ、頼むアイズ…ちょっと待て」

「カーリーたんおっぱい揉ませ、て…し、失礼しました~」

 邪な気配を感じたのでEGOを発現させて待機しているとロキが浴室に突っ込んできたが、私の姿を確認するとそのまま踵を返して帰っていく。

「…それロキ避けに便利ね」

「ロキ顔真っ青にして帰ってったね」

 

「わ゛あ゛あ゛あ゛〜ん゛!し゛ぬ゛か゛と゛お゛も゛っ゛た゛あ゛〜!」

「お、おいお前達!何をやったんだ!ロキが泣きながら抱きついてきたぞ!」

 脱衣所からロキとリヴェリアの声が聞こえる。

「これは…やってしまったか」

「ちょっとやりすぎね、私たちもちょっとビビったし」

「なんというか、『今から貴様を殺す、異論は認めない』って感じの雰囲気だったもんね」

「ファミリアの皆はセクハラされても殺気は当てないし、尋常じゃない殺気を当ててたからロキもびっくりしたんだと思う」

「後で謝っておくか」

 まだ都市の習慣が抜けていない様だ。気をつけなければ。




〜なぜなに!プロムン教室〜
いい加減何を書けばいいか分からなくなってきたプロムン教室!
今回は会話とかで時々出て来ていたけどここら辺から出現率がすっごい下がる『紫の涙』イオリおば…おねーさんについて!
イオリお姉さんは特色のフィクサーでカーリーや他特色複数の師匠をやっているくらいには強いぞ!
なんとイオリお姉さんは時空間を移動する能力も持っているんだ!エイペックスのレイスみたいな感じだね!
この能力は万能じゃなくて、使うたびに何かしらのリスクがあるっぽい上に、今までこういった『世界の理すら違うであろう世界』の事は何も聞いてないからカーリーも今回の転移はイオリの能力ではないと考えてるよ!

つ追伸
ようやっと戦闘シーン…くっそ薄味だな!どれもこれも筆者の文才が無いせいです。あーあ、誰か文才が手に入る特異点開発してくんねーかなー。
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