赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

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それぞれの後悔

「まったく、ロキも新人にセクハラを仕掛けるんじゃ無い!新人じゃなかったらいいという訳でも無いがな!カーリーはもうちょっと周りに気を遣ってくれ、少なくともオラリオの中でいきなり殺気を出すとかそういうのは止めてくれ」

「すまない、邪な気配を感じたもので反射的に…」

「すみませんでした…ウチが軽率すぎました…」

 カーリーだ。只今風呂場でリヴェリアから説教を受けている。反省すべきところはわかっているので口答えはしない。

「わかっているならいい。ロキもこれに懲りたら過度なスキンシップは控えるんだぞ?次はカーリーの攻撃が飛んでくるかもしれないからな」

「死ぬって!冗談抜きに死んでまうて!カーリーたんには絶対にセクハラしません!ハイ!」

「そこはカーリーに限らずセクハラをしないと言って欲しかったんだがな…」

 流石に攻撃まではしないが…まあセクハラ常習犯にはいい薬なのだろう。黙っておくことにする。

 

「いやあ、あそこまで反省してたロキもなかなか見ないね」

「まあファミリアの主神だからって皆甘いところがあったのもあるでしょうね。それでなくても神相手にあそこまでの殺気をぶち当てる人なんてオラリオにそういないだろうし」

「…ロキ、邪魔」

 汗を流し湯船に6人で浸かる。ロキは何故かアイズに抱きついている。凄い鬱陶しそうだ。

「ウチむっちゃ怖かったんやって、今日だけ!今日だけやから!」

「…カーリー」

「すんませんっしたぁ!」

 アイズがこちらを見ながら私の名前を呼ぶと、ロキは勢いよくアイズから離れる。私をセクハラ避けにしないで欲しい。

「本当に反省してたのかなあ」

「効果はあるみたいだけどね」

 

「あ〜せや、カーリーたんの部屋どうしよっか」

「ああ、そういえばまだ決まってなかったな。日用品とかも買わなければ」

 着の身着のままでこちらに来たものだから本当に何も無い。コートのポケットに入っていたのはタバコの空箱、フィクサーの証明書、財布くらいだ。勿論財布なんぞ持っていてもこちらで使える金なんて一文たりとも入っていない。文字通りの素寒貧だ。

「とりあえず金を稼がねばな」

「日用品や家具程度ならばこちらで用意する。同じファミリアの仲間としてな。問題は今日の寝室だ」

「カーリー、一緒に寝る?」

「嘘やろアイズたん!?」

 アイズからの提案は…受けるか。部屋も用意できていない様だしな。

「ああ、アイズがいいならそれでいい」

「マジか!カーリーたんそっち系!?キマシタワー!!!」

「何言ってんだよ」

 なんかこの会話既視感あるな。

「うるさいぞロキ。いいのかアイズ?」

「うん、部屋が決まってないなら私の部屋でいい」

「じゃあ後で布団を用意する。その分のスペースだけ空けておいてくれ」

「わかった」

 

「まさかアイズから部屋に誘うとはね、びっくりしちゃったわ」

「ほんとー!今日だけならこっちに誘ってもいいかなって思ったんだけどな〜」

「え、今からでもそっちにする?」

「流石に狭すぎるわよ、1日くらいなら我慢できなくはないけどね」

「だそうだ、世話になるぞアイズ」

 すごい嬉しそうにしているのが雰囲気で分かる。表情の変化は少ないが。

「ところで、何故私を部屋にいれようと?どうやらこういう行為は珍しいようだが」

「強かったから、どうやって強くなったのか教えてほしくて」

「ああ~納得だわ」

「アイズらしいね」

「私からみればそっちの方が圧倒的に強く見えるんだがな」

 どう考えても人間の動きでは無い。私もステイタスの、と言うよりはスキルの恩恵を受けていたから何とか喰らいつけたが、いくら何でもあんな動きをする人間は都市にはいない。

「ステイタスじゃない、技術の話」

「とはいえアレって完全に対人用よね、アイズの琴線に触れるタイプじゃ無いと思うんだけど」

「アイズはどっちかって言うと対モンスター用の技術を求めそうだからね〜」

「でもステイタスがない中で何であんなに強くなったのかも気になる」

「場数だな、自らの生存を第一に、あとは場数を踏めば誰でもある程度は行ける」

 後は運だ。そもそも私も戦える年齢まで生き延びられたのは運が良かったからだろう。少なくとも死なない事さえ意識すれば自然と強くなれる環境ではあった。強くなければ生きていけないと言うのもあるが。

「場数…わかった」

「多分何もわかってないわよアイズ」

「今までと全くおんなじだもんね。そもそもの環境も違いすぎるだろうからあんまり参考にならないと思うよ?」

 どうやら私の経験談は3人とも満足できる様なものではなかったらしい。どうしたものか。

「一応師匠をつけるとか、どんな状況でも諦めないとかはあるが…それはこっちでも変わらないだろう?」

「変わらないわね、テルスキュラも似た様なスタンスだし、やっぱり場数かしらね」

「ランクアップって一般的には格上狩りとか偉業を成し遂げればできるんだけど、私たちのレベルになると格上狩りをするにもダンジョンのかなり深いところに行かなきゃだからね」

「むぅ」

 アイズはかなり不満げだな。ランクアップか…全く分からんな。

「何故そう焦っているのかは分からんが、焦ればただ無意味に死ぬだけだぞ。いつでも冷静でなければ…なんだがな」

「ま、言うのは簡単よね。カーリーでも抑えられない時があるんだろうからアイズじゃまだまだ無理そうね」

「アイズはそこら辺まだまだお子ちゃまだもんね〜」

「むうう!」

 どうやら図星の様だ。アイズがティオネとティオナをポコスカ叩いている。

 

「あっせや!ステイタス更新しようとおもっとったんや!」

 ロキがこちらに近づいて来る。一応睨んでおくか?

「落ち着けカーリー、今回はセクハラじゃない」

「せや!あくまでステイタス更新!皆も済ませたからアイズもやろうな〜」

「ステイタス更新…カーリー、明日も戦おう!」

「アイズ、明日はみんなが帰って来るのだぞ。流石に明日くらいは」

「いや、リヴェリア。私も戦いたい。ステイタスによってどれほど強くなるか知りたいんだ」

「…仕方ないな、朝食前に一戦だけだぞ?その後汗を流して朝食を食べたら皆を出迎える準備をしなければいかないからな」

「どれどれ、アイズたんは〜と、ええやん!かなり上がっとるな!後でステイタス見せてあげるからな〜」

 ステイタスを更新しても急激に雰囲気が変わると言うことはないらしい。やはり戦闘をしなければ体感は出来そうにもないな。

「ついでにカーリーたんも失礼します!…嘘やろ?しょっぱすぎん?アイズたんと結構ガチでやりあっとったはずなんやけど」

「これは…確かにレベル5とレベル1が戦ったにしては全く、いや同じレベルだと仮定してもこの数値は少なすぎるな。レベル差を考えればレベルアップもおかしくなかったのだが…やはり実際の実力差がなければ駄目な様だな」

 どうやら私はそこまで強くなれなかった様だ。残念にも思うがあの程度で偉業と言われてもどうかと思うので不思議ではない。

 

 風呂から上がってアイズの部屋へ向かう。

「カーリー」

「なんだ?」

「EGOってどうやって使うの?」

 そう来たか…EGO、EGOか…

「どんな状況でも自分の信念を曲げない事、それと並々ならぬ意志の強さ、だったかな。うちの研究者の考察だ」

「うん」

「だが私以外にEGOを発現した奴は見たことがない。まあそう頻繁に使うものでもなかったしな、もしかしたら私が知らないだけで私以外にもEGOの使い手は居たかもしれん」

「うん」

「そしてこの世界でEGOを発現できる様になるかも分からん。幻想体すら居ないこの世界ではそもそも私以外にEGOを使う事が出来る存在がいるとも思えんが…ロキとかに聞いてみたらどうだ?もしかしたら手がかりがあるかもしれんぞ」

「そうだね…後で聞いてみる」

「私も幻想体について聞いてみるか。まあ最初に会った時の反応からして今までにそういった物は無かったんだと思うけどな」

 どうやら満足いく答えはなかった様だ。とはいえ私もこれ以上の手がかりはない。EGOについても私は使えるだけで、研究者たちの方がまだ有益な情報を持っていたと思うがな。

 

 アイズの部屋に入る。物はそう多くはないな。

「私が教えられるのも対人戦くらいで、対幻想体…いや対モンスターか、それはアイズの方が上手だと思う。申し訳ないが私は力になれそうにないな」

「大丈夫、何一つ手がかりがなかった訳じゃない。どこの世界でも場数を踏むのは大事って言うのがわかっただけでも十分」

「それならよかった。もし対人戦の練習がしたかったらいつでも相談に乗るからな」

「できれば数年前に来て欲しかったな…でもありがとう、必要無いに越したことはないけど、念の為今度教えてもらうかも」

 数年前…闇派閥とやらの話か。今までの情報から察するに他のファミリアとの戦いだったのだろう。

「そうだな、対人戦なんて何時あっても可笑しくはない…と言う訳でもないんだったな。まあ準備しておくに越したことはないぞ」

 私も研究所の皆に最低限の自衛方法を教えておけば…いや、流石にその程度で戦況が変わる様な状況でもなかったか…それでも…

 

「カーリー?」

「ん、ああ悪い、少し考え事をしていた」

「アイズ、カーリー、扉を開けてくれ」

 外からリヴェリアの呼び声がする。アイズが扉を開けるとそこには両手で布団を抱えたリヴェリアが立っていた。

「ありがとうアイズ、思ったより布団が嵩張ってな、後これはアイズのステイタスだ。カーリーは全体で10も上がっていなかったから書いていないが、必要だったか?」

「いや、そっちで必要無いと判断したなら大丈夫だ。1、2上がったところでそう変わらないんだろう?」

「そうだな、流石に一つのステイタスが20程一気に上がればカーリーならわかると思うが、一桁程度ではな」

「私と戦ってそんなに低いのは流石にびっくりした。一応レベル1と5の戦いなのに」

「私もだ、ロキも部屋で文句を言う程度には低かったからな」

 どうやらアイズ相手だと信じられないくらい低い成長率の様だ。これは先が思いやられるぞ。

「だがカーリー、焦るなよ?お前は規格外に強いのだ。まだレベル1なのにアイズと戦えている時点でな。アイズみたいにダンジョンに特攻して行ったら私の説教が待っていると思え」

「わかっている、ここまで来てそう死に急ぐ様な真似はしない」

「そうだといいんだがな…アイズも、武器をゴブニュファミリアに預けることになるだろうからその間くらいは大人しくしているんだぞ?」

「うう…わかった」

「まったく、随分と不満げだな…まあいい、もう夜も遅いからな、明日は早いのだからすぐに寝るんだぞ」

「了解だ」

 

 リヴェリアがドアを閉めた後、私は布団を敷く。

「ねえカーリー、あなたには後悔していることはあるの?」

「…勿論あるさ。数え切れないほどにな」

 隣人に出来るだけ借りを返そうとした時の記憶、裏切られた記憶、カルメンに研究所の用心棒として誘われた時の記憶…

「それは強ければ防げた事なの?」

「…いくつかはそうだな。だが力だけではどうにもならない事の方が多かった」

 あの時、あれをしなければ、あの時、ああすれば、あの時、彼女に声を掛けていれば…あの時、もっと力があったのならば…

「…そう、私は力が欲しいの。モンスターを皆殺しにできるくらいの力」

「そうだな、それほどの力があれば…私もここに来る事は無かったかもな」

 結局、今更後悔しても守れなかったモノをどうする事も出来ないのだな…

「…そろそろ寝ようか、明日も戦うんだろう?」

「…うん」

 後悔先に立たず、とはよく言った物だな。




見直したら前半と後半の温度差やばい…やばくない?って事で
〜なぜなに!プロムン教室〜
今回はロボトミーコーポレーションのスーパーAI、アンジェラちゃんについて!
アンジェラちゃんはCと言う人を元に作られた管理人たちの業務を補佐するスーパースペシャル美人秘書AIだぞ!
正直アンジェラちゃん1人で十分に施設を運営できそうな気もするけど、実際の指示を下すのは管理人であるプレイヤーX(King Gnuは無関係)だぞ!頑張ってください、管理人。
次回作のライブラリーオブルイナではコスプレ系主人公になっちゃう!?って事でレッツプレイ!
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