食堂で食事を済ませた後、フィンからティオネの暴走の理由をロキと聞いた。
「いやあ、聞いてみたら納得やったな…ダンジョンで2人きりで会話して、しかもフィンが、理由はともかく今までに見ない表情で真剣に話を聞いてる姿を見たなんてな。いきなり出てきた今までに見ないタイプの女か…そりゃバチバチに警戒するわな、さらに武器っちゅう共通の話題を通じて距離を詰めるとか、冒険者なら一回は思いつく距離の詰め方やないか」
「そんなつもりで試合をしたわけじゃないんだがな…」
「私と試合する約束だったのに…」
「フィンはそろそろ嫁見繕った方がいいんちゃうん?フィンの理想は分かっとるけど、このままじゃティオネがガチのマジで食いに来るで」
「言いたい事はわかるけど僕の理想は譲れないな」
私としてはティオネが落ち着いてくれればいいんだがな。とはいえフィンさえ絡まなければ至って普通の良識を持った人間だ。やはりフィンにどうにかしてもらうしかないのでは?
「とりあえず、私とフィンは2人きりにならない方が良さそうだな。随分とティオネに警戒されてしまっているらしい」
「せやな、フィンは人気やからティオネも何処の馬の骨ともわからんやつに取られんかずっと警戒しとるからなぁ。フィンも良い歳なんやからはよ良いコみっけるんやで〜?」
「努力はするよ」
「じゃあ僕はそろそろバベルに向かうよ」
「私もゴブニュのとこに行ってくる」
「そうか、迷惑をかけて済まないな」
「気をつけて行ってくるんやで〜、ここん所色々あったし次になにがくるか分からんからな〜」
そうだな、異世界から普通の人間が来るならまだしも、五本指やら謝肉祭やら掃除屋やら何処ぞの翼の構成員やら…下手をすればALEPHクラスの幻想体が来る可能性だってある。取り敢えず今度知る限りの危険要素をロキと幹部に伝えておくか。
「本当に警戒しないといけないね…もしカーリーの世界から何かが来たら高確率で危険な物の様な気がするからね」
「ぐうの音も出ないな。私も今来たらヤバそうな物を考えたが数え切れなかったからな」
「本当にろくでもない世界やな…マジで気を付けてくれや、変な物を見掛けたら近付かずにすぐホームに戻ってくるんやで?」
「わかった」
ロキと共にアイズ達を見送るとロキの部屋に招かれた。
「今の内に聞いておくわ、そっちの世界でマジで危険な存在を幾つか教えてくれ。取り敢えず今分かっている『何もない』から頼むわ」
「そう来たか、確かにそのうち教えなければとは考えていたが…そうだな、あいつは幾つかの形態があるんだ」
「変身するんか」
「そうだ、犬のような四足歩行形態、卵のような形態、最後に人の形をした形態。もし人の形になっていたら絶対に単独で戦闘をしてはならない」
「そこまで言うほどヤバいんか?」
「まず卵形態の時点から物理的な攻撃が効かなくなる」
「…マジ?」
「マジだ」
ロキが頭を抱えてしまったが気持ちは十分分かる。私も凄まじく苦労したものだ。
「いや、ちょい待ち、カーリーはソイツ倒したことがあるんよな?どうやったんや」
「幻想体には精神に影響を与えるタイプの奴がいるんだ」
「ソイツと協力したんか!」
「ソイツを引きずり出して叩きつけ続けた」
「嘘やろ…脳筋すぎん?」
失礼だな、それしか手がなかったんだから仕方ないだろう。
「まあどちらにせよ使えん手やな、精神に影響を与えるタイプの幻想体が一緒に来るとは限らんからな…もしかしたら神威でどうにかなるかも知れんけど絶対攻撃もバカ強いやろ」
「私がもろに食らったら痛手じゃすまない程度の負傷をする攻撃と遠距離攻撃ももってるな」
「最低でもレベル5以上が協力して戦うような相手やな。レベル4以下はお荷物になりそうやな。んで魔法はともかく物理は通らんと…キッツ!無理ゲーやんけそんなん!」
「あと人に化ける、言動が明らかに不自然になるからすぐに判るとは思うがな」
「マジか…万が一初っ端から人型のバケモノ状態だった時は?」
私が手を上げるジェスチャーをするとロキは再び頭を抱えて唸り声を上げる。
2人でしばらく対策を考えてみたが、なにも良い案が思い浮かばない。
「ヨシ!とりあえずそれっぽいのを見た時考えるか!正直魔法も神威も効くのを祈るしかない相手やからな!次!爪ってやつ頼む!」
「そこそこの機動力、そこそこの火力、そこそこの自己再生能力、それと瞬間移動能力を持ったただの人間だ。レベル5もあれば万全の状態なら倒せるだろう」
「そんじゃあ余裕やな!…とでも言うと思ったかアホがぁ!レベル4じゃギリ荷が重そうやし厄介な能力が二つもあるやんけ!敵対したらヤバい奴やんけ!」
「『何もない』よりは余裕だろう」
「せやな!なら大丈夫やな!って比較対象が悪すぎる!あんな?レベル5ってそんなポンポンおる様なもんじゃないねん。マジのガチでトップクラス、そっちで言うなら一級フィクサーって奴なんよ、多分」
「そうだろうな。だが斬れば倒せる」
「むしろ初手で切っても死なん様な奴出てきてんのがおかしいねんて。流石のダンジョンでもそんな理不尽は…深層やないと無いんやて。まあ取り敢えず次行くか。そんじゃ調律者ってのは、どんだけヤバいんや」
むしろ深層だとそこまでの理不尽があるのか…それはともかく調律者か、かなり難しい質問だな。
「なんやそんな顔して…もしかして『何もない』より理不尽だったり?」
「まあそうだな。こっちの世界には特異点って技術があるんだが、それを複数種類使って戦うのが調律者だ。一応斬れば死ぬはずだが」
「その特異点ってどんなんがあるん?」
「『妖精』であらゆる閉められた物を開けられたり、逆に『錠前』で閉めたり…」
「なんや、ただの盗人やん…って言いたいけど絶対そんなん序の口やろ」
「私の所はこれが結構致命的ではあったんだがな、直接の戦闘だと『鎖』で動きを止めて『柱』で攻撃するのと…『衝撃波』が来たら周囲一帯は更地になるな」
少なくとも私が確認できているのはこれくらいか。他の手札は持っているんだろうが私は確認できていないな。
「聞く限りやと今までのよりはやりようがありそうやな…その衝撃波を除いてな。初手衝撃波なんてされたらマジ終わるかもな。そんでどうやったら衝撃波を発動できるんや?」
「手を握る」
「うん」
「終わりだ」
「ウッソやろお前…え?それで周囲一体更地?」
「そうだな。私が確認した限りではそれで終わりだ」
「もう嫌んなってきたわ…そっち修羅の世界すぎん?流石のリヴェリアでもなっがい詠唱してようやっと更地に出来るって感じやぞ」
「私の時はかなり油断していたから相打ちにできたがな。慢心していなかったら何もできずに死んでいただろう」
「ああ、そういえば全部同時に相手してんのか…え?本気で言っとる?マジ?」
「私が何らかの幻想体の影響で幻覚を見てたと言うオチでなければな」
「…ちょっと何とかなる気がしてきたけどこれ絶対比較がおかしいだけよな。オッタルの全力見た後にアイズなら勝てそーなんてほざいとるアホみたいなもんよな」
私も伊達に戦闘特化の特色ではないからな。もしかしたら都市を探せばどうにか出来るやつが1人2人居るかもしれないがその程度だろう。
「とりあえず『何もない』みたいなギミック系幻想体以外なら何とかなるかもしれん…程度で考えとくか。問題はどいつもこいつもサクッと手軽に広範囲を破壊できそうな点やな。これはもうどうしようもない、事前情報なしで奇襲受けた様なもんや」
「一応言っておくが流石にさっきのは都市の中でもかなりの上澄だからな?幻想体はどのレベルでも初見殺ししてくる要素があるとはいえ、都市の人間はほとんど調律者や爪、後は私の様な特色以下だ」
「それでも場当たり的な対処しかできんのがキツイな…早急にカーリーの転移の原因を突き止めなあかんくなってきたわ。流石に次の神会で話し合うか…?いや流石に情報は絞らなあかんな、とりあえず出来るだけ早くウラノスに伝えておくか。あとはフレイヤとガネーシャと…」
紙に今までの情報とこれからやらなければいけない事を書き連ねているようだ。神聖文字なので私には読めないが。
「うし、ひとまず知りたい事は知れたわ。最悪オラリオが崩壊するって事がな、それも唐突にや。明確な対策は無し、いつくるか、何なら次があるのかも分からん。杞憂になるかもしれん。それでも実例があるから放置もできん問題やな」
「あまり力になれなくてすまない、せめてイオリがいればなんらかの手がかりが見つかったかもしれないが…無い物ねだりだな」
「時空を移動できるっちゅうやつやったか…まあせやな、無いなら無いなりに何とかせんとな」
確かに幻想体相手だと対策しようがないな、見てはいけない、見ないといけない、触れてはいけない等、物によって禁忌となる行動が違いすぎる。元の世界でも初見でどうにかできる様な物ではなかったな。
「いざとなったらウチとフレイヤのトコで何とかするからな。それで何ともならんならもうどうにもならんわ」
「見えない脅威に備えろと言う事だな…その時にどうにかなれば良いが…」
「んじゃみんなを待つか!それまでこっちの話したるわ!」
過去を尊び、今を楽しみ、未来を夢見る…今を生きるために命を賭け続ける都市ではできなかった生活だな。いつか都市もこうなれば良いが…
~なぜなに!プロムン教室~
まあロキとカーリーの不安は今のところ杞憂なんだけどね!今のところは!
と言うわけで今回はいくら何でもヤバすぎない?『何もない』について!
『何もない』は常に『殻』を求め続けている幻想体だ!人を襲っては『殻』を奪い取る凶悪な幻想体だぞ!怖い!
特殊能力はいくつかあって、まずは人から殻を奪い取ってその人に『擬態』する能力!
そして脱走後しばらくすると『変身』する能力だ!
変身前はただのちょっと強いワンちゃん程度で済むけど、変身後は4種類あるダメージのうち1種類を無効化、2種類を大体半減、最後の1種も軽減というインチキ性能だ!放置すると自己再生もする!硬い!
挨拶しながら貫通弾で遠距離攻撃をしたりお別れの言葉と共に空間と共に叩き切ってきたりするぞ!強い!
ちなみにオラリオに来た時の対処法は一応は効果のある魔法で頑張って倒すか神威を当て続ければ一応動きは止まるぞ!
実際はいきなり出てきてもウダイオスがいきなり出てきた場合と比べるとウダイオスの方が被害が大きいぞ!
多脚式の星とか(規制済み)とか終末やら十二使徒みたいな出現と同時にえっぐい被害出す奴らよりは不意打ちで来ても何とかなる分安心だね!