赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

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ロキファミリアの三首領

 ティオナ(ときどきフィン)の質問攻めに辟易してきたところでティオナがさも「良いことを思い付いた!」と言いたそうな顔をした。

「そうだ!ちょっとその武器貸してよ!大きさもそこそこ良い感じだし!」

 まったくもって良いアイディアじゃなかった。さっきこの武器がどういう存在から作られた物なのか、危険性についても説明した筈だが。

「ティオナ?さっきこの武器の危険性の説明を受けたよね?それでも持ちたいと思うのかな?」

「だって武器はあのとき壊れちゃったし、それにここでちょっと持つくらいなら大丈夫かな~って思ったんだけど…ダメ?」

 個人的にはかなり危険な武器なのであまり気は進まないが…フィンは「カーリーさえ良ければティオネ達が帰ってきてからなら良いよ」というスタンスのようだ。

「あのな?さっきも言った筈だがこれは化け物の一部分で、常に精神を汚染する危険な武器なんだ。そう易々と貸せるものじゃないし、貸したところでお前がもっていた武器よりも圧倒的に弱い性能しか出せないと思うんだが…何を言っても無駄そうだな」

 ティオナの視線はミミックに釘付けだ。そんなキラキラした目で見るような武器でも無いだろうに…

「おーねーがーいー!そこらの武器よりは強そうだしヤバそうだったらすぐ返すから!」

「一応僕の見立てでは大丈夫だと思うけどね。一回だけ持たせてあげてくれないかな?」

 フィンからも頼まれてしまった…異世界だからと警戒しすぎているのか?いやこいつらの目は明らかに好奇心に支配されているな。フィンですら好奇心を押さえきれていない。

「仕方がないな…ティオネが戻ってきたら貸してやろう。だがな、くれぐれも気を抜くんじゃないぞ。さっきも言ったがこいつは生きているんだ。未知のモンスターの相手をするつもりで相手しろよ」

「未知のモンスター…うん!すっっっごく警戒する!ちょっと前にひどい目に遭ったし!」

 随分と警戒心が増したな。よほど痛い目を見たようだが、外傷は見当たらないな?

「何があったんだ?知り合いが負傷したのか?」

「うぅ、借金地獄…うごご…」

「武器を駄目にされたんだ。僕たちが使う武器となったら自然と高品質の武器になるけど、高品質な武器はどれも高級品になるからね…」

 ティオナが頭を抱えて蹲ってしまった。正直命があるだけマシだと思ったのだが…たしかに奮発して手に入れた武器が駄目になったら私も落ち込むな。私にも経験はある。

「どんな敵だったんだ?ひたすら硬かったのか?」

「いや、まったく強くはなかったんだけど数が多い上に体液が酸性でね、武器で攻撃したら武器が溶けたんだよ。正直僕も頭を抱えそうになったね、遠征で出来る限りの準備をしてたけどここまで武器を消耗させてくる敵がいたって情報は無かったから」

 おかげで大赤字だねと苦笑いしているが目が死んでいる。しっかり大打撃だったようだ。

 

「団長〜!ただいま戻りました!」

 どうやらティオネが戻ってきたようだ。耳の尖った女と小柄な髭男もしかめっ面でついてきている。

「なんじゃなんじゃ、この物騒な雰囲気は。フィンがワシらを呼んだからただ事では無いと思っとったが」

「こんな上層で出して良い空気じゃ無いぞ。原因はそこの女…の武器か。あからさまに厄介事ですと言った感じだな」

「ああ、ガレス、リヴェリア。いきなりだけどコレをどうにかする手立てとかあるかな?見た目は布を被せれば良いとしてもコレを街中で堂々と持ち運ぶわけにはいかないからね」

 話に聞いていた幹部のようだ。どうやらこの武器の処遇についての話のようだが正直私は力になれそうも無い。

「殺気というか何というか、コレはなんじゃ。片手剣にしては大きいな…コレ生きているな、生き物かモンスターをそのまま武器として使ってるのか?」

「封印するにしてもここでどうこう出来そうにも無いしな…進むにしても戻るにしても問題が起きる事は間違いないな。それよりも君はそれを持っていて何とも無いのか?」

「ああ、コレは私の武器だからな。普通に持ち歩く程度なら大丈夫かと思っていたんだが…」

「最低でもレベル2以下は近づかない方がいいな。一般人が見た日にゃトラウマになるぞ」

「街は君のいたところよりは圧倒的に安全と言い切れるからね。こういう物に慣れている冒険者も少ないだろうね」

 確かに私の出身地はかなり危険な場所ではあったが…巣と同等以上の治安が保たれているのか?

「こんな物を晒して歩いても気にされないとかどんなところじゃ。下層でもここまで殺気を垂れ流すようなモンスターはおらんぞ」

「むしろモンスターは無意味に殺気を出すような物でも無いからな。比較するなら闇派閥か?それにしても大概ではあるが」

「なんなら私たちの故郷に近い空気よね。テルスキュラと比べられる時点でオラリオでは規格外だけど」

「そーだねー、ってコレ私たち以外が遭遇してたら問答無用で攻撃してた可能性ない?ベートとか」

「あの駄犬なら確実に噛みつくわね。ティオナの武器代を賭けてもいいわ」

 散々な言われようだ、ぐうの音も出ないが。もう少し危険度の低い幻想体のEGOだったならもっとマシだったのだろうがコレ以外で抽出を成功させたEGOは無い。

「とりあえずギルドに頼んでダンジョン入り口を封鎖するか…ガネーシャファミリアにも依頼してこの武器の輸送時に進路の人払いもしなければな…」

「やっぱりそうなるよね。仕方ない、僕が交渉しに行くから…とりあえずここで待っててくれ。これを持ってアンダーリゾートに入ったら絶対に揉め事が起こるからね」

「ここに留まるのも良策とは言えないが…他に手もないな。とりあえず袋小路の奥まで行って人が来ないようにだけしておくか」

「そうじゃな。まぁこんなもんがある場所に近づくような低レベルはさすがに居ないと思うが」

「その前に一回この武器持ってみていいー?さっきはあんなに謙遜してたけどやっぱこの武器絶対強いって!」

 ティオナの言葉を聞いたガレスとリヴェリア、ティオネが私とティオナを交互に見る。正気かお前と言いたげな顔だな。

「ティオナ?絶対にやめた方がいいわよ。下手したら初見殺し系の罠だったりするでしょコレ」

「ワシもそう思うぞ。絶対変な呪いかけてくるじゃろコレ」

 武器の持ち主を前にして散々な言いようだな。問題は元の世界でも私以外に使いこなせた人間がいないせいで何も言い返せないあたりか。とりあえずミミックを地面に突き立てることにした。

「まぁ約束だからな。ほら、こいつを持ってくれ。ガレスとリヴェリアも一応暴れ出した時のために構えといてくれ」

「僕からも頼むよ。ここでカーリー以外が持っても大丈夫なものか確認しときたいからね」

「…仕方ないな、いいか?ちゃんと警戒して危険だと思ったらすぐ離すんだぞ」

「わかってるって〜、じゃあいくよ〜!」

 

 ティオナが剣の持ち手を掴んだ…が難しい顔になったまま動きがない。

「ちょっとティオナ!?大丈夫!?」

「少し待って…あ〜うん、こういう感じね…とりあえずは大丈夫そう」

「どんな感じか説明できるかい?」

「なんていうか…頭に直接声が響くかんじ…何かが欲しい?う〜ん、良くわからないなぁ。でも経験が浅い子とかが持ったら凄まじくヤバいって感じはする」

 実際に持って違和感を感じている程度ならひとまず安心できそうだ。意志が強くないと人を襲い始めるからな。

「うん!問題はなさそうだけど、あまり長くは持っていたくないなぁ。せっかくだからちょっと振ってみるけど大丈夫そう?」

「ああ、大丈夫だがその武器は伸びるから気をつけろよ。まぁ伸ばすのにもコツがいるから大丈夫だとは思うが」

「伸びるの!?コレが!?本当に謎の武器って感じね…」

「どんな武器なんじゃコレ…大剣型鞭?」

 使い慣れるとかなり便利だ。伸ばしたらその分攻撃範囲が増えるのはもちろん、うまく先端のあたりを当てればかなりの威力が期待できる。突きのリーチを伸ばすために利用してもいい。

「んじゃ失礼して…えい!」

 ティオナがミミックを振り下ろす。太刀筋はかなりいいな。流石は一線級だ。

「うわぁ…うわぁ!コレすごい!欲しくなっちゃった!ちょっとだけ!ちょっとだけモンスター切ってみてもいい!?」

「ダメに決まっているだろう。ほら、早くカーリーに返しなさい」

「まて!ワシも触ってみたいぞ!一回だけ!一回だけでいいから!」

「とりあえず個人差は大きそうだけどレベル5もあれば少なくとも持ち運びは出来そうかな?できればレベル4でも持てるか試したいけど流石にリスクが大きすぎるかな」

 少なくとも直ちに異常が起きる気配はなさそうだ。長期的な影響に関しては流石にわからないが一級フィクサー…ではなく冒険者だ。自己管理くらいはできるだろう。

「もういいか?ただの勘でしかないがそろそろ移動した方がいい気がするんだ」

「あ!わかるー!そういう時あるよね。嫌な予感って良く当たるからね〜」

「確かに少し時間を食い過ぎたかもね。ラウルに指揮を任せているとは言え流石に長く空けすぎるのも良くないな。リヴェリア、カーリー達を待機場所まで送ったらアンダーリゾートまで戻って指揮を引き継いでくれ。ガレス・フィオネ・ティオナはカーリーと一緒に待機してくれ。十分に強いとは言えダンジョンの知識もないし何よりファルナを授かってないからね」

 団長というものは凄いな。私が指示するとしたら攻撃と防御と撤退くらいしか出来ないだろうから素直に羨ましいな。

「一応ティオネから聞いてはいたが、本当にファルナを授かっていないのか?まぁこんな武器を平然と持てる時点で只者ではないのはわかるが」

「気になるのはわかるがあんまり詮索せん方がいいだろう。どちらにせよロキのところに連れて行く事は確定しとるしの」

「それじゃあ、くれぐれも他の冒険者と鉢合わせないように。どうなるかわからないからね」

「ああ、そっちは頼んだぞフィン。それではこちらも行動を開始するとしよう」

 フィンが駆け出すのを見送る。疾いな、流石に素の状態では勝負にもならなそうな速さだ。EGOを使ってようやく勝負になるかどうかと言った所か?

「了解した…ティオナ、ミミックを任せよう」

「え!?いいの!?なんで!?やったー!」

 表情をコロコロと変えるティオナを見ていると少し安心する。勿論ミミックを渡すのはきちんと考えてのことだ。私は素手でも普通に戦えるが彼女が素手でどれほど戦えるか判らないのと、ダンジョンに対する知識に乏しい私が持つよりもティオナに持たせて即応力を上げる方がいいと考えたからだ。あと熱視線が少し鬱陶しくなってきたのもある。ティオネもミミックをかなり気にしている様子だったし、ガレスに至ってはがっつり見ているし…。

「少し申し訳ないとは思うけどあまりティオナを甘やかさないでよ。なんかあなたすっごい身内に甘くなりそうな雰囲気を感じるし…」

「…そうでもない、はずだ」

 まずいぞ、かなり心当たりがある。そうだな、カルメンに誘われて研究所に入ってから私はかなり甘くなったかもな…いや、今は感傷に浸っている場合ではないな。だが、わかっていても無邪気に笑うティオナの笑顔にかつての記憶を重ねてしまう。私が守れなかったかつての…

「カーリー?どうしたの?」

「ああ…いや、なんでもない」

 

 私の過ちが消えることはない。




〜なぜなに!プロムン教室〜
今回は幻想体とEGOについて!
まず幻想体っていうのは不思議な力を持った化け物のことを言うんだ!よっぽどのことがない限り死なないぞ!SCPみたいな物だ!
こいつらをアレやコレやなんやかんやするとEGOっていう装備が手に入るんだ!モンハンみたいだね!
例としてカーリーの持っている『ミミック』について説明しよう!
これは『何もない』っていう超絶激ヤバな幻想体から抽出したEGOなんだ!武器はえげつない攻撃力と再生能力を、防具はとんでもない物理耐性を持っているぞ!
カーリーの場合は武器しか持ってない上に試作品だからオリジナルよりは弱いけどダンまちに出していい武器ではないね!
カーリーの防具に関しては今後のストーリーで出てきた時に説明しよう!
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