赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

24 / 33
新たなる武器

 カーテンの隙間から差し込む朝日で目が醒める。

 寝巻きから都市で着ていたコートに着替え朝の一服…は出来ないのでため息をつきながら訓練場へと向かう。

 訓練場には先客がいた。ベートだ。こそこそする必要もないので堂々と訓練場に降りる。

「あ?またお前かよ」

「お前も熱心だな。まだ朝も早いだろう」

 ベートは舌打ちをして背中を向けて立ち去ろうとするが…そうだな、せっかくだしな。

「おいベート」

「…んだよ」

「模擬戦しないか?」

 立ち去ろうとする足を止めてこちらを睨む。文字通り飢えた狼のような目だな。

 しばらくの沈黙の後、獰猛な笑みを浮かべながらこちらに向き直る。

「手加減は?」

「今のところ予定はない」

「好きな武器選べ」

 どうやら受けてくれるようだ。前に使った剣と同系統の物を選んでベートに向き合う。

「最初のウォームアップ程度は手加減してやるよ」

「そうか、胸を借りるとしよう」

 ベート・ローガの情報はある程度集めてある。ファミリア最速、一対一ならファミリア内でも最強かも知れないと言われる程の冒険者だ。

「一応聞くが武器は?」

「この足だ、試合用の物はねえからこのまま行くぞ」

 足にも武器の類はつけていないが訓練用の物が無いのなら仕方がないだろう。

 

 お互いが位置について少しの静寂の後、どちらからともなく動き始める。

「やっぱり早いな、流石に追いつけそうにも無い」

「レベル1の雑魚が追いつけるような速さじゃねえに決まってるだろ」

 明らかに手加減されているがそれでも目で追うのは厳しいな。まあ目で追わなければ良いのだが。

「普通ならレベル3でも追いつけねえんだけどな。とんでもねえスキル持ってんな」

「ロキにも言われたよ」

 ベートの蹴りを往なして反撃するが余裕で回避される。流石に攻撃を当てるのも一苦労だな。

「ハッ、こっちが手加減してるとは言え反撃する余裕まであんのかよ」

 ベートは手数で攻めてくる。反撃は難しいが無理では無いし、まだアイズの時よりも余裕はある。

「そろそろ行くぞ」

「ああ、来い」

 一段と速度を上げられる。流石にもう目では追えないので一瞬の硬直時の姿勢から次の攻撃を予想して往なす。

「マジかよ、面白えな。見えてねえだろ」

「そうだな、流石に能力差がありすぎる」

 フェイントを交えてくるようにはなったが見破れない物では無い。少し気力を持ってかれるだけだ。

「お前どれだけ対人戦に慣れてるんだよ」

「それが人生の中心だった程度には」

 確かに攻撃を往なせてはいる。だがこのままでは反撃もままならない。次の隙にEGO発現して突撃するか。

「どうすんだ?このままじゃジリ貧だろ?」

「そうだな、流石にこのままというのはあまり良くは無い」

 楽しそうに口での挑発を交えてくるあたり私のEGO発現を見たいのだろう。

 なので今までと違い大きく受け流しお互いに大きな隙を作る。そのままEGOを発現させてベートに蹴りを仕掛ける。

「ッ、ハッ、面白え攻撃だな。それがEGOって奴かよ」

 蹴りは当然のように躱されるがその代償として大きく距離をとる事になる。とりあえず仕切りなおせた。

「そんじゃもう少し早くても良いだろ」

 先ほどの攻撃から一段と早くなる。だがEGOを利用して受け流す選択肢が生まれたので先ほどよりも余裕がある。反撃も不可能では無い。

「予想以上に余裕があるみたいだな」

「流石に奥の手も使っているんだ。これくらいでなくてはな」

 しばらく撃ち合い続け、3度目の反撃をベートが剣の側面を蹴って受け流した時。

「あ」

「あ」

 一番最初に根を上げたのは武器だった。根本から斜めになってしまっている。流石にこれでベートと戦うのは不可能だ。

「もう少し耐えると思ったんだが…結果的には私の負けだな」

「チッ、少し強く蹴りすぎたな。もっと耐久力のある奴作らせとくか」

 お互い少しばかり不完全燃焼だが折れてしまった剣はどうしようもない。とりあえず傍に立て掛けてEGOを解除する。

「お前の強さは大体わかった。守られるだけの雑魚じゃねえんだろうがまだステイタスが低いな。精々レベル4のトップ程度だろ、もっとステイタスを上げてから来い」

「そうだな、せめてお前を目で追える程度まで上げたいな」

「百年早えな」

 

 

 

 

 

 軽口を叩き合っていると背後から凄まじい強風が吹く。

 

 

 

 

 

「カーリー?」

 どうやら私は訓練場に来るとトラブルを招く体質のようだ。

「あん?お、おうアイズ…か…」

 ベートの顔が引き攣っている。どうやら私の背後にソレがいるらしい。

「また戦おうって約束して、色々あって今まで戦えてなかったのにベートとは戦うの?」

 振り向くと目の前には可愛らしい容姿をした金髪の少女が凄まじい強風を纏っていた。アイズだ。明らかに不機嫌そうだな。

「いや、前ベートに誘われて断っていたからな、今回たまたま会ったからその時の誘いを受けようと思っていてな」

 理由を話しても益々機嫌が悪くなるだけだ。ベートはどうした?

「あー、アイズ…あのな?」

「ベートもカーリーも嫌い、二人で好きなだけ戦っていれば良い」

 おおう、これは胸にくるな。ベートはレフィーヤの魔法を受けた植物型モンスターの如く固まっているし、私がなんとか宥めなければ。

「ほら、今度一緒に戦ってやるから、な?機嫌を直してくれ」

 何を言ってもそっぽを向くだけだ。誰か助けてくれ。

「ほら、今度一緒にじゃが丸くんを食べに行こう。私の金ではないが奢ってあげるから」

 じゃが丸くんと聞くと少しだけ纏っている風が弱まった…この手を使った私がいうのもなんだが本当にちょろいなこの子。

「お〜いカーリー、一緒にへファイストスファミリアに行くぞ…なんじゃこの状況」

 ガレスが来てくれた。これで流れを変えられるかもしれん。

「アイズ、何があったんじゃ。ま〜たベートが変な事いっとったのか?」

「カーリーがベートと戦ったの、私とは戦ってくれないのに」

 その言葉で察したのかガレスがなんとも言えない顔でこちらを見てくる。

「あー、まあ、そうだな。とりあえずカーリーに用事があるから連れて行くぞ?」

「好きにすれば良い」

「こりゃ重症じゃな」

 ベートは未だに硬直したままだ。まさか本当に氷像になってしまったんじゃなかろうか。

 

 ガレスに連れ出されて廊下を歩く。ベートは置いてきた。自分でなんとかしてもらおう。

「まあお主にも悪気が無いのはわかっておる。たまたま間が悪かっただけじゃろう」

「そうだな、この前のティオネの騒動の後有耶無耶になっていたからな。その時ベートに誘われていたのもあって今回戦ったんだが…」

「アイズに見つかったと、あとでティオナ達に相談しておくと良い。わしから何か言うよりもそっちの方が確実じゃろう」

 それもそうか、とりあえず後で相談するとしよう。

「ところで、武器ができたのか?」

「ああそうじゃ。後は細かな調整だけと言っとった」

 それで一度私に握って貰おうと言うことか。

「楽しみだな、この世界でもトップクラスの武器を扱えるなんてな」

「あまり予算がなかったからまだ上があるだろうがな」

 

 へファイストスファミリアに行く道中にある武具店のショーケース武器を眺める。

「いくつか見たが…どれももう少し耐久性が欲しくなる武器だな」

「お主が求めるのは不壊属性の武器じゃろうな。だが凄まじく高くなるぞ」

 確か自己修復する絶対に壊れない武器だったか。確かに使ってみたいな。

「まあそう遠く無いうちに一回は振れるかも知れんぞ?」

「そうなのか?」

「次の遠征の準備でな、不壊属性を複数用意する案が出ておる。その時にティオナに振らせてもらうと良い」

 おそらく武器の配布を幹部のみに絞るのだろう。その中でも私がいつも振るっている武器に近いのがティオナの武器か?確か諸刃の大剣だったか。

「諸刃はあまり使わないな」

「この機会に触ってみると良いと思うぞ?不壊属性なんて大半の冒険者が触れることもないからな」

「そこまでの物なのか?」

「基本億は行くぞ。素材だけでも高い上に加工できる人間が少なすぎる」

 私が手を出すには遠すぎるな、まだ一銭も稼げていないしな…流石にそろそろ金を稼がなければな…

 

 へファイストスファミリアの工房についた。あちこちから金属を打つ甲高い音が聞こえる。

「おーい、椿!きたぞ!」

「おお!ガレスにカーリーも!良く来たな!ほれ茶でも飲むか?」

 椿はこちらを見るなり棚から湯呑みを出して茶を注ぐ。

「椿、私の武器はどこだ?」

「まぁ待て、先ずはガレス。お前の武器だ」

 そう言いながら奥から斧を取り出す。大きな斧だな。

「おお!相変わらず良い腕じゃな!」

「今回はあまり使わなかったのだろう?少し弄るだけで終わってしまったぞ」

「まあ途中で撤退したからなあ」

 そのまま椿は奥に戻って武器を取ってくる。

「あの後たまたまミミックを見る機会があってな、形はある程度近づけたぞ。ところでカーリー、お前は凄い物を使っていたんだな」

「そういえばへファイストスに預けたんだったな。あれでも試作品と言うか、偶然の産物らしいぞ」

「そうなのか、まあ鍛造した物で無いのは一目で分かった。っと、これだ!」

 椿が取り出したのは両刃の大剣だった。飾り気は一切ない実用性のみを求めた武器だな。

「お前は仕事道具には煩そうだったからな、見た目は気にせず出来るだけ耐久性重視で打ったぞ。もう少し予算があればもっと良いのを打てたのだが…まあ自分で稼いでまた来い!そうしたらまた良いのを打ってやろう!」

 流石はオラリオトップクラスの鍛治師だ。そこらの工房武器とは比べ物にならなさそうだ。

「ほれ、一回握ってくれ」

「ああ…これは良いな、流石はオラリオ最高の鍛治師だな」

「やめろ、照れるではないか。それに手前はまだ神の領域に手も届いておらん、まだまだだ。ほれ、少し調整するから一度貸してくれ」

 剣を渡すと奥に戻って行った。

「どうじゃ、椿は凄いじゃろ」

「ああ、あれなら仕事を任せて良いと信頼できるな」

「儂も武器を何回か壊してしまったが、その度に悔しそうにして次は壊れないのを作るとな…」

「やめろと言っているだろう!恥ずかしいわ!」

 部屋の奥から椿の声が聞こえる。どうやら聞こえていたようだ。

「そんなことを気にするようなもんでも無いじゃろ!」

「自分で言うのと他人同士で話されるのは違うのだ!全く…ほれ、これで調整も終わり、晴れてカーリーの物だ」

 先ほどよりも握り心地が良い。完璧に仕上げてくれたようだ。

「ガレスから聞いた通りレベル4上澄、技術派向けに調整しておいた。これ以上となるとさっき話した通り予算が足りん。これで不足があるなら金を貯めてまた来てくれ」

「いや、しばらくはこれで十分だろう。ダンジョン下層に行く予定もないしな」

「能力的には下層どころか深層でも十分通用しそうじゃが…まだ知識が足らんな」

「常々思っていたのだが…カーリーは何者なのだ?ガレスがいうから腕は疑ってないが、そこまで強い人間がオラリオの外にいるとは思えんぞ」

 これは…馬鹿正直に言っても信じてもらえないだろうし、何かを間違えて信じられたとしても色々と問題がありそうだ。ガレスに助けを求めるべく視線を向ける。

「あ〜、すまん、ロキから箝口令を敷かれておるからなんも言えん。その内なんらかの方法で多少情報が出るかもしれんが…なんとも言えんな」

「そうだったか、それなら良い。仲間から少し面白い噂も聞いているしな」

「噂?ああ、昨日の街での騒動か?」

 ガレスは詳しく知らないようだが昨日ロキに聞いた話のことだろう。

「ああ、なんでもヒリュテ姉妹に比肩し得る赤髪の女が居るというではないか、それも誰もみたことがない無名らしいぞ?」

 椿はそう言いながらにやりとこちらを見る。どこの誰のことなんだろうな。

「昨日のモンスターの脱走事件にロキファミリアが絡んでいたことは聞いたが何やってるんじゃお主」

「仕方ないだろう、巻き込まれたんだから。後でフィンに聞いておくと良い」

 私だって巻き込まれたくて祭りに行ったわけじゃない。完全な被害者だぞ私は。

 

「それじゃあ儂は今から椿と相談がある。ここに居ても何もできんからカーリーは一人で帰れるか?」

「わかった、街を見ながら帰るとしよう」

「また騒動に巻き込まれないようにな!次はどんな噂になるか分からんからな!」

「ああ、今回はありがとう椿」

 椿の工房から退出する。背中の武器は良い感じだな、後で訓練場で振ってみよう。




〜なぜなに!プロムン教室〜
RTA in Japanでロボトミーコーポレーションやってたらしいね!見たけど通常プレイと価値観が少し違うね!面白かったです。
って事で今回は早い、早すぎる。都市の交通機関、W社のワープ列車について!
なんとこの列車、どんなに離れたところでも10秒で着くというどこでもドアもびっくりなスーパー列車なんだ!
富裕層向けの一等客室も完備!しかも10年間無事故!完璧すぎるね!こんな夢のような列車、現実にも欲しいね!

黒い人外伝(ダンまちで言うと本編)書いてるけどいつ出す?

  • 今すぐ出せ!Now!
  • 出す予定の場所(EGO武器使用後)
  • warp列車行き(チラシの裏)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。