そろそろ時間だ、武器を背負いレフィーヤとの待ち合わせ場所に向かう。
「あ!カーリーさん!こっちです!」
レフィーヤの声のする方へと向かう。荷物の山を見るに大きな背嚢といくつかの消耗品の入った袋を用意しているようだ。
「えっと、ここからここまでがカーリーさんの持つ荷物です」
「すまないなレフィーヤ、準備を全部任せてしまって」
「いえ、いいんです。教えるほどの時間もないですし、そもそもカーリーさんにサポーターをやってもらうのも恐れ多いと言うか…戦力的には十分前線にいて貰った方が良いんですけどね」
それはそれ、これはこれだ。私も一回はやってみたかったと言うのもあるが。
「まあ私が好きでやっている様な物だからあまり気にするな」
「気にしますって、私なんてカーリーさんと比べたらまだまだですから」
そこまで謙遜しなくても良いだろう。冒険者としては一日の長があるんだからな。
「じゃあ行きましょうか」
「ああ、そうだな」
レフィーヤの準備も兼ねてリヴェリアと待ち合わせをしている。あまり待たせるのもいけないな。
黄昏の館の玄関から出るとそこには既にリヴェリアが立っていた。少し待たせてしまったかもしれない。
「申し訳ありませんリヴェリアさま!待たせてしまいましたか?」
「大丈夫だ、そんな長時間待っていたわけでもないし、サポーターとして準備をしていたんだろう?」
「そうだな、いろいろ教えてもらった」
何が必要だとか、消耗品はどこで買うだとか、必要なものがファミリアの何処に有るだとかだな。
「うむ、ちゃんと学べたなら問題はない。では私の武器を受け取りに行くぞ」
路地裏の奥、地下にある怪しげな店に入る。王族が入るには少し怪しすぎるぞ。
「レノア、邪魔するぞ」
「ああ、リヴェリアかい…小娘はともかくそっちの嬢ちゃんは何者なんだい?」
「新入りだ、気にするな」
レフィーヤが軽く会釈するのに合わせて私も会釈する。
「魔宝石の交換は終わっているか?」
「不備はないよ、全く、遠征だ何だと言って魔宝石を馬鹿みたいに駄目にするんじゃないよ」
店内の雰囲気はお世辞にも良いとは言えないな。薄暗い部屋の中に生物の瓶詰め。店の奥の大鍋といい怪しさだけなら裏路地に有っても不思議ではないな。
「あれって…魔導書!?」
「うん?ああ、あの本か」
「ああ、気づいたか。その通りだよ」
私から見ると何の変哲もない本だがあれが魔導書らしい。確か魔法を覚えられるんだったか。私の場合は最上級のものを使わなければならないらしいが。
「まさかレノア、お前が作ったのか?」
「いひひっ、まさかぁ。あたしはそんな大それた魔術師じゃあない。魔法大国に知人がいてね、よしみで一冊分けてもらったのさ」
たしか魔導書は最低品質でも凄まじい値段がついたはずだ。それを分けて貰えるとはとても思えないが。
「まあ、そこの嬢ちゃんはともかく、魔法を四つ以上扱っちまうお前達には、無用の長物だろうけどねえ」
私としても魔法は使ってみたかったがスロットすらないこの身では高望みだろうな。
現に今目の前にある魔導書も見間違いでなければ億を優に越えている。
「どうだいリヴェリア、そこの新入りのためにこいつを買わないかい?」
「流石に今は手を出せん。今回の遠征は赤字だったからな」
レノアが目を丸くする。そんなに変なことを言ったのか?
「これは驚いた、想像以上にその新人を気に入っているんだね」
「彼女は相応に優秀なんだ。今のうちに魔法を覚えさせるのも悪くはないかもしれんが、スロットがなくてな」
「そりゃ残念だったね…ん?ロキファミリアでリヴェリアがそこまでの評価を付ける新人ねぇ…ああ、あんたが例の」
どうやら私の事でなにか心当たりがあるらしい。おそらくは怪物祭の件だろう。
「カーリーを知っているのか?」
「いや最近の話題でね、怪物祭の時にヒリュテ姉妹や剣姫と肩を並べた見慣れない冒険者がいるって聞いてね。聞いた特徴も同じだったから判っただけだよ」
「カーリーさんってもうそんなに有名になっているんですね」
「町中で大立ち回りする羽目になったからな、多少は話題にもなるだろう」
それにティオナ達の名前も大きいだろう。なんと言ってもオラリオの上級冒険者だからな。
「これからご贔屓に、と言いたいがあんたがこの店に用事ができることなんて滅多にないだろうから…そうだね、十分稼いで魔法がほしくなったら来な。運が良ければ魔導書を入れられるかもしれないからねぇ」
レノアはそう言いながら顔の皺を深めて笑った。魔法関係で困ったことがあったら頼るのも悪くなさそうだ。
その後はレフィーヤがレノアにからかわれ、リヴェリアが武器の代金を出し店を後にした。
「カーリーさんは予想よりも話題になっているみたいですね」
「そうだな、それほどまでにロキファミリアの一級冒険者の名は重いと言うことだ」
「ただ肩を並べて戦うだけでもここまで有名になってしまうとはな」
「事件の規模も大きかったし、戦ってた相手もティオナ達が苦戦するような相手だったのだろう?だとしたら妥当な評価と言えるだろう」
やはり私はまだ上級冒険者というものを理解できていないかもしれない。如何せん身近にいるので一般人から見た距離感がわからないのだ。
「あとでその辺りの価値観も教えなければいけないかもな」
「その時はよろしく頼む」
他のメンバーとの待ち合わせ場所である中央広場に着くと、そこには既にみんなが揃っていた。
「すまない、待たせたか」
「いや、僕たちも今来たところだよ」
「パパッと迷宮の楽園まで行きましょ。ダンジョン初心者のカーリーがいるとは言え中層までならいつもと変わらないでしょ」
「流石に私たちと同じくらいの力があるしね〜」
随分と高く評価されているが実際そうなのだろう。ミノタウロスを一撃で倒せるレベルは4以上、それに今回はロキファミリアの上位陣が固まって動くとなると…深層まで潜ることになるのか?
「何事もなく探索できれば良いんだがな…」
「何か気掛かりなことでもあるのかい?」
「いや、今のところ大きな騒動ばかりだから何かある気がしてな」
「確かにそうですね、怪物祭も事件がありましたからね」
「流石に初めての探索で大規模な異常事態が発生したら引くわよ」
「そうなったらロキかそういうファミリアにでもお祓いして貰う?なんか変な呪いとか憑いてそうだし」
本当に何か起こったら検討した方がいいかもしれないな。
ダンジョンに潜ると複数体のゴブリンやコボルトが視界に入るがティオナとアイズが根切りにする勢いで殲滅していく
「そう言えばカーリーと初めて会った時はやけに静かだったわね」
「確かにそうだね、僕が倒したモンスターも少なかった上にどれも生まれたばかりと言った感じだったね」
「ミミックってモンスター避けの効果でもあるの?」
「あんなのが向かってきたらモンスターも冒険者も逃げますよ…」
否定はできないな。モンスターも一応生き物の類だし思考能力や危険を感じ取る能力はあるらしいしな。
「深層まで行ったら流石にモンスター避けにはならなそうだな。むしろ寄ってくるかもしれん」
「カーリー、今度ミミック貸して」
「ロキから許可を得たらな」
リヴェリアが顔を顰めているのを見る限り許可は出なさそうだがな。
特に問題もなく17層まで降りてきた。
「ゴライアスいたらカーリーも戦う?」
「私が手を出す暇があるとも思えんな」
「アイズが速攻で仕留めそうね」
レフィーヤとティオネが集めた戦利品をバックパックに集めていく。
「試し切りは下層からでも良いだろう」
「そう?それなら良いか!」
「よく考えたらこの中で一番使い慣れてない武器を持っているんだから真っ先に慣らすべきだと思うんだけどね。カーリーがいいならそれで良いけど」
雑談しながら進むと巨大な白い一枚壁のある広間に出る。たしかあれが嘆きの大壁だったはずだ。
「ゴライアスは居ない様だな」
「ンー、やっぱりリヴィラの冒険者が片付けていたみたいだね」
「一目見てみたかったんだがな、またの機会にするとしよう」
広間にいるミノタウロス達を蹴散らしながら私たちは迷宮の楽園へと歩みを進める。
18層に足を踏み入れると見たこともない様な絶景が広がっていた。
「ここが迷宮の楽園か…確かにこれは楽園と呼ばれるだけのことはあるな」
「うん、そうだね…」
「凄いですよね、何でこんなに綺麗な場所になったんでしょう」
広大な自然と天井を覆い尽くす水晶を眺める。都市では見たこともない風景だ。
「今は昼か」
「確かこの水晶が明滅して擬似的な昼と夜を作り出すんだったな」
「そうです!夜も綺麗なんですよ!」
そちらも見てみたいな、もしこのまま下へ行くのなら帰りに見れると良いのだが。
「ねぇねぇ、どうする?このまま19階層に行っちゃう?」
「街で戦利品を売るわよ、所詮は上層や中層のアイテムだし、下層や深層の戦利品を目一杯詰めるわよ」
リヴィラの街の建物は粗雑な作りだが最低限必要な機能はあるようだ。
「あの看板の数字はなんだ?」
「この街が壊滅した回数ね、モンスターが出ないとはいえ異常事態が発生しない訳じゃないからね」
「随分と逞しいな、三桁を優に越す数壊滅したと言うのにこの規模の街を再興させるとは」
「それだけここの立地は優れているんだよ。どれだけレベルが高くても物資は必要だからね、多少値段を吊り上げても相応の需要はあるんだ」
「出来るだけここを使わないに越したことは無いけど、ケチって死ぬよりはマシでしょ?そういうことよ」
「なるほどな、地上からそこそこ距離もあるし一刻を争う可能性もあるなら多少高かろうが買う者もいるということか」
商魂たくましいことだ。人口も少なくなさそうだしかなり稼げているんだろう。
「それで、荷物を処理したらこのまま下に行くのか?」
「いや、ここで一晩過ごす予定だよ。ここから先は気も抜けないし休憩らしい休憩が取れるとも限らないからね」
今日の内にここの朝と夜も見れそうだ。今から楽しみだな。
「宿はどうするの?またいつもみたいに森の方でキャンプ?」
「ンー、今回くらいは街の宿を使おうか。カーリーの初めてのリヴィラだしね」
「でも団長、一週間も寝泊まりすれば結構な金額になりますよ?」
「ティオネけち臭ーい。いーじゃんたまにはさー」
「けち臭い言うな!あんたはずぼら過ぎんのよ!」
どうやらここの物価は一級冒険者が二の足を踏む程の物のようだ。あまりわがままは言えそうにもないな。
「私に遠慮しなくても良いぞフィン、野営でも構わない」
「それじゃあ三日間はリヴィラで泊まろうか、そこでここのルールや店を巡ろう。残りは野営の練習だね、宿代は全部僕が出すよ。カーリーやアイズ達はお金を貯めなきゃいけないみたいだしね」
「…ごめん、フィン」
私も一文なしで今はリヴェリアのヒモ状態だ。流石に自分の服や買い食いの金くらいは自分で出せるようにせねば。
「…」
「リヴェリア?」
アイズの声でリヴェリアの方を向くと少し眉を顰めていた。これはもしかしたら今の生活について何か言われてしまうかもしれない。
「街の雰囲気が、少々おかしいな」
全く違った、ただの杞憂だったようだ。
「そういえば、いつもより人が少ないような…」
レフィーヤもそう言うのならそうなのだろう。私には全くわからないが。
「えーと…どうする?」
「ひとまず、どこかお店に入ろうか。情報収集も兼ねて街の住人と接触してみよう」
もしかしてまたか、また何か変なことが起きているんじゃないだろうな。
フィンに連れられて人がいる適当な天幕に入る。ここは買取所らしい。
「今は大丈夫かい?」
「ん?おお、『ロキファミリア』じゃないか、客かい?」
店の中には大量の魔石の瓶や、様々なモンスターのドロップアイテムらしき物が置かれている。私は店主に鞄ごと戦利品を渡す。
「街の様子がいつもと違うようだけど、何かあったのかい?」
「あぁ、あんた達、今街に入ったばかりなのか」
女店主は戦利品を鑑定しながらちらりとこちらを見渡すと辟易した様子で切り出した。
「殺しだよ。街の中で、冒険者の死体が出てきたらしい」
何人かの目線が私に集中する。私は後でお祓いに行った方がいいのかもしれない。
〜なぜなに!プロムン教室〜
今回は前回に続いて『五本指』の『人差し指』について!
人差し指の保護を受ける時、必要な規則はたった一つ!それは『指令に絶対服従すること』だけ!
伝令って人が指令を書かれた紙を持ってくるからそれに従って行動するだけで裏路地の悪い人たちから守ってくれるぞ!太っ腹!
指令は本当にいろんなことが書いてあるぞ!ちょっとした散歩だったり宅配だったり、過激なのだとひぐらしよろしく食べ物の中に針を入れたり暗殺とかもあるぞ!みんなも指令ガチャを回そう!
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