赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

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知らない記憶

 ダンジョンからの帰還途中、私を先頭にして十層近く上がってきたところで唐突にティオナが手を叩く。

「そう言えば!EGOって色々な種類があるんだよね?他にはどんな物があったの?壊れなくていい感じの物があったら欲しいな〜!」

「そうねぇ、高レベルで力を中心に鍛えてきた冒険者ってなると生半可な武器は保たないのよね。椿もガレスの武器作りに苦戦してるわ」

 確かティオネの渾名に『壊し屋』なんて異名を付けられていたか。耐久性重視の武器すら潰してきたなんて話もある辺り彼女も武器選びに難儀しているようだ。

「そういう武器を求める前に自前の武器を壊さない技術を身につけた方がいいぞ?いつも同じ武器を使って戦えるとは限らないからな」

「確かにティオナはちょっと力押しが多すぎるかな、今度は技を意識しながら戦ってみたらどうだい?」

「も〜!みんなそう言う事言うんだから!私だってちょっとは考えたよ?でもこう…性に合わないもん!」

 気持ちはわからでもないが。どちらにせよ私の知っているEGOは自前のものと試作品のミミックしか…

「…?」

「どうしたんだいカーリー?」

「あまり無理はするんじゃ無いわよ?」

 ふと、違和感を感じる。私が知っているEGOは先の二つだけなのか?もっと多くの数があったはずだ…そう思えて仕方がない。

「いや、確かに幻想体の数だけEGOはある筈だが…」

「も〜どうしたのさカーリー?考え事〜?」

 数多の死体の頭から作られた槌、音楽記号を模した鎌、金色のガントレット…

「どこで見た?そんな物は私の記憶には…」

「カーリー」

 フィンの強い呼びかけで我に帰る。

「ああ、悪い…少し考え事をしていた」

「君ならここら辺のモンスター相手なら片手間でも倒せるだろうね、でも今は後ろに仲間もいるんだ。警戒は解かないでくれ」

「そうだな、気を付ける」

 未だに強い違和感が胸中を占めるが…今は目の前の敵に集中しよう。

 

「ンー…駄目そうだね」

「何か変なこと聞いちゃったかなぁ?」

「そう言えばティオナがEGOについて聞いてからだったわね、まだ心ここに在らずって感じね」

「きっとカーリーさんにも色々あるんですよ…アレですし」

「アレだね」

「アレよね」

「アレか〜」

「アレ…?」

 

 頭の片隅に燻り続ける疑問を出来るだけ押し殺しながら敵を倒していると、いつの間にか18階層に辿り着いていた。

「カーリー、今日はここで休憩しようか」

「このまま地上に戻らないのか?」

「あ〜、私たちは平気だけど…」

 ティオネの視線の先を見てみると、二人のサポーターが息を切らしてへたり込んでいた。

「…ああ、私はそこまで気が回っていなかったのか…ごめん」

「君が周りに気を配れないほどその『何か』は重大な事なんだろうね」

「そもそも今日はもうちょっと下の階で休憩を取る予定だったんだよ?」

 もう私も駄目なのかもしれない。ここは何も言わずにフィンの指示に従おう。

「慣れないダンジョン探索でどうこうって感じのミスでもないから心配はしないけど、地上ではしばらく休息をとっときなさいよ」

「そうだな、そうしよう」

 いくらなんでもこれ程の失態は許容できない。地上に帰ったら大人しく今回の問題に向き合おう。

 

 

 

 

 

「…で?帰ってきてから三日もウンウン悩んでる訳?」

「ああ…もう全く意味がわからない…」

 記憶に存在しないはずのEGOの情報が幾つか、断片的に脳裏に浮かぶ。ミミックに至っては無いはずの能力の情報すら浮かんでくる始末だ。

「流石に私に聞かれてもねぇ…確かに頼れそうな団長は忙しそうだし、リヴェリアはまだ帰ってこないし…ガレスに聞いてみたら?」

「もう聞いた、酒飲んで忘れろって言われた」

「まあそう言うしか無いでしょうね…ティオナはあれだし、ベートも駄目ね、アイズはいない上にこういうのを聞いてもどうしようもないし…ロキは?」

「色々と調べてくれるらしい、期待するなとは言われたが」

 ロキも最近は私のこと以外でも調べ事をしているらしい。迷惑をかけてばっかりで申し訳ないな。

「う〜ん…そうね、もう一回ダンジョンにでも行ったらどう?18階層辺りでアイズ達を待つとか…いや、流石に無いわね。今の状態で行ったらいつの間にかろくに荷物も持たずに深層に居たなんて事になっててもおかしく無いわ」

「否定できないな…」

「かと言って趣味らしき趣味もないんだっけ?」

「そうだな…あるとしたら鍛錬くらいか?」

 これも趣味とは違うか、元の世界にいた時の習性みたいな物だからな。

「もうレフィーヤとティオナ誘って出かけたら?そうすれば少しは気も紛れるんじゃない?根本的な解決にはならないけどね」

「確かに一回何か別のことをするのもいいな。候補に入れるか」

「…あ、そういえば。武器ってどうしたの?あれ明らかに深層じゃ少し心許ないから一回椿に見せときなさいよ」

「それもそうだな、場合によっては武器の新調も考えるか」

 とりあえず今日は椿に会いに行くか。

 

 へファイストスファミリアの団員に連れられて椿と対面する。思ったよりすんなり会えたな。

「すまん!今手前は凄まじく忙しいのだ!」

「そうだったか、それなら出直そう」

 踵を返して帰ろうとすると服の襟を鷲掴みにされて引き止められる。

「だが流石に手前の作った武器の手入れくらいはするぞ!新しく作るのは…カーリーの満足いくものを作る時間は流石にないからまた次の機会になるが」

「そうか…忙しいのに手間をかけさせて悪い」

「確か深層まで潜ったんだったな…これは下層想定だったから流石に損耗もしているか。丁寧に扱っているみたいだがな!」

「不足は感じなかったけどな、一応これより上の武器にしておきたいとは思う」

 用意できるなら一番いい装備を持っておくに越したことはない。

「それは次の機会になるだろうが…おそらく次は手前も共にダンジョンへと赴くだろうな」

「椿がか?」

 そういえば鍛治師は発展アビリティを取って一人前と呼ばれるんだったか。ダンジョンに潜る経験が皆無ということもないだろう。

「ああ、聞いてないのか?次の遠征にはへファイストスファミリアから何人かの鍛治師が同行するのだ。その中に手前も入っているぞ」

「へえ、そうなんだな。私には関係ない話だが」

「は?」

「え?」

 その遠征に私がついて行く予定は一切ない。フィン達からもそんな話は聞いてないし…

「いやいやいや、流石にカーリーを遠征メンバーに入れないなんてことは無いだろう?基本的に遠征というのは全力を持って挑むものだし…」

「私にもいろいろあるんだ」

 誘われればついて行ってもいいが自分から参加しようとまでは考えていない。何よりも私は実力面はともかくファミリアのメンバーとしては新人も良い所だ。後輩が存在しない程度には新人だぞ?

「…おい、フィンは今ロキファミリアのホームにいるか?」

「最近はその遠征の準備を開始し始めて忙しそうだからな、多分居る筈だぞ」

「そうか…よし、少し待っていてくれ」

「あ、ああ」

 剣呑な雰囲気を漂わせながら席を立つ椿を見送って茶を一口啜る。

 

 数分後、少し綺麗になった椿が部屋に戻ってくる。

「よし、行くぞ!」

「何処にだ?」

「ロキファミリアにだ!」

 薄々勘付いてはいたがやはりか。

「椿…忙しいんじゃなかったのか?」

「カーリー…手前はな、面目上とはいえこのファミリアの団長なのだ。そして次の遠征、へファイストスファミリアも無関係では無い。鍛治師が前線に出張るんだからな。それなのにカーリー程の戦力を出し惜しむと言うのならば流石に口を挟ませてもらうぞ!」

「随分と高い評価だな…わかったよ、別に私も行きたく無いって訳では無いしな。でも基本的に口は挟まないからな?」

「ああ、構わない」

 

 椿を連れてホームに帰還する。すれ違ったロキファミリアの仲間達が椿を見てギョッとしている。そこらに居た人にフィンの居場所を聞いてロキの執務室へと脚を運ぶ。

「頼もう!」

「うわぁ!?なんやねん!?って椿かぁ、どしたん?」

 椿が扉を勢いよく開けて部屋の中に突入する。ロキは椅子から転げ落ちた。

「フィン!話はカーリーから聞いたぞ!どう言うつもりだ!」

「えっと、どの話かな?」

「椿は私が遠征に参加しない事が気に食わないらしい」

「あー、その話か」

「ああ、流石に此方からも団員を同行させるからな。戦力の出し惜しみをするなとは言うつもりはないが、相応の理由を聞かせてもらおうか?」

 最近の私の状態を見てか、ド新人だからかのどちらかだろうな。

「それについてはまだ協議中なんだけどね、今のところ同行させる予定ではあるよ」

「そうなのか?」

「そうだったのか」

「せやなー、遠征用の武器に加えて『例の鞘』が完成したら確定って感じやったんよな」

 確定ということはその『例の鞘』が完成しなくても同行する可能性はあった訳だ。

「なんで教えてくれなかったんだ?」

「最近は調子が悪そうだったからね、リヴェリアが帰ってきてからその点も含めて協議しようとしていたんだけど…確かに、可能性があるってだけでも話しておいた方が良かったかもね」

「ふむ、手前の早合点だったか。それならば文句はない!それにあれが完成すればほぼ確定なんだろう?これは腕が鳴るな!」

「ああ、でも遠征用の武器を優先して作って欲しいな」

「わかっておる!こうしてはいられんな、では手前は失礼する!」

 理由に納得したのか息巻いて走って帰って行ってしまった。納得できたのならそれで良いか。

「で、『例の鞘』って言うのはミミックの鞘のことで良いのか?」

「うん、遠征までに、と言うよりはそもそも作れる保証も無いから言ってなかったけどね」

「ウチがファイたんに頼んだんやで〜、アレさえあれば百人力やからな!」

 確かに下手な武器よりはミミックの方が何倍も強いな。余程のことがなければ壊れない頑丈さに加えてリーチも変化させられる。

「そういう訳だから一応準備はしておいてもらおうかな。調子が戻らなくてもサポーターとして同行してもらう可能性はあるからね」

「わかった、用意しておこう」

 流石にファミリアとして大きな仕事をするなら手を抜けないし、十分な準備をしておこう。




~なぜなに!プロムン教室~
 【いい加減ネタ切れです】

前回の話が2ヶ月くらい前ってマジ?いわゆるスランプっすね。こいつぅ~ハハハ…はぁ。
最近世間ではロボトミーとかルイナが熱いらしいっすね。この調子でもっと二次創作も増えて♡増えろ♡案ずるより産むが易しですよ…

黒い人外伝(ダンまちで言うと本編)書いてるけどいつ出す?

  • 今すぐ出せ!Now!
  • 出す予定の場所(EGO武器使用後)
  • warp列車行き(チラシの裏)
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