赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている   作:ピグリツィア

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問題児との顔合わせ

 さて、何事も無かった一晩を過ごして質素な朝食(ダンジョン内なので仕方ないが)を摂ったら、いよいよアイズ・ヴァレンシュタインとベート・ローガとの対面、だったのだがどうやら少し問題が起きた様だ。

「すまない、レフィーヤがどうしてもと言うのでな、連れてきてしまった。一応通路の奥で待っているが…まだ来れそうにないな」

「そのレフィーヤってのは何者なんだ?」

「リヴェリアの弟子で、アイズを慕っているエルフの子なんだけど、まだ少し未熟でね。ちょっと刺激が強すぎたかな」

「少しすれば落ち着くとは思うが…仕方ない、少し様子を見てくるか」

「とりあえず予定通りベートと会ってもらおうか。リヴェリアはアイズと一緒にレフィーヤについていてあげてくれ」

 多少のトラブルはあったがとりあえず軌道は修正できそうだ。

 

「…あーフィン?こいつが護衛対象だったか?」

 おや、事前に聞いていた情報とリアクションが違うな。

「そうだけど何か疑問でもあったかな?」

「いや、俺より雑魚とは言えこいつに護衛なんて必要ねぇだろ。また下層に潜るわけでもねえのによ。まぁそっちの…なんだ?モンスター擬きは気になるが」

「君からその言葉が聞けるのはちょっと意外だね。てっきり会ってすぐに『雑魚は大人しく俺の後ろに隠れとけ』くらい言うと思ったんだけど」

「そりゃ俺もそいつも馬鹿にしすぎだ。確かにそいつは俺より弱えがステータス差なんざこいつが恩恵を手に入れて少しダンジョンに潜れば後は技量でどうとでもなる差だ。そいつは一目見てわかる程度には何度も修羅場抜けてんだろ」

 予想以上に私のことを評価してくれた結果の様だ。これはかなり楽に話が進みそうだ

「…君が良い意味で僕の予想を裏切ってくれたことがすごい嬉しいよ。それはそれとして地上に上がった時にこの武器に対して誰がどう言う反応をするか予想できないから万全を期すために幹部で固めようと思っているんだ。それならどこも迂闊に手を出そうとしないだろう?」

「はぁ、まあ言いたいことはわかる。大事にしたくねえんだろ?こいつの目を見りゃ雑魚が絡んできた時にどうなるか何となくわかる。おい、てめぇ。多少は出来るんだろうが俺が上、お前が下だ。雑魚は大人しく隠れて余計な真似はすんなよ。問題を起こした時にケツを拭くのは俺たちになるんだからな」

「ああ、問題が起きない事が一番だがフィンも言う様に何が起こるかは分からないからな。何かあった時はお前たちに任せるさ」

 答え切る前に背中を向けて立ち去ってしまった。それでも予想よりはいい反応だったな。

「まさかベートがあんな反応を見せるなんて、つくづくイレギュラーなんだね、君は」

「確かに、話に聞いていた狂犬という様な反応では無かったな」

 

「さて、次はアイズか。あちらでの反応はそこまで大きく無かったが、どうなるかな」

「まぁ出たとこ勝負だろ。成るように成るさ」

 奥から金髪の少女が向かってくる。敵意は…微かにあるがそれよりも困惑の方が大きいのか?

「フィン、それは?」

「彼女の武器だ。これと彼女を護送するのが今回の目的だよ」

「…モンスター?違う…よく分からない…」

 頭を抱えて悩んでいるが視線はミミックから外さない。裏路地で腐るほど見た憎悪の視線…というには困惑の色が強すぎるか。

「彼女曰く、幻想体から抽出したEGOというものらしい。つまり僕達の常識で測れないものだ。コレはそういうものとして受け止めるしかないんだよ」

「そういうもの…わかった、とりあえずそういうことにしておく。それで彼女は?」

 ようやく視線をミミックからこちらに移してくれたな。さっきまではミミックのことで頭がいっぱいと言った感じだったしな。

「彼女はカーリー。異世界から事故でここに来た…いわゆる便利屋だね。専門は戦闘らしい」

「私はアイズ。よろしく」

「ああ、よろしく頼む」

 …終わりのようだ。

「フィン、レフィーヤはどうするの?」

「そうだね、これも経験だ。問題なさそうだったらこっちに連れてきてくれ」

「わかった」

 そう言ってさっさと戻ってしまった。なんというか不思議な子だったな。

 

「さすがのアイズでもコレについてはかなり悩んでいた様だね。それも無理はないけどね」

「もともとこの世界に存在しないものだからな。さっきフィンが言った様にコレはコレとして受け止めるしかないんだろう」

「そうだね、今後もうちょっと詳しい説明を聞いたりこちらで独自に調べてどういうものか見定めないとね。さて、次は多分レフィーヤがくると思うけれど、できるだけ優しく接してあげてくれないかな?ミミックに威圧されているだろうから」

「了解した、そこまで得意ではないが努力はする」

 リヴェリアと…アイズにも挟まれている女の子がレフィーヤか。ガチガチに緊張しているな、顔も真っ白だ。

「大丈夫か?無理はするなよ」

「…ハッはい、私は、レフィーヤです。よろしくお願いします」

「カーリーだ。しばらくロキファミリアに世話になる予定だ」

 極度の緊張で体が小刻みに震えている。視線はあちこちに彷徨っているが絶対にミミックを見ようとはしない。

「レフィーヤ、大丈夫?」

 アイズが声をかけるがもう返事をする余裕もないようだ。

「すまないカーリー、そろそろ限界だ。戻るぞレフィーヤ」

「ああ、あとでよろしく言っておいてくれ」

 リヴェリアに促されてぎこちない動きで来た道を引き返していく。少し威圧感があったかもしれないな。反省せねば。

 

「レフィーヤが来たのは予想外だったけど、それ以上にレフィーヤの様子がおかしかったな。さすがにあそこまでの恐慌状態になるとは思わなかったんだけどな」

「ふむ…おそらく相性が悪かったんだろう。幻想体の管理では強さ以上に相性が大事だったからな」

「そういうものなのかい?でも急ぎはしないけれどゆくゆくはこれに耐えられる精神力をつけてもらいたいな。魔法には相応の集中力が必要になるから」

「他所の教育方針にうるさく口出しする気はないがあまり無茶はさせないでやってくれよ?こいつは一部分とは言え最高クラスの危険度を持った幻想体なんだからな」

「でもある程度の安全が確保された上でこの精神的負荷を受けられる状況っていうのは貴重だからね。無理をさせない程度には触れさせていこうとは思っているよ」

 確かに経験としては破格のものだろう。直接触らなければ身体的被害は出ないと言い切れるからな。

「遅ればせながら迷惑をかけちゃったね。レフィーヤを気遣ってくれてありがとう」

「いや、うまく気遣えていた自信はないな。威圧することは日常的にやっていたから自信はあるんだが…」

「十分だよ、自然体で話してあげられただけで十分だ。後はみんなに任せておけばすぐに立ち直れるだろう」

 

「さて、当初の予想よりかなりあっさりと終わった顔合わせだけど、何か質問とか意見があったりするかな?」

「レフィーヤは本当に大丈夫なのか?あんな状態になってしまっていたが…」

「心配しなくて良い、流石にあれで心が折れるほどじゃないよ。リヴェリアの弟子で一級冒険者候補だからね」

 それなら良いのだが。もし私の武器のせいで今後の生活に支障が出たら流石に寝覚が悪い。

「それじゃあ後は明日の予定でも詰めるか?」

「そうだね、明日はかなり大規模に動く、と言っても人数はそこまで多くはない。ガネーシャファミリアの冒険者とダンジョンの一層から二層に入るところで合流、その後はダンジョン入り口まで上がってロキに会ったらそのままロキファミリアまで移動だ。でもちょっと予定が変わるかもね」

「どうしてだ?」

「ミミックの影響が予想以上に大きかったからかな。レフィーヤの反応を見る限りある一定の実力を持っていないと異様に恐れるようになってしまうようだから…ガネーシャ側の人員も絞られるし、もしかしたらまたダンジョンに蜻蛉返りなんてこともあり得るね」

 私としては良い加減この風景にも飽きてきたから地上に出たいのだが…ままならんな。

「まぁそこまで行ったら君の事情も兼ねて特例で神の力で抑えるなんてことにもなるかもしれないけどね。ただこれに関してはほぼ期待できないかな」

「とりあえずもし外に出られなかったらどうするんだ?一度戻るのは良いとしてもその先どうこう出来るようなものなのか?」

「成るように成る、しかないかな。でもそうなったら僕達がローテーションでミミックを見張ってとりあえず君だけでもロキと会ってもらうことになるかな」

「まさかこの武器のせいでここまで面倒な事になるとは…それじゃあ次はそのロキとやらについて詳しく教えてくれ」

「そうだね、ロキはイタズラが大好きな神で思慮深い、トリックスターと呼ばれている神だ」

 随分と癖が強そうな神だな。私としてはあまり得意ではないタイプだ。

「確かに多少性格に難があるけど、大半の神は似たり寄ったりからね。とりあえずロキには慣れてくれるとありがたい」

「人外というのはどいつもこいつも…本当に碌な奴がいないんだな」

 幻想体よりはマトモだろうが…神は好奇心が強いという性質を踏まえれば面倒ごとが向こうからやってくるであろうことは想像に難くない。

「大丈夫だ、少なくともしばらくはロキファミリアが後ろ盾となるからね、細かいトラブルは避けられるはずだよ」

「そうであって欲しいんだがな」

「とりあえずはこんなところかな?他に伝えておくことはないから…そちらの世界の話でも聞かせてもらおうかな、昨日は3人共かなりひどい話を聞いたそうだからね」

「別に良いが、面白い話は少ないぞ」

「君の世界の倫理観がどうしても気になってね、ガレスにも警戒するように言われたから今のうちに聞いておきたいんだ」

 どうやら三首領殿は私のことをそういう目で見ているようだ。無理もないな。

「わかった、では満足いくまで裏路地の話をしてやろう」

 

 過去の裏切りや挫折の話を嫌と言っても聞かせ続けてやるからな。別に怒ってなんかいないぞ。




〜なぜなに!プロムン教室〜
今回はやけに治安の悪い裏路地の中でもヤバい、裏路地の夜について!
この裏路地の夜というのは特定の時間のことを指すんだ!3時13分からの80分間はあらゆる治安維持活動どころか法律そのものが機能しなくなり人を食べる『掃除屋』が蔓延るヤバい時間帯だぞ!
この掃除屋を利用すれば大っ嫌いなあいつを酔わせるなり眠らせるなりした後に路地裏に置いておけばあら不思議!跡形もなく消えているではありませんか!オキシクリーンもびっくり!
別に生きてる人間しか食べないわけじゃないから自分で始末した後のお片付けにも使えるぞ!
掃除屋を蹴散らせるくらい強くなれば何をやっても罪にならないから好き勝手も出来る夢の時間になるぞ!真の自由だね!
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