いずれ神話へと至る物語 〜落ちこぼれだった俺が幼馴染を助けるために相棒の妖魔と一緒に神殺しを決意する〜   作:くーちゃんし

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 先に仕掛けたのは、向河原だった。

 

 「お前なんか死んじゃェぇぇ!!」

 

 向河原は奇声を発しながら、俺に向かって札を五枚纏めて投げると札は影の槍へと変化して、五本の影の槍が俺を取り囲むように襲い掛かってきた。

 

 「ふッ」

 

 俺を後ろに飛びながら札を元いた位置に数枚投げる。

 すると札が地面に触れた瞬間、植物の蔓が幾重にも重なり、植物の壁となった。

 

 影の槍は植物の壁にぶつかると一瞬の拮抗ののち、崩れるように溶けて消えた。

 

 「な、なんでお前なんかが僕の神術を防げるんだよ!?」

 

 向河原はまさかの結果に、七三分けの髪を振り乱し、脂汗を周囲に飛ばす。

 

 「汚ねえな、ったく。まあいいや、次は俺の番ってことでいいよな?」

 

 「うるさい、うるさい!!」

 

 向河原は、幼子のように地団駄を踏み発狂していたが、何やら思いついたのか突然地団駄を辞め、ニヤリと笑った。

 

 「ふふふ、いいことを思い付いたぞ。この技はお前如きに使うのは勿体ないが特別に見せてやる!」

 

 そう言うと向河原は、自身の影へ札を投げた。

 すると向河原は、影の中へ吸い込まれるように沈んでいってしまった。

 

 「っち、面倒だな」

 

 どこから出てくる分からない向河原に対して、俺は辺りを警戒する。

 

 すると、突然俺の目の前の石ころの影から、影の槍が生えてきた。

 俺は咄嗟に、影の槍目掛けて札を投げて神術を発動させ、その勢いを殺す。

 

 「どうだ凄いだろ、僕の神術は! どんなに小さくても影さえあれば何処からでも攻撃できるんだ!」

 

 何処からともなく向河原の声が聞こえてきたが、その発生源を見つけることが出来ない。

 

 「この技は幸正様にすら破られたことがないんだ。天草家の落ちこぼれ如きじゃ破ることなんてできないだろ!」

 

 確かにこのままでは向河原を倒すことは出来ないため、なんとか向河原を地上に引き出せないかと話しかける。

 

 「いつまでこうしているつもりだ。こんなんじゃ、いつまで経っても試合は終わらないぞ」

 

 「心配するな。すぐに終わらせてやる!」

 

 それっきり向河原は話すのを辞め、俺の足元や背後から影の槍を生やし、攻撃を仕掛けてくる。

 

 「おい!」

 

 話し掛けても何の返事もないため、業を煮やしていると、俺はふとある作戦を思い付いた。

 それから俺は、影の槍を迎撃するふりをしながら迎撃用の札とは別の札を紛れ込ませ、試合場の四隅に札を設置した。

 

 「ぐわっ!」

 

 暫くして、俺はわざと地面からの影の槍の攻撃を受け、前に倒れ込んだ。

 

 すると俺の影から向河原が勢いよく飛び出し、影の槍で攻撃を仕掛けてきた。

 

 「ふひゃひゃひゃ、これで終わりだ!」

 

 しかし、向河原の攻撃が俺に当たることはなかった。

 何故なら、俺は向河原が地上に姿を現した瞬間、試合場の四隅に設置した札を使い、神術を発動させたのだ。

 その結果、向河原は影の槍もろとも植物の蔓により雁字搦めにされ、身動きが取れなくなっていた。

 

 「くそッ、いつの間に!?」

 

 「お前が影から攻撃している間にちょっとづつな。それより向河原。お前、伊吹に対して何か言うことがあるんじゃないか?」

 

 「そ、そんなものはない! さっさと離せ、試合はもう終わりだろ!」

 

 もしここで、向河原が伊吹に対して謝れば今までのことは許してやるつもりだったが、やはりそれは無理な相談だったらしい。

 

 「そうか」

 

 俺はゆっくり向河原に近づき、向河原の目の前で止まった。

 

 「な、なんだよ。僕は悪くないだろ!? だいたい、お前の従者が調子に乗って――」

 

 「もう黙れよ」

  

 俺は、御託ばかりを並べる向河原の頬を、勢いよく思いっきり殴った。

 

 「ぶへあっ!!」

 

 向河原は謎の言葉を発し、気絶してしまった。

 すると、試合を横から見ていた炎人形の審判が向河原の状態を確認しにきたかと思うと、向河原が気絶しているのを見て両手を頭上で交差させ、試合は終わりを迎えた。

 

 「今日はこのぐらいで許してやるが、今度はしっかりと伊吹に謝って貰うからな」

 

 俺は神術を解除し、気絶している向河原に声を掛けていると、炎人形が向河原を背負い何処かへ連れて行ってしまった。

 

 「あんなこともできるのか。凄いな」

 

 一人取り残された俺は、橘先生の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 橘先生のところに既に何人かの生徒が集まっており、そこには竜彦の姿もあった。

 

 「お、透も勝ったか。相手は誰だったんだ?」

 

 「俺の相手は、向河原だったぞ」

 

 「あー、あいつか。でも向河原は、あんななりしてっけどかなり強力な神術使えるしそれに勝ったってことは、あの話は嘘じゃなかったみたいだな」

 

 「なんだ、疑ってたのか?」

 

 「疑ってはないけどよー、改めて本当だったんだなって実感したんだよ」

 

 竜彦は首を上下させ、うんうんと納得の表情を見せる。

 そんなことをしていると橘先生が話し始めた。

 

 「全員試合は終わったかな? それじゃー、勝った人はこの表に丸印つけて次の対戦相手と戦ってね。あ、試合場には、炎人形が案内してくれるから炎人形について行ってね〜」

 

 橘先生はそう言うと、トーナメント表を勝った生徒一人一人に書かせて回った。

 

 俺の番が回ってくると、トーナメント表の自分の名前が書かれている場所に丸印をつけ、炎人形に案内されるがままに、次の試合場へと向かった。

 

 

 

 

 

 そうして次の試合が行われたが、夜光の妖力を自由に使えるお陰で、これといった苦戦もなく順調に試合を勝ち進んでいき、俺は準決勝に進出を果たした。

 

 「よ、よろしくお願いします」

 

 「ああ、よろしくな」

 

 相手は、毒の神術を操る七条菜摘だった。

 七条は、気弱でいつも下ばかり見ていて一見弱そうに見えるが、実際は毒という強力な神術を操り、また、神術の扱いに長けた天才だ。

 

 こいつは、いくら夜光の妖力が使えるからといって、舐めてかかっていい相手ではない。

 

 「試合、始め〜」

 

 そう俺が警戒していると、橘先生の気が抜ける合図とともに炎人形が手を振り下ろし、試合が開始された。

 

 

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