いずれ神話へと至る物語 〜落ちこぼれだった俺が幼馴染を助けるために相棒の妖魔と一緒に神殺しを決意する〜   作:くーちゃんし

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タイトル変更してみました。


帰宅

 日は完全に沈み、辺りはすっかり夜の帳に包まれていた。

 そんな中、俺と夜光はやっとのことで魔の大森林を抜け出し、自宅に辿り着いた。

 

 「ここがお主の家か?」

 

 「ああ」

 

 「思っておったよりいい家に住んでおるの」

 

 「ははは、これでも貴族の息子だからな」

 

 「きぞく?とはなんじゃ?」

 

 「まあ簡単に言うと多くの土地や人間を従えている人間、のことかな」

 

 俺の説明で、貴族というものをなんとなく理解した夜光は、なるほどのうと頷く。

 

 「貴族とやらの意味は分かったが、お主ほど弱ければすぐに反乱を起こされるのではないか?」

 

 「確かに俺は弱いけど、俺はあくまで例外で俺の親父はかなり強いぞ」

 

 「ほう? それは少し興味があるのう」

 

 親父が強いと聞き舌舐めずりしている夜光に対して、慌てて注意する。

 

 「あ、言っとくけど俺の家には親父は住んでいないからな。あと、仮に親父やそれ以外の強いやつに会っても喧嘩を売るような真似はしないでくれよ。お前の正体がバレたら面倒なことになるのは確実なんだから」

 

 「うーむ、仕方ないのう」

 

 少々バトルジャンキーのきらいがあるらしい夜光は、残念そうにしているが俺の言いつけは守ってくれそうで一安心する。

 

 「まあ、この話はここらでお終いにして、早く家に入ろうぜ。お前も腹が減っただろ?」

 

 「む! そうじゃな。今日はたらふくご馳走様が食べられるという話じゃったな!」

 

 ご馳走様を想像したのか、夜光はだらしなく涎を垂らし尻尾をこれでもかと降る。

 

 「あらかじめ言っておくが、周りのやつには、お前は妖魔の子供で俺と従魔契約したって設定で説明するから、俺に用がある時は脳内に直接話しかけてくれ」

 

 「うむ、分かっておる!」

 

 本当のことを周りに話せば、香月を救うどころか俺の方が先に殺さねかねない。

 しかし、これは夜光にとっては面白くない設定であるため、少しは反発されるかもと考えていたが、今はご馳走様のことしか頭にないようで全く反発されることはなかった。

 

 「分かってくれたならよかった。じゃあ入るぞ」

 

 そう言うと俺は玄関の戸を開いた。

 

 

 「ただいま〜」

 

 返事は返ってこない。

 

 「あれ、おかしいな。あいつら出掛けてるのか?」

 

 返事がないことに疑問を持っていると、どたどたと床を蹴る音が聞こえ、曲がり角から真琴と伊吹が安堵の表情でこちらに駆け寄ってきた。

 

 「なんだいたのか。返事がないからてっきり――」

 

 「馬鹿!」

 

 真琴は、俺の胸に飛び込み顔を埋めた。

 それを見て、こんなに心配をかけて申し訳ないという気持ちと、こんなに心配してくれて嬉しいという全く別の二つの感情が体中を駆け巡る。

 

 「遅くなって悪かった。ちょっと森で大変な目にあってな」

 

 「無事で……よかった」

 

 それだけ言うと真琴はそのまま顔を胸に埋めていたが、暫くすると落ち着いたのか俺から離れ、涙を拭うといつも通りの無表情に戻ってしまった。

 

 なかなか見られない真琴の珍しい姿が、もう見られなくなったことを少し残念に思っていると、これまで一言も発さなかった伊吹が口を開いた。

 

 「これ以上帰ってこなかったら、旦那様にも捜索を頼みに行くところだったぞ」

 

 「うげ、それは危機一髪だな。間に合ってよかった」

 

 「いつまでも旦那様に反発してないで、早く仲直りした方がいい。誰がいついなくなるかなんて分からないんだから」

 

 「そう……だな」

 

 俺の母親とこいつらの両親は、すでにこの世にはいない。

 真琴は、もっと両親とたくさん話しておけばよかったという後悔から、俺にこういうことを言ってくれてるのだろう。

 

 香月の件もあるし、一度親子水入らずで話し合った方がいいかもな、などと考えていると、またもや伊吹が口を開いた。

 

 「なあ、最初から気にはなっていたんだが、その子犬はどうしたんだ?」

 

 「子犬? 何この子。とってもかわいい」

 

 真琴は、伊吹の言葉で初めて夜光に気がついたらしく、一瞬驚いたものの、直ぐに夜光を撫で始めた。

 

 「ああ、こいつは森でたまたま出会ってさ。色々あって従魔契約を結んだんだ」

 

 「ほう、そいつは強いのか?」

 

 「強いかどうかなんてどうでもいい。そんなことより、これで毎日モフモフできる」

 

 (ぬ、ぬおー、何をする小娘が! 透よ、早う助けるのじゃ!)

 

 撫でられている夜光が、脳内で悲痛な叫びを上げ助けを求めてくる。

 

 「こいつはこう見えてかなり強いぞ。あとモフモフはほどほどにしてやってくれ」

 

 そう言うと俺は、真琴の手から夜光を救出した。

 

 「ああ〜」

 

 真琴が夜光を取り上げられ、恨めしそうな顔でこちらを見てくる。

 

 (うう、なんと恐ろしき娘じゃ。このわしに対してあのような扱いをするとわ)

 

 (おい大丈夫か?)

 

 (大丈夫じゃないわ! 全く)

 

 真琴から解放され一息ついた夜光は、毛繕いしながら文句を垂れる。

 

 (ははは、まあ気に入られてよかったじゃないか。家の台所を仕切っているのは、真琴だからな。真琴に気に入られるとその分、食い物を多く貰えるかもしれないぞ)

 

 (なぬ?! そ、それならば少しぐらいは触らせてやってもよいかもしれんな)

 

 その事実を知った夜光は、現金なことに直ぐに意見を変えた。

 

 「お前たち、そんなに長時間見つめ合って。従魔契約したばかりの割には、やけに仲が良いな」

 

 「ずるい」

 

 あまりに長いこと夜光と脳内で会話していたせいで、伊吹から少し怪訝な目で見られてしまった。

 なお、真琴はただ羨ましいと思っているだけのようだ。

 

 「あ、ああ。こいつとは出会った時からなんていうかその、あー、あれだ。波長が合うのを感じたんだよな」

 

 「そういうものか」

 

 「そういうもんだ。あ、それより俺今、めちゃくちゃ腹空いてんだよね。ご飯ってまだあったりする?」

 

 「ついさっきまで、透のこと探してたから私たちもまだ、ご飯は食べてない」

 

 「それは悪かったな。それじゃあ、久しぶりにみんなでご飯作ろうぜ」

 

 「うん、いいよ」

 

 「ああ」

 

 (わしの分もしっかり作るのじゃぞ)

 

 (分かってるって)

 

 こうして俺たちは、三人と一匹で料理することとなった。

 

 

 

 

 

 (うまい! なんじゃこの料理は!?)

 

 (ははは、そうだろ? 真琴の作った飯は世界一なんだ)

 

 夜光は、真琴が作った料理をうまいうまいと言いながら、一心不乱に食べる。

 それを横目で見ながら、俺も真琴の手料理を食べる。

 

 

 現在、なぜ自分たちで作った料理ではなく、真琴が作った料理を食べているかというと答えは単純で、俺と伊吹があまりに不器用で料理するのに邪魔だと、真琴に台所から追放されてしまったからだ。

 

 「いや〜、やっぱり料理は真琴が作ったものに限るな」

 

 「そんなことない」

 

 「本当だって。なあ伊吹?」

 

 「ああ」

 

 「ありがと」

 

 俺と伊吹の褒め言葉に、真琴は表情こそ動かさなかったが、耳をほんのり赤め、心なしか嬉しそうに感謝の言葉を述べた。

 

 こうして俺たちは、真琴の手料理に舌鼓を打ち、満腹になるまで食べた。

 

 「ふう、腹一杯だな」

 

 (うむ、満足じゃ)

 

 「透、まだ聞いてなかったが、森で何があったんだ?」

 

 食事を終え、ひと休憩していると息吹が真剣な表情で聞いてきた。

 

 「ああ、実はな。いつも通り人里近くの森に入ってすぐのところで妖魔退治をしようと思っていたんだが、今日は何故か小鬼一匹すら見つからなくてな」

 

 「なに? あの子鬼がか?」

 

 「ああ、だから何かおかしなと思っていた時に、熊の妖魔に出くわしたんだ」

 

 「なんだと!?」

 

 「大丈夫だったの!?」

 

 伊吹と真琴は、俺の予想外の言葉に驚き、椅子から立ち上がった。

 

 「大丈夫、大丈夫。最初は殺されそうになっていたんだが、途中でこの子犬、夜光に出会って助けてもらったんだ」

 

 自分の名前が聞こえ、夜光は、誇らしげに胸を張った。

 

 「この子に?」

 

 とても強そうには見えない夜光の姿を、伊吹と真琴は不審げに見つめる。

 

 (なんじゃその疑いの眼差しは!)

 

 自身の強さを疑う二人に対し、夜光は不満げに唸る。

 

 「こいつ、こう見えてめっちゃ強いって言ったろ? 俺とこいつが手を組んで、なんとか熊の妖魔を倒すことに成功したんだ」

 

 (わしは強いんじゃぞ!)

 

 「それは凄いな」

 

 「ほんとに?」

 

 「ああ、本当だって。実は夜光と契約した影響か神力量が増えてな。今なら幸正のやつも勝てそうだぜ」

 

 嘘の中に真実も混ぜながら話す。

 

 「なら、もう透が馬鹿にされることもなくなる?」

 

 「勿論だ」

 

 「そう、よかった」

 

 真琴は、安心したような顔で椅子に座った。

 

 俺が弱いばかりに、こいつらには辛い思いも沢山させてしまった。

 だが、もう二度とそんな思いはさせない。

 俺の無事と強くなったことを心から喜んでくれる二人を見て、そう心に誓った。

 

 

 「この話はここら辺で終わって、もう寝ようぜ。明日は夏休み前最後の学校だからな」

 

 「うん」

 

 「そうだな」

 

 「じゃあ二人とも、おやすみ」

 

 「ああ、おやすみ」

 

 伊吹が挨拶を返して寝室へ向かったの見て、俺も夜光を抱え寝室に連れて行こうとすると、後ろから突然、真琴に手首を掴まれた。

 

 「ちょっと待って」

 

 「ん? どうしたんだ?」

 

 「その子は私と一緒に寝る」

 

 後ろを振り返ると、真琴が獲物を狙うような目で、夜光を見つめていた。

 それを見て、俺は大人しく夜光を真琴に手渡した。

 

 「真琴が一緒に寝たいなら仕方ないな」

 

 (と、透よ!? お主、わしを売るのか!?)

 

 俺が自身を真琴にあっさり渡したことに対して、夜光は驚きの声を上げる。

 

 (いやだって、真琴はこうなったら中々折れないし、さっきも言ったろ? 真琴に気に入られれば美味しい思いができるって)

 

 (む、むう。そうかのう?)

 

 (そう、そう)

 

 「じゃ、おやすみ〜」

 

 「おやすみ」

 

 適当に夜光を言いくるめると、俺は颯爽と一人寝室へ向かい、布団に入ると直ぐに深い眠りについた。

 

 その夜、夜光の助けを求めるような声が聞こえたような気もするが、恐らく気のせいだろう。

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