優曇華と彼岸花   作:桃玉

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<Fuki side>

 

珍しくDA本部に千束たちが来ると司令からの連絡。

アイツのことだ、こんな早い時期にライセンスの更新じゃあるまい。

 

…………まさか!

先生と一緒に来ているんじゃないか!?

 

そう思ってドキドキしていた私の感情を返せ!

 

 

「オイ、何しに来た」

「どしたフキ、カリカリしてんねぇ。聞いてない? リコリス襲撃事件の犯人の似顔絵確認しに来たの……しっかし似てないわぁ。……よし、私が描いちょるわい! 二人もやるよね?」

「えっ? あ、お、お~……?」

「似てないのでしょうがないですね……」

「……勝手にしろ」

 

 

先生は不在で期待外れ、ただ千束一行(うるせーやつら)が来ただけじゃねぇか……

ただでさえ先生と会えずに機嫌が悪いのに喧しい奴らめ……!

「だったら最初から自分らで描けや!」って叫び散らしてェ……

 

 

「で~きたぁ!」

「できました」

「……とりあえず印象に残ってるところを抽出してみたけど」

 

 

そう言って三人が提示したモノは……

千束マンガ絵、たきな小学生、鈴仙ブロッコリー……

 

似てる似てないの次元じゃない。

そもそも画力とリアリティの問題だった。

千束は「ちょ、似てないってぇw、鈴仙のは似てるけどぉブロッコリーってw」と腹を抱えて吹きだしている。

 

 

「漫画と野菜じゃないですか!? もっと真面目に……」

「いや、もう真島の印象ってブロッコリーってことしか頭になくて」

「しゃーないしゃーない。あのときぶち切れいせんだったから覚えてないはずだよ~」

「全然似てねぇじゃねぇかっっ!!」

「だってAIの似てないし……」

「そう言うからやらせたんだろーが……お前らが描いたやつだって全部違うんだろぉ? やる気あんのかぁ~? ああん?」

「いや、ホント、すんません……」

「ちょっとぉ~、うちのかわいい妹分の鈴仙萎縮してんだろ! だったらテメェが描けやコラァ!」

「お前らしか真島見てないんだから描けるわけないだろ!?」

「……あ、そうか」

 

 

マジで、コイツ……考えてから物言えよ!

おかげで余計なカロリー消費しただろうが……

 

はぁ、先生の店で先生お手製のスイーツを食べられたらなぁ……

でも先生の前で食べるの緊張しまくるし、リコリコに顔出す機会もねぇしなぁ……

 

……オイ鈴仙。

何こっち見てニコニコしてんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Reisen side>

 

ほとんど真島さんとやらの顔の記憶がないのに似顔絵も何もないよ……

そんな似顔絵大会が終了し、一つを除いていつも通りお店の営業に勤しんでいた。

 

 

「あの絵、店に飾っておくんですね……」

「黒歴史が……恥ずかしっ!」

「まあまあいいじゃないの!」

「一番似てない人もこう言ってますし別に恥ずかしがることないですよ」

「聞き捨てならないぞぉたきなぁ! 私の方が似てるしぃ~」

「あんたたちぃ働きなさぁい……!」

「おっすー」

 

 

ミズキさんのうめき声に軽く返事する千束。

そう、今日はいつもよりちょっぴり来客が多い。

おかげでミズキが嬉しい悲鳴をあげているわけなんだけど流石に体力なさ過ぎて……

 

……いや、まあ私も人のことは言えないんだけど、ミズキの体力の無さには呆れを通り越して笑っちゃうよね。

三十路になったら体力なくなるなのかぁ……

 

 

「ちょっと、今失礼なこと思わなかったでしょうね?」

「い、いいえ、何も? 別に体力ないなぁ何て思ってただけですよ?」

「こんのガキンチョ……めっちゃくちゃ失礼なこと考えてんじゃねぇ、かっ!」

「イテッ」

 

 

軽くて痛くない拳骨が頭にコツンと当たって何となく頭をさする。

しょうがないミズキさんのためにもそろそろ仕事に戻ろっかと休憩を終え、給仕服に着替え始める。

 

着替え終わったので、賑やかで楽しい店内で仕事をしようと座敷に向かう。

座敷ではボードゲームに勤しむクルミと常連さんがいたのでいつでも注文を取れるように……

と言い訳をしつつ飛び込み参加しよ!

 

 

「あとちょっと……あとちょっとで終わるから、締め切りまでには間に合うからぁ!」

「漫画家、前も同じこと言ってなかったか?」

「ニヒヒ、絶対終わらないよアレは」

「なぁにゲームしてんの! 休憩終わった連中は早く私と変わりなさいよぉ……」

「たきな、ボードゲームの準備し……」

「私は結構です」

「前ボロボロだったから……」

「関係ないです。日本語学校の……」

「逃げたぁ!」

「逃げてないです!」

 

 

こんな楽しい雰囲気なのに、ホントどうしてこんなハズい似顔絵飾っちゃったかなぁ。

さっさと事件解決してあの絵外してほしいなぁ……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

うーん…… うーん……

こんな風に昨日のお昼頃から眉を顰めて唸っていて五月蠅い千束。

トイレに入っているときでも、接客中でも、ずっと千束の悩ましげな声が耳から脳みそに入ってきて仕事に集中できない。

仕事が忙しいのに私たちの仕事効率が低下していたせいでミズキのうれしい悲鳴(笑)が大きかった。

 

 

時間はどんどん進みいよいよ日が暮れた。

お客さんが全員帰宅した店内で晩酌を始める労働者。

 

 

「ぷっはー! 仕事終わりはコレに限るわ~!」

「家に帰ってからやれよ……」

 

 

クルミの正論に耳を貸さないでもう一杯、もう一杯と酒カスができあがっていく。

いつもなら千束もミズキに正論を飛ばしたりしてじゃれるのに今日は考える像のポーズで一生唸っている。

 

 

「ねぇ千束? 今日どうしたの」

「本当ですよ。一体どうしたって言うんです? 今日、なんか変ですよ?」

「コイツは毎日変だろ……」

「スゥーー、……先生は」

「おっさんはさっきかいだしに行ったわよぉ。なぁにもうおっさんがこいちぃーのかぁちさとちゃ~ん?」

「酔っ払いは口挟まないの! …………それで? 先生がどうしたの?」

 

 

「皆さん……リコリコ閉店の危機です」

「「「「えっ……?」」」」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「店内オールクリアです」

「よしきた!」

 

 

すっかり酔いを覚ましたミズキが「確認してこーい!」と言ってきたのでミカさんが店内にいないことを再確認。

千束から事の発端を聞くと何でもミカさんの差出人不明のメールが見えてしまったみたいで……

 

『明後日21:00 BAR Forbiddenにて待つ。

千束の今後について話したい』

 

という内容だったそう。

千束が言うには「私をDA本部に連れ戻そうとしてるんだよ! きっと楠木さんからだ……」らしい。

 

 

「人のスマホ、覗き見するんじゃありません!」

「だぁって見えちゃったんだもん……」

「でも司令とは限らないでしょ?」

「いいや、先生をたらし込んで私をDAに連れ戻す計画じゃわ……」

「自慢ですか? 結構ですね必要とされてて」

 

 

たきながジト目で自虐の効いた冗談を言ってる。

私としてはそもそも千束をDAに連れ戻すとかっていう線は薄い気がするんだけどなぁ……

他の線として何があるかなぁ……なんてことを考えて上の空になる。

 

 

「ああん! そうじゃないよぉたきなぁ!」

「ちょっと、そこぉ! ベタベタしない、くっつかない!」

「私に言われても……千束に言ってくださいよ」

「えぇーん、鈴仙、たきながつめたいよぉー。れいせ~ん!」

「うぉあ! いきなりタックルしないでよ!」

 

 

何の態勢もとっていなかったせいで千束の勢いを受け止めきれず床に二人諸共倒れる。

たきなをチラチラ見ながら嘘泣きをする千束に呆れつつ、慰めるように頭や背中を撫でる。

 

 

「小さいとはいえ、DAの支部だからファーストリコリスであるコイツがいないと存続できないのよねぇ」

「じゃあ私が戻りますよ」

「うええ~ん、そんな寂し~い」

「そうだよ、この前の約束はどうなっちゃうの!?」

「もし私が心配なら一緒についてくればいいじゃないですか……」

「まさか私一人にするつもり~!?」

「そんなことないだろ。どうせたきなはお呼びじゃないから戻らな……イテッ! 失言だったスマン、スマン」

 

 

結構強めに叩かれるクルミを見てにっしっしと笑うミズキ。

つい先月あたりの約束をもう破っちゃうのかと慌てふためいてしまった。

ま、まあ冗談だって信じてたけどね?

 

 

「もう、みんなもっと真剣に考えろよ~! みんなだってお店なくなったら困るでしょ!」

「…………私は養成所戻りですし」

「まだボクはここに潜伏しないと命が危ない」

「千束とたきなとのペア解散…………DAに戻っても任務の時以外一生ぼっちのまま!?」

「私も男との出会いの場がなくなる!!」

 

「そうでしょ!?」

「「「「うん」」」」

 

 

ということで千束をDAに連れ戻すのを阻止するための同盟が結束した。

ちなみにミズキの下らないアホっぽい理由について、出会いはこの職場でもないという事実を伝えるべきか迷ったけど、私は空気を読んで口を噤んだ。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「Forbidden、完全会員制のBARか……」

「会員証の偽造は任せたぜ! クルミさん!」

「この前もクルミに情報収集させてアンタは何もしなかったでしょうが! たまには働け!」

「私が情報戦で役に立つと思ってんの?」

「ううん? 全然?」

「この飲んだくれ……」

 

 

やることがないからって二人でコントしてる二人。

騒がしい中でも順調にバーの偽造会員証発行に着手しているクルミはさすが天才ハッカーと言うしかない。

偽造を完了したクルミだが、額に眉を寄せている。

 

 

「どうしたの? 何か問題?」

「いや、偽造は問題なく終わった」

「おっ、さっすが~!」

「……だが、こんなしゃれた店で仕事の話するか普通? 逢い引きじゃないのか?」

「つまり店長と司令は愛人関係ということですか?」

 

「愛人って……」

「愛人かぁ……」

「アンタの口から聞くと、なんか、興奮するっ!!」

 

「えっ?」

 

 

愛人なんてドロドロな昼ドラでしか見たことも聞いたこともないんだけど……

そもそもミカさんに限って司令と浮いた話とか感情とか聞いたことも聞こえたこともない。

あれは完全に仕事のパートナー以上の、いわゆる恋愛感情はお互いない感じだと思う。

 

 

「でもそういうことだろ?」

「「「ないないないないないない」」」

「なんでだよー、あり得る話だろ?」

「「「ないないないないないないない」」」

 

 

ミカさんの恋愛対象的にも恋仲は……

あるとしたら……ヨシさんとか、ね?

……ヨシさんかぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Fuki side>

 

昨日世間を騒がせた警察署襲撃事件。

ヤクザ暴動と報道されたが事実は思いっきり違う。

 

真島とか言う頭の狂った野郎が主犯だそうだ。

犯人の顔、素性、目的さえ不明な今、目撃者に情報を吐いてもらうしか進展はねぇ。

つまり実際に顔を見たという千束らに聞き取りだ。

そんなわけで上からの指示によりリコリコに訪ねに行くことになった。

 

 

「先輩、テンションぶち上げっスね! もしかして電波塔のリコリスと会えるからじゃ……ッッッ!!」

「反吐が出るようなこと言うなよ……。思わず手ぇ出ちまった」

「ホントにいったいんでやめてほしいっス! 何スか、あのチビっスか!?」

「……鈴仙か? いや、まあそう言うことにしておいてくれ」

「ええ~! 何か含みあるっスね?」

 

 

千束に会いたいわけじゃねぇ。

むしろムカつくヤツに誰が好き好んで会いに行くか。

私と違って身長高いし、胸デケぇ(スタイルいい)し、先生を独占してるし、絡み方がウザいし、銃弾を避ける化けもんだし、先生といっつも一緒だし……

ともかく、私は千束なんかじゃなくて大好きな先生がいることを期待して、喫茶リコリコの扉を開けた。

 

 

「千束はいるか」

「おお~フキぃ、らっしゃい」

「説明は不要だな、例の件について見せたいものがある」

「オッケー! なんじゃらほい」

「実はこれなんだが…………オマエ、見ない顔だな?」

「あ、ああ、その子ね! あ、新しいバイトの子ぉ?」

「……っす」

「……ふーん、まあいいか。ちょっと借りるぞ」

 

 

何か挙動不審な新顔を無視してパソコンを開く。

周りにDAの関係者じゃない客がいないか注意を払いつつUSBを接続してDAが入手した一件の映像を再生する。

 

 

「署内の監視カメラの映像だ」

紋々(ヤクザ)じゃねえじゃん!」

「当報道はカバーして情報統制するに決まってるじゃないッスか」

「けどこうなる前にあんたらが何とかするのが仕事でしょ?」

「むぅ……」

 

 

痛いところを突かれて唸るサクラ。

確かに指摘通りだが、ラジアータでも察知できない敵に後れを取らないためにお前らに協力してもらってるわけで……

そんな言い訳を脳内でしていると、店の奥から私の憧れの人が登場した。

 

 

「珍しいお客さんだな」

「団子セットいいッスか? 抹茶のやつ!」

「抹茶団子セットね。……フキ、おまえは?」

「い、いえ、任務中ですので……」

 

 

先生が私の名前を……っ!

呼んでくれただけで嬉しくて顔が蕩けてしまいそうだ……

 

いけない……今の私はDAのリコリスとして任務で来ているんだ!

憧れの人の前で公私混同するだらけた姿など見せられない。

緊張で先生の顔すら見れず、これ以上無様を晒す前にさっさと任務を終わらせないと!

 

 

「ち、千束ぉぉお! この中のどれが真島だ!! さっさと教えろぉぉおお!!」

「うっさいなぁもー、そんなに大きな声で話さなくても……あ、コイツ! こいつだよ! ね、たきな!」

「ですね……」

「髪型は私の方が似てるじゃ……」

「髪色だけじゃないですか! 私のほ……」

 

 

こいつが……

癪だがこの現在進行形で喧しい二人のおかげで真島を特定できた。

さて、今回の任務はこれで終わりだ。

 

 

「よし、サクラ、行くぞ」

「……えっ? ちょ、待ってくださいよぉ! まだ団子セット食ってないッス~!」

 

 

きっともう顔が真っ赤で先生と顔を合わせるのすら恥ずかしい。

一刻も早く退店しようと騒ぎ立てるサクラの襟を引っ張って扉に向かうがその行く手を塞がれる。

 

 

「お客さん! 席に座ってください、お団子ができたので」

「はあ? 任務中だっつってんだろ、鈴仙。今日はもうk……「やたっ! ラッキー!」オイコラ!」

「ままっ、そうかっかせずに……ミカさん特製のアメリカンですよ? 出されたものを飲まないで行くなんて失礼ですよもったいないですよ?」

「……ったく」

「特製ッスか? いい香りッスね、いただきま~す」

 

 

鈴仙は抹茶団子をテーブルの上に置き、サクラは一瞬の隙を見て私から脱出し甘味を堪能し始める。

鈴仙の巧みな言葉と旨そうな団子に食いつくサクラ。

 

……今回は鈴仙の巧い口に乗っかってやろう。

あくまでも先生のことを思ってだ、決して屈したわけじゃねぇ!

 

 

「……鈴仙、オマエ、誰かに似てきたんじゃあないか?」

「いやいや、そんなこと! ごゆっくり~♪」

 

 

絶対千束の性格移ってるわ。

椅子に座らされ抹茶団子セットを堪能するサクラを横目にアメリカンのブラックを啜る。

初めて飲む憧れの人が入れてくれたコーヒーの香ばしく、ほろ苦く、酸い味は緊張と嬉しさと恥ずかしさとでよくわかんなかった。

 

 

「フキ、菓子はいらないか?」

「オススメを……おねがいします」

「ふふ、わかった」

 

 

先生との他愛ない会話。

幸せな気分を味わいつつ、コーヒーの酸味を甘みで打ち消すようにお菓子を口に含んだ。

 

 

「センパイ、まさかあの店長さんのこと好きッスk……「フン゛ッ!」いだっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

日が落ち、お客さんたちが帰宅した。

先生尾行作戦決行まであとちょっと。

ああ、何だかソワソワしちゃう~!

あ、別に緊張してるわけじゃないよ?

スパイみたいなことできるのが楽しみで待ち切れないだけ!

 

現在時計の針は20時丁度。

バーで待ち合わせの時間にはまだ余裕があるから、それまで時間を潰している。

 

 

「でさぁ、もう少しフキは素直になればいいのになぁって思うんだよねぇ……」

「ねー」

「あれでしたらフキさんを店長とくっつければ司令とくっつくことはなくなるのではないでしょうか?」

「先生はあの二人のこと好きかもだけどラヴじゃないの」

「はあ……?」

「そもそもおっさんがガキと一緒にイチャついてたらいろいろマズいわ、法律と倫理的に」

「ん? 何の話してたんだ?」

「ああ、ええっ……と、れ、恋愛? そう! ガールズトークの定番、恋バナだ!」

 

 

突然先生が来て、今の話聞かれてないかドキドキして挙動不審になって思わず「今思いつきました!」みたいな変な言い回ししちゃったけど先生は割と天然だから何とかなる……かな?

そんな心配をよそに何にも気にしてない様子の先生がドアノブに手をかける。

 

 

「ああ、悪いが私は用事で外出する」

「あら、そう」

「戸締まりを頼むよ。後元栓もよろしく」

「あ、はーい! ごゆっくり~」

 

「…………行け鈴仙!」

「了解、お任せ!」

 

 

ガチャリと閉まった扉に耳をくっつけて先生が本当に行ったかどうか確認中の鈴仙。

もしこれで先生が帰ってきて私たちが準備しているところを見られたら面倒くさい。

だからしっかり確認しないとね。

 

 

「…………行った?」

「……オッケ!」

「ッケェイ!! みんな準備急げぇ!」

 

 

急いでバーに潜入するにふさわしい服装にドレスアップ!

クルミの発信器が先生の車を追跡中だから先生と鉢合わせる可能性はかなり低いはず。

できれば密会所に先回りできればいいんだけどうまくいくといいなぁ……?

 

 

「準備は大丈夫か?」

「おうとも! バッチシよ! 出発進行者オーラーイ!」

「バッチこーいっ!」

 

 

 

この千束さんに抜かりはない。

もちろんドレスもスーツも、ペンダントも、高級バーに行く準備はすでにバッチり整ってるぜ!

この作戦、絶対成功させるぞー!

なんたって人助けをするため、あの人を探すまでDAに戻されてる場合じゃないんだから……

 

 

 

****

 

 

 

 

無事先生の到着前に目的のバーがあるビルに着いたヤッター!

夜景の見える高層にあるバーなんてオシャレですなぁ……

いざ、参らん!

 

ワクワクが止まらないままエレベーターに乗り込み、バーがあるという入り口にやってきた。

何かの映画で見たことある雰囲気、スゲェ仕掛け。

マジスゲェー!!

 

 

「こんないかにもな、ちょムリムリやばっ!」

「これは確かに……!」

「落ち着いてください。潜入調査なんですからバレないように……」

「わかってるって! ふっふっふ、ミッションスタート……!」

 

 

興奮冷めやらぬ中、私はミステリアスな女スパイを演じる。

エスコート役のスーツたきな&グラサン鈴仙もノリノリで「俺の銃が火を噴くぜ……!」と言いそうなほど決まりまくってる。

 

受付でたきなが「蒲焼太郎」と澄ました声で言った時には今にも噴き出しそうで危なかったけど何とかクリア。

車で待機している非戦闘要員の二人がニヤニヤしてるのが目に浮かぶわ。

 

そして無事潜入できた私たちは白のスパークリングワインを片手に店内を見渡す。

先生がいつ入ってきてもいいように……

 

 

「……ミカさん入って来たよ」

「本当ですね、ほらあそこ……」

 

 

二人の言葉にその方を見ると前を開けた見覚えのない白い背広にネックレス、そして見覚えのある顔が目に入る。

その姿はいつもと異なりギャップを感じる。

 

「うっわ、なんかめっちゃ決めてんだけど……」

「やっぱり愛人が来るのでは?」

「いやいや、楠木さんは……」

「……」

 

 

先生が楠木さんと付き合う可能性なんて……

鈴仙に目配せをして同調してほしかったんだけどどこか上の空。

 

 

「どした鈴仙?」

「あ、う、うん、楠木さんではないっぽいね。……男だわ」

「……マジ?」

「マジ」

「マジかー……」

 

「一体何なんです?」

「恋人が来るってこと! 撤収撤収ぅ、帰ろう。邪魔しちゃ悪い……」

「え、いいんです? 私たちが何とかしないと千束がDAに……」

「んー、それはないと思う。だって今来てる人、DAの人じゃないし」

「一体誰が……」

 

 

先生は恋愛対象が男の人……愛の形は様々なんだ。

「百合も薔薇も観賞用、愛でるもので挟まるべきではない、見守るべきものである」って漫画家・伊藤さんが言ってたなぁ。

 

ハットを深くかぶり、鈴仙もサングラスでばれないように先生の方へ向かっている男性とすれ違う。

金髪でスーツが似合ううちの常連さん、ヨシさんだったとは驚いたけど、もし二人が人生のパートナーになって、そうしたらお父さんが二人か……それってスッゴく嬉しい!

できれば上手くいって先生とヨシさんと私たちとでいい関係になれたらいいなぁ……

 

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