優曇華と彼岸花   作:桃玉

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<Takina side>

 

DA復帰の辞令が届いた。

 

知らせに来たフキとサクラ、そしてクルミはよかったじゃないかと喜んでくれていましたが……

やっぱり喜べないですよ、千束の死について考えてしまって。

 

千束が死んでしまうなんてありえません。

何かの冗談ならよかったのに……

最後まで一緒にいたい……

そんな思考が頭を満たす。

 

そんな時でも千束はいつも通り何も変わらず仕事に取り組んで……

なのにもう少ししか会えないと思うと酷く胸が締め付けられ、仕事に身が入らない。

 

 

「あっ! あそこにも敵がいるっ!」

「……っ! 千束! 走らないでくださいッ!」

「大丈夫だいじょぶ! たきなはちょっと休んでて~」

 

 

ずっと一緒にいられないなら少しでも長く一緒にいたいのに……

けれどいつも通りに激しく動く千束。

 

今までは何気ない千束の行動一つ一つ。

でも心臓の充電がきかない今、その行動は命を削って……

 

 

「千束は安静にしててください! 私が敵を……」

「だめだめぇ! 一人で無理してケガしたらどーすんの」

 

 

無理してるのはどっちですか……!

千束が頑張れば頑張るほど一緒にいる時間が減るんですよ!

 

千束と少しでも一緒にいたいという気持ちは無意識に表れ、その無意識がその願いと反対の行動をする。

千束の命を私が削るのがどうしようもなく嫌だ。

それなのに思うようにいかない……

 

 

「うし、今日はこれで終わりぃ! ……ちょっと寄り道してから帰るわ、また後で~」

「……ちさと。……もう、走んないで、くださいよ……」

 

 

急に降り出してきた冷たい雨が頬に当たる。

制服が、髪が雨粒で濡れていく。

 

……千束はどこに行ったのでしょうか。

雨の中、傘もないのでまた走ってるんですかね……

 

想えば想うほどに重くなる足取り。

店の裏口の前に着いても何故かその中に入る気になれない。

歩く気力もなく壁にもたれかかると中から聞こえる悲しい声。

 

雨のせいで朧気な視界を閉じ、耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Mika side>

 

「ただいま、ミカさん」

「鈴仙!? 今までどこに……クルミ、タオルを!」

「ああ!」

「ミカさん……」

 

 

鈴仙の制服とパーカーは重く水が床に溜まる。

青白い指先が黒い肌に触れてきた。

 

冷たく凍えた指先の震え。

愛する娘の小さな手を暖めるように優しく包み込んだ。

 

 

「暖かいね、ミカさんの手」

「そういうオマエは冷たいな……それに震えている」

「…………外、寒かったですから」

 

 

それだけではない。

鈴仙の顔には隠しきれない緊張と不安。

しかし冷たい手は少しずつ温もり、震えが収まる。

 

 

「ミカさん、私ね、DAに呼び出されたの」

「そうか……」

「内容は真島の件。真島もアランチルドレンだから、その……シンジがどこにいるかわかるかもしれないから、行こうと思うんだ」

「……私がなんとかする。だから鈴仙は……」

 

 

行かないでほしい。

 

鈴仙が持つ才能は千束と遜色ない程に殺しに特化している。

アランに才能を見いだされれば鈴仙もまた、アランチルドレンとして才能を使わなくてはいけない。

自分が望まないことをしてほしくはないんだ。

 

 

「ううん、私決めたんだ、千束を助けるって。……ミカさんはきっと吉松さんを殺そうとしてる……そうでしょ?」

「どうしてそれを……!」

「ミカさん、ずっとツラそうな音してるから、わかっちゃった」

 

 

握っていた手から伝わってしまったのか……

蹌踉めき座敷に腰が落ち、手が離れ落ちる。

 

……怖くて勇気が出ずに震えていたのは、私の方だったみたいだ。

 

 

「ミカさん、私は助けたいんだ。殺させたくないんだ。殺したくないんだ。だって大切な人たちだから……」

 

 

肩を抱き寄せる小さな腕。

水の跡が走る黒い顔肌。

これではどちらが大人かわからないな……

 

 

「だから私、真島のところに行ってくるよ」

「そうか…………自分で決めたことなら、それでいい」

 

 

雨に濡れ重くなったパーカーと紺色を脱ぐと露わになる白色。

小さく折れそうなほど細い体で心が苦しかった。

 

 

「ホレ、タオル持ってきたぞ」

「ああ、ありがとうクルミ」

「……千束には会わなくていいのか?」

「うん、今会ったら決心も鈍っちゃいそうだしね……よしっ」

 

 

一通りの水気を拭い、やる気に満ちあふれた眩しい姿が眼に焼き付く。

傘を片手にリコリコから飛び出す彼女はもう止まらないだろう。

 

 

「行ってきます、みんな」

「ああ、いってらっしゃい、鈴仙」

 

 

鈴仙がいなくなり物寂しく暗く寒さで凍てつくような店内。

 

 

「やれやれ、まつたく自由奔放な娘もいたもんだな、ミカ?」

「そうだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Takina side>

 

……鈴仙はDAに戻るんですね。

私はどうすればいいかわかりませんでしたよ……

 

 

「あんた、こんなとこで何してんの……」

「ミズキさん……」

 

 

雨粒が遮られ、影ができる。

 

 

「私……DA復帰の辞令が来ました」

「そう……」

「真島を捕らえれば、千束の心臓についてわかるかもしれないらしいです……」

「……よかったじゃない、DAに戻れる上に千束も助けられる。一石二鳥じゃない。なのに何なのその顔?」

 

 

ミズキさんの言うとおり私にとってDAに戻ることは嬉しいことのはず……

なのにどうして心は嫌だと叫ぶのでしょう。

吉松(アラン)の足取りが辿れない以上、動きが派手な真島(アランチルドレン)を辿った方が千束の心臓について何か情報を得られる。

DA 復帰はチャンスなのに……

 

 

「……断ろうと思ってました」

「……千束との最後の二ヶ月、だから、ねぇ」

「最後の二ヶ月……ですか……」

「どうすんの? ここに残って千束たちと一緒に過ごすの?」

 

 

ここでの時間を試してみないって千束に言われてからまだ数ヶ月しか経っていないのに……

まだまだここでの時間を試し足りてませんよ。

だからこの二ヶ月を最後になんてできません、してたまるものですか!

 

 

「いいえ、私戻ります……! 千束が生きる可能性が少しでもあるなら……」

「おう、じゃ、頑張れよ!」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

「いらっしゃいませ~っ! いらっしゃ~せぇっ! ヘイっらっしゃっせーっ! ヘイヘイヘイっらっしゃいま……」

「じゃかましいっ!」

「ああ、ゴメン……」

 

 

ミズキに怒られちゃった。

でもしょうがないじゃん、たきなは今日お休みとっていないし、鈴仙はどこ行ったんだか家にもいない。

心臓のことで落ちこんじゃって……私は気にしてないのに、何か気にされてると思うと調子狂うわ。

 

 

「はぁぁ~……暇すぎるぅ……」

「何よ、ため息なんて。アンタらしくもない。もしかして妹の姉離れで寂しいんでちゅかぁ?」

「んなわけ……」

 

 

……ミズキの言うとおり案外そうなのかなぁ。

何せ何年もずっと一緒にいた可愛い妹の姉離れ。

一緒じゃない日なんてないくらいべったりだったのに急に何日か一緒じゃないだけで何となく寂しいわ。

 

そんなこと考えてると今日の営業が始まる時間になる。

ボサッと頬杖をつきながらぼんやりしているとカランコロンとお店のドアから音が聞こえる。

 

開店時刻と同時にやってくるお客さんなんて珍しいと思いつつ元気よくお客さんをお出迎えしようとしたんだけど……

 

 

「いらっしゃいま……ってたきな?」

 

 

何でたきながいるの?

いやめっちゃ嬉しいんだけど今日って休みって言ってなかったっけ?

 

 

「……ちょっとお話いいですか?」

「お、おおぅ」

 

 

普段の趣味が銃弾の装填作業と言っていたあの合理の申し子、たきなが制服ではなく私服で……

しかもいきなり来て早々お話とは、一体何用だ!?

全く予想がつかないぞ?

 

座敷でたきなが紙を一枚突き出す。

その紙にはこう書かれてた。

『遊びのしおり~休暇プログラム~ 作成者 井ノ上たきな』

 

 

「出かけましょう」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

気がつけば面白さと嬉しさでワクワクしてた。

たきなが遊びに誘ってくれるなんて初めてで……嬉しくて嬉しくってたまらない!

そんなわけで急いで私服に着替え、たきなに腕を引かれながらいろいろなところに行った。

 

最初はたきなの冬服選び。

秋……いやもはや冬なのに半袖は寒すぎるってことでショッピングモールへゴー!

服の無頓着さがたきならしくって、笑っちゃう。

どんな服でも似合うから時間がかかるけど楽しくてたまらない。

 

夏来たときは鈴仙も一緒だったなぁ……

 

 

「時間です。次いきましょう!」

「えぇ~っ!? まだコート選んでないのにぃ……!」

 

 

アラームの音がたきなの携帯から聞こえ、次の場所に無理矢理引っ張られた。

ゲームセンターでクレーンゲームしたり、雑貨屋によって見たり、おいしいスイーツ食べたり。

あと水族館にも行った!

 

しおりに書いてある通りの時間ぴったりに着いたけど残念なことに今日は臨時休業でお休み。

予定が崩れて唖然とするたきなに釣りに誘ってみたりして。

 

 

「……釣れないですね」

「釣れないねぇ……」

「……楽しいですか?」

「楽しいよ、たきなと居ればさ」

「……」

「ん? どうした~?」

 

 

急に静かになったたきな。

もしかして釣りはつまんないのかなぁ……

なんて思ってたきなの顔をのぞき込むとどこか寂しそうな顔をしてた。

 

 

「……結局鈴仙来ませんでしたね。仕事中だから仕方ありませんか……」

「おお? もしかして鈴仙がいなくて寂しがってたのかぁ? ……って鈴仙どこにいるかわかったの!?」

「いいえ。昨日DAから連絡があったのですが、鈴仙は極秘の任務中で、どこにいるかまでは……」

「ふーん、そっか。ま、ちゃんとどっかで生きてるんならいいでしょ!」

「というか鈴仙がいなくて寂しがってるのは千束の方ですよね」

「いいのいいの、アイツのことなんて。メールの既読も付けないアホはほっときゃいいんですよーだ……」

「わかりやすいですね」

 

 

そうだ!

べ、別に寂しくて拗ねてるわけじゃないんだから……

今日だってここに鈴仙がいればなぁなんて思ったことなんか十数回しかないんだから!

 

……三人で一緒に遊びたかったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Takina side>

 

「ねぇ~たきなぁ……どこ行くのぉ?」

「着いてからのお楽しみです」

 

 

時刻は21時。

電車から出て、街を一望できる岬から冷たい夜空を見上げる。

最後はここでサプライズしたかったのに、天に見放されたのか。

 

 

「……何か待ってるの?」

「雪……九時になったら降るって……」

「……プッ」

 

 

何ですかいきなり笑って!

確かに天気予報では降水確率90%超えで確実に降るって言ってたのに……

 

 

「最初の方はうまくいってたんですが……」

「神様は気まぐれだからなぁ」

「……折角しおりを作ったのに」

「一回予定狂っちゃうと後半の予定もおかしくなっちゃうのが難しいところだよね。だから私はいっつも思いつき~」

「それが千束流って言ってましたね。流石に何も予定立ててないのはどうかとも思いますけど」

「そ、そこはあれだよ! ノリと勢いで楽しく過ごせればいいかなって……」

「……行き当たりばったりとは千束らしいですね」

「そうかもね。予定をしっかり立ててるのはたきなっぽい」

 

「…………DAに、戻るんです、明日」

「おおっ! よかったじゃん! …………うれしくないの?」

「……不思議ですよね。今まで散々戻りたいって言ってきたのに、いざ戻れるって時に喜べないなんて……」

 

 

今では嬉しくない復帰だけど、これで千束が助かる手がかりがわかるのなら復帰したい。

鈴仙が頑張っているから私も……

でも頑張ったとして、今回のようにうまくいかなっからと思うと決心が揺らいでしまう。

 

 

「理不尽なことばかりです。そう思いませんか」

「……そうかもねぇ」

「今日だって水族館が臨時休業でしたし、魚は釣れませんでしたし、雪は降りませんでした。失敗ばかりです」

「……自分でどうしようもないこと、自分の思い通りにいかないことを悩んでてもしょうがないよ。ただ起きたことを受け入れて、全力! ……だいたいそれでいいことが起こるんだ」

 

 

理不尽を受け入れる……ですか。

それができないから私と鈴仙はDAに戻るのになかなか難しいことを言ってくれますね……

私は千束に生きてほしい。

 

 

「……それにたきなの計画は大成功してるよ……メッチャ楽しかったぜ!」

 

 

千束の明るい笑顔。

まったく、この人とずっと一緒にいたくなってしまった自分が憎い。

 

 

「やったなっ!」

「……やったぜ」

 

 

互いの拳をコツンとぶつけると元気が出た、勇気が出た、決意が固まった。

 

今日は大成功の日でしたね……

そんな言葉、暖かな白い雪が舞い始めても、いらない。

互いの歩むべき道を歩いて行くだけです。

そうすればうまくいくと、後悔しないと信じて。

ただ精一杯出し切り、千束と一緒に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Reisen side>

 

……一体どれくらい寝てたんだろう。

10分な気もするし1時間な気もする。

いや、もっと10時間かもしれないし、1日中だったかもしれない。

眠りが浅かった(悪夢ばっかり見てた)せいか何だかわかんないけど頭も体も何もかも重く感じる。

 

微睡んだ意識の中、武器の整備を終え、最後にメールを確認する。

ほとんどが千束のメールでたまにたきなからのお堅い文面が目に入る。

 

『鈴仙へ

今日は有休を使って千束と外に遊びに行く予定です。

もしよければ鈴仙もご一緒にどうでしょう。

DAの仕事でお忙しいでしょう。

最後の方に遊びの日程表を添付しておきますので時間があれば……』

 

『ねね! 今日はたきなと一緒にデートすんだ♪ 早くしないと鈴仙おいてっちゃうぞぉ!』

『今たきなの服選んでんの! たきなったら冬なのに夏服で来たからさぁ、もうびっくりしちゃったわ……』

『……たきな、DAに行くんだって。知ってた? 鈴仙もそっちにいるって聞いたよ? もう、どうして何も教えてくれなかったの!? 私と鈴仙の仲だろ? ……たきなのこと頼んだぜ! ……』

 

 

ええ~!?

私が寝てる間に何楽しそうなことやってんの!?

こっちはめっちゃツラい思いしてたのにぃ……私も遊びたかったなぁ。

あ、でもミカさんに行ってきますって言った手前、結局行きにくいわ。

 

そんなくだらないことを思いながら二人のメールを消していく。

何十と消して残ったメールは2件。

 

 

『From:Alan

To:Reisen U Inaba 件名:千束

今回千束と別のアランチルドレンが率いる集団と戦わせることにする。

その集団の情報は後述する。

千束が誰か一人でも殺していれば心臓を提供できる。

千束と永くいたいのなら協力してほしい。

君だけが頼りだ。……』

 

『From:DA

To:Reisen Inaba 件名:真島

DAに寄りつかないお前は知らないだろうが奴のアジトが割れた。

その情報を送ってやる。

潜入先行調査を実施してもらうためのものだ。

有効に活用しろ。

極秘につき、本来口頭で伝達が望ましいがアホが戻ってくるなど期待してない。

代わりにたきなを選抜しておいた。……』

 

 

二つのメールにはどちらも真島の潜伏位置を示す情報。

 

誰も死んで(傷ついて)ほしくないから。

みんな一緒にいたい(傷ついてほしくない)から。

たとえみんなが私のせいで悲しむ(傷つく)ことになってもやらなくちゃいけない……

今は私が誰よりも頑張んないと(傷つかないと)もっとみんなが傷ついて悲しいから。

 

……行くしかないか、真島のところへ。

 

そして吉松シンジ、黒幕のもとへ行って千束を……

千束の心臓を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Majima side>

 

アランチルドレン(アランリコリス)、それと同格のリコリスが一人。

ったく、折角DAをぶっ潰そうとしてんのに予定が狂っちまう。

全部スッキリさせて失ったバランスを取り戻さなくっちゃなぁ。

丁度客も来てるしな、ここでどう偏るかな?

 

 

「なあロボ太。ヤツが言っていた例のヨシさんって誰……?」

「い、いやぁ、さあ……しらな、し、知ってますぅ!! ヤツを支援したアラン機関のエージェントだっ! だからその銃を下ろしてくれぇぇええ!?!?」

「……やっぱりか」

 

 

このハッカー銃を突きつけただけであっさり白状したな。

信用ならねぇが……まあ、俺がお前を捨てるまでは精々頑張って働いてくれや、マイハッカー?

 

 

「……ロボ太、作戦を思いついた」

「え……? 作戦って? てか早くその物騒なの下ろせよっ!」

「まあまあ、落ち着け?」

「銃構えられて落ち着けるか! ……もしかしてこの前のトランクスの話思い出して……!」

「いや違うから、少し黙れ。別にお前に向けてるわけじゃねぇ…………なあ? そこにいんだろ、出てこいよ、セカンド(二人目の)アランリコリス?」

「アレ、いろいろばれちゃってる?」

 

 

暗い場所から赤い目がユラユラ力なくやってくる。

デジャブを感じて思わず笑っちまう。

 

 

「何やってるんだ!? 撃たないのか!?」

「黙れっつったろ」

「……ひえぇぇえぇっ!?」

 

 

五月蠅ぇから足下に一発打って黙らす。

目の前にやってきたリコリスは小動物かってぐらい心臓の音が五月蠅かった。

 

 

「さっすがアランチルドレン、耳が早いね。私がアラン関係してるってよく気づいたね?」

「ああ、やっぱお前もアランリコリスだったのな? ……フクロウのペンダントはどうした」

「捨てた。チャラチャラうるさいのよ、アレ。にしてもどこでバレちゃったのかなぁ……。最近までアラン機関自体と関わりなかったのに……」

 

 

どこでバレたかって?

そんなの簡単な話だ。

俺に恐怖心を植え付けてくれたこの世にただ一人しかいないヤツの片割れ(悪魔の妹)

初めて戦ったときあの異様な雰囲気、アランチルドレンの俺と暗闇の中で戦えるだけの才能、コイツは本物だと嫌でも気づくだろありゃ。

それに加え、今。

俺の索敵を余裕で突破してくるコイツが一般人な訳ないだろうが。

 

 

「お前が化け物じみてるから嫌でもわかるだろ。つーか相棒はどこだ?」

「千束とたきなのこと? 今はチーム解散中なんだ」

「ふーん。 んでどうしてお前はここにいんの? DAの差し金か?」

「いんや。……確かに建前はDAの依頼だけど。そもそもDAには誤情報流してたでしょ? 上層部はまんまと踊らされてここには辿り着けてないよ」

「……じゃあお前は何なんだ」

 

 

DAじゃなければアラン機関……

だが、アイツらはアランチルドレンに一度支援したらそれ以上はないはず。

一体何なんだ、コイツは?

 

 

「私は……私の意思でここに来たんだよ。ちょっと吉松さんを捕まえて人工心臓奪ってやろうかなって」

「あははっ! なるほどなぁ!」

 

 

俺がここで断るリスクをまるで考えちゃいねぇ……

絶対受け入れると思っていやがる。

大概俺も狂ってると思っていたがコイツも結構なアホだっ!

そんなことのためにわざわざここまで命を賭けるなんて、死んだらそこで終わりだろうが。

 

 

「そんな笑わなくても……」

「ああ、わりぃわりぃ……にしても傑作だ! なあ、何でそんなもんに命賭けてんだ? 心臓移植できないヤツでもいんのか?」

「秘密……ちなみにアンタの目的は?」

「……もちろん秘密だ。今はな」

 

 

秘密とは言ったが俺とコイツの目的は何にせよやることは同じか……

アランに接触してぶっ潰す!

 

それに今ここでコイツを相手すんのは面倒だ。

今からやってやる計画に支障が出るだろうし被害も出るしで、そんなの御免だ。

逆に考えれば今ここですぐに裏切るとは考えにくいいコイツを仲間に加えておけば……

 

……うん、よし、決めた。

 

 

「なあ、手ぇ組まねえか?」

「本気?」

「本気も本気だ」

「……では貴方の計画が終わるまで、よろしくお願いしますね?」

「ああ、よろしくな、裏切り者」

 

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