優曇華と彼岸花   作:桃玉

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<Takina side>

 

ワイヤーで拘束されて動かない真島を見て訪れる安堵。

もし、真島の銃弾がきれてなかったら、鈴仙が人質になっていたら、あのまま千束が一人で戦っていたら、私たちに勝利はなかったでしょう。

……本当に間に合ってよかった。

 

 

「たきなぁ…………DAはどうしたの」

「……辞めました」

「はぁ、バッカだねぇ」

「心外です。電話に出なかった千束のせいですから」

「……そっかぁ……ありがと」

 

 

ひとまず目先の危険は去りましたね。

真島が延空木ではなく旧電波塔にいたのはきっとDAの壊滅を狙ったテロを成功させるために自分の居場所をカモフラージュしたためでしょう。

……ですがどうして千束をわざわざ呼び寄せたのかが不明です。

何か裏があるのでしょうか……

 

 

「アイツ、私のことを勧誘するためにわざわざ呼び寄せたっぽい。それに加えて戦闘狂、たきなが来てくれてホント助かったわ」

「ああ、そう言うことでしたか……。そう言えば鈴仙と吉松も来ているはずですがどこに?」

「二人には避難してもらったわ。二人とも縄でグルグル巻きでさぁ」

「なるほど、鈴仙がいれば簡単に倒せる相手だと思ってましたが戦闘できないのならその方が堅実ですね」

「でしょ! たぶん階段使って上か下にいると思うんだけど……」

 

 

やっぱり鈴仙と吉松もここに……

つまり心臓の在処もここで間違いないはずです。

後は吉松から心臓を奪ったら私のすべきことは終わりですね。

 

……そうなると千束より先に吉松のとこにいく必要がある。

千束のことを才能でしか見ていないような狂人(吉松)を千束と会わせるわけにはいかないですからね。

もし対面させてしまったら千束の行動も精神も否定するに違いない。

そんな、大切な人を傷つけるような人と会わせるなんて……

 

 

「きっと下の方にいるはずです、上には逃げ道がありませんから……。私、探してきます!」

「た、たきな! そんな急がなくても……」

「千束は心臓に負担かけないようにゆっくり休んでてください!」

 

 

吉松の行動原理がわからない。

 

何のために松下として千束に接触し、何のために千束の心臓を壊し、何のために新たな心臓を入手したのか。

でもそんなことはどうでもいい。

千束の時間を伸ばすことができる心臓を入手できれば、またリコリコでみんなと楽しく笑い合えるような日常が手に入れば、吉松が何を考えているかだなんて考える必要すらない。

 

もし吉松が下に逃げたのだとしたら私たちが戦ってる隙に再び姿をくらませるかもしれない。

一度見失ったら最後、足取りがつかめずにそのまま千束の心臓は……

千束の命がどこかに行ってしまう前に捕らえておかないといけません。

 

 

「鈴仙、どこにいますか! 真島は倒しました! 返事をしてください!」

 

 

階段を下った先に行くと真島の部下たちが伸びていた。

それ以上の何かはなく、鈴仙と吉松の声はない。

……まさか逃げ道にない上の方に行ったのでしょうか。

 

下に吉松も鈴仙もいないことを確認して第二展望台の方へ走る。

さっき千束がいた場所を見るとすでにその姿はなく、きっと第二展望台の方(二人がいる場所)へ行ったのでしょう……

 

失敗しましたね……

千束には私がいいと言うまで何がなんでもこの場所で待っててもらうように言っておく必要があったのに……

 

逃げられる心配はなくなりましたが、それでも千束のことをアイツは傷つけかねない。

足はさらに急いで階段を駆け上がる。

 

階段を上りきり、三人の会話が聞こえてきて、ふと足を止める。

銃を握りしめ耳を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

たきなはっや……

そんなに鈴仙のことしんぱいだったのかぁ?

 

……ま、私もぼちぼち探すとしますか。

たきなが下の方見に行ってくれたから私は上見に行けばいいよね。

……この建物はどれだけ私の足をパンパップさせたいんだ!?

なんて思いながら階段を使って第一展望台から上層の第二展望台へ。

 

 

「あ、千束! 終わったんだ!」

「鈴仙っ、ヨシさんっ、よかった無事で……」

 

 

第二展望台の壁に背中を預けている二人。

二人とも顔色は良さそうだけど真島の銃のせいか、左肩に血を滲ませているヨシさん。

全部真島の銃弾は防いだつもりだったのに……

 

 

「ヨシさん、その、肩、ごめんなさい……守り切れなかったみたいで撃たれて血が……」

「……ああ、大丈夫、掠めただけさ。おかげで縄もほどけたよ。……そんなことより来てくれたんだね。うれしいよ、千束」

「そりゃあんな写真見せられたら助けにいかないと……」

 

 

大したけがじゃなくてちょっと安心。

もし急所に直撃してたらと思うと背筋が凍っちゃうわ……

でもけがの処置はまだみたい。

そりゃそうか、救急キットもないし鈴仙も拘束がまだ解けてないしこんな状態じゃ手当てしようにもできないか。

 

 

「千束、ナイフとか何か持ってない? 結構変な縛り方されてて全然解けないし抜けないんだけど……」

「……鈴仙もナイスだったよ!」

「何で目ぇそらして無視すんの!?」

「い、いやぁすまんすまん、私カバンにそう言う物騒なの入れない主義でさぁ。でもだいじょーぶっ! この私の高速拘束解除術見せて進ぜ……よ…………。ごめん、ムリだわ、もうしばらく我慢してて?」

「えぇ……」

 

 

さ~てさてさて、これからどうしよっかなぁ……

まずはたきなを呼ぶでしょ?

それから勝手に無茶した鈴仙にしっかりお説教して、あっ、あと心臓の手術もか。

 

 

「帰ったらやることいっぱいだぁ! 二人とも歩けるなら下の方に、たきながいるんで一緒に……」

「ああ……知ってるよ」

「ヨシさん……?」

「下で起きていることは鈴仙ちゃんに教えてもらったよ。そして千束、お前はミカから私の事情は教えてもらっただろう?」

「ええ、まあ……。アラン機関の事とかいろいろと聞きました……。でも!」

「ならどうして真島を殺さなかった。鈴仙から聞いたぞ、真島を殺さなかったと。私のことを、鈴仙ちゃんのことをこんな目に遭わせた真島をどうして殺さなかったんだ……」

 

 

全部聞いてるからだよ、先生から。

ヨシさんがどうして私のことを助けようとしてくれるのかも、新しい心臓を用意してリコリコへ送ってくれたことも、アラン機関の規則を破ってまでこんなに大切に想ってくれていた愛情を知ってる。

だからこそ私は最後までヨシさんみたいに、救世主さんみたいに人助けをしてみんなに幸せを届けたい。

殺すことじゃなくて助けることで幸せにしたいし幸せになりたいんだ。

 

 

「私は人殺しにはなりたくないんだ。誰かを不幸にすることはしたくないんだ」

「ならば何故! 何故悪人を殺してくれないんだ! 悪が存在することで善良な人々が不幸に貶められる。それを君はわかっていないんだ……」

「ううん、わかってる。……それでも」

「いいや……君はわかっていない! 人生で役割が明確な人間は少ない、でも君は、君たちはある! ……これほど幸せなことはない」

「……殺しが私の幸せって言いたいの?」

「そうだ、それで君は世界と人類に貢献できるのだから」

 

 

人に救われた命で誰かの命を奪うことなんてできない。

それに今の幸せな日常以上に求めるものもない。

大切な友達(たきな)大事な家族(先生と鈴仙)、それから居候の二人(クルミとミズキ)……

こんなに幸せなのにこれ以上望んだら神様に怒られちゃうよ。

……なんて、結局私の我が儘でしたいことをして、したくないことをしないだけなんだけどね。

 

 

「……ヨシさんは本当に私に人を殺してほしいの? 本心からそう思ってるの?」

「ああ、もちろん。だから君にはこんな玩具じゃなく実弾がふさわしい。銃を貸しなさい」

「ヨシさん……」

 

 

私の銃の弾を実弾に入れ替えるヨシさんの言葉は本心にも聞こえるけど嘘にも聞こえる。

先生の言うとおりヨシさんは私のことを想ってくれてて、わざと嫌われようとしてるんだ、そうすれば自分のことを撃ってくれると思って……

何も知らなかったら気づけなかったけどやっぱり……

 

 

「ヨシさんは優しいんだね」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「……千束、一体何を言ってるんだ。君の信念を否定しているのに……」

「そういうところだよ。私に酷いこと言ってるってちゃんとわかってるってことは今の話、わざとですよね?」

「……鈴仙ちゃん、君から説得してくれないか? 人を殺すための才能を正しく使いなさいと」

 

 

どうしても認めたくないみたいだけどそんな言葉でヨシさんのこと嫌いなるなんてありえないよ。

だってそうでしょ?

全部私のためを想っての言葉だもん。

悲しい気持ちになったとしても嫌いになったり、ましてや憎むなんて……

 

 

「その考えがどれほど愚かで、どれほどの不幸を招いているかを話してやってくれ、君も千束のことを想うのなら……」

「吉松さん、もう止めましょう?」

「鈴仙ちゃん……」

「今までずっと、それこそ二人が出会ってから今までその信念を貫いてきたんですよ、千束は……。どれだけ何を言っても変わらない、でしょ?」

「……うん、鈴仙の言うとおり私は私のままだよ」

「そうか……」

 

 

どこかわかっていた風に、でも残念で悲しそうに漏れ出る声。

ヨシさんの予定を狂わせちゃったのは申し訳ないけど、私はこのままがいいからさ……

今後アラン機関が私のことを狙ってきたとしても、真島みたいな変な連中が襲ってきたとしても、仲間だけじゃなくて敵でも誰でも殺さないっていうこの信念だけは崩したくないんだ。

おっかない奴らが来たそんときは私と鈴仙とたきなで怖さごとぶっ飛ばすから。

 

……だからヨシさん、もう無理して悲しまないで?

 

 

「……本当に何があっても誰も殺さないのかい?」

「うん、殺さない。だってそういう約束だったから」

「アレはそういうことじゃあない……」

「うん、先生から聞いてるよ。でも私は私を変えたくない」

「……もし、私が鈴仙に向けて引き金を引こうとしても、本当にその銃弾を使わないのかい?」

「ちょ、ヨシさん! 一体何を……っ!?」

 

 

鈴仙の頭に銃口が向かって、その指は引き金に触れようとしたそのとき……

私の後ろの方から聞こえてきた一発の銃声。

その音がヨシさんの指はトリガーにかかる前に牽制した。

 

 

「動くな。……次は眉間に撃ち込みますよ?」

「……たきなちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Takina side>

 

千束も黒幕が、真島と共謀して千束をここに誘い込んだ犯人が吉松だってことには気づいていましたか……

それを千束に聞かせる前に口を塞ぎたかったのですが余計なお世話だったみたいですね。

 

千束の恩人で大切な人なのに信念を否定されて、それでもいつも通りに吉松のことを受け入れて……

誰も殺したくない(自分のしたいことをやる)という信念を貫く眩しい姿。

悲しそうな顔を見ると胸が締め付けられる思いですが、それでも千束は吉松と向かい合ってて……

 

これで解決してほしかった。

私の出る幕なく終わればよかったのに銃弾を飛ばすことになった。

 

 

「たきな辞めてっ、私は大丈夫でしょ!」

「そんなことを言っても貴女を、鈴仙を殺そうとしたんですよ……。それに千束心臓を壊したのも、真島に武器を手配したのも、ウォールナットにラジアータをハッキングさせたのも、ウォールナットを殺したのも、松下も……千束の心臓を壊したのも作ったのも全部吉松の仕業だ! ……もう、うんざりなんですよ」

 

 

吉松が千束に対して殺しをしろと声を発するたびに新しい心臓を用意してくれたことへの感謝は薄れ……

千束に散々言いたい放題言って……千束はオマエのものじゃない、だから千束を傷つけて(悲しませて)貶めて(泣かせて)絶望に突き落とそうとして(殺そうとして)いいはずない!

鈴仙を千束の目の前で殺そうとして、心を抉り切り裂く凄惨な今が幸せなわけない!

……そんな想いを抑えるので精一杯でした。

 

 

「でも、その気持ちは終わりです。殺されたくなければ大人しくそのケースを寄こせ。クルミが掴みました。その中に千束の命があるんでしょう?」

「物知りだね、たきなちゃん。だがそのケースにはもう入ってないんだ。……千束を生かす心臓は、今はここだ」

 

 

マグマのように煮えたぎる感情は吉松の胸元にある大きな傷跡によって抑えられ、思考が冷静になると同時に眉を顰める。

胸を大きく裂き、完全に癒えていないその手術跡を見て理解しました。

……吉松を殺せば千束の命は手に入るということを。

 

 

「え……どうしたの、ソレ……ヨシさん……一体何言ってんの、私の心臓は……!」

「千束、私を撃つんだ。そうすれば世界は祝福を与えてくれる。私を殺せばお前の長い人生はより自由なものになる……。さあ、躊躇うな、撃ってくれ千束っ!」

「そんなことするわけないでしょ!」

 

 

千束に銃を握らせ自分の眉間に銃口を導く吉松。

そんなヤツの中に千束の心臓があると理解しても何も思わない。

 

ただ、心臓さえ手に入れるためならば非道く惨たらしく殺してでも、奪い取ってでも、何でもよかった。

今回なら吉松の頭に一発銃弾を撃てばいいだけ。

確実に吉松の息の根を止めるため近づき、千束を押しのけ吉松の額に銃口を向け、引き金を引いた。

 

一発の銃声。

 

その後に誰かが倒れ込む音はなかった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

銃弾を放とうとした腕を掴む千束。

吉松に当たるはずの銃弾は銃口が外れて何もないところに飛ぶ。

 

 

「何してんのッ!」

「千束が撃たないのなら私がやります! だから千束、手を離してくださいッ! 私が、私がやりますからッ!」

「止めてッ! 私は……誰かを殺してまで生きたくない! お願い……ヨシさんを撃たないで!」

「嫌だ……嫌だ嫌だッ! 吉松を殺さないと千束が……ッ! 千束がいなくなったら耐えられないッ!」

「大丈夫、落ち着いて! ……私は死なないから、これからもずっと一緒だから、ね?」

「どうして……」

 

 

吉松から心臓を奪わなくても一緒にいられるなんて確証がないことを……

吉松を殺させないために言ってる嘘なんでしょう?

そんなわかりきった嘘を言われて平静でいられるわけ……

 

 

「だって心臓はもうあるから。先生が持ってるから、だから落ち着いて、ね?」

「千束、何言って……。お前の心臓は私の中に……」

「……鈴仙が送ってくれたんです」

 

 

千束の言葉に目を見開く吉松。

私も正直事態を把握仕切れてない。

それでも鈴仙の声は嘘をついてるようには見えない。

視線をずらすと暗い顔をして俯き、吉松の顔を見ないようにしている鈴仙がいた。

 

 

「どういうことだい、鈴仙ちゃん。私に一緒に千束のことを自由にしようと話してくれたのは嘘だったのか」

「……ごめんなさい。吉松さんのことは信用してたし千束に対する想いもわかってた……でも、どうしても千束が吉松さんを殺すことを考えると耐えられなくて……」

「裏切ったのか」

「裏切っただなんてそんな……。吉松さんと同じ、千束のためを思って行動しただけです」

「心からわかり合える同士だと思っていたが……今の私は(さぞ)かし滑稽に映るだろう?」

 

 

つまり吉松の中に新しい人工心臓があるというのは嘘。

鈴仙がすでに吉松から心臓を奪っており、私たちの手元にあって、千束をいつでも救えるって……

そうことならどうして吉松は千束に殺されようとして……

 

 

「説明したはずだ。幸せとは世界中の笑顔を守ることと同義であると。それに誰かを殺さなければ、才能を使わなければアラン機関は千束を狙う。アランから支援を受けたアランチルドレンは才能を世界に届けることが義務だからだ。だが、今私を殺せば千束はアラン機関という鎖から解き放たれる。……なあ千束。頼む、私を撃ってくれ。私を撃って安心させてくれ。君が殺してくれれば私の判断が間違えていないことが証明され、お前の命が保証されるんだ」

 

 

吉松が千束の拳銃を心臓に導く。

後は千束が引き金を引けば心臓を撃ち抜ける……

でも千束はどんな悪人だろうと殺さない。

それに新しい心臓が吉松の中になくて、それでも吉松(アラン)を殺さなければならないのなら、別に千束が吉松を殺さなくてもいいはずだ。

 

 

「……本当にごめんなさい。吉松の気持ちはとっても嬉しいけどその期待にはやっぱり応えられないよ」

「千束が私を撃つ気がないのは嫌というほど理解したよ」

「よかった、わかってくれて……」

「千束に殺されるのは諦めよう……。鈴仙、後は君に頼んだ」

「えっ? どうして、鈴仙は何も関係ないですよね……ヨシさん?」

「……もともとそういう約束をしていたんだ。千束の代わりを鈴仙ちゃんが行ってくれる……。アランチルドレンとして殺しの才能を使い、千束を自由にするために、鈴仙ちゃんは協力してくれたんだ。さっきは裏切ったなどと言ったが私との約束、違えずに実行してくれるね?」

「……れ、鈴仙? まさかそんなことするはずないよね?」

 

 

吉松が死ななければアラン機関は千束を狙い続ける。

その言葉が本当なら今ここで吉松を始末すれば吉松は千束に殺されたことに……

 

監視カメラも第三者もいない。

私でも誰でもいい、ただ吉松を殺せさえすればアラン機関との繋がりは途絶えて問題なくなる。

千束の代わりに鈴仙が吉松を殺してもいいのならなら話は簡単だ。

鈴仙の代わりとして私が吉松を殺せばいい。

 

 

「鈴仙、退いてください。鈴仙はアラン機関の支援を何も受けてないですし、そんな拘束状態で銃を使えないでしょう? アランチルドレンじゃない鈴仙でも千束の代わりになるのなら、私がその代わりをやります!」

 

 

そもそも鈴仙は過去のトラウマで銃は使えないはず。

そんな人に吉松を殺させるなんて……

でも私なら問題ない。

 

 

「たきな止めて! ここでヨシさんを殺して私が喜ぶと思ってんの!」

「ですが、コイツを始末しない限りアラン機関が刺客を送ってきますよ! もし送られてきた刺客がまた千束の心臓を壊したら……。いいえ、それだけじゃ済まないかもしれない。それこそ千束の命を奪おうとして……」

「そうだとしても! 私の恩人でお父さんなんだ……」

「……千束が死ぬ可能性があるのなら徹底的に排除したい。今だって壊れた心臓がいつ止まるか怖くて……。だから千束、手を退けてください。鈴仙も吉松の前から退いてください。……それじゃ撃てないじゃないですか」

 

 

吉松に銃口を合わせようとして、でも二人がそれを邪魔して……

どうして……

私はこんなにも千束と一緒にいたいのに……

鈴仙は千束と離れ離れになる可能性を排除したいとは思わないんですか?

千束は私たちとの日常を壊されても良いって言うんですか?

非楽観的に合理的に考えれば考えるほど感情があふれ出す。

 

 

「たきなちゃん。申し訳ないが君には殺しを頼んでないんだ」

 

 

目の前の景色が歪んだ。

誰かに思いっきり蹴られた時のような視界の揺れ。

思わぬ横槍が入ったことを理解するのに数秒かかり、その間に体はガラスを突き破り、宙に蹴り飛ばされる。

外に放り出されたその体は千束と鈴仙のところにすぐに駆けつけることができなくて……

 

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