優曇華と彼岸花   作:桃玉

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<Reisen side>

 

影に潜んでいた姫蒲さんが吉松さんを殺そうとしていたたきなを外に蹴り飛ばす。

硬い鉄骨に叩きつけられ鳴る音。

追撃を加えようとするのを見て慌ててたきなの方に走る千束。

 

 

「……まだ、千束に殺されようとするの諦めてなかったんですね」

「もちろん。逆に私が諦めると思ったかい?」

「まあ予想通りでしたよ。今のところはですけど」

「そういう君は私の想定外のことをする」

「それは、その……千束が悲しんでるのを見るのはツラいので」

「……それはわからなくもない。だが千束のためだ、今度は邪魔しないでくれ」

 

 

そんな中、吉松さんが銃を構え、千束たちがいる方へ向ける指を引き金にかける。

 

 

「……何する気ですか」

「言わなくても君ならわかるだろう」

 

 

わかってますよ、さっきは私を撃つふりをして千束に引き金を引かせようとした。

今度はたきなに向かってする気だってことは……

 

ただ、想定外だったのは振りじゃなくて本当に狙って撃ったこと。

 

 

「何してるんですか! 本当に当てようとして……たきなに当たったら……!」

「リアリティがなければ千束も撃ってくれないだろう、さっき君自身も身をもって体験したはずだ。最善はたきなちゃんに銃弾が当たる前に千束が私を撃ち殺すことだが……もしたきなちゃんに当たり、千束に恨まれたとしても殺してくれるのなら願ったり叶ったりだ」

 

 

……私は、やっぱり千束に嫌われたくないよ。

千束が助かっても一緒にいることができなきゃ意味がないんだ。

……でも吉松さんはそれができる。

狂気的な愛情で自己犠牲を厭わずに、憎まれようとして……

 

もう10発も放たれた銃弾。

ほとんどは空を切り、数発は鉄骨に当たり甲高い音を鳴らす。

本気で当てようとしてるのに当たらないのは腕を負傷しているせいか、それとも距離のせいか、はたまた風が強いせいか……

それでもたきなに当たってしまうんじゃないかって恐ろしく怖い。

 

……さっき邪魔をしないでって言われたけど、もう我慢の限界だよ。

 

吉松さんが発砲するのが悲しくて、千束の必死な声を聞くのが辛くて……

走って縄で縛られたまま身体を吉松さんの腕に当てて銃を飛ばそうとした。

 

 

肩を吉松さんに当てたときに轟く一発の銃声。

……何とか吉松さんの射線はそらせたけど、その銃声は千束の方から鳴っていた。

でもその銃弾も吉松さんには当たってないみたいでよかった……

 

そのまま勢い余って倒れちゃったけど大丈夫。

ちょっと腕が熱い感じがするけど問題ない、きっと床に変な倒れ方したせいだから。

 

だからね、千束……

そんな魂が引き裂かれるみたいな悲痛そうな声で泣かなくても、叫ばなくていいんだよ?

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「鈴仙ッ! 何馬鹿なことを……! あのままなら私が撃たれていたはずだったのに……」

「タイミング間違えちゃいました……。本当はたきなに当たらないか心配で思わず飛びでちゃったけど、まさか千束が撃つとは……」

 

 

最初の方は変な着地したせいかと思ってたけど妙に腕が痛い。

左腕の白き生地が赤く染まって、赤い部分がドクドクと鼓動に合わせて熱くなって、血が失われて寒くなって、痛さが麻痺して……

当たっちゃったんだ、千束のに。

 

 

「なんと愚かなことを……君が傷ついたところで意味はないのに」

「本当にそうでしょうか。さっき言ってましたよね? アランチルドレンに誰か(・・)が殺される必要があるって」

「何が言いたいんだ」

「……別に何も」

 

 

倒れた体を起こして吹き飛ばされた拳銃の方に歩き、拾い上げる。

……久しぶりに持つなぁ。

千束と一緒になってからは持つ機会激減して、たきなが来た頃にはもう使い方すらわかんなくなってたし、ホント何年ぶりかな?

鉄のズンッとした重さも冷たさもやっぱり嫌いだけど……

 

 

「……ただ、約束は守らないとなって」

 

 

半分嘘だ。

吉松さんに向けて構えたけど殺そうだなんてしてない。

本当は誰に対してでも撃ちたくなんてない、千束にも、たきなにも、吉松さんにも。

ただでさえ冷えてきた体なのに冷たい銃身に体温を奪われる。

重い金属の塊を持つだけで、寒さと恐怖で手が震える。

 

 

「そうか、覚悟を決めてくれていたんだね……本当に酷なことを……。ありがとう」

「いえ、私のせいなので……。それにやっぱり千束に誰かを殺させるのは、辛くて悲しくて、私には耐えられません。……だから私が撃ちますよ。……千束のために、何より私のために」

 

 

千束を撃てるわけない、吉松を撃てるわけない、誰かを撃てるわけない。

でも誰かを撃たなくちゃいけない。

そして殺さなくちゃいけない。

そう考えると指が震えてくる。

……本当に私ってやつは怖がりで情けないなぁ。

こんなんじゃ誰も守れないのに、大切な人を愛せないのに……

どうして私は人の感情を知ってるのに、どうして私は人の意識を変えることができないんだろう。

 

 

「さあ、千束に邪魔される前に私を撃つんだ」

「……」

「鈴仙ちゃん?」

 

 

心音が大きく、呼吸が荒く、指先が震え、波長が歪む。

大丈夫、大丈夫だって言ってるでしょ?

私は吉松さんを撃たないんだから。

ましてや千束も撃たないんだから落ち着いて。

 

 

「君の願いを叶えるんだ。君の願いは何だ。私と同じように千束を愛していて、幸せになりたい……そう思っている君は私を殺すことで望み通りの結果になる」

 

 

吉松さん、私の望みは誰も死なないで一緒にいられることなんだ。

大切な人が悲しむのも見たくないし、傷つくのも見たくない。

だから吉松さんを撃っても絶対望みは叶わないんだ。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「鈴仙!」

「千束……」

 

 

心配そうに顔を歪めてこっちに走ってくる千束。

……よかった、ちゃんと来てくれた。

 

 

「鈴仙、弾に当たったでしょ! 大丈夫……ではないっか」

「いや大丈夫だよ。胴体じゃないし利き腕でもないから今のところ割と平気。ほら、腕も上がりにくいけど上げられるから」

「強がらない! 絶対そんなの痛いんだから早くこっち来て、手当てするから……」

「大丈夫、それは後でいいよ」

「ばい菌はいったらどうすんの! 早くこっちに……鈴仙?」

 

 

改めて吉松さんに向けて銃を構え直す。

収まった動悸がまた激しくなって波長が乱れていく。

さっきも言ったでしょ……

大丈夫、千束も吉松さんも撃たないんだから。

ただ死んだように見せかければいいだけなんだ。

誰も死なない。

だから落ち着いて……

 

 

「鈴仙? 何してんの……」

「見てわかんない?」

「わかるわけないでしょ、どうしてヨシさんに銃向けてんの……」

「ミカから聞いてなかったのかい、千束。私もさっき言ったがアランチルドレンに殺されなければならない」

 

 

千束と目を合わせられない。

吉松さんは振り返ることなく項垂れ背を向けたまま。

今まで黙ってきた分の罪悪感が首を絞めるように苦しい。

 

 

「で、でも鈴仙はそんなアランとは関係ないって先生が……」

「……先生には悪いことしちゃったなぁ。千束も騙しちゃってたし、今白状するよ。吉松さんとミカさんが一緒に話してたバーあったでしょ? あの時私ね、吉松さんとあって千束の首のヤツと同じの貰ったんだ」

 

 

そう、あのときから私と吉松さんの計画は始まってた。

だって千束と出会ってしばらくして「ずっと一緒にいるって」約束したもんね。

だから千束とずっと一緒にいられるように今まで何とかしようとしてきて、でも辛くて何もできなかった。

 

 

「うそ、うそだよ。だって鈴仙の首にはそんなフクロウの見たことないもん!」

「それは……音が鳴っちゃうから邪魔でいつもつけてないだけだよ」

「も、もし鈴仙がヨシさんからフクロウを貰ってたとして、ヨシさんを殺そうとする理由がないでしょ!」

「……愚問だよ、千束。私の場合はいかにして千束に殺してもらうかだったが、鈴仙ちゃんはずっと千束を生かすことだけを考えて準備してきた。だが、もし千束が私のことを殺さないのなら第二の計画が必要だ」

「第二の計画って……。それは私じゃなくて鈴仙に殺されるってこと……?」

「ああ、わかってるじゃないか千束。つまり私を殺せば千束の命は続き、目障りな私は消える。完璧な……」

「完璧なわけないじゃない! ……私の命はどうだっていい、でも誰も私のせいで傷つけなんてしてほしくない! それに鈴仙のトラウマ知ってますよね、銃を握るだけでどれだけ辛いか……」

 

 

私の銃口はブレて狙いが定まらない。

千束の言うとおり引き金を引く前段階で恐怖しかない。

でも、人に当てるのは一発だけでいい。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

ゆっくりと千束の波長を読み取る。

動揺、悲しみ、混乱……

私の嫌いな感情がいっぱい混濁してて気分が悪い。

でも吐き気を飲み込んでそのまま集中していく。

 

 

「千束、ごめんね。約束したんだ」

「何言ってるの……鈴仙」

「吉松さんにね、千束のこと頼んだって言われたから……だからね」

 

 

目を閉じ、大きく息を吸って、静かに吐き出す。

目を開けて引き金に指をかける。

 

 

「何やって……止めてっ!」

 

 

千束が大声で駆け寄ってくる。

銃を構えながら、でも引き金には一切触れることなく吉松さんの前に出て撃たせないようにする千束。

私が誰かに向かって撃てないってことを知ってるからこそ、千束も銃を使う気はないんだ。

 

……おかげで吉松さんから千束の銃が見えなくなった。

そのまま距離を詰めてくる千束の意識は私の銃を奪い取ることに移る。

そう、それでいいんだ、千束は千束らしく誰も殺さなくていいんだ。

 

 

「ありがと、千束」

「えっ……」

 

 

目の前まで迫った千束は私の銃払い退けたのと同時に目を見開いた。

 

そりゃ驚くよね。

さっきまで吉松さんを殺そうとしてたはずなのにありがとうだなんて……

でも驚いてくれたおかげで集中していた千束の意識が乱れた。

 

今回の作戦は『アランチルドレンが誰かを殺したように見せればいい』というのが肝。

つまり私か千束が誰でもいい、誰かを死んだように偽造すれば、それで吉松さんもアランも納得してくれる。

どうやってするか……そんなのウォールナットの時と同じ、鉛玉に当たっていっぱい血を見せればいい。

 

私の銃ばっかり意識して、お留守になってるもう片方の銃を私の方に誘導する。

そして躊躇うことなく千束の銃の引き金に指をかけ、動揺して波長が乱れてる千束の意識に合わせて……

 

一発。

 

 

「……お休み、千束」

 

 

意識を手放した千束。

そこからも血は出てないのを確認して動悸が僅かに治まる。

呼吸も荒くないし不安もなくて、すっきりした気分だ。

 

勢いのまま私の方に倒れ込んでくる千束にしっかりと銃を握らせる。

千束は何も傷ついてないという安心感で胸が満たされた。

 

 

「……よかった、終わった」

「何が、起きて……千束ッ!」

 

 

吉松さんがこっちに走ってくる。

慌ててフォームも何もないバタバタしたスマートな吉松さんらしくない動きだ。

そんなに心配しなくても大丈夫なのになぁ……

 

 

「千束は大丈夫ですよ。私が意識の波長を狂わせて気絶させただけですから」

「ではなんでこんなにも血が出ているんだ!」

「ああ、それは……」

 

 

千束を横に寝かせて私の胸を指す。

熱くてジンジンして、ちょっとずつ体温が下がっていく、二つ目の穴。

 

 

「千束が撃ってくれましたよ」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

本当は私が自分で撃っただけだから大丈夫。

ちょっと銃の反動が手の感触に残ってて吐きたいけど、幸いにも私の胃の中はからっぽ。

ギリギリつらさより、安心感の方が勝ってるから大丈夫。

 

 

「今すぐに治療しないと……!」

「大丈夫、大丈夫ですよ」

「何を言って……」

「私、千束に吉松さんを殺させたくないって思ってて、私も吉松さんのこと殺したくなくて……」

「本当に何を言ってるんだ! 私が死ななければいけないんだ、君が死んでどうする!」

 

 

千束の心配より私のこと心配してくれるんですね……

でもそんなことしなくてもいいのに。

一応死なないように急所は外したのに、そんなに慌てて私をどこかに運ぼうとするの見ると逆に私の方が心配になるじゃないですか。

 

 

「吉松さん、落ち着いてください。アランチルドレンが誰かを殺したように見せればいいって言ってましたよね。つまり千束が私を殺したとしてもアラン機関は認めてくれますよ」

「違う……君には千束のことを任せたと言ったんだ。千束を残して死ぬことは頼んでいないぞ……」

「……そう言えば私って吉松さんから支援品も貰ってませんでしたよね。もしよければ私の支援は千束の心臓で……なんてどうです? そうすれば吉松さんはアラン機関のタブーを回避できるでしょう?」

「既に一つ犯しているのに二つ目を回避したからと言ってどうにもならない。だから君をこれから助けることが支援だと思ってく……れ……」

「……おやすみなさい、吉松さん」

 

 

手に持ってる銃でまた一発。

 

 

大丈夫、何も傷つけてない。

二人とも寝てるだけ。

私は死んだと思われてもおかしくない状況の完成。

よかった、みんな無事で幸せな世界になった。

 

胸の穴から空気が入り込んできてちょっと息苦しい。

血がポタポタと床に滴って、汗のように乾かないから気持ち悪い。

でもただそれだけの不快感で済んでしまうなら安い平和だ。

後は誰もいないところに行ってしばらく引きこもってればDAが勝手に死亡判定してくれるはずだ。

足がやけに怠いけどどっかに隠れるかしないとなぁ……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「…………、………ン、……セン、鈴仙ッ!」

 

 

あれ……私どうしてたきなに抱きかかえられて……

あ、たきなの額から血が出てる……

 

 

「たき、なぁ? だい、じょうぶ?」

「こっちの台詞です! 何ですかこの血は!」

 

 

血が足りなくてどっかで意識飛んじゃったかな……

かすんだ目であたりを見ると割と私の血が引きずられて後になってるのがわかる。

……割とひどいじゃん、私。

 

 

「誰にやられたんですか! 吉松ですか!」

「ああ……これ、私、だよ……。ちょっとミスっちゃった、みたい……」

「何してるんですかッ! 約束したでしょう、一緒にいるって! 約束破ったら地獄まで追いかけますからねって言いましたよね!」

 

 

そう言えばそうだったね。

初めて会った頃よりひどく不安定に感じる声。

焦りと不安、それから殺意がごちゃ混ぜになって……

そんなに嫌な感情を垂れ流さないでよ……

 

 

「だいじょうぶ、死ぬつもり、ない……から、落ち着いて?」

「大丈夫じゃないですよッ! 今ミズキがヘリで来ますから、早く病院に行って治療しないと……!」

「そっか……」

 

 

それは助かるなぁ。

自力で降りないといけないのかなって思ってたからよかったぁ……

でも私の治療の前にもっと優先しなくちゃいけないことがある。

 

 

「延空木が、大変だからさ、私おいて先行っててくれない?」

「何言ってるんですか……。馬鹿なこと言わないでください! 鈴仙の方が……」

「でも、割と、もう、血が固まってるでしょ?」

 

 

服にべっとりついた血が固まってるからきっと胸の穴も……

だからそんな泣きそうな顔しないで?

ただでさえ冬の寒さで体温が低く感じるし、肺に穴が開いたせいか呼吸しづらいし、だんだん眠いし……

 

 

「大丈夫、千束も吉松さんも、大丈夫、だから私も……」

「鈴仙、しっかり意識を保ってください! 千束はどこにいるんですか!」

 

 

こんな時でも耳はものすごくいいんだね……

全くこの有り余った聴力がかすんだ目とかに来てくれればいいのに。

……それにしてもまぶたが重い。

 

 

「あと少しで到着するみたいですからね! 鈴仙、目を開けてください! このまま死んじゃうなんて言わないですよね」

言わないよ、だってまだたきなとの約束破ったことないでしょ? 少し眠いから眠るだけだよ。……もしかしたら悪い夢見るかもしれない。そのときは手を握ってくれると嬉しいな……

「鈴仙! 死んじゃ嫌だ! 私をおいていかないでッ!」

大丈夫だって、約束は守るからさ。……ちょっと眠るけど、終わったら起こしてね?

 

 

やっぱり最近睡眠が浅すぎて寝ても寝ても寝た気がしなくて……

でも千束も吉松さんも助けたし、不安なことはなくなったからきっと今日は悪夢なんて見ないはず。

もし悪夢を見たとしても目を覚ませばこの幸せな世界に戻ってこれる。

だから、たきな、おやすみ……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

手に残る銃の反動。

……私、撃ったんだ。

 

人を撃った。赤が溢れた。爆ぜた。潰れた。……静かな赤以外見えない。

人を撃った。悲鳴。叫び。憎しみ。怒り。……静かに幻聴が纏わり付く。

そこには誰もいない、暖かさが失われる、冷たく動かない、みんな死んで逝った。

私のせいで、みんな、死んだ。

 

私の目の前にそんな光景が広がってる。

いつも通りの夢だ。

 

いつもだったら現実と夢の境界が曖昧でどっちがどっちかわかんなくなってたけど、今さっきまで千束と吉松さんを気絶させて私も寝ちゃったところまでの記憶が鮮明だから悪夢なんて怖くない。

というかそろそろ代わり映えしない内容は飽きてきたんだけどなぁ……

吉松さんがこれが終わったら悪夢なんてなくなるって言ってたけど嘘だったじゃん。

 

昔一緒にリコリスとして戦った同僚、殺してしまった人たちの幻聴が耳に障る。

幻聴が夢だけなら良かったのに、現実にも出てきて、辛いときに追い打ちをかけるように死人の恨みと憎しみが聞こえてくる。

 

……誰かを撃つのが駄目で、死ぬのを見るのも辛くて、誰かの代わりに自分が撃たれるんだったら大丈夫かなって思ってたけど駄目かぁ。

たきなに起こして貰えば覚めるかもしれないけど、今頃延空木でフキさんとかを助けてる頃だからもうちょっと待っておこうかな……

 

 

「…………、………ン、……セン、鈴仙ッ!」

 

 

あれ、千束の声だ……

もしかして起こそうとしてくれてるのかな。

まだちょっと起きるには早すぎじゃない?

 

そんなこと思いつつ重い瞼を開けるともう夜になってるのか辺りは暗くて、旧電波塔の中で、さっきまでたきながいた場所に千束がいた。

 

 

「よかった気がついて……おはよ、鈴仙。いやもう時間的にこんばんは?」

「う……ん……。おは、よ……。全部、終わった、の……?」

「そうみたいだね。……いやぁ、めっちゃ焦ったよ、まさか私が撃たれたと思ったら鈴仙が血ぃ流してんだもん。気がついたらヨシさんもいないし焦ったぁ」

「でも、大丈夫だった、でしょ?」

 

 

胸をなで下ろす千束を見て本当に何とかなってよかったと息をつく。

たきながいないけど延空木の件ももう解決したのかな?

だとしたら後はリコリコに帰ってみんなに元気な顔を見せて、千束の心臓も交換して……

とにかく展望台から一階まで降りないと……

 

 

「ふー……、よし! じゃあ行こっか、千束!」

「そだね……いや、ちょっとヨシさん探して一緒に行くから先行ってていいよ」

「何言ってるのさ、吉松さんなら姫蒲さんが回収してくれたんじゃないの? ほら、アラン機関って謎が多い組織だから秘密漏洩しないようにさ。きっと今頃車か飛行機の中でアラン機関のお偉いさんに私が死んだって報告してるよ」

「いや、鈴仙は、死んでないでしょ?」

「死んだ風に見せかけたの! そうすれば私も千束も自由だし吉松さんも喜んで帰ってくれる、そうでしょ?」

 

 

さて、変なこと言ってる千束と一緒に帰りましょ!

そう思って千束の手を掴もうとして……

 

 

「……あれ、何で避けるの? 早く一緒に帰ろうよ」

「ごめん、鈴仙……」

「何謝ってるの……そんなことしてるうちに千束の心臓止まっちゃうでしょ、さっさと降りよ、ね?」

 

 

掴んだと思ったのに千束の腕をつかみ損ねたみたい。

寝起きだし貧血気味だし、きっとそういうことのせいで距離感とかが狂っちゃったせいだ。

今度はちゃんと掴もうとして手を伸ばして……

 

千束の(半透明な)体を私の腕が通り抜けた

 

 

 

 

ああ……

私、失敗しちゃったんだ(千束を死なせちゃった)

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