優曇華と彼岸花   作:桃玉

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<Fuki side>

 

『アルファ2、井ノ上たきなが真島を押さえました』

『旧電波塔です』

『……クリーナーを向かわせろ』

 

 

無線から聞こえる司令らの声。

どうやらあのバカが真島を捕まえたみたいだ。

全く腹立たしい、どうして全うに働いてる私たちが戦い損して命令無視したヤツが……

はぁ……

そんなこと言ってもしょうがねぇか。

 

 

『聞こえたな、フキ』

「はい」

『たきなが真島を討った。上層部からリリベルが到着するまで待機命令が出ている』

「それはいつまで……」

『この言葉の意味を理解しろ』

「……了解しました」

 

 

一方的に切られた通信。

司令にしてははっきりしない物言い。

言葉の意味を理解しろ……か。

 

ぜってぇおかしなことが起こる気がする。

それもリリベルとか言う特大の厄介ネタ……

リリベルっていう言葉を聞くたびに千束が襲われてたのを、リコリス狩りとか言う任務に失敗したリコリスを殺処分してた過去があったことを思い出す。

救護班としてあのリコリス殺しが助けに来てくれるか、普通……

 

 

「せんぱ~い、司令は何て?」

「たきなが真島を倒したってよ」

「ほんと!? ってことは鈴仙とかも助けられたってことかな……」

「どうだかな」

 

 

たきなが真島を押さえたのはわかる。

だが、そこには千束、それから鈴仙がいたのはずだ。

どうしてアイツらの名前は報告にあがってこないんだ?

今回の作戦に千束はたきなと同様組み込まれていたはずだ。

たきな一人で真島に勝利したとすれば千束の名前があがってこないのは考えられなくもないが……

まさか、一人で倒したなんてことあるわけねぇか。

 

 

「ちぇ~、私たちの方が命令聞いて行動した評価されるべきリコリスなのにぃ……。じゃ、もう撤退の準備ッスか?」

「いや、待機だ」

「えぇ~っ!! 撤退じゃなくてまだ待ってなきゃなんスかぁ!? ……あ~あ、あっしらが地味ぃな仕事してる間に新電波塔の英雄様になっちゃって……ワンチャンファーストになるんじゃないッスかね?」

「一人で千束みたいな化けもん(真島とかいうテロリスト)倒せるんだったらな……」

 

 

私だって真島を一人で倒すには相当手間取るだろうし、何ならあのムカつく馬鹿には弾が当たんねぇ。

だからアイツにアランチルドレンを一人で倒すなんてできっこねぇ。

きっと千束が自分の手柄をたきなに押しつけたに違いないはずだ。

DAに戻れるようにわざわざそうしたのかもな……

ホント、バカが考えそうなこった。

 

 

「フキ、救護班が来たぞ!」

「つーことは待機終わりッスか? 撤退の準備だけしておくッス!」

 

 

……やはり救護班はリリベルじゃなかった。

つまり私たちの待機命令はまだ継続中だ。

もし命令を破れば私もあの馬鹿どもと同じか……

 

 

……お前、模擬戦なんだぞ。後ろから撃てばよかったんだ!

それを突っ込んできて殴るなんて馬鹿げてる!

やっぱりお前使い物にならねえリコリスだよ!

命令違反に独断行動、二度と戻ってくんじゃねえ!

 

 

まさか自分の言葉が自身に返ってくるとは思ってもみなかった。

……考えてる暇はねぇか。

リリベルがうちらを処分しに向かってきてるとみて行動すべきか。

 

 

「動くぞ」

 

 

リリベルがリコリスを処分しようとしている理由……

それは平和の裏側を支えている私たちリコリスが全国報道されてるせいだ。

逆を言えば全国報道をなんとかすれば処分させずに済むかもしれねぇ。

 

真島が延空木の内部に何か工作をしたのか、延空木に設置されている大画面にはリコリスの姿がくっきりと映っている。

外部から制御しようとしてもラジアータを当てにできなそうなこの状況。

なら私たちが内部から制御を取り戻せば、未だ延空木の内部にわんさかいる真島の手下をぶっ殺しつつ延空木の制御室を奪還すればなんとかなるかもしれねぇ。

 

ったく、真島のヤロウのせいでファーストリコリス降格しちまうかもしれねぇじゃねぇか。

 

 

「ヒバナとエリカはサードリコリスを率いて他チームの負傷者を下ろせ」

「おっ、フキパイセンもやる気ッスね! あっしはどうしましょうか? できれば手柄を立ててファーストリコリスになりたいッスね! あの遅刻ヤロウに後れをとりたくないッスから」

「……ならサクラは一緒についてこい。制御室を奪還する」

「そうこなくっちゃ! これで延空木の英雄の称号はイタダキっす!」

 

 

サクラには悪いが昇進なんかできるかどうか。

そもそも生きて帰れるかすらわからん。

だが人出は多い方が助かる。

……帰ったら司令には私の独断だって言っとかねぇとか。

そんなこと思ってると聞こえてきたエリカの声。

 

 

「ま、待って!」

「何スか、あっしら、これから忙しいn……」

「私、たきなの変わりをするって言いました。……だから一緒について行かせてください」

「……どうするッスか、フキさん?」

「時間がねぇ、勝手にしろ……」

 

 

リーダーの私が勝手な行動するんだ。

勝手な行動すんなってどの口が言えるんだ。

……各自の判断にすべてを委ねるしかない。

 

 

「ヒバナ……ごめん、私……!」

「オーケー、任せておいて。アンタはたきなの分、しっかりこなせよぉ?」

「ありがと!」

「帰ったらちゃんととびきりのお礼してあげるんスよ?」

「楽しみに待ってるからな」

「言われなくても、この前たきなと鈴仙が働いてるお店でとってもおいしいパフェ見つけたんだ!」

「おい、時間がねぇっつってんだろ! ……行くぞ」

「はい!」

「了解ッス!」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

制御室に向けて慎重に足を進める。

エリカは後方の警戒と安全確認、サクラと私は前方でサーチアンドデストロイ。

途中にちらほら敵がいるが戦闘経験乏しそうな奴らばっかで正直今んとこ順調すぎる。

まあそもそも真島の手下は修羅場を潜り抜けてきたような手練れじゃねぇ、いわゆるアマレベルの連中で、サードリコリスですら一対一なら勝てる。

そんなヤツらに私たちが遅れをとるわけないんだが……

 

 

「オールオッケーっす!」

「後ろの方も安全確認終わったよ! もう敵はいないみたい」

「……まだ安心すんには早ぇぞ」

「もちろんわかってるッス、この先制御室へ続く道はここ一本だけッスからね。最終目的地到着までは気ぃ抜きませんよ! ゲームでも何でも最後に行くにつれて敵が強くなってくのはセオリーっす!」

「……警戒の意味わかってんならいい。ま、どうせ数か増えるだけだろうが……」

「フキさん、それフラグじゃ……のわッッ!」

「さっきの確認は何だったんだっ、用心に角の方に行くなッ!」

 

 

曲がり角なのに確認もせず無用心に歩くサクラの首根っこを引っ張る。

やっぱり警戒しないで浮かれてんじゃねぇか!

 

さっきまでサクラがいた場所には弾丸の雨でコンクリート壁が打ち砕かれボロボロになる。

機関銃持ちか、しかも狙いも正確……

 

 

「うっわ、あっぶねぇ!? ざっす、間一髪助かりました……って、今のはフキさんのフラグのせいッスよ、不用意な発言したから……」

「フラグだとか変なゲーム用語出すんじゃねぇ! 私にわかるわけ……ってそんなのは後だ、何人いた」

「見えたのは筋肉バッキバキの男二人ッス……今までのヒョロいやつらとは違う感じっした」

「……少なくともプロっぽいな、しかも二人」

「げぇ、そんなとこ突っ切るんすか!?」

「でもそこを通らないと制御室に行けないんでしょ?」

「ああエリカの言うとおり……殲滅するしかない。……三つ数えたら射線を避けつつ突入だ、いいな」

「うへぇ、了解ッスぅ……」

「エリカは私らの突入前に障壁展開して意識をそらせろ、できるな」

「了解!」

 

「一……二の……三ッ!」

 

 

次の瞬間、防弾エアバッグを障壁として展開するエリカ。

エリカに気づいた敵は瞬時に機関銃での連射を始め、おかげで壁やらその辺にあった物がボロボロに破壊されて塵が舞って視界が悪くなる。

死ぬほど機関銃ぶちまけて、テメェらはたきなかっ!?

 

だがおかげで私たちの位置までは把握できないはず。

エリカの囮と埃で遮られた視界を利用してマシンガンの弾に当たらないよう素早く突入し身を隠せる所まで走る。

隣でも「ひょえぇ~、マシンガンぶっ放すとか、たきなじゃないんスから!?」つう声が聞こえてくる。

ってヤバッ、手榴弾まで転がしてくんじゃねぇ!?

 

 

「サクラ!」

「はい!」

 

 

間一髪、爆発寸前で避けられた。

だがこっちの方に手榴弾転がしてきたってことは突入したことも位置もバレてるってことか。

……ならこそこそ隠れずに得意分野を押しつけつつ真っ向から仕掛けるか。

そう思ってさっきまでマシンガン放していた奴らの方に銃を構えるも、埃が落ち着いて視界がよくなった時、奴らがいた場所には機関銃だか残されていただけだった。

 

 

「一体どこに……ガッ!?」

「……ッ!?」

 

 

チッ、サクラが蹴られてエリカが巻き添えに……

こうなりゃ私が……!

そう思って発砲しようとしたが間合いは近距離、腕を捕まれて弾は別の方向へ飛んでいく。

クソッ、千束みたいに近距離の格闘になれてないせいで対応できねぇ!?

 

 

「ガぁッ!」

 

 

コイツ、首つかんで来やがった!

どうすれば勝てる……!

圧倒的な体格差、腕を捕まれて銃を使えない……

息が続くうちに何とか形勢を建て直さねぇと。

そう思って鞄なんとか手を回し、そこに入っているナイフを取り出し首をつかんでる方の腕にぶっ刺した。

その瞬間わずかに首にかかる力が緩んだ気がしたが、それでも私の力じゃどうにもならない程度でナイフはほとんど効いていない。

 

ヤバ……マジで意識が……

視界が狭まりブラックアウトしかけそうだった、その時、一発の銃声の後急に首にあった力が消え失せた。

 

 

「ゲホッ……ゲホッ……な、何が……」

 

 

体中が酸素を求めてんのに首を絞められていた反動で咳が止まんねぇ。

そのせいで周囲の状況がわからん……

一体何があった、どうして急に解放された?

だがそんな疑問、さっきまで首を絞めていた敵の頭から流れ出ている血液を見れば一目瞭然だ。

 

 

「ご無事でしたか」

「テメェ……」

 

 

サクラを蹴り飛ばした方の敵に放たれる一発の銃弾は眉間に着弾し鮮血が流れ落ちる。

そんな中、淡々とした、心配してんだかしてねぇんだかわかんない声。

私らの方に顔を合わせずに撃ち殺した敵の方をじっと見つめている、旧電波塔に行ってたはずのたきながいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Erika side>

 

やっぱりたきなの代わりを務めるには実力不足すぎたかな……

真島の手下一人にサクラも私も吹き飛ばされ、フキも苦戦して今にもやられそうで……

 

形勢を立て直すにはあまりにも絶望的な状況。

でもたった二発の銃声が状況を逆転させた。

 

 

「なぁだアンタっすか、新手の敵が来て絶体絶命のピンチかと思って焦ったぁ」

「たきな!? どうしてここに……旧電波塔に言ってたはずじゃ……」

「ああ、そちらに用が無くなりましたので……遅くなりすみません」

「そっか……じゃあ鈴仙は助けられたんだ! よかったぁ……」

「……」

 

 

真島も倒しちゃったし本当に凄いや……

私じゃ代役務まりっこないよ。

改めてたきなの凄さを確認したけど、そんなたきなは俯いててどこか浮かない表情。

千束さんも鈴仙も助けられたのにどうしてそんな雰囲気なんだろう……

 

 

「勝手に遅刻扱いで抜けたくせに……文句言ってやりたいとこだが正直助かった」

「強いて言えばもうちょい早めに来てほしかったッスけどぉ……その相変わらずのヤバい腕前で助かったッス、サンキューたきな!」

「いえ……」

 

 

フキもたきなの雰囲気の暗さに気づいたみたい。

頭をかしげて心配そうにたきなを見ている。

 

 

「オマエ……どうした、何かおかしいぞ?」

「いえ、別に……」

「ホントか? まあ何もないならいいんだが……。つーか救出できたならあのアホ二人はどこだ」

「二人は旧電波塔です。それと鈴仙から延空木にいるリコリスの救出を頼まれてコレを……」

 

 

たきなの手にはUSBみたいな物。

それをフキに渡し、敵が使ってたマシンガンとその弾を回収しだすたきな。

 

 

「なんだコレ?」

「真島のとこのハッカーがラジアータを阻害していますが、このUSBを制御室の制御装置につなげばラジアータの機能回復できると……」

「おおっ、それじゃあ勝ったも同然ッスね! さっさとつなぐ場所見つけて終わりにしちゃいましょーよ!」

「そうですね。リリベルがそろそろ到着しますし急いで接続しましょう」

「……あれ、たきな? 今リリベルって言った?」

「ええ……現在延空木のリコリスを殲滅しようとしてますから早k」

「もも、もしかしてヒバナたちも危ない!?」

「そうなりますが……」

「フキ先輩どうしてそんな重要なことを先に行ってくれなかったんすか!?」

「こーなって戦闘もクソもなくなると思ったからだ。……急いで探すぞ」

 

 

急いで探さないと私たちだけじゃない、ヒバナと負傷者、救出班のリコリスも危ない……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「ねぇどこにあるッスかぁ? どこにも見当たらないッス……」

「それを探すために頑張ってるところだろうがッ! エリカ、そっちはどうだ」

「こっちにはなさそう……フキの方もなさそうなの?」

「こっちも見たらねぇな。下のとこも見たか? ……ってたきな、何してる」

 

 

懐中電灯を使ったりして必死に探しても見つからず、一体どこにあるんだろうと思ってるとたきなが耳の無線に手を添えて誰かと連絡を取ってる。

こんな大変なときに誰と……

 

 

「うちの情報担当から連絡です……。リリベルが到着した、と」

「えぇ~!? マジすか、到着早すぎだろ!?」

「チッ、嫌な情報ありがとよぉ! オマエら急いで入り口塞げ、少しでも時間を稼げるようにな!」

「サクラ、この重いの扉のところに……!」

「逆っ側持つッスよ……って重っ!? ウギギギ……ほら、アンタも手伝えよ!」

「お願いたきな、二人じゃちょっと重すぎる……!」

 

 

リリベルがこっちに入ってくるのを妨害するために重いものをサクラと二人と持ち上げようとしたけど重すぎて持ち上がらない。

みんなで持ち上げればギリギリ行けるかどうかくらいには重いこれと三つ同じのがあるから、全部妨害用に使えれば時間を稼くことができるかもしれない。

そう思ってたきなにも手伝ってもらおうとしたんだけど……

 

 

「二人ともそんなことしなくて大丈夫ですよ」

「それってどういう……」

「……フキ、このUSB頼みます」

「オイ、何する気だ」

「……リリベルが来ますので、私が食い止めておきます」

 

 

機関銃を肩からぶら下げて入り口の方へ向かおうとするたきな。

確かにこんな重いもので通路を塞ぐよりも迎撃した方が時間的には効率はいいのかもしれないけど、相手は集団のリリベル、一人で行こうとするなんて無謀すぎる……!

どうして簡単に命を捨てるような選択ができるの?

もし死んじゃったら私たちも鈴仙たちも悲しむのに……

 

 

「バカっすか!? オマエも一緒に制御室前の扉、入ってこれないように物で塞ぐッスよ! フキさんの言うこと聞いてなかったんスか!?」

「足止めする役が必要なんですよね? だったら時間をかけない方がいいはずです、行かせてください」

「……許可できるわけねぇだろ。時間稼ぎの作業が終わったらまたUSBポートを探すんだ。そして全員で生きて帰還する。これは命令だ!」

「……」

「不満なら後で聞いてやる。今は私の現場だ! ……それに、お前を死地に送り出すようなことしてみろ、あのアホ二人に殴られろってか?」

「大丈夫です。千束も鈴仙も殴りに来ませんから」

「強いから死なないってか? だとしたら相当慢心だな。……それともアイツらが優しいからとか抜かす気か? どっちにしろ却下だ、さっさと働け死にたがり……」

「……わかりました」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「……おっ! もしかしてこれじゃないッスか!」

「たきな、USB貸せ! サクラ、どこにあった……」

「ココここ! この奥の方に……」

 

 

よかった、ようやく見つかった……

そう思って安心したそのとき、入り口の方から銃声と爆発音。

 

 

「チッ、もうお出ましか……」

「……エリカ、ちょっと、行ってきますよ」

「た、たきな!? 何をして……!? 待っ……」

 

 

私が止めるまもなくマシンガンを構えて入り口の方へ向かうたきな。

そして躊躇なく引き金を引いた。

 

何だろう、この既視感……

前みたいに私たちを守ってくれようとしているはずなのに、いつもと変わらず合理的で冷静な様子なのに……

どうしてこんなにも違和感があるんだろう。

 

全部の銃弾を撃ちきったのかトリガーは引かれたまままのに銃声が一切無い。

ドアの向こうからは爆発音が聞こえない代わりに呻き声だけがわずかに聞こえる。

さっきの不意な弾丸の雨に撃たれてほとんどのリリベルは……

そんな現状を呆然と見るしかできない私の代わりにフキが動いて、たきなの頬を殴りつけた。

 

 

「オイ、死ぬ気かッ、オマエに独断行動を許可した覚えはねぇぞッ!」

「……生きてますよね?」

「チッ」

「そんなことよりUSBの接続終わりましたか?」

「テメェのクソッタレな行動の最中に終わったわ。……なぁ、どうしてこんな無茶するんだ……お前が死んだらアイツらに会わせる顔がないっつったろ」

「そうッスよ、そもそも命令を破るなんて言語道dってめっちゃ血ぃ出てるじゃないッスか!?」

「……サクラ、手当てしてやれ」

 

 

殴られて胸ぐらを掴まれてたのに平然とした様子のたきな。

その体をよく見るとあちらこちらに被弾した痕。

……なのに痛みも苦しさも何も感じさせない淡々とした声。

まるで自分のことなんかどうでもいいみたいな……

 

せっかく鈴仙のこと助けられたのにどうして自分のことを大切にしてくれないんだろう。

自分が死んでしまうことで悲しむ人なんか誰もいないとでも思ってるような……

鈴仙だけじゃなくて私だってたきなには危ないことして死に急ぐなんてことしてほしくないのにどうして……

 

 

「ねぇ、たきな。どうしてそんなに自分のことを粗末にするの……。鈴仙たちを助けたんでしょ? だったら誰かを助けたくても危ないことしちゃ……」

「私は……」

「たきな?」

「私は、鈴仙と千束を助けられたのでしょうか」

 

 

サクラに手当てされながらもこちらを見ずに力なく項垂れるたきな。

おかしいこと、わからないことだらけだ。

だってたきなが真島を倒して、鈴仙と千束さんを助けて、私たちも助けてくれたのにどうして今更助けられたかどうかなんて聞くんだろう……

 

 

「何だ、アイツらケガでもしたのか」

「……起きないんです」

「は?」

「鈴仙が最後に延空木に行ってと言って、意識を失って……。その後私がいくら呼び掛けても、いくら肩を揺さぶっても、何しても……」

「死んでは……ないんだろ?」

「……」

 

 

フキの言葉に頷くことも否定することもしない。

生死不明の重体なのだとしたら辻褄が合うけど……

もし死んでるなんてことがあったら……いや、根拠はないけどきっとあの子なら大丈夫だよね。

 

 

「私がピンチになったら起きてくれると、死にかけたら起きてくれると、そう思ってたのですが、結局来てはくれなかったみたいです。……何ですか、私には自分のことを粗末にするなって言って……私よりよっぽど自分のこと粗末にして……」

 

 

いくら心の中で大丈夫だと思ってても軽々しく確証のない言葉で慰めることは、私にはできなくて、結局何もたきなに言えなかった。

 

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