優曇華と彼岸花   作:桃玉

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<Kurumi side>

 

パァァン、パァァン、パァァン、パァァン…………

 

喫茶店の中だというのに銃を乱射する音が鳴り響くのは何なんだ?

店内で誰かが乱射しているのならばまだわからなくもない……いや、わかりたくない。

まさか本当に店の(地下)で射撃をしているなんて……

 

 

「ミカ…………店の下に射撃場って、お前アホなのか?」

「防音には金がかかったが、良い仕事には日頃の研鑽が必要だ」

「でも今までなかっただろ?」

「千束は狙って打った弾は全部避けられる。狙いが定まらない非殺傷弾でも距離を詰めて撃ちまくればいい」

「だから今まで射撃訓練は必要なかったんだよね~」

 

 

なるほど、確かにそれなら千束は射撃の訓練は必要ない。

現在、たきなが射撃練習しており、千束はその監督だ。

 

千束の銃には非殺傷弾が装填されており、近~中距離の命中精度はかなり低い。

一方たきなの銃には実弾が装填されており、精密動作をする機械のように全弾ダミーの急所を射貫いていた。

その訓練場の映像が目の前のタブレットを通して伝わる。

 

 

「おお~、凄いな」

「人質に取られた人を機関銃で助けるような人ですよ~、しかもしっかり人質は無傷。……波長も安定してますし、この様子なら非殺傷弾じゃなくても急所以外を狙って撃てますね。流石ちゃんとしたセカンドリコリス!」

「波長、か…………時々言ってるが一体何だ、それは?」

「う~ん…………こう、何て言えばいいのか……人が纏うオーラ的なヤツ?」

「……ボクにはよくわからないな」

「あ、あはは……」

「だが、鈴仙の直感はエスパーの名に恥じない程だ」

 

 

うまく説明できず申し訳なさそうに頬を掻く鈴仙。

ボクは直感や霊感(シックスセンス)のようなモノは基本的に信じず、ミカの言葉にも疑心的になる。

 

 

「なあ、鈴仙、一体どういうトリックだ。普通に考えて不可能だ」

「え、で、でも本当に何となく雰囲気(?)、みたいなものがわかるっていうか……」

「……まあいい。ところで練習場、チビ(鈴仙)は使わないのか」

 

 

画面から顔を離し、鈴仙の方に視線をやるとなんだか困ったような様子で躊躇いがちに声を出した。

 

 

「い、いやぁ、実は私……銃持ってないんですよ」

「それは一体どういうことだ? ボクはお前が使っているのを見たこと……」

「えっ? 私ここ数年銃は使ってないですが……。一体どこで?」

「あ、いや……………………か、勘違いだったかもしれん! ……忘れてくれ」

 

 

そう言えばまだボクがここに来る前、ドローンで見ていたときの話だった。

もしここで話を暴露しようものならストーカー認定されてしまう……

それだけは回避しなくてはと思い視線と話をそらす。

 

 

「…………昔の映像にでもあった? どうせDAハッキングして漁ったら見つけたとかでしょ?」

「ど、どうだったかな」

 

 

DAのハッキングなんてこと、す、するわけないんだからな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

ただいまDAで人気だというゲーム(1vs1の銃撃バトルゲーム)をプレイ中の私こと千束は勝利目前!

いつもの仕事とゲームでは勝手が違って苦戦したけど、もうこれは勝ち確でしょ!

 

……と思った瞬間、相手のキャラのスタン攻撃発動した!?

 

 

「それっ、そこっ! ズラしがああ゛あ゛あ゛っっ!?!? うぐぐぐぐぅ、ぐやじいぃぃ!!」

「ムキになりすぎだろ」

「千束も私の仲間ですね」ニコッ

「い、いやっ、まだだ!! 私はまだ敗北を認めてないっ!!」

「いや観念しろよ。…………それにしてもコイツ、一体何もんだ?」

「だぁってぇ、この名前がムk……あ、たきな!」

 

 

お店の扉からたきなが来た!

この前の射撃の腕前、仕事での私とは違う堅実な立ち回りを思い出し、ピンとひらめく。

たきなだったら敵をとってくれると。

 

 

「いいとこに! これやって、これやってっ!!」

「えっ、あ? はい!?」

 

 

私は状況をイマイチ理解してないたきなの手を引っ張りVRゴーグルを被せる。

たきなはVRゲームに慣れてないのか顔をあちらこちらに動かし、その様子がくそおもrかわいらしい。

 

 

「お、お~! リアルですね……ナニコレ」

「はいはい、コレもって~、敵とってよ~、スタート!!」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「いやー! 勝った勝った大勝利! ブイ!」

「喜びすぎでしょ……」

「千束は何もしてないのにね~」

 

 

たきなの勝利で見事勝ち越し、清々しい気分だぜ。

新しいパンツをはいたばかりの、正月元旦の朝のように…………ってそう、パンツっ!!

 

 

「ねえ、二人とも……たきなのパンツって見たことある?」

「あるわけないだろ……ノーパン派か?」

「別に黒いパンツだっていいと思いますよ?」

 

 

違う、そうじゃない!

クルミは確実に見えてないから論外だとして、鈴仙……何たきなのパンツ肯定してるんじゃわれぃ。

見えたなかったんか!?

それとも見えた上で言ってるのか!?

私がおかしくなっちまったのか!?

 

 

「ちょっと鈴仙こっち来て!」

「はっ、はい? ってスカート引っ張んないで!!」

 

 

私は真相を解明するために鈴仙を引き連れ、たきなが着替えてる部屋にすぐさま突入。

間髪入れずたきなのスカートをバッとめくりあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Takina side>

 

「…………何です、セクハラですか?」

「なに……こ、れぇぇ……」

 

 

質問を質問で返すなと先生に習わなかったのか。

その質問の意図がわからず小首をかしげ、ありのままを伝える。

 

 

「……下着ですが?」

「ぬぁんで男もんの下着はいてるのおおっ!? っぅ……鈴仙!!」

「へあ? な、なんですkああああああ?!?!」

「そうっ!! 普通はこういうパンツ履くもんでしょ!?」

 

 

ドアの前にいる鈴仙が私と同じようにセクハラされて顔を赤らめ必死にスカートを押さえている……

しかしその甲斐なくかなり細く白い太ももとウサギ柄のパンツが見える。

千束はそのパンツを激しく何度も指さし、睨み付けるような視線をよこす。

……まさか私がミスしているのを指摘している!?

 

 

「こ、これが指定なのでは!?」

「し、指定っ!?」

 

 

千束が驚き叫び、ドスドスと足を踏みならしながら店長さんの方へ喧嘩腰で行った。

千束に追いていかれその場にペタンと座り込む鈴仙を立ち上がらせ、二人で店長と千束の元へ向かおうとする。

 

 

「もう……お嫁に行けなぃ」

「大丈夫ですか? ほら立てます?」

「なんで平気そうなのぉ!」

 

 

そう言われても、見せて恥ずかしいものでもないし。

そもそも恥ずかしい下着を着ているのが問題なのでは?

 

 

 

 

****

 

 

 

 

バンッ「聞かせてもらいましょうか!」

 

 

千束がカウンターを叩き、さながらドラマで取り調べを行う刑事のように店長に問い詰める。

しかし容疑者、もとい店長はその圧を微塵も気にせず淡々と自供し始める。

 

 

「店の服は支給するから下着だけ持参してくれと」

「どんな下着が良いかわからなかったので」

「だからって、なんでトランクスなの!?」

「好みを聞かれたからな」

「コレ、履いてみると結構開放的で……」

「そうじゃなぁいっ!」

 

 

そもそもお洒落に興味はあまりないので仕事に差し支えなければ何でもいいのですが……

それに着用してみると運動の妨げにならず、乾きやすい、蒸れないし、見られたところで恥ずかしさを感じない、驚くべきほど快適な機能性のある下着で感動したものだ。

その良さを教えるべく千束に感想を説明しようとしたが言葉で中断されてしまった。

 

 

「それとさっきからそこ! 体育座りしてウジウジすんな! 前まで平気だったろ、なんでこんなんになっちゃってる……?」

「いくら同性の姉や親友だろうと恥ずかしいもんは恥ずかしいのっ!!」

「思春期だ。察してやれ」

「ぁうぅ……」

 

 

顔を赤く染めている鈴仙が床に手をついて、さらに赤くなり蒸気が出ている。

私は鈴仙のように多感な時期はDAにいたし恥ずかしいなど考える暇もなかったから……

 

 

「と、に、か、く、明日駅に十二時集合だから!」

「仕事です?」

「ちゃうわ! パ・ン・ツ! 買いに行くの!」

 

 

そう言って千束は帰ろうとドアに手をかけ体を外に出す。

明日の休日は任務で潰れるのかと考えていると閉まりかかったドアが再度開き、千束が顔を出す。

 

 

「あっ、制服着てくんなよぉ? 私服ね、私服ぅ!」バタン

 

 

再びドアが閉まった。

私服の詳細を話してもらわなかったため一体どのような服がいいのかわからず……

 

 

「……指定の私服はありますか?」

「……」

 

 

何か言いにくそうな様子で無言の店長。

今回は店長を頼りにできないらしい。

 

さて、どうするか、困った……

残る頼りは鈴仙だけだけど、何か提案はないかと目で訴えてみる。

 

 

「……えっ、私も付き添いに行く流れ?」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

軽めの昼食で済ませ、目的の地へ足を運ぶ。

予定時刻より数分早かったが、すでに予定の場所に二人がいた。

いつも早めの行動をしている鈴仙はともかく、余程楽しみだったのか普段遅刻気味の千束がいたことには驚かされる。

鈴仙は私に気づいたのか小さく手を振ってこっちだと合図する。

 

 

「お待たせしました」

「いや~みんな早かったね」

 

 

遅れて千束がこちらに目を向ける。

何度かパチクリと瞬きをし、普段着姿の私を認識する。

 

 

「お、おおう、新鮮だなあ……?」

「問題ないですか?」

「問題はないけどビミョーだね……」

「鈴仙が選んでくれたんですが……」

 

 

千束が鈴仙をジト目で見つめる。

 

 

「な、何その目!? まるで『鈴仙のファッションセンス壊滅的だわ……。この数年間一緒に買い物してきたのにこの始末とは……』みたいな目だよ!? そもそもたきなの服がこうゆーのしかないのがいけない!」

「わ、私のせいです!?」

「ま、今日はしっかり洋服も買っていこうか! ………………ところで、銃持ってきたのか、キサマ?」

「駄目でしたか?」

「……抜くんじゃねえぞ?」

 

 

妙に威圧的な笑顔だ。

確かに銃を所持しているがそこまで悪いことだったのだろうか。

リコリスとしては普通のことだと思っていたし、現に……

 

 

「鈴仙も持ってきてるじゃないですか?」

「ん、ああ、鈴仙のは火薬も弾もなしのオシャレアイテム(笑)だから……見た目もオモチャっぽいしね。オッケー?」

「オーケィ! パァンッて畑荒らしを音で威嚇するやつと性能は同じ、いいでしょ!」

「相変わらず意味わからないこと好きですね」

 

 

二人らしいといえばらしいですが……

しかし目立つ服装は任務に支障が出る可能性がある。

 

 

「……千束、その衣装は自分で? 任務でそんな目立t……」

「任務でも衣装でもねえ。次からそんな物騒なアクセサリー捨ててこい」

「鈴仙は……」

「以前千束に買ってもらったやつです」

「そういやそれ一昨年買ったやつだな? 帰ったらトランクスと一緒にポイだから」

「ご無体な!」

 

 

なるほど、衣装は千束の趣味でしたか。

鈴仙もパーカーじゃなくて新鮮ですが……確かに少しサイズが合わなくなっているのでリサイクルとかすべきですね。

 

 

「いくら私服とは言え、その、派手すぎません?」

「任務じゃないし気にしな~い気にしない! しっかり公私を分けるのができる仕事人だよ!」

 

 

悲しそうな顔になっている鈴仙に合掌しつつ、任務(任務ではなかったらしいが)を遂行すべく洋服店に向かった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

場所は変わり巨大なショッピングセンター内の洋服店。

私は試着室内に取り残され、主に千束が持ってくる明らかに戦闘向きではない服の試着に取り組んでいた。

 

 

「どっちがいい?」

「これいいんじゃない?」

「おお、こっちもこっちも!」

「似合う!」

いいね(いいッ)……!」

「「めっちゃかわいい!!」」

「どうも……」

 

 

千束が本当の目的を忘れて私の服を熱心に楽しそうに選んでいた。

鈴仙も楽しそうにしていますが時間管理は……

 

 

「あの…………下着は?」

「えっ? ……あっ、そうだった下着だった」

 

 

急ぎ足で移動する羽目になった。

 

 

「タイムスケジュール、どうなってるんです!?」

「んなモンないに決まってんだろ!」

「予定も立ててないのに誘ったんですか!?」

「予定はその場で決めるべし……それが千束流ってね! 時間とか決めると急いじゃって楽しめないからあえて、そう、あえて予定は立てないんだよ! 時間を忘れて楽しむことこそ醍醐味だし!」

「ポイこと言ってるけど本当はやりたいこと多すぎて決められないだけ」

「やっぱり……」

「ちょ、鈴仙!? たきな!?」

 

 

なんてやりとりをしつつ目的地に到着。

いつもは支給されているものだけを身につけていたからどれがいいのかわからず眉をひそめる。

 

 

「どう、好きなのあった?」

「好きなの、を選ばなくちゃいけないんですか? 仕事に向いているものがほしいですね……」

「銃撃戦向けのランジェリーですか? それならこちらに……」

「あるかぁぁあっ! そんなもん!」

「………これ、いいんですけどね。通気性もよくて動きやすいし、さすが店長だなって」

「いや先生そんなこと考えてるわけないだろ。……だいたい、トランクスなんて人に見せられたもんじゃないでしょ」

 

 

頬をわずかに染める千束。

別に人に見せたところで問題ない気がするというか、今千束が選んできたパンツの方が恥ずかしい気がする。

 

 

「パンツって見せるものじゃなくないですか」

「いざって時にどうすんの」

「いざってどんなときです?」

「…………知るかっ!!」

 

 

千束のピンク色の頬がさらに赤くなり顔全体に広がる。

やはり千束は恥ずかしい下着を着用しているのでは?

私は確認するため試着室に千束を引きずり込み、千束が抵抗するまもなく試着室の鏡張りの壁に追いやる。

 

 

「え……な、なに?」

「千束のをみせてください」

「ぅええっ?!」

「人に見せて大丈夫なパンツかどうか知りたいんです!」

「千束、たきなもこう言ってるし見せてよ。それに千束だけパンツをさらしてないのも不公平だと思う」

「えっtあっ、ええっと~……」

「確かに鈴仙の言うことも一理ありますね」

「ほら早く!」

「…………~~ッ!!」

 

 

千束はパンツがある部分に視線が集中したためかさらに顔が赤くする。

観念したのか恥ずかしそうに腰に手をかける。

 

 

「千束の勝負下着、今日はそういう感じなんだ……」

「……これが私に似合うっていうと違いますよね」

「そのとおりだよっ、なんで見せた私!」

 

 

そんなに恥ずかしいんでしょうか?

恥ずかしがるほどのものでもないでしょうに……

千束の顔は完熟のトマト色になった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「これで男物のパンツとはおさらば、部屋にあるトランクスと古着は全部処分するから」

「はい……」

「千束との思い出が……」

「そこ、私を悪者にするな!」

 

 

トランクスの良さを理解されないままお別れになるとは、複雑な気分だ。

うきうきルンルンな千束とは対照に鈴仙は今の服に愛着があったのか涙目だ。

二人と一緒にいると退屈しないなと感じていると千束から楽しそうな声が上がる。

 

 

「さ、て、と! 次は千束さんお待ちかねのおやつタイムだぁ!」

「イェイ、イェイ!!」

「目的は完遂しましたよ、というか立ち直り早いですね」

「完遂って仕事じゃないんだから……仕事と食事と遊びは別物だから気分変えないとやってられないよ!」

「ってことで今日はこれからだよぉ~♪」

 

 

そんなわけで私たちはおやつを食べに移動した。

到着してすぐメニューに食いつきすぐさま注文をとる千束と鈴仙。

 

 

「私はフランボワーズ アンド ギリシャヨーグレット リコッタ ダッチベイビーケーク、たきなのはホールグレインハニーコームバターウィズジンジャーチップスで」

「こっちはラルティザン・ドゥ・サヴールのドボシュ・トルテ! お土産用にポン・デ・リング3つお願いします!」

 

 

呪文かと思うほどの長い名前をスラスラと注文する二人。

店の奥に姿を隠す店員を見て期待した目をしている二人には呆れる。

 

 

「ケーク、ハニー、バター、チップス……名前からしてカロリーが高そうな」

「野暮なこといわない、女子は甘いものに貪欲でいいのだ」

「千束、良いこと言った! それにスウィーツのためなら西へ東へ走り回る、新メニュー開拓しつつカロリー消費もできる、まさに一石二鳥!」

「寮の食事もおいしいですけどね」

「確かにそうかもだけどスイーツ作ってくれないからなあ~。永久にかりんとう」

「私あのかりんとう好きです」

「私食べたことないんだよね~。ずっとお餅食べさせてもらってた」

「偏食家だもんなぁ……。だからそんなに低身長の痩せっぽちなんだよ。もっと頼んでガツガツ太れェ!」

「人が気にしてるところを……」

 

 

かりんとうで十分だった身からするとそこまでカロリーに執着する理由がわからない。

ただあの味を楽しめていない鈴仙は割と損してると思う……お餅に興味はあるが。

それにここで食べるものがかりんとうを超えるおいしい食べ物なのかも疑問だ。

 

そうこうしていると店員が注文したカロリー「おまたせしました」と持ってきてそれぞれの席におく。

生地の上にクリームにシロップ、ジャムなどの甘いフルーツ、チョコの香り。

さすがに甘過ぎではと思っていると前の方からキラキラした声が聞こえる。

 

 

「「うわっは~~!! おいしそ~!」」

「これは糖質の塊ですね……」

「「たきなっ!!」」

 

 

シンクロしている二人がすごい剣幕で叱るような声を上げてきたので少し驚く。

しかしその後に続く言葉を聞いて驚きが呆れに変わる。

 

 

「人が一生で食べられる回数は決まってるんだよ? すべての食事はおいしく楽しく幸せであれ~~」

「そのと~り~! ノンストレスこそが長生きの秘訣だよね~」

「おいしいことはいいことですが、リコリスとして余分な脂肪はデメリットとなります」

「そんなデメリットこれを目の前にしたら無力、私たちの体は水以上に糖分を欲しているかrうまぁ!」

「その分走る。その価値がこのお菓子にはあるnおいしい~! ほらほらぁ、たきなもたべて!」

 

 

ほっぺが落ちそうなほど幸せそうな顔で食べている二人、そんなにおいしいのだろうか。

あのかりんとうと同等くらいなのだろうかと思い一口。

 

 

「……おいしいな」

「「でしょ!」」

 

 

見上げると空は青く、白い雲と鳥が見え、夏のいい日和だ。

風が心地よく私の髪を撫でた。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「食べたらいいところに行きま~す!」

 

 

唐突にそう千束に言われ、どこに行くのだろうかと思っているうちに手を引かれいつの間にか着いていた。

見渡す限り青が広がっているここは……

 

 

「どこに向かっているのかと思えば水族館ですか……」

「きれ~!」

「でしょ、私ここスキ~♪ コレ年パス~」

「も~何で一緒に行こうって誘わなかったの!」

「いや~、この前見つけたばっかりだしメンゴメンゴ。ってことでいざ行かん、疑似ワイハへ~!」

「「行っこう~行っこう~夢~の国へ~♪ み~んなで行~きた~いハ~ワイ旅行~♪」」

「……仲いいですね」

 

 

そう言って千束は年間パスポートを見せつける。

その事実に鈴仙はプリプリと怒っていたが千束が平謝りして、変なオリジナルソングを息ぴったり歌う二人を見ながら歩調合わせて早速水族館の内部に潜った。

そして最初に珍妙な生物が目に入る。

二人は面白そうにガラスの中を見てかわいいみたいなことを話しているが私はそれ以上に不思議に思ったことを知りたくて検索をかける。

 

 

『タツノオトシゴ トゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属 Hippocampusに分類される魚の総称……』

「どうしたの?」

「これ魚なんですって」

「まじ?……(うお)だったのかコイツ」

「登龍門の話もあるしね、知ってた。……ちなみにワニも魚類だよ」

「む、流石にこの千束さんをなめすぎじゃありゃせんか? ワニはは虫類……だよね?」

「不安がってるじゃん」

「でもその通りですよね?」

「チッチッチ……実は軟骨魚類なんだよねぇ。ホラ」

「ま、まじだ!? ワニはは虫類じゃなくて(うお)っ!?」

「……和邇鮫(ワニザメ)って書いてるじゃないですか。これサメの一種ですよ……」

 

 

鈴仙がいたずらがうまくいってクスクスと笑う。

学説などを読むと名前の由来などが書かれており、どうやら日本神話にも登場する生き物らしい。

 

 

「ほえ~。出雲大社の話に繋がるんだ……」

「そうそう大国主命(おおくにぬしのみこと)因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)が……」

「神話に興味あるんですね」

「うん? そんなことないよ? ただ……何か懐かしい感じがするんだよね」

「そうですか……不思議なこともありますね? 私としては神話より生態とか進化の歴史が気になります。タツノオトシゴがこの姿になった合理的理由とか……」

「合理? 生態!? 歴史!?!?」

「なんかあるでしょう? 魚類がいきなりは虫類になるよりは現実的なやつで」

 

 

そうして私は再び調査作業に入る。

横目で見た鈴仙と千束はなぜか不機嫌そうだった。

鈴仙はともかく千束はどうしてそんな顔をしているのか……

 

「お前は水族館に何をしに来たんだ……」という目を向けられるのは心外です。

水族館というのは魚の生態や特徴を学ぶ施設でしょう?

それくらいの常識は知ってます。

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