この素晴らしい魔王軍に死の支配者を!   作:ちくわ部

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7話 初めてのクエスト

 

「ということで連れてきましたカズマ」

「どういうことで連れてきたんだめぐみん。人様に迷惑かけるなって言っただろ」

「迷惑なんてかけてませんよ!この人がうちのパーティーに入りたいそうなんです」

「・・・・・・え?マジで?」

「ええ、マジです」

「えっと、じゃあ面接しますか」

 

 他のパーティーメンバーがいるテーブルの席ににつくと、アインズを連れてきた少女はカズマと呼ばれる男に小言を言われる。しっかりしてそうなところと、自ら面接するところから、このパーティーのリーダーの立ち位置にいることが見て取れる。

 

「じゃあまず俺から自己紹介。俺は佐藤和真、カズマと呼んでくれ。よろしくな」

「サトウカズマですね?よろしくお願いします」

 

 黒い瞳に黒い髪。おそらく苗字の佐藤・・・・・・間違いない。日本人、そして転生者である。ただアインズはここでわざわざ反応するようなことはしない。

 カズマは冒険者カードを懐から出すと、アインズに渡す。やはりこの世界では名刺感覚でステータスを見せるものなのだろうか。 プレイヤー同士の戦いが盛んであった『ユグドラシル』ではプレイヤー一人一人の情報が命であったため、見せ合うのは不用心すぎるとアインズは考えてしまう。だが、今思えばこの世界の敵は魔王軍やモンスターのみ。冒険者同士の戦いはないと考えれば、ステータスの見せ合いに忌避感がある者は居ないのだろう。

 

「あー、べつに敬語じゃなくてもいいで・・・いいぞ。なんというか、俺たちまだガキみたいなもんだからさ。」

「そうか?ならばタメ口でいかせてもらおう。それで・・・職業は冒険者なのか」

「何というかまあ、言いたいことはわかるよ」

 

 カズマは気まずそうに頭を掻く。

 ステータスを見てみると、運が非常に高いのと知力が少し高い事以外平凡なものであった。カズマはこの最弱職である冒険者について言及されると思ったのだろう。しかし、アインズにはそれ以外に興味の引くものが冒険者カードにあった。

 

「いや、別にこの冒険者という職業についてとやかく言うつもりはない。ただ冒険者というからにはスキルの構成が非常に面白いものになっていると思ってな。サポート能力に関しては最強と言っても過言ではないんじゃないか?」

「い、いやあ!そこまででもない・・・・・・いやあるな」

「カズマ。あなたは遠慮というものを知るべきです」

「次、自己紹介」

 

 職業について褒められていたのを遮られたのを怒ったのか、カズマはぶっきらぼうに言う。

 アインズの言った言葉は決してお世辞ではない。何故なら彼自身も職業を選択する際に冒険者の選択を念頭に置いていたからだ。職業補正によるステータスの上昇がないというのと、スキル獲得に必要なポイントの数が多いという部分を加味しても、様々な職業のスキルを使えるというのは魅力的である。ただ、高レベルになれば力を発揮するタイプの職業であることを考えると安定性が欠けることから、どうしても手を出すことができなかったのだ。

 

「では名乗るとしましょう・・・・・・。我が名はめぐみん!アークウィザードを生業として、最強の攻撃魔法である爆裂魔法を操りし者・・・・・・」

 

 マントをバサリと翻しながら割って入ってくるように自己紹介するのは、赤を基調としたローブを見に纏う少女、めぐみんである。

 一瞬アインズはめぐみんという名前に疑問を持つが、それ以上に最強の攻撃魔法の名を冠する、爆裂魔法に対して強い興味を示した。

 

「爆裂魔法・・・?それは興味深い。一体どんな魔法なのだ?」

「ふふふ。貴方なら言うと思いました。見せてあげましょう!地を砕き天をも裂くこの力を・・・・・・。ということで、クエストに行きましょうカズマ!」

「だからどういうことでなんだこのアホ!まだ出会ったばっかで自己紹介もしてないんだぞ!」

「じゃあ次は私の番ね。私はアクア、天才アークプリーストにして女神よ!よろしくね!」

 

 女神というのは二つ名であろうか。確かに彼女から膨大な神聖なオーラを感じるが、仮に本物だとしてもいったい何故この場にいるのだろうかという疑問ができる。

 

「女神・・・・・・?」

「を自称している可哀想な子です」

「ああ・・・・・・そういうことか」

 

 納得のいくめぐみんからの答えにアインズは頷く。

 

「えええめぐみん!?なんで黒い人も納得してるの!?ねえカズマもなんか言ってよお!」

 

 アクアは期待した目をカズマに向けるが、彼の口から出たのはアクアを裏切るような発言であった。逆にカズマは憐れみの目をアクアに向けて言う。

 

「まあ・・・・・・そういうことだ」

「成る程・・・・・・そういうことなんだな」

「なぁぁんでよぉぉ!私女神なのに!本当に女神なのに!」

「ごめんな、黒い人。こんな騒がしいパーティーで。あと一人メンバーがいるんだが、癖は強いけど悪い奴じゃないんだ」

 

 アインズは思い出す。かつての仲間たちを・・・・・・。

 希少素材を勝手に持ち出してゴーレムを作るゴーレムクラフター、ソリが合わず喧嘩の多かった聖騎士と魔法詠唱者。エロゲの声優のスライムに、その弟のエロゲ好きのバードマン。

 癖が強かったが愉快な仲間たちであった。それゆえにアインズはカズマの苦労がわかる気がした。

 

「さて、最後になったが私の自己紹介をしよう。私の名はアインズ・ウール・ゴウンだ。アインズと呼んでくれ。職業はカースドナイト(呪われた騎士)。デバフに特化した魔法剣士だそうだ」

 

アインズは冒険者カードを見せる。そこには名前から職業、所持スキルなどのステータスが載っていた。だがそのステータスは受付嬢に見せたものとは変わっていた。

 アインズは考えたのだ。一体何故この冒険者カードに自分のステータスが反映されているのかを。アインズは冒険者カードをつくる際に、念のためステータスを偽造する魔法を使用し、全体的にステータスを下げて剣士職の構成に偽造した。しかし、魔法は発動しなかった。それはアインズが常備している情報系魔法阻害の指輪も同様であり、結果的にステータスがバレることになった。

 アインズが考えた可能性は一つ、そういうものなのであること。

 まるで思考を放棄したような考察であるが、それ以外に考えようがないのだ。アインズは一度、冒険者カードを物体化したステータス画面と表現したが、実際にこれは物体化したステータス画面なのであろう。つまりゲームにおいて自身のステータス画面の表示を妨げられないように、冒険者カードでステータスの表示を妨げることはできないのだ。それが世界の理であり、そういうものなのである。

 だからこそアインズは自身に偽造魔法を使用して冒険者カードを偽造するのではなく、冒険者カード自体に偽造を施したのだ。今のアインズのステータスは、魔術師と近接戦闘職どっちつかずの魔力と筋力のバランスになっている。

 因みに本物のステータスを見た受付嬢は保有する魔力の膨大さから、当然アインズに強くアークウィザードを勧めてきたが、アインズは初心者冒険者を演じるべく、知識の全くない剣士にしようと考えていた。最終的にはカースドナイトがレアな職業と聞いたのもあり、結果的に魔法職と剣士職の中間択である魔法剣士職を選んだのである。

 

「アインズ・ウール・ゴウン・・・・・・わかったアインズ。どんな魔法が使えるんだ?」

「まだスキルポイントを消費していないから、まだ使えるというわけではないが・・・・・・一応相手を金縛りで動きを鈍くする魔法、闇の力で魔法抵抗力を弱める魔法。そして物理防御力を低下させる魔法がある。他にも攻撃魔法があるが、はっきり言って本職であるめぐみんの魔法の足元にも及ばんだろうな」

「や、闇の力・・・・・・!やはり只者ではないですね!!」

 

 めぐみんが目を赤く光らせながら興奮していると、カズマは神妙な顔つきでアインズに尋ねる。

 

「・・・・・・なあ、アインズ。お前ってある特定の魔法に固執してその魔法のためだけにスキルポイントを使わないよな?」

「む?流石に純魔法職じゃないからな。魔法のためだけにスキルポイントを割くことはしない。それに魔法使いに求められるのはその場面ごとに応じた魔法を使えることだ。得意不得意によってある程度魔法の種類が偏るのは仕方がないが、なるべく色んな種類の魔法を持っていた方がいいだろう。場合によるが一つの魔法だけに絞っていくのはあまりいいとは言えんな」

「・・・・・・防御力や魔法抵抗力、状態異常抵抗力にスキルポイントをぶっ放して、攻撃力が全くない上に攻撃が全く当たらないなんてことはないよな?」

「さっきも言ったが私は魔法剣士だ。盾使いならともかく防御ばかりにスキルポイントは使わん」

 

 当たり前だけどと言わんばかりの態度のアインズに、カズマは驚く様子を見せる。

 

「ッス――いや、まだだ。あとは実戦で実力を見たいんだが今からクエストを受けても大丈夫か?」

「いいだろう。だがもう一人仲間がいるんじゃなかったか?そいつを待ってからにした方がいいんじゃないだろうか」

「いんや、大丈夫だ。むしろいない方が好都合だ」

「・・・・・・好都合?なぜだ?」

 

 その問いにカズマは答えることはなかった。もはや彼の頭の中には、優秀な人材を手放すまいという思考しか存在しなかったからだ。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 そこからしばらくして。一行は緑一面の草原へと移動した。この景色をアインズが見るのは初めてこの世界に降り立った時を含めて2度目である。

 

「ねえカズマ、本当にこのクエストで良かったの?私できればこのクエスト二度と受けたくなかったんだけど」

「私にとって取るに足らない敵ですが・・・・・・あまりいいクエストではないですね」

「そうだな、俺もそう思う。だが・・・・・・もしもだ、もしもアインズがこのクエストを難なくこなせることがわかれば、俺たちのパーティーは更なる高みを目指すことができるんじゃないか・・・?」

「「ゴクリ・・・・・・」」

 

 この三人曰く達成はできるが非常に厄介なクエストらしい。初心者が受注することが可能であるにも関わらず上級職のいるこのパーティーでさえ手を煩わせるようなこのクエスト。確かにアインズの実力を測るのには丁度良いものかもしれない。

 討伐クエストだというのは聞いたが一体何のモンスターなのだろうか。アインズはゲーム『ユグドラシル』で凶悪とも呼ばれたモンスターの数々を思い浮かべる。

 

「ねえ黒い人、本当に支援魔法なしで大丈夫なの?」

「ありがたい提案ではあるが断らせていただこう。これは私の実力を見るためのものでもあるからな」

「何この人・・・めっちゃ頼もしそうなんだが」

「おやカズマ。私の顔に何かついていますか?」

「・・・敵感知に反応した!くるぞ!」

 

 カズマは周囲に注意を促すと、地面がモコモコと音を立てて盛り上がる。

 確かに地中を移動するモンスターは厄介だとアインズは納得し、地中から現れるという特徴のモンスターをアインズは記憶の中から掘り起こす。

 地中をから現れるとなれば狙いは地中から出てくる瞬間。アインズは二本のグレートソードを抜き、構える。

 そして、その討伐対象のモンスターは姿を現す。

 

「こ、これは・・・・・・」

 

 ぬらぬらした体に、でっぷりと膨らんだ白い腹。羊のようにどこを向いているのかわからない横長の瞳孔。そう、その見た目はまさに・・・・・・

 

「カエル!?」

「アインズ、あれが討伐対象のモンスター。ジャイアント・トードだ!」

 

 ジャイアント・トードと呼ばれる巨大なカエルは不気味な瞳でこちらを見つめると、のそのそと近づいてくる。

 少々拍子抜けしてしまったアインズであるが、厄介な相手であると聞いたことを思い出す。カエルということもあり、あの巨体で俊敏な動きをするかもしれない。

 

「となれば・・・・・・《カース・オブ・レストレイント》」

 

 アインズはグレートソードをジャイアントトードに向けると、剣と目標を繋ぎ合わせるように黒い魔力と共に呪文が浮かび上がる。やがて一本の線となった呪文の浮かび上がった魔力は、ジャイアントトードの周りを囲み拘束すると、相手は石像のように固まってしまう。

 

「行くぞっ《カースド・エンチャント》!」

 

 今度はグレートソードに紫色の炎のようなものを纏うと、アインズは一直線に目標向かう。

 アインズの驚異的な脚力によって地面は抉られ、周りに土埃が舞う次の瞬間。ジャイアント・トードは文字通り一刀両断され、左右対称にその体が分断される。

 

「ふん、こんなものか。やはり脅威となるのは跳躍力か?もう少し観察すればよかったな・・・・・・」

 

 そしてモモンガはグレートソードをぶんと風を切る音と共に、べっとりとついたジャイアント・トードの粘液を振り落とす。

 

「カズマ、私は感動しました。アークウィザード以外にもかっこいい職業があるんですね」

「少し同意するが、それあまり他の職業の人に向かって言うなよ」

「それで、私の実力は如何かな?」

「「文句ないです!!」」

 

 カズマとめぐみん、両者綺麗に合わさった声が出る。

 

「あれが闇の魔法ですか!やはり私の目には狂いはなかったようですね!是非私達のパーティーに・・・!」

「勿論入れさせてもらいたいところだが、他のメンバーは私の加入に賛成なのか?」

「俺は当然賛成だ!というか、お願いします入って下さい・・・!アクアも当然賛成だよな!?・・・・・・ん?アクア?」

 

 返事のないアクアに疑問を持った三人は後ろを振り向く。

 アクアの代わりにいたのは先程倒した個体とは別のジャイアント・トード。しかも口元からアクアのものと思われる足を生やしていた。

 

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