悲報:カミキの野郎が女装に目覚めた 作:豆腐小僧
「ねぇ⋯⋯何で?」
「何が?」
舞台裏で語りかけてくる彼女『姫川愛梨』に、僕は呆れ気味にそう言った。
「だから何でそんな格好してるのよ!? しかも舞台でも女役とか!!」
「別に僕がどんな格好をしたっていいでしょ」
「良くない!!」
彼女はそう僕に言い放つ⋯⋯何が? 何で? 僕にはこの人が何で怒ってるのか、全く理解が出来ない⋯⋯。
「それにあの男⋯⋯あんなだらしない奴に媚び売るような事して⋯⋯気持ち悪い!!」
「⋯⋯言いたい事はそれだけかい? 僕から言えば、アナタに彼をそこまで言う資格なんて無いと思うけどね」
正直、僕もらしくなかったと言うべきか⋯⋯どうかしてたとは思う⋯⋯でも彼女の口から彼の悪口が出た瞬間、頭が真っ白になったと言うのか⋯⋯冷静では居られなかった。
「どういう意味!?」
「どうって⋯⋯アナタが僕に何をしたのか忘れたとは言わせないよ⋯⋯だいたい今回だってそれをネタに僕に近寄ろうとしたんでしょ? あぁ⋯⋯それ以前にアナタはそうでもしないと僕の気を引けないんだっけ⋯⋯そうだね僕としてもその辺だけは同情してあげるよ⋯⋯」
僕はそう言って彼女を睨みつける⋯⋯そう⋯⋯自分勝手に僕を弄び、自分勝手に他の男と結婚した彼女⋯⋯そして今回もまた自分勝手に僕に関係を迫って来ている。
ハッキリ言って不愉快極まりない⋯⋯僕としては直ぐにでも目の前から消えて欲しい⋯⋯。
あぁ⋯⋯そうだな⋯⋯いっその事⋯⋯
「何だ何だ? 面白そうな話してんじゃねぇか?」
突然、この場には居なかった第三者の声⋯⋯僕は驚き、その声がした方に顔を向ける。
そして⋯⋯そこには僕と同じ金髪で、ニヤニヤと笑みを浮かべる男性⋯⋯その目は何処か死んでるけど、何故か鋭い光を感じた⋯⋯。
「アナタは⋯⋯何のつもりよ? 今私は彼と話してるの邪魔しないでくれるかしら?」
「ハッ! そうかい⋯⋯俺から見たら話にしちゃあ一方的なように見えたし聞こえたんだがなぁ⋯⋯」
彼はそう何処か高圧的にそう言った⋯⋯何を考えてる? 分からない⋯⋯今この場において彼が僕と彼女の会話に割り込むメリットはないはずだ。
「アナタね! 彼をこんな風にしたのは! 私の好きだった彼を返して! それと貴方みたいな人が彼に関わると、それだけで彼の価値が下がっちゃうから、今後は彼に関わらないでよ!!」
「下がるねぇ⋯⋯で? 言いたい事はそれだけか? クソババアさんよぉ⋯⋯」
「なっ!?」
思わず僕は目を見開く、だって今彼の目は確かに僅かながら星が輝いて見えたのだ。
彼が賭け事以外でそんな目をしたのは今までに無かった事だった。
僕はそんな彼に思わず胸を高鳴らせる、緊張感が走る中⋯⋯彼は頭を掻きながら語り始める。
「てめぇは自分の都合通りに行かなくて、駄々こねてるだけのクソガキですか? コノヤロウ⋯⋯第一コイツの価値をテメェの物差しで、勝手に決めてんじゃねぇっての⋯⋯コイツが女装しようが何しようが、コイツの勝手だしコイツの人生はコイツのもんだろうが⋯⋯それをテメェが指図すんじゃねぇよ⋯⋯」
「予想以上に最低ね⋯⋯やっぱり貴方みたいなクズは彼に相応しくないわ!!」
「あぁ⋯⋯話の内容がないんですか? さっきから同じ事しか言わない機械なんですか? まっお前みたいな自己中がコイツの親じゃなくて良かったわ。だってテメェ見たいなヤベェ奴が、毒親って奴になるんだろうからな!」
そう不敵な笑みを浮かべて言う彼に、僕は目を見いた⋯⋯可笑しい⋯⋯普段の彼とは違うその態度⋯⋯何を考えてる? いったい何を⋯⋯そんな事を考える中僕は背筋がゾワゾワするような⋯⋯突然の胸騒ぎを感じ、思わず彼女の方に目を向ける。
「⋯⋯さい⋯⋯」
「あん?」
「ウルサイ! ウルサイ! ウルサイ! ウルサイッ!!」
そう言って頭を掻きむしり振り回す彼女。僕はそんな彼女に驚愕し、気が付けば数歩そのまま後退りしていた。
そして彼女はそのまま手にかけていたバッグに手を入れると、刃物を取り出した。
「アァ⋯⋯アンタさえアンタさえいなければ!」
「ハッ! ヤるのか? 言っておくがそれを人様に向けるって事はテメェは人生をドブに捨てる覚悟があるって事だよなぁ!?」
「アァアアァァ───!!」
そして⋯⋯それは一瞬で⋯⋯だけど僕の目にはゆっくりと⋯⋯気が付けば彼女は刃物を彼に向け、そのまま突き立てた。
彼の腹部に突き刺さる刃、だけど彼はその刃の柄と彼女の手首をそれぞれ両の手で掴んだ。
「掴んだぜ⋯⋯」
「──ッ!!」
「刃物何て使わず⋯⋯キレ散らかすにしても大人しく帰ってりゃあ、まだ人生をドブに捨てずにすんだのになぁ⋯⋯そっちがその気ならこっちもそれなりに対応しなきゃなぁっ!」
「ヒッ!?」
圧倒的なまでの気迫、彼女はそんな彼の気迫に気圧されるが、キッと彼を睨みつける。
「放しなさい!」
「へっそりゃ無理な話だ⋯⋯」
彼女の言葉にそう言う彼、彼女は刃を引き抜こうとするが、彼の手によりそれが叶わない。
「くっ離せって言ってるのよっ!!」
「うおっあっぶねぇ」
引っ張って駄目ならと、今度は刃を押し込もうとするが、彼は上手く後ろに下がる事でそれを阻止する。
「はぁはぁ、しつこいわよ⋯⋯」
「そりゃあなぁこっちも命賭けてんだ⋯⋯俺がくたばりゃそこまで⋯⋯生きて予め呼び出しておいた連中がくりゃあ俺の勝ち⋯⋯簡単だろ⋯⋯」
「なっ何言って⋯⋯」
命を賭ける。 今、彼は確かにそう言った⋯⋯それって僕はその光景に目を見開く⋯⋯。
「はっ俺からいやぁアイツには俺の命を賭けるだけの価値があるってだけの話だ⋯⋯」
「ひっあ⋯⋯」
今までに見た彼のそれ以上に輝きを放つ彼の瞳⋯⋯魂を揺さぶるかのようなその声⋯⋯そんな彼の言葉が⋯⋯その瞳から目を離せない⋯⋯。
「ねっねぇ提案があるんだけど⋯⋯」
「断る!」
「ここはお互い無かった事にしないかしら? 私も悪かったとは思うし⋯⋯ね?」
彼が人を呼んでると言う話に流石にヤバいと、焦ったのか彼女はそう言った。
だけど彼はそれに大して不敵なニヤリと笑い⋯⋯。
「ハッ嫌だね⋯⋯」
「そっそうだ! 示談にしましょ! 示談金もちゃんと払うしっ今後はカミキ君にも近付かないわ!!」
そうバッサリと切り捨てた。それにより焦った彼女は更に色々と、この場をどうにかしようと話す⋯⋯。
「悪いが俺を刺しちまった時点で手遅れだ⋯⋯」
だが彼は震え上がるかの様な⋯⋯低い声で残酷なまでに彼女にそう言い放つ。
「ひっごっごめんなさい!? わっ私が悪かったわ!!」
「そうだな俺は何にも悪くねぇのに刺しやがったんだもんなぁ⋯⋯だからよォ⋯⋯」
切羽詰まった彼女は、誰に向かってなのか涙目に謝罪の言葉を口にする。
だが彼は楽しげに一層笑みを深くし、そのまま息を深く吸い上げそして──
「てめぇが選んだ役回りだろうが! 舞台に上がっちまったんなら、最後まで悪役らしく惨めに豚箱に入りやがれ!!ただし豚箱に入った後は知らん! その後は弁護士雇うなり何なり好きにしな!!」
「───ッ!?」
彼が腹の底から放たれた叫び⋯⋯そして圧倒的なまでの気迫⋯⋯。
彼女はそんな彼の気迫に気圧され、膝から崩れ落ちた⋯⋯。
そこからはララライの団員達がその現場に駆けつけ、パニックになったりしたが金田一さんなどが、直ぐに対応して彼女は取り押さえられ、彼もまた病院へと輸送された。
僕も色々と事情聴取等をされたりしたのだが、余り覚えていない⋯⋯ただ気が付いた時には⋯⋯病室で寝ている彼のベットの前にいた。
呼吸する事で上下する彼の胸元に僕は触れてみる。
僕の触れた手には当然ながら彼の心臓の鼓動が感じられ、それが確かに彼が生きてるのだと僕に実感させた。
「⋯⋯不思議だよ⋯⋯君がこうして生きている⋯⋯それだけで僕の命に重さを感じられる⋯⋯」
そして、この先も⋯⋯彼と話し接する度に⋯⋯彼が僕の為に命を賭けてくれた事実を思い出す度に⋯⋯僕の中のこの重みは、どんどんと嵩んで行くのだと⋯⋯僕は何となくだがそんな気がした。
「⋯⋯髪⋯⋯もう少し伸ばして見る⋯⋯かな?」
自分の髪を弄りながら僕はそう呟く、命を賭けてくれた彼⋯⋯そんな彼に僕は何が出来るのだろうか⋯⋯そんな事を考え、僕にあるものと言えば役者としての演技位だ⋯⋯もっと女性らしくなったら彼も⋯⋯。
「⋯⋯あぁ⋯⋯そうか⋯⋯」
そして僕は気付く、そう⋯⋯僕は彼に異性のように見てもらいたかったんだと⋯⋯男性同士とかは関係無くどうしようも無い程に僕は、彼に惹かれてしまっているのだと⋯⋯。
「ふっふふあはは⋯⋯」
僕は笑うどうも自覚した事で、自分の感情が制御出来なくなっているようだ⋯⋯でも、悪くは無い⋯⋯。
そして僕は改めて眠っている彼の方を見る。
そして──
「僕をこんなふうにした責任⋯⋯絶対にとって貰うからね⋯⋯」
誰に聞かれるでも無く、僕は眠っている彼にそう言うのだった。
おまけ
ノンケのイッチ
実は入院生活中退屈で寝てたが、何かカミキがやって来てブツブツ言ってる為に、起きようにも起きれないので寝たフリを最後まで継続してた。
カミキヒカル
自分に命を賭けてくれたイッチに脳を焼かれ、色んな意味で覚悟がガンギマリになった。
豆腐小僧のアホ作者
今日も朝から仕事なのに、最後の仕上げの段階まで、昨日の夜から徹夜テンションで、新の方のゲッターなOPを聞きながら書いてた。
その為、仕事中ずっと寝不足気味でふらついていた。