『もちろん』
『書物を手に取る』
「ふふ…きっとその選択を取るだろうと思っていましたよ」
『書物を開くと脳に誰かの記憶が流れてくる。あなたはそのまま意識を失い眠りにつくだろう。そう、こことは違う世界の記憶をぼんやりと眺める傍観者になるのだ』
ーーーここは広大な砂漠。
生命が死に絶え砂しか残らない。死を象徴する場所に一人のスーツを着た人の形をした何かが立っている。それは観察者であり、探求者であり、研究者。彼は広大な砂漠を彷徨い『異物』と呼ばれるものを探している。
「これは…ただのガラクタですね」
半分以上が砂に埋まった盾。こんなものが異物であるはずがない。しかし普段なら見向きもしない無価値のものから目が離せない。一体何故?何故?何故?
「異物に繋がるとは思えませんが…回収しておきましょうかね」
小柄な人間ならば隠れられるほどの大きさである盾。やはりこれ自体からは何も感じない。ただの塊だ。
「さて、一度戻るとしましょう」
踵を返して基地に戻ろうと踏み出した時、一人の生徒がこちらを睨むように見ていることに気がついた。桃色の髪を靡かせてショットガンを構えたその少女からは何か特別なものを感じる。
「その盾をどこで見つけたのですか?」
丁寧な言葉だが殺意がこもっている声で問いかけてくる少女。なるほど、この盾を拾ったのはこの為だったのでしょう。ならば利用するまで。
「…まず、はっきりさせておきましょう。私は、あなたと敵対する気はありません」
少女を観察するにこの地域の小さな学校である「アビドス」の生徒だろう。些細な存在とはいえ敵対する事はなるべく避けたい。
「この盾はとある目的で砂漠を散策していた際に見つけたものでして…私にとっては価値のないものですのであなたに譲渡する事も可能です」
「…条件はなんですか?」
「察しが良くて助かります。あなたには私の利益の為に実験に協力していただきたいのです。納得のいく結果が得られた暁にはこちらの盾を譲渡致しましょう」
「その実験内容は?」
「簡単な事です。生きている人間に私が観測した恐怖が適用出来るか、というものです。安全は保証しませんがそれでもやりますか?」
「その盾を返してもらえるならやります」
「良い返事ですね。それではご案内しましょう」
ーーーアビドスの何処かにある実験室
「ではこちらで拘束させていただきます」
「………」
特に抵抗せず少女を拘束して準備を整え実験を始める。どのような結果になるか非常に楽しみだ。轟音が鳴り装置が起動する。生きた人間で実験を行うのは初めてなので高揚している。そんな期待を裏切るかのように実験の結果は面白くなかった。どうやら精神スキャンのプロセスで拒絶反応が出てエラーが発生したようだ。ただし装置との適合率はとても高くそこさえクリアしてしまえば実験は確実に上手くいく。となればまずはこの少女の懐柔をするべきだろう。
「お疲れ様でした。今から拘束を外させていただきます」
「実験は成功したんですか?」
「残念ながら失敗に終わりました。ですので盾は渡せません…と言いたい所ですが一つ提案があります。こちらを呑んでいただけるのであれば差し上げましょう」
「提案?」
「ええ。私をあなたの所属している学園の『顧問』にさせてもらいます」
ちょくちょく自己解釈を入れているので解釈違いが発生していくと思いますが生暖かい目で見守ってください。