『ホシノちゃん、どうしてそいつを庇うの?』
問いかけられたホシノの息が荒くなる。恐らく彼女の知る『先輩』の声で問われた事に冷静さを欠いてしまっているのだろう。そんなホシノを優しく抱きしめて甘い言葉を囁いているユメに似た何か。
『ホシノちゃん、こんなに立派になったんだね。いっぱい頑張ったんだよね。先輩として誇らしいよ』
ホシノ「……先輩……」
甘い誘惑に負けて武器を落とし涙を流しているホシノ。されるがままに頭を撫でられていた。彼女にとってそれ程先輩という存在は大きかったのだろう。死んだ人間ともう一度話せるなんてまさに夢なのだから。
ホシノ「私……先輩と話したい事が沢山あるんです。アビドスの事も……あっ後輩の事も沢山……」
『まあまあホシノちゃん。時間はあるからゆっくりでいいよ』
ホシノ「……ごめんなさい。つい舞い上がってしまって……」
『相変わらず可愛いね。そうそう、君に伝えないといけない事があるんだ』
ホシノ「何ですか?」
『戦場では常に油断しない事』
ホシノ「えっ……?あっ……」
唐突にホシノはその場に崩れ落ちた。時々小さくうめき声を上げて痙攣している。まるで身体に力が入らないかのようにうつ伏せで倒れてしまった。最大の神秘であるホシノがこうも簡単に動けなくさせられるとは。
『ごめんねホシノちゃん』
慈母のような眼でホシノを一瞥した後、殺意を込めた眼でこちらを睨むユメらしき存在。淑女といいどうやら自分は憎まれやすい人間のようだ。
黒服「……私の生徒に何をしようと言うのです」
『生徒?笑わせないでもらえますか?所詮貴方にとって生徒は『利用価値のある搾取するべき存在』なのでしょう?』
ホシノ「えっ……」
黒服「………」
ホシノ「先生……どうして違うって言ってくれないの……?ずっと私の事を大事な生徒だって言ってくれていたのに……」
『どうせそんな事だと思いましたよ。都合のいいように利用して価値がなくなったら捨てるつもりだったんですよね』
黒服「……ええ、確かに貴女の言う通りです」
ホシノ「っ!?」
黒服「ですがそれは過去の話です。今は……」
ホシノ「……もういいよ」
黒服「ホシノ、聞いてください。私は……」
ホシノ「五月蝿い!私はずっと先生の事を信じていたのに……それなのに……こんなの酷いよ……」
黒服「ホシノ、冷静になって考えてください。私は貴女の事を本当に考えて……」
ホシノ「先生なんて大嫌い。もう顔も見たくない」
……してやられた。精神状態が不安定とはいえホシノをこうも容易く懐柔するとは。ユメという存在を甘くみすぎていた。
『大丈夫、私だけは絶対にホシノちゃんを裏切らないからね』
ホシノ「……先輩」
二人の少女は寄り添うようにその場から転移をした。一人残された彼は何もない空間を眺める事しか出来なかった。
大切な人同士が対立していてどちらかに味方をしなければならない選択を迫られた場合、あなたはどうしますか?