先輩に連れてこられたのは見知らぬ空間。まるで要塞のように入り組んだその場所が何処なのか理解できない。
ホシノ「此処は一体……」
『此処はね。ホシノちゃんが傷つかなくていい場所だよ。悪い大人が居ない平和な空間。もう騙されて苦しくならなくていいの。素敵な場所でしょう?』
傷つかなくていい。苦しまなくていい。そんな理想の場所が存在していたなんて思わなかった。本当にそんな世界があるのなら……永遠に此処で過ごしたい。それに自分を絶対に裏切らないと信用できる先輩が居る。あの日救う事が出来なかった先輩が。それならばあんな最低な大人である先生に会う必要もない。ない筈なのに……
『……大丈夫、ホシノちゃんは悪い大人に長い間洗脳されていたんだから。ゆっくりと治していこうね』
先輩は昔と変わらずとても優しくて陽だまりのような存在だ。彼女に撫でられているだけで安心して睡魔に襲われる。意識が朦朧として瞼を閉じる直前に「おやすみ」と先輩に囁かれた。そのまま数秒も待たずに眠りにつきまどろみの中に溶けていく。
『……これで良いの。ホシノちゃんは何も知らないままで』
そう、彼女は『色彩』の眷属。本来であればこのような無駄な工程を挟む必要はない。しかし彼女は先輩であるが故に、『ようやく出会えた生きているホシノ』に対してそうしなければと行動してしまった。だがその行動を理解し、共感する者は誰一人いない。彼女は永遠に孤独なのだから。
ーーー
意気揚々と宣言したはいいものの肝心の居場所を特定出来ていない。それでも行動しないよりはマシと誰かが言い少しでも収集をしようとした矢先にそれは起きた。空が赤く染まり世界の終焉を予感させるような景色。『色彩』がこの世界を喰らおうとしている。本来であれば対処をしなければいけないのだろう。けれどそれは二の次でいい。今やらなければならない事は『ホシノの救出』これ以外は気にするだけ無駄だ。
黒服「さて……ホシノは何処に居るのでしょうかね」
シロコ「きっと空の上にいる。青い石を持って40秒以内に向かうべき」
黒服「流石に現実離れしすぎでは?」
シロコ「ん、ならあのアビドスゴートー……」
黒服「あのガラクタは売りました」
突然「ん、ん、ん」と謎の抗議を始めるシロコを尻目に情報の更新がないかを確認するも手掛かりはない。些細な事でもいいと眺める記事の中に『各自治区に現れた謎の塔』という記載があった。そして一際大きい塔が砂漠の中心にあるとの事。そしてこの座標は昔ホシノが彼女の死体に触れた場所に近い。恐らくそこにホシノは居る。確実とは言えないが直感的にそう感じるのだ。まさか自分が勘だけで行動するようになるとは思わなかった。そしてそんな無鉄砲作戦に付き合ってくれる生徒がいる事も。
敵は淑女の比ではない程強大。それぞれの自治区も慌ただしくなると予想すると救援の見込みも限りなく低くなるだろう。それでもアビドスは負けない、不思議とそう思える。
こうして一同は目標に向けて駆け出した。その未知の先で待っているホシノを救出する為に。