見慣れた砂漠に足を踏み入れた途端に空気が重くなるのを感じた。負の感情が渦巻いており長時間滞在しているだけで精神が不安定になりそうだ。
だが裏を返せばこの先にホシノを攫った彼女が居るという事を暗示しているとも考えられる。現に砂漠の至る所から敵が現れているのだから。深呼吸をした後に武器を構えるよう指示を出して戦闘を開始した。
目標はあの巨大な建築物に到達する事。その為一点突破を図り消耗は避けるようにしなければならない。いくら信用出来る生徒とはいえ体力も弾薬も限りがある。本体を倒す前に尽きてしまえば本末転倒だ。
……いや、違う。色彩の対処は後回しでいい。大事なのは『ホシノの救出』だ。彼女の為に全部を費やそう。だがどちらにせよここを突破しない限りは選択肢はない。
先陣を切ったシロコは正面に居る敵の集団の中心部に飛び移り大爆発を起こした。「地下鉄に仕掛けられていたやつを盗んできた」と自慢そうに語る彼女に頭が痛くなりそうだったが敵の数が相当減ったので今回は不問とした。そして包囲網が薄くなった所に向かって走りだす。多少の怪我は仕方ないと腹を括っていたが包囲を抜けた後、自身には傷一つ付いていない。生徒達も無傷のようだ。一先ずは第一関門突破といった所だろうか。後ろから追手が来ている為立ち止まらず塔に向かって走る。
あと半分といった所まで来た途端、足元で地響きが発生する。過去のゲマトリアが残した存在、人工神のビナー。それは色彩の影響で禍々しい姿へと変貌している。本来であれば非常に興味深いと観察するのだろうが今となってはただの障害物だ。どの道もう過去の存在に用はない。ここで破壊してもいいのだが今はホシノを優先したい。
手で合図をしてそれの目の前に閃光弾を投げると強烈な光によって若干怯んでいるように見えた。その隙をついて隣を抜けようとしたが突如それはこちらに向けて口からレーザーを放出してきた。咄嗟の事で反応できず一同はそのレーザーに直撃した。
……数秒経っても痛みがない。何故だと思い閉じていた目をあけるとそこには桃色の髪を束ねた小さな盾と黒いドレスに身を包んだ砂の神。
「借りを返しに来たよ」
見慣れているようで見慣れていない二人の生徒は『先に行って』とハンドサインを出してきた。彼女達が何故ここに居るのかは気になるが今は手助けをしてくれた事に感謝しよう。
「柄にもないことをしちゃっておじさんは恥ずかしいよー」
「大丈夫、先輩はいつもかっこいい」
小さいながらも頼もしい盾に背中を任せて五人は進む。別の世界から訪れた小鳥遊ホシノは見た目は忌み嫌う存在だが生徒の為に突き進む彼の想いに応えて馳せ参じた。