『手加減はしないよ。だから全力でぶつかってきてね!』
ショットガンだけを構えたユメはホシノに向かって駆け出した。一方のホシノはその場から動かず接近してくるのを待っている。そしてあろう事かホシノは盾を蹴り飛ばしてユメにぶつけた。しかしそれを軽くいなして滑り込むようにホシノの懐に入りショットガンを放った。その動きはアリスと戦った時とは比べ物にならないほど洗練されている。それにその動き方も何か既視感を覚えるような……
「……まるで昔の私みたいな動きですね。先輩らしくないです」
『私らしさ?そんなもの戦いに必要ないんだよ!!拘った所で何も守れやしないんだから!!』
「目を覚ましてください!」
『ホシノちゃんこそ!!』
二人の戦いはヒートアップしていく。しかしユメの方は何かがおかしい。戦闘が始まってから感情的になったと言うか……抑制が効いていないように見える。色彩の眷属であるが故に秘めている感情を抑えられないのだろうか?思えば彼女の服装は昔のホシノを模しているようにも見える。防弾ジャケット、ショートヘアー、戦闘スタイル。やはり間違いない、彼女は『異なる歴史を歩んできたユメ』だ。
「ホシノ、やはり彼女は……」
「そんな事とっくに知ってる!それでも私の先輩である事に変わりはないんだ!だから全力で向き合うって決めたんだ!」
ホシノは最初から気づいていた。例え別の世界のユメだとしても苦しんでいるのなら手を伸ばして助けたい。彼女はきっとそう思っている。それがホシノの決めた道なのだから。
『ホシノちゃん。いや、小鳥遊ホシノ。君の意思がどれだけ強いのか私に証明してみせろ!!』
「嫌というほど教えてあげますよ!私は欲張りだから!誰一人として失いたくないんだぁ!!」
ホシノは叫ぶ。自らを鼓舞するように。意思を貫く為に。かつてないほどに気合を入れた彼女は何度もユメに挑む。しかし互角だった実力も数分もしないうち体力が切れて防戦一体になっていく。容赦のない猛攻になす術がないホシノ。このままではやられてしまうのも時間の問題。……やるしかない。覚悟を決めて駆け出し、ホシノを守るように割って入った。ユメは一瞬顔をしかめてから憎しみを込めた声で
『お前は邪魔だぁ!!』
とショットガンを鈍器のように振りかざしてくる。だがこれでいい。
「先生は傷つけさせない!」
盾を構えたホシノが攻撃を弾いてくれる。そう、数秒時間を稼げればホシノが盾を拾いこちらに戻って来れる。賭けではあったがホシノの事を信用したからこそ上手くいったのだ。とはいえ自分が出来るのはこれくらいだろう。あとはホシノに任せるしかない。
『そんな盾で何が守れるって言うのさ!!一時的に攻撃を防げる程度で本当に大事な時には何の役にも立たない!!所詮自己満足の域を出ないんだよ!!』
「先輩の気持ちは嫌というほど分かります!だから……」
『……分かるだなんて言わせない。全部失った事のない君に……私の想いが分かるものかぁぁ!!』
彼女は叫ぶ。溜め込んでいた感情を吐き出すように。想いを露わにする度に黒く、そして恐怖に染まっていく。
『私を止める?生半可な事を言わないで!!本当に止めたいのであれば殺す気できてよ!!生という呪縛から私を解放してよ!!』
彼女の抱えている闇は何よりも深い。その絶望を前にホシノはもがき抗う。必死に手を伸ばそうとしている。しかし彼女にはまだ届かない。それでもがむしゃらに手を伸ばし続ける。そしてその想いに応えるように壁を壊しながらヘリコプターが乱入してきた。
「私達の先輩に……」
「何してくれてんのよ!!」
ヘリから放たれる無数のミサイルと黒髪を揺らし突撃してくる一年生。奥空アヤネと黒見セリカ。それは彼女にとっても馴染みのある存在である。その姿を見て動揺したのかミサイルが直撃するも体勢は崩さない。そこに追い打ちをかけるように頭突きをかますシロコと後方からミニガンを連射するノノミ。
「ん、メインヒロインは遅れてやってくる」
「そういう事です☆」
後輩達が集い役者が揃った。顔を見合わせた後、高らかにこう宣言する。
「さあ、対策委員会の活動を始めよう」