例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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君に捧げる青い薔薇

「先輩!」

 

一人立ち去ろうとしていた私の背中からかけられた声に対して振り返ると息を切らしたホシノか居る。

 

「アビドスに来ませんか?」

 

そして彼女から差し伸ばされた手。それはホシノが考えて出した答えなのだろう。

 

『やめておくよ。私の後輩だったホシノちゃんは君じゃないんだ。私の価値観を押し付けちゃいそうになるし……』

 

「いいから来てください」

 

『ほら……私には私の、ホシノちゃんにはホシノちゃんの居場所があるの。だから……』

 

「嫌です」

 

何を伝えても嫌と言われて困ってしまう。ホシノはここまで頑固だっただろうか?……もしかしたらこれが彼女本来の性格なのかもしれない。けれどこの場で駄々をこねられてもどうしようもない。

 

「貴女もご存知でしょうが……こうなってしまったホシノが折れることはありません。なので数日だけでもアビドスに滞在しては如何でしょうか?勿論無理にとは言いませんが、貴女は可愛い後輩の頼みを断るような先輩ではありませんよね?」

 

「そういう訳なので帰りますよ!」

 

ホシノは彼女の手を引いてアビドスに向かい駆け出した。それがどのような結果になるのかは分からない。ここからは彼女達が物語を紡いでいくのだから。

 

ーーー

 

アビドスに戻った一同は一つの教室に布団を敷いてパジャマパーティを始める。複雑な心境ではあるが後輩と話せたユメは少しだけ満たされたような感覚になった。それと同時に彼女達は私の後輩ではなく似た他人なんだなと理解してしまった。同じ姿、同じ声。まるでドッペルゲンガーのような存在。

 

……やっぱり私は生きるべきじゃなかった。後輩が、先生が全てだった私の人生は自由にしろと言われてもどうすればいいか分からない。そう考えていると辺りが静かになっている事に気づいた。皆が寝静まっている。よほど疲れていたのだろう。……ここは平和なんだな、そう思えてしまうくらい微笑ましい。

 

『私の世界も……こうなれたのかな……あっ』

 

ふと気がついた。この世界の私は何処に居るのだろう?ホシノがあの盾を持っているのだから何処かに居てもおかしくないのだけど……

 

『どうせ私は眠れないし……』

 

寝静まった後輩達を起こさぬように物音ひとつ立てずに部屋から出る。見慣れているのに見慣れていない校舎内を歩いているとある教室の机の上に埃を被った大きめの鞄が存在している事に気づいた。

 

「その鞄の持ち主に興味があるのですか?」

 

『!?』

 

いつの間にか背後に黒服が居た。警戒する私を他所に彼はただ手招きをして誘導してくる。その行動に訝しみながらついていくとそこは旧校舎の中庭だった。世界が違う筈だけど構造はまるで同じだ。ただ一つを除いて。

 

『あの墓のようなものは……』

 

「この世界の貴女が眠っている場所です」

 

……そっか。だから彼女はあんなに必死になって……そこまで私と同じじゃなくてよかったのに……

 

近づいてみると定期的に手入れされているのが分かった。そしてそれをしているのは恐らくホシノなのだろう。せっかくだからと彼から手渡された線香を添えて黙祷をする事にした。

 

『(貴女は大切なものを守れたんだね。すごく羨ましいよ。……私はダメだったよ。誰一人として守れなかった。だから貴女が羨ましい)』

 

数分にも及ぶ黙祷が終わり機会を与えてくれた彼に頭を下げた。思えば彼には悪い事をしてしまった。私にとっての先生のようにホシノにとっては大切な存在だったのだから。

 

「気にしなくていいですよ。私はただの悪い大人である事には変わりがないのですから」

 

『……私の世界の貴方も同じような性格だったら……』

 

「前に似たような事を言われた記憶がありますが……他の世界で私はどれだけ嫌われているのでしょうか……」

 

少し落ち込んだ様子を見せる彼にやはり私の知る彼ではないのだろうとそんな事を考えてしまった。

 

「貴女はこの後どうするのですか?」

 

『この後……私は……』




あなたは、先生は彼女がどちらの道を歩む事を望みますか?

ユメの選択

  • アビドスに滞在する
  • 各地を放浪する
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