学校の仮眠室。苦い思い出が蘇りそうになるが黒服からの許可を得てユメはそこで居住する事にした。
「貴女のやりたい事が見つかる事を教師として願っていますよ」
彼はそう言って仮眠室の鍵を渡してくる。貴方が教師と名乗る違和感には永遠に慣れる事はないのかもしれない。ふと気づけば眠くなってきていたので皆が寝ている部屋に戻って眠ろうとしたが私の布団はホシノが占領していた。寝相が悪いの一言では済まされないくらいの大移動をしているのでほんの少しだけ笑みが溢れた。
『風邪ひいちゃうよ』
彼女を自分の布団の場所に戻してから私は人肌くらい暖まった布団の中で眠りについた。こうして少しずつではあるが前を向いて歩き始められた。起きたら皆に話してみよう。私は此処に居てもいいかな、と。なんだかむず痒い気持ちになってしまったので睡眠に集中しようと思った矢先にこちらの布団に入ってくるホシノ。
「うへへ……せんぱい……」
……彼女はこんなにも寝相が悪かったのだろうか。まあ悪い気はしないのだけれど自分の知るホシノはこんな事をするような子ではなかったので積極的だな……と思った。そんな彼女の純粋無垢な寝顔を見れると思うと少しだけ幸せを感じてしまう。ただ、私は彼女を見て君を思い出してしまう。もし君がこの場に居たら……なんて。この感覚は受け入れて生きていくしかないのだろう。簡単に吹っ切られる事ではないのだから。
ーーー
今日は久しぶりに目覚めの良い朝だった。きっと安心出来る場所に居るからだろう。このまま朝の特訓を……しようと思ったがまだホシノがくっ付いたままなので身動きがとれない。どの世界でも君という存在は愛おしくて堪らない。……何より少し肌寒いので暖かい君を手放したくなかった。他の子達もまだ寝ている。皆お寝坊さんなんだね。もう朝の4時なのに。二度寝する気も起きないので部屋から出ようとして立ち上がる。そしてホシノを引き剥がして……剥がれない。なんならさっきよりも物凄い力で抱きついてくる。
『ホシノちゃん、そろそろ離れて欲しいんだけど……』
「離れません」
『ちょっと散歩してくるだけだから……』
「私も行きます」
……やっぱり頑固だ。仕方ないので彼女も連れて部屋を出る事にした。眠そうにあくびをする彼女を見て『眠いならまだ寝てても……』と言ったが「先輩から離れたくないです。また勝手に居なくなられたら困ります」と返される。勝手に居なくなる、か……確かに放浪した先でもしかしたらやりたい事が見つかるかもしれない。だけど私にはまた一人になる勇気はない。だから今はただこの場所で、彼女の隣で過ごしていたい。こうやって時間が経っていくにつれて私はこのアビドスに溶け込んでいくのだろう。似ているようで全然違うこの世界で私はまた生きてみようと思う。
私は君を失った。君は私を失った。
私は死を望んだ。貴女は生を願った。
今手を握って隣を歩く君は
あの日失った君ではない
今手を握って隣を歩く貴女は
あの日失った貴女ではない
星に願った夢が叶う事はもうない
だけど右手に感じる君の温もりは
だけど左手に感じる貴女の温もりは
何よりも暖かく心を満たしてくれる
今はただそれだけで良いのだから
第四部 夢 完
ーーアビドス高等学校に『ユメ』が合流しました。