例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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去っていったあなたへ

アリスとケイ。二人のアンドロイドは

黒服により数日間安静に過ごしていた

とはいえモモイ達に振り回されており

波瀾万丈である事には変わりがない

そうして遊び疲れたアリスは眠り

ケイは月明かりに照らされている

焼け焦げたメモリーカードを見ていた

 

あの日自らのメモリーカードを外して

アリスに手渡した事によって

一つの躯体に二人分の意識を持ち

彼女は王女に覚醒した

けれど覚醒したばかりの状態で

無理をした為にオーバーヒートして

ケイの記憶が刻まれたカードは燃え

彼女の存在は消える筈だった

しかし動じることなくそれを受け入れた

『鍵』としての役割しかなかった彼女が

こんなにも充実した日々を過ごし

奪う事しかプログラムされていなかったのに

最後は大切なものの為に消える事が出来る

こんなにも幸せで満足のいく人生は

アリスとホシノ、黒服とモモイ達が居なければ

歩む事すら許されなかったのだろう

彼女達のシナリオは続いていく

例えそこに自分が居なくても構わない

そう思って眼を閉じようとした

『本当にそう思ってるの?』

不意にかけられた声に驚いて閉じかけた眼を

開けたが暗闇が広がるだけで何も見えない

『君はこのまま消える事を望んでいるの?』

直接頭に響いているような感覚に襲われ

動揺しながらも口を開いて

 

「望んでいます。私は役割を終えて……

もう生きる意味はないのですから」

 

姿の見えぬ声の主に伝えた

数十秒の静寂の後に彼女?は

『本心は?』と聞いてくる

 

「これが本心です」

 

『『ケイ』の本心を聞いてるの。

役割がどうとかじゃなくて貴女自身の』

 

私自身の本心?そんなものはない

そう思っていたけれど

頭に浮かんでくるのは過ごしてきた日常の

『当たり前』になっていた日々の記憶

『私』が守りたかった何よりも大切なもの

そして私の……生きる意味

 

「……やっぱり生きたい。

もっとアリス達と一緒に居たい。

このまま消えたくない。ずっと一緒に……」

 

『そう、それでいいんだよ。

君はもう役割に縛られる必要はないの。

自由に生きていいの』

 

不意に手に何かが触れる感覚があり

視線を向けるとそこにあったのは

もう一つのメモリーカードだった

 

『だってさ、君が生きたいって、

そう思ってくれないと……

守った意味がないからね』

 

「貴女は……あの時の……」

 

『あの日私という人格が生まれた時から

こうなる事は決まっていた。

だから代わりにって訳じゃないけど……

ケイには生きて欲しいんだ。そして

私の人格元となった人の後輩を……』

 

ーーあの日彼女は全てを言い終わる前に

カードが焼け焦げた影響で消えてしまった

彼女の人格元の後輩。その人に出会い

彼女が何を託そうとしたのかを知るという

私の新しい目標が出来た

彼女が誰なのか、後輩とは誰なのか

何もわからないけれど託された以上

必ず出会い伝えようと思う

一人のアンドロイドは月明かりに照らされて

そう物思いにふけるのであった




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