例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

134 / 500
選択をする間もなく唐突に

黒服は思考を巡らせてどう対処するべきかを

何度も模索している。しかし目の前で涙を流す

ノノミに対して何が出来るのだろうか?

生徒の為と思い込んで行動しなかった結果

彼女がこうなるまで追い込んでしまい傷つけた

生徒と向き合うと言っておきながらこの始末

彼女の涙がスーツを濡らす度に胸が痛くなる

今までこんな感情を抱いた事は一度もなかった

どんな時でも無関心であり無感情で接していた

あの頃とは違うのだと嫌でも認識させられる

……教師というものを舐めていた

そう言わざるを得ないだろう

あれだけ馬鹿にしていたベアトリーチェや

シャーレの先生は生徒をここまで追い詰める事は

絶対にしないだろう。悔しいが教師としては

彼女らの方が適していると認める他ない

せめて今自分が出来る事をするべきだと

そう理解はしているのだが

ノノミの涙を止めるにはどうすればいいのだろう

下手な言葉を投げかけても届かない

彼女の想いに応えようにも変に期待させると

ノノミはより辛くなってしまうだろう

こんな時生徒に対して気の利いた言葉の一つすら

掛けられないなんて情けないにも程がある

一体どうすればいいのだろうか……

 

「生徒の涙が落ちる音が聞こえたと思ったら……

見損ないましたよ黒服」

 

いつの間にかベアトリーチェが部屋に入ってきた

ノノミをそっと抱き寄せて優しく撫でている

 

「生徒の為に選択しない……貴方にしては

いい判断をしたと思います。ですが大事な工程を

挟んでいません。それは至極簡単で単純な事。

そう、生徒の目線になって考えていないのです。

例え貴方が恋愛に興味がないとしても。

その驕りが招いた結果がこれです。

……さあ、貴方はどうしますか?

ホシノを選んで彼女を悲しみから解放するか。

ノノミを選んで彼女と共に生きるのか。

どちらとも決めずに逃げ続けるのか。

先に言っておきますがホシノとノノミ

どちらも選ぶなんて考えは認めませんよ。

『二兎追うものは一兎も得ず』。

両方を選んだところで中途半端になり

結局二人とも不幸にするだけですから」

 

「しかし私は……」

 

「先生、ノノミちゃんを選んであげて」

 

「……ホシノ?」

 

ベアトリーチェが開けたままだった扉の先に

立っているのはいつものように笑っているホシノ

しかしその表情はなんだか寂しそうな……

何かを諦めたような表情をしているが

それよりも彼女は……

 

「今……なんと言ったのですか?」

 

「だから……ノノミちゃんを選んであげて。

そして幸せにしてあげてほしいな。

私は先生の事……諦めるから」

 

そう言い終えた後、教室内は時が止まったように

静寂が空間を包み込んだ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。