ホシノの手によって飛ばされた黒服は
ミレニアムに滞在し生徒と向き合う練習をすると
そう決めたのは良いもののミレニアムの寮に
空きが一つもないとの事なので……
「……あの、左右でくっつかないでください」
「嫌です。朝まで父から離れません」
「アリスも離れません!!」
半ば強引にアリスとケイが寝泊まりしている部屋に
滞在する事が決まってしまった
マエストロ曰く本人達の希望であるのと
「あの二人は所属こそミレニアムではあるが
実質お前の生徒だ。構ってやるといい」
とあくまで彼なりの配慮のつもりなのだろう
しかし彼は大きなミスを犯していた
それは右腕に絡まるように眠ろうとしているケイ
同じベッドに入ってからというもの
彼女の息遣いがずっと荒いのだ
まるで発情して興奮を抑えきれないように
そして原因は明らかである。だからこそ
こうして密着するのは避けたかったのだが
……いや、むしろこれはチャンスなのでは?
生徒と向き合う練習をすると決めたのだから
アリスとケイ、二人とも向き合う必要がある
とはいえ最初からこのような状態のケイを相手に
どう向き合えというのだろうか
大人しく襲われていろとでも言うのか?
「……あの、もっと近づいてもいいですか?」
「……どうぞ」
顔を赤ながら更に距離を近づけてくるケイ
思えば彼女はこちらの我儘で生まれた存在
最初こそ利用価値がないと切り捨てようとして
無関心に接していたが今はこんなにも積極的で
年頃の少女のように過ごしている彼女を見て
自然と心が暖かくなるような気がした
この感覚の名称は分からないが
きっと自分の中でケイという存在は
想像よりも大きく大切な存在になっている
そういう事なのだろう
「モモイ達とは楽しく過ごせていますか?」
「はい。毎日が新鮮で飽きないですよ。
開発部の皆と過ごす時間は私の宝物です」
「そうでしたか。上手く馴染めているようで
なんだか安心しましたよ」
「……父、ありがとうございます。
貴方が私を生み出してくれなかったら……
こんなにも満たされる生活を送る事は
絶対に出来ませんでした」
「私はただケイを利用しようとしただけです。
感謝はホシノに伝えてあげてください」
「……そういえば母は居ないのですか?
いつもなら父の隣にいる筈ですが……」
「それがですね……」
黒服はケイに事情を話す事にした
ホシノの告白を断ったこと
その後吹き飛ばされてミレニアムに来たこと
アビドスに戻る前に生徒と向き合う練習をして
より教師として成長をしていきたいと
全ての経緯をケイに伝えた後、彼女は何かを考え
その後答えが出たのか右手を絡めるように繋ぎ
「私でよければ練習台になります。
貴方の為ならどんな事だって手伝います。
……そう、どんな事でもです」
……生徒と向き合うというのはとても過酷で
一筋縄ではいかない……かもしれない
ちなみにケイを生き残らせた理由は
砂を燃やそうとするアリスを見て困惑させたかったからです