ーーー???
あれから数時間が経ち、開始時刻が迫る中残りの二人が現れてそれぞれの席に着く。
黒服「ククッ……随分と待たせてくれましたね。先生という「役」を演じるのを楽しんでいらっしゃるようで」
マエストロ「生徒達があまりにも独創的な解釈をするものでな。私の美学の良き理解者なので会話が弾んでしまい開始目前まで話し込んでいた」
ベアトリーチェ「マエストロ、その件で後で話があります会議が終わり次第覚悟しておきなさい」
ゴルコンダ「さて…役者も揃った故、今回の会議を始めると致しましょう。では各自近況報告を……」
ゲマトリア会議。それはそれぞれの席に座する4人の大人が行う近況報告。
約一年半前に黒服が起こした一つの可能性に感化されそれぞれ学園に関心を持ち、己が崇高を満たすべく行動を起こし始めた。
黒服「……私の報告は以上です。このまま行けば数ヶ月後には実験が行えるでしょう。その瞬間が訪れる時、私の研究が完成するのです」
マエストロ「着実に目標に近づいているのだな。最初こそ貴下の行動は理解しえぬ行為であったが今となってはよく理解できる。生徒に私の芸術や美学に関心を示されるのは悪くない感覚だ」
ベアトリーチェ「そこまで生徒達に関心を持っているのでしたらどうでしょう、あなた方も連邦生徒会から認められた教師になる、というのは?」
黒服「私は断らせて頂きます。私が関心あるのは小鳥遊ホシノの持つ神秘にだけですので」
マエストロ「私はそれぞれの生徒会から認められる行いをしていると判断されたようで既に正規の教師としての肩書きは所持している」
ゴルコンダ「私はまだどの学園に近づくか保留していますが……近々私の崇高に近しい思想を持った学園を訪問しようかと」
黒服「素晴らしい結果になる事を期待しておりますよ、ゴルゴンダ」
ベアトリーチェ「ところで先程から気になっていましたが、黒服は何故そのような色のネクタイをしているのです?それに随分とほつれてますね」
黒服「ああ、これは私の生徒からの贈り物でしたね。こういうのも案外悪くないものですよ」
ベアトリーチェ「……何ですって?生徒からの贈り物?そんな羨ましい…ではなく大事なものを付けているのです。箱に入れて保管するべきでは?」
黒服「より親密になる為にも付けていた方が都合が良いのです。貴女も保管するだけではなく使っているところを見せる事でより生徒と親しくなれると思いますよ」
ベアトリーチェ「感謝しますよ黒服。あなたの助言でより生徒との交流が捗ります。……感謝と言えばあの時のアルの件もここで伝えておきましょう。生徒を保護して無事送り届けていただいた事、ありがとうございます」
黒服「それに関しては借し一つで良いですよ。それにしても貴女がそこまで生徒に関心を持つとは思いませんでしたよ。学園を支配下に置いて子供達から搾取をすると言っていましたよね」
ベアトリーチェ「当初はそのつもりでアリウス分校、そしてゲヘナ学園に近づきました。ですがどちらの生徒も悲惨な有様で搾取以前の状況でした」
ゴルコンダ「脅しの道具で使いたいと言われ譲渡した「ヘイローを破壊する爆弾」を使う事なく返却されるとは思ってもみませんでした」
ベアトリーチェ「自分の崇高よりも母性本能を優先してしまい……気がつけば「マザー」と呼ばれる程生徒達に懐かれてしまいましてね。結果的にはどちらの学園も我が領土になりましたが」
マエストロ「マザー…?生徒にそう呼ばせるとは中々良い趣味を持っているな」
ベアトリーチェ「褒め言葉として受け取っておきますよ。……ただ最近気に入らないことがありましてね」
黒服「気に入らないこと?生徒に嫌われたとかですかね」
ベアトリーチェ「それはそれで非常に悲しい事ですが違います。先月に行われた学園対抗戦にて私が手塩にかけて育てた【アリウスクインテット】がつい最近結成されたチームとの対決で敗北したのです」
マエストロ「この前のティーパーティーでも議題に挙がっていたな。【SRT特殊学園に新しい先生が配属された】という話を聞いた」
ベアトリーチェ「数でも連携でも勝っていたはずでしたが彼が指揮を取り始めた途端に逆転されてしまい2位止まりになってしまったのです。このような屈辱を与えられるとは思ってもみませんでした」
黒服「ベアトリーチェの精鋭をも打ち負かす程の指揮能力がある先生……一度お会いしてみたいものですね」
ベアトリーチェ「かの先生は連邦捜査部「シャーレ」というものに所属しているので非公認の先生である貴方には難しいでしょう」
黒服「それは残念です。生憎アビドス以外の学園には興味がありませんから。正式な教師
になる必要もありません」
マエストロ「だが黒服、ミレニアムにはお前と気が合いそうな生徒が何人か居たぞ。今度顔を出してみたらどうだ?」
黒服「考えておきます。ところで近況報告の続きはしなくてよろしいのです?」
ベアトリーチェ「そうでした。とはいえ私の方は他に話す内容は……おっと、大事な報告を忘れてましたね」
ゴルコンダ「お伺いしましょう」
ベアトリーチェ「心して聞きなさい。親愛なる私の生徒の一人であるヒナが今年からゲヘナ学園の風紀委員長に抜擢されたのです!何とおめでたい事なのでしょう。これでゲヘナ学園の治安が良くなる事間違いなしです!」
黒服・マエストロ・ゴルコンダ「………」
ベアトリーチェ「……何ですかその反応。よくもまぁ…私にそのような態度を」
黒服「失礼…ヒナという生徒と面識がないのでその報告の素晴らしさは分かりかねます」
デカルコマニー「つまりそういうこった!」
ベアトリーチェ「……何ですって?定期的にあなた方にはヒナとの写真をモモトークで送っているでしょう?」
黒服「ああ、あの学園指定の水着を履かせている貴女の崇高を押しつけられている子ですか」
ベアトリーチェ「あれは私の趣味ではありません。彼女自身の判断で着ているのです。確かに周りからは親子に見られたりもしましたが…」
黒服「ホシノですらきちんとした水着を着ておりましたよ…それはいいとして報告は以上ですか?」
ベアトリーチェ「ええ。ですからこの会議を早く終わらせてお祝いをしなければならないのです」
マエストロ「仕方あるまい。教育熱心な貴下の為にも私の近況報告も済ませてしまおう。とはいえ特に目立ったものはないな。トリニティに足りない芸術をエンジニア部と作成したりする程度だ」
黒服「おや、意外にも大きな活動は行なっていないのですね」
マエストロ「自分の芸術を理解して私の崇高にと興味を示して貰えてるからな。それ以上の事は求めていない」
ベアトリーチェ「黒服、騙されてはいけません。マエストロはとんでもない事をしていますよ」
黒服「ほう、それは興味深い。詳しくお伺いしましょう」
ベアトリーチェ「あれは数ヶ月前の事です。給食部からの申請で新しい椅子や机が欲しいと依頼されマエストロに簡単には壊れないものを頼んだのです」
マエストロ「その件は覚えている。サンプル品を複製して食堂に配置したいという内容だったな」
ベアトリーチェ「その通りです。ですがいざ届いてみると何ですかあれは。何故椅子が自律して動き机が巨大なロボットになっているのです。給食部の生徒も苦笑いでしたよ」
マエストロ「どうやら配膳特急エクスプレス号はお気に召さなかったようだな。まさか一日も経たずに返品されると思ってもみなかった」
ベアトリーチェ「椅子と机だと思っていたらロボットの詰め合わせだったんですよ。何を考えているのですか」
マエストロ「貰ったサンプル品があまりにも芸術に欠けていてな。エンジニア部と話し合った結果ああなった」
黒服「……他にはどのようなものを開発したのです?」
マエストロ「トリニティでの依頼品がほとんどだ。全自動ロールケーキ発射装置や銃弾の代わりにチョコミントを浴びせる銃や…ああ、あと救護用のチェーンソーだな」
黒服「??何に使うのです?」
マエストロ「開発以外だとトリニティで過ごし芸術に対するインスピレーションを高めていたくらいだろう。近いうちに大きな「作品」を作る予定なので楽しみにしておいてくれ」
ゴルコンダ「あなたの独創的な芸術を背景するのが楽しみですよ。……さて、他に話す事がなければこの場は解散という事で宜しいでしょうか?」
ベアトリーチェ「お待ちなさい。先程から鼠が潜り込んでいます」
マエストロ「それは気にするな。私の生徒だ」
ベアトリーチェ「あなたの学園どうやら素晴らしい才能を持った生徒がいるようですね。私に紹介しなさい」
マエストロ「彼女が貴下と接触して悪影響があると困る。私の芸術作品が完成するまでは保留とさせてもらいたい」
ベアトリーチェ「あなた方に私を妨害する権利はないでしょう。近いうちにトリニティに訪問させていただきます」
黒服「…ベアトリーチェ、口を挟んで申し訳ないのですが先程からモモトークの通知音がずっと鳴っておりますよ」
ベアトリーチェ「それは失礼しました。……!急用が出来たので私はお暇させていただくとしましょう。それではごきげんよう」
ゴルコンダ「まだ会議は終わっていないのですが……まあいいでしょう。本日はこれで解散にします」
デカルコマニー「つまりそういうこった!」
黒服「それでは私も失礼致します」
マエストロ「また次の機会に」
ゴルコンダ「……私も準備をするとしましょう。雪国に訪問するとなると防寒対策が必要ですから」
デカルコマニー「そういうこったな!」
ーーーアビドス自治区
黒服「随分と時間がかかってしまいましたね。外も暗くなっていますし…おや」
ホシノ「あっ…先生…」
黒服「こんな所で何をしているのです。下校時間は過ぎて……」
ホシノ「………」
黒服「…朝に伝えたでしょう。知人と会議をすると。手のかかる生徒ですね。学園に到着する前にその涙を消しておいてくださいね」
ホシノ「……うん」
黒服「(数時間離れただけでここまでになるとは…良い傾向ですね。既に実験には協力してくれそうですし時期が来たら始めるとしますか)」
これで二年生編は終了となります。
次回からホシノ三年生編、もとい本編の始まりです