ユメがマエストロの家に住み始めてから数日が
経過した頃。彼との生活に慣れてきたのか今は
緊張が解けたようにリラックスして過ごして
いるように見える。時折胸元のブローチを触り
小さく微笑んでいる姿はとても美しい。
『……?何か御用ですか?』
「ん?あ、ああ。何でもない」
彼も彼女との生活の中で変わった事がある。
無意識のうちにユメの事を見つめていること。
彼女の胸を見る度にあの日の出来事を思い出し
心臓の鼓動が早くなること。未だにその答えは
見つかっていないがこの感覚は悪くない。
『先生、今日のお昼は何になさいますか?』
「胸」
『えっ』
「……鶏の胸肉を使った料理を頼みたい」
『あ、はい。分かりました』
時々ボロが出そうになるもののどうにか誤魔化して日々をやり過ごしている。
彼女にもきっと疑われてはいないだろう。
『(やっぱり男の人って変態なんだね)』
否、彼はユメに考えれる限り最悪な解釈をされて
生暖かい視線を送られている事に気づいていない。
「趣味は見つかったのか?」
『いえ……特には』
「そうか……焦る必要はないからな」
『はい』
そんな些細な会話を繰り返して時間は過ぎていき
夜を迎えまた朝を迎える。そんな日常に段々と
慣れてきた頃に彼が調べたい事があると言って
一人家で留守番を任された。
とはいえ特別何かをする訳ではないのでのんびり
過ごしていた。……変な来客が来るまでは。
「こんにちは。先生に会いにきました」
『ああ、先生なら今出掛けて……』
「どうしました?」
ユメは絶句した。目の前に居る彼女はえげつない
ハイレグの水着とニーソを組み合わせた奇抜な
格好をしていたから。
『えっと……多分トリニティの方……だよね?
もしかしてその格好でここまで来たの?』
「はい。先生に振り向いて頂くために私は……
『覚悟』を決めてきました」
『………』
ねえマエストロ先生。貴方の性癖が私には何も
分からないよ。ごめんね。スク水ニーソは流石に
レベルが高いと思うな。
「風の噂で聞きましたよ。貴女が先生に
らっきーすけべなるものを披露したお方ですね。
しかもそれが先生に効果があると……
私は性に対してはあまり詳しくはありませんが
知り合い曰く「この格好なら大半の殿方は簡単に
堕とせると思いますよ」と助言していただき
実行に移そうと思い立った訳です」
『……えっと……そうだね。貴女の覚悟は
伝わってきたけど……マニアックな趣味だね』
「叡智というものは細かければ細かいほど
刺さった時に効果が大きいと言われまして。
ハナ……私の知り合いはこのような格好を
恥じらいもなく毎日学園で見せびらかしている
叡智の天才とも言えるお方です」
『騙されてると思うよ……そういうプレイなら
ともかくその格好で外を出歩くのは……』
「戻ったぞ。……サクラコか?」
「先生、お久しぶりです」
「なんだその微塵も芸術を感じない格好は。
風邪を引く前に普段の格好に着替えておけ」
「これは私の『覚悟』です。先生、どうか私の
想いを受け取って頂け……くしゅん」
「手遅れだったか……」
『……先生の趣味じゃないんですね』
「私がこんな変態が好みそうな趣味をしている
筈がないだろう」
『ゴスロリも同じようなものだと思いますが』
「………」
「くしゅん」
『……本日はお鍋にしますね』
第一の刺客 覚悟を纏いしサクラコ