例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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芸術家は決意をする

「私が恋……冗談はやめてくれないか?」

 

「思い当たる節はあるのではないでしょうか?」

 

「……ないと言えば嘘になるな。しかしだな」

 

「しかしも何もありませんよ。生徒にも自分にも

素直になった方が身のためですよ。いやあ……

まさか鈍感クソボケロリコン野郎のマエストロが

恋を……人生どうなるか分からないものですね」

 

「……いや。私は恋心など抱いてはいない。

ただ芸術を完成させたいだけだ」

 

「はぁ、貴方がそう思うならいいと思いますよ。

まあ、それで後悔するのは貴方ですけどね」

 

「………」

 

「ああ、先程の答えだけは教えてあげますよ。

ユメは自分に自信がない子なので彼女には

とにかく自信を持ってもらうように接すれば

いいと思いますよ。以上です」

 

「……ああ。助かる」

 

ーーー

 

「身体が汚れている?面白いことを言うね。

まあ君の気持ちは分からなくもないよ。何故なら

このセクシーフォックスこと私が目の前に居るんだ

自信の一つや二つ無くしても仕方がないだろう」

 

『そういう訳じゃないんだけど……』

 

「それ以外に理由があるのかい?いいだろう、

同じ未実装のよしみだ。話を聞こうじゃないか」

 

『そんな大した話じゃないよ。言葉通りの意味で

私の身体は汚れてるだけ』

 

「その汚れた理由を聞いているんだけど……

あれかい?話すのが難しい内容なのかな」

 

『昔半月くらい強姦されてた』

 

「すまない。私が浅はかだった」

 

『謝らなくていいよ。……まあそういう理由が

あるってだけの話。セイアちゃんみたいな純粋で

汚れていない子の方が先生には似合ってるよ』

 

「……私と君は短い付き合いだけど……

なんとなく分かる。君は本心を殺しているね」

 

『そんな事ないよ。私は……』

 

「幸せになってはいけない、そう考えている」

 

『っ……』

 

「君は何故自らの幸福を諦めているんだい?

……いや、答えは単純なものだったね。

君は『大切なものを失うこと』にトラウマを

抱いている。そうだろう?」

 

『………』

 

「だから新しい幸せを避けているんだ。

もう一度失ってしまったら立ち直れないから」

 

『どうしてそこまで知って……』

 

「これは私の想像でしかないよ。ただその反応から

察するに当たっていたようだけどね」

 

『……セイアちゃんの言う通りだよ。私はもう

大切なものを手に入れたくない。私がどれだけ

守ろうとしても全て手をすり抜けていった。

『先輩』だった私に残ったのは何もない。

先生にはよくしてもらってるけど……それだけ』

 

「じゃあ……これは仮の話だけど、もし先生から

告白されたらどう答えるんだい?」

 

『断るよ。私よりも魅力的な子は沢山いる。

私なんかを選んで欲しくない』

 

「本心は?」

 

『………』

 

「ここには私しか居ない。内側に秘めたものを、

本当の想いを吐き出していいんだよ」

 

『……どうしたらいいのかなんて分からないよ……

でも……少しだけ我儘を言っていいなら私は……

先生の側に居たい……私の落ち着く場所に……』

 

「……やれやれ。どうやら私はとんでもない

ライバルを生み出してしまったのかもしれないな。

だけど一人の友人として君の幸せを願うよ」

 

『……友人?セイアちゃんと私が?』

 

「そうだよ。こんなにもお互いの事を語り合えた

のだから私達の関係は友人と言っていいだろう」

 

『友人……うん、ありがとう。ほんの少し前を

向いて歩き出せたような気がするよ。……ねえ、

セイアちゃんのお話をもっと聞きたいな』

 

「そうだね。じゃあ私の幼馴染であるゴリラの話

でもしようかな。この前……」

 

『へえ……トリニティってゴリラがロールケーキを

主食にして生活しているんだ……』

 

ーーー

 

「どうしたらユメに自信を持たせられる?

……いや、違うな。私も逃げるのはやめよう」

 

何かを決意した彼は花屋に行き店員にこう伝える。

 

「黒い薔薇を12本見繕ってくれ」と。

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