例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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愛という芸術

「……いつの間にかこんな時間になっていたとは。

そろそろ私は帰るとしよう。また会おう、ユメ」

 

『うん。セイアちゃん、またね』

 

友人を見送った後、特にやる事もなく椅子に座り

彼の帰りを待っていた。それから数分も経たない

うちに玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

 

『お帰りなさい、先生』

 

「ユメ、話がある。聞いてくれないか?」

 

『……はい。分かりました』

 

ーーー

 

「本題に入る前に一つ謝らせてほしい。

今朝の出来事はすまなかった」

 

『いいんですよ。もう気にしていません

それよりも本題は……』

 

「この花束を受け取ってくれないか?」

 

『これって……』

 

彼から差し出された12本の黒い薔薇の花束。

12本の薔薇の花言葉は『付き合ってください』

そして黒い薔薇の意味は……

 

『貴女は私のもの……決して滅びる事のない愛』

 

「恥ずかしい話ではあるが私には恋愛経験も……

ましてや告白すらした事がないんだ。花言葉に頼る

のは情けないと分かっているのだが……恥じらいが

強く素直に伝えられる気がしなくてな……」

 

『そして死ぬまで憎む……という意味も』

 

「………」

 

『先生?』

 

「……私は前者の花言葉しか知らなかった。

たが私は決してユメを憎んではいない。

憎むはずもない。それだけは信じてほしい」

 

『……はい、知っていますよ』

 

「その……答えを聞かせてもらえないだろうか?」

 

『……この花束を受け取ったら……先生と私は

恋人同士……そうなるんですよね?』

 

「あ、ああ……」

 

『私は一度全てを失いました。奪いもしました。

何も守れなかった自分が憎いです。そんな自分に

生きる価値があるなんて思っていません。

……ですが。そんな私に貴方は手を差し伸ばして

闇の底から引っ張り上げてくれましたね』

 

「それは教師として当たり前の事をしたまでだ」

 

『……貴方はそうやって謙遜していますが……

それが私にとってどれだけ救いになったのか……

貴方を慕う理由になった事か……そんな想い人に

花束を渡されて告白された事が……私を選んで

くれた事がどんなに嬉しいか……』

 

「ユメ……」

 

『私は……幸せになってもいいのでしょうか?

もう一度大切なものを手にしても……

貴方の隣に居ても良いのでしょうか……?』

 

「……当然だろう。私がユメを幸せにする。

必ずだ。もうお前を一人にはしない」

 

『……分かりました……貴方を信じます……

約束……ですからね……絶対、絶対に……

私を幸せにしてくださいね』

 

「……ああ。約束だ」

 

ーーー

 

「……はぁ。やはりこうなってしまったか。

私もミカも、トリニティ生のほとんどは失恋という

形で幕を閉じてしまうようだ」

 

「……ロールケーキでも食べますか?」

 

「ナギサ、君は慰め方が下手すぎないか?それと

どうして君がここに居るんだい?」

 

「偶然居合わせただけですよ。……トリニティに

戻ったら一緒に食事でも如何でしょうか?」

 

「……そうだね。今日はやけ食いしようか」

 

ーーー

 

『………』ソワソワ

 

「先程から落ち着きがないがどうした?」

 

『い、いえ……その……お恥ずかしいのですが……

先生と恋人になったと意識したら……つい……』

 

「……ああ、ようやく分かった。ユメ、お前……

可愛いんだな」

 

『ふぇ』

 

「思えば仕草を目で追ってしまうのも全てユメが

可愛いからだと考えれば辻褄が合う」

 

『……ばか///』

 

「それと私の隣に座ってくれ。恋人とはそういう

ものだぞ。離れるんじゃない」

 

『……良いんですか?隣に座りますよ?

嫌って言っても離れませんからね?』

 

「望むところだ。仮に天地がひっくり返っても

嫌と言う事はないがな」

 

『……はい。信じていますよ』

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