例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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年越しは君と一緒に

12月31日。一年の最後の日に二人して自治区の

見回りという名目でデートをしている黒服とホシノ

相変わらず事案のような構図にはなっているが

周りの視線は気にせずに歩いている二人。

 

「なんかいつにも増して人が少ないような……

もしかして砂漠化が進んだ影響で……!?」

 

「年末だからではないでしょうか?確かにその

影響も少なからずあるとは思いますが」

 

「ああ……もう年末なんだね。早いなぁ……」

 

「今年は色々ありましたからね。本当に……」

 

「なんか最近ずっとしんみりしてるね」

 

「大人というものはつい感情に浸りやすくなる

ものなのですよ」

 

「へぇ……」

 

「それにしても銃声が聞こえませんね。本日は

もう見回る必要はないのかもしれません」

 

「そっか。じゃあこのままデートしよっか」

 

「随分と積極的ですね。ではホシノをエスコート

するとしましょうか」

 

「うへへ、期待してるね、先生♪」

 

ーーー

 

黒服とホシノがデートをしている中ゲヘナでは

ヒナの家で鍋が用意されていた。こたつに入り

鍋が暖まるのを待つヒナと具材を放り込んで

鍋奉行まがいの立ち振る舞いをするベア先生。

彼女達は年末は二人きりで鍋を食べるという

ちょっとした習慣があるのだとか。

 

「ホシノ用のドレスも完成したので明後日まで

ヒナとイチャつき年越し※※※が出来ます」

 

「まあいいけど……今年も良い感じの鍋だね」

 

「フウカに具材を見繕ってもらってますので

味は保証できますよ。ちなみに今年は昆布だし

ではなく味噌の鍋です」

 

「へぇ。楽しみね」

 

「期待していてください。……それにしても

時が経つのは早いものですね。ヒナと出会って

三年が経ち結婚をして……ああ、条約も結んだ

のでゲヘナとトリニティの関係も良好になり、

何よりヒナが私の為に覚醒をしました。まあ?

この世界で一番強いヒナが覚醒するのは当然と

言えますがね!」

 

「あれはたまたま出来ただけだから……でも

役に立てたのなら嬉しい」

 

「ウッ……危ないですね、つい爆発する直前まで

行ってしまいました……」

 

「マザーはずっと変わらないね。安心するよ。

……そろそろ鍋が良い感じだよ」

 

「おやいつの間に。早速お皿に取り分けて

食べましょうか。では手を合わせて……」

 

「「いただきます」」

 

ーーー

 

ミレニアム自治区、マエストロの家にて。

彼は無言でユメに振り袖を着付けていた。

彼女の視線の先には本来着せる予定であった

ミレニアムの白い制服が畳まれている。

後ろの髪を束ねられかんざしを刺され丁寧な

手つきで振り袖ユメという芸術を完成させようと

とてつもなく集中しているようだ。しかしその

沈黙に耐えきれず彼女は小声で

 

『あ、あの……まだ年が変わってないのですが……

何故私は振り袖を着せられているのでしょう……』

 

と彼に質問をした。それを聞いたマエストロは

ハッとしたように顔を上げて、

 

「……ああ、すまない。つい先走ってしまった。

本来着てもらう衣装と間違えていたようだ」

 

と軽く謝罪をしつつも自らの手で彩った彼女の

振り袖を眺め「良く似合っている」と呟いた。

 

『ありがとう……ございます……?』

 

似合ってると言われ嬉しいという想いと振り袖を

着るにはまだ早いような気がするといった感情で

何とも言えない複雑な感情になっていた。

 

『(……まあいっか。先生が褒めてくれたし。

このまま年を越したら初詣にでも……?)』

 

「……ユメ?いきなり考え込んでどうしたんだ?」

 

『えっと……上手く言葉に出来ないんですが……

私はずっと死ぬ事を望んでいました。大切な人が

一人も居ない、良く似た他人が居るこの世界で

生きるなんて耐えられなくて……そんな私が今

年を越したら初詣に行きたいと考えていました。

……もう私は死を望まなくなっているんだなと

前を向いて生きる事が出来ているんだと……

ふと気づけたような気がしまして……』

 

「そうか……確かに初めてユメと会った時よりも

表情が豊かになっていて、その……今のユメは

とても可愛いと思っている」

 

『かわっ……!?』

 

「ど、どうした?」

 

『い、いえ……可愛いだなんて急に言われたら

恥ずかしくて……前にも言われましたが未だに

慣れません……///』

 

「その反応が既に可愛いぞ」

 

『も、もうやめてください!!顔が火照って

熱くなってしまいます……///』

 

「そ、そうか……自重しよう。だが嬉しいぞ。

ユメが前を向いて生きたいと考えてくれた事が」

 

『先生と出会えて居なかったらこんな考えには

ならなかったと思います。だから……先生、

本当にありがとうございます。そして……

貴方の事を誰よりも愛しています♪』

 

「……ああ。私もだ」

 

『……ところで先生に教えていただきたいものが

あるのですが……姫初めというものを……』

 

「待ってくれ」

 

『……先生は元気ですね。私は構いませんよ?

私の事を先生色に染め上げられても……』

 

「………」

 

『それとも……今夜は繋がったまま朝まで……』

 

ユメの言葉は彼の手によって遮られ、二人は

また朝まで愛を確かめ合う事となる。それは

ゴムが尽きるまで、あるいはそれ以上続くかも

しれない。それを決めるのは彼らなのだから。

 

ーーー

 

「うへへ〜お腹いっぱいだよ」

 

「年越し蕎麦ならぬ年越しラーメンとは……

面白いものを考案したものですね」

 

一日中二人きりで過ごして満足したホシノと

それに付き合った黒服は彼女の自宅に戻り

落ち着いた空間で日付が変わるのを待つ事にした。

とはいえまだ時間に余裕があるのでホシノが

寝落ちしないように膝の上に座らせている。

時折頭を撫でながら明々後日に迫っている結婚式に

多少の不安を感じていた。本当に上手くいくのか。

ホシノは喜んでくれるのかと……そんな事をずっと

考えていた。

 

「先生、あと少しで新年になるよ!」

 

「……では数えるとしましょう。10……」

 

「9.8.7……」

 

「6.5.4……」

 

「「3.2.1……0」」

 

カウントダウンと共に日付が変わり時は新たなる年の始まりを刻んでいる。

 

「明けましておめでとう先生!」

 

「ええ。おめでとうございます、ホシノ」

 

「今年も宜しくね♪」

 

「こちらこそ宜しくお願いしますね」

 

抱き合う形で新年を迎えた黒服とホシノ。

彼女はまだ知らない。年明け早々に訪れる

人生の中で一番の幸せな日が来る事を。

その日が訪れるのはもう少しだけ先の話。




今年ももう終わりですね。このような拙い文章を読んでくださる皆様に感謝と来年が良い年でありますように。
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