彼女は放浪している。あてもなく彷徨うように
この世界の一部として順応したかのように
『色彩』という呪縛から解放された砂の神は
何を想い一人生きているのか
壊れてしまった自らの居場所か
失ってしまった大切な仲間達か
最後に赦しを与えてくれた『先生』か
その答えは彼女のみが知っている
自らを認めてくれたもう一人の自分に貰った
覆面を左手に持ってただひたすらに進み続けて
自分が存在してもいい居場所を求めていた
ーーそんなもの見つかる筈がないというのに
「……本当にこっちの方から反応があるのですか?
この先は何もない空間ですよ」
『大丈夫、私を信じて』
突然話し声が聞こえるものだから覆面をしまって
銃を構え気配を消して待つ事にした。
しかしいつまで経っても近づいてくる気配がない。
『……こんなところに居たんだね』
『!?』
いつの間に背後を取られていたのだろうか。
まるで気配を感じなかった……しかし目の前に居る
人は銃を持っていない。
『大丈夫。私は君の味方だよ』
僅かに光が灯っている瞳でこちらを見て優しく
問いかけてくる人に思わず心を許してしまいそう
になるが騙されてはいけない。
『要らない。私は……』
『一人で生きていく、だよね』
『っ……』
『そう警戒しないで。私はただ君と話をしたいだけ
なんだ。似た境遇の君と……ね?』
『………』
似た境遇……そんな筈はない。私の経験した地獄を
超えるものなんてない。……だけど彼女のヘイロー
は私と同じように黒く染まっていて少し欠けている
のを見るに間違っていないのかもしれない。
……もしかしたら共感してくれるのかな
『……少しだけならいいよ』
『うん。ありがとう。……そんな状態になっても
シロコちゃんの優しさは変わらないね』
『私の名前……知ってるの?』
『勿論だよ。だって君は私の後輩だからね』
『……?』
『……そっか。シロコちゃんは私に会った事が
ないんだね。それじゃあそれも踏まえて話そう』
『……ん』
ーーー
私の事を後輩と呼ぶ彼女はユメと名乗った。
驚いた事に彼女はアビドスの生徒会長でありあの
ホシノ先輩の先輩なのだそう。そして彼女も私と
同じで大切な人を全員失ったらしい。
『自慢じゃないけどさ……私は大切な人も学校も
何一つ守れなかったんだ。……情けないよね』
『それは私も同じ』
『……そうだね。だからこそ私はシロコちゃんを
放っておけないんだ。だからさ……もし良ければ
私と一緒に来て欲しいんだ』
『どうして私に手を差し伸べるの?貴女だって
私と同じような経験をしたのなら他の人を
助かる余裕なんて持てない筈……』
『君を助けるのに理由は要らない。私はただ
孤独に苦しんでるシロコちゃんを放置して
生きていられるほど強くはないんだ』
『……お人よしなんだね』
『そうかな……そうかも』
『……でも少しだけ興味が湧いた。分かった。
貴女と一緒に行く。……宜しく』
『……うん。ありがとう』
「話は終わりました?終わりましたね?では
早く戻りましょう」
『ケイちゃんずっと不機嫌じゃない?せっかく
シロコちゃんを見つけたのにどうしたの?』
「あのですね。ただえさえ徹夜しているというのに
歩き回されてもう眠さが限界なんですよ。早く宿に
戻って寝たいんですよね」
『え、じゃあワープ機能で先に戻っててもいいよ』
「昨日アリスに接触した際に銃が不調になって
まともに機能していないんですよ。ほらさっさと
帰って私をお風呂に入れてコーヒー牛乳を飲ませて
浴衣に着替えさせて眠らせてください」
『凄く甘えてくるじゃん……あれ、黒服のところに
行かなくていいの?』
「今のテンションで父に会いに行ったら思わず
襲ってしまうので避けておきます。先程の件も
踏まえるとほぼ100%襲います」
『暴走してるね……じゃあ宿に戻ろっか。
シロコちゃんも行こう?』
『ん……ん?黒服が父……?』
『その辺の話は歩きながらしよっか。多分だけど
ほとんど信じられないような話だけどね』
『……大丈夫。よほどの事がない限りは信じる』
ーーー数分後
『流石にそんな事はあり得ない。黒服がホシノ先輩
と結婚?絶対にない。嘘をついてる』
『……まあ、こうなるよね。私もこうなったし』
「父の魅力が伝わっていないのは残念です」
黒服がホシノと結婚したとかいうアビドス組の脳破壊