例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

204 / 500
問題は解決しようとしたら増える

「ふぅん……あんたシャーレの先生じゃないんだ。

じゃあ百鬼夜行の先生になりなよ」

 

「いや……私はミレニアムとトリニティの教師で

あってフリーという訳では……」

 

「そう。じゃあ私専属の先生でいいよ」

 

「何がいいのだろうか……」

 

袖から離れない黒猫の生徒……桐生キキョウは

芸術家の腕に絡みつきながら当然のように言う。

ほぼほぼ初対面であるにも関わらず何故こんなに

距離が近いのだろうか……先程の件で?しかし

助けたと言えるのはヒビキの砲撃の成果であって

ただ無事かどうかを確認しただけなのだが……

というか何故私は獣耳が生えている生徒によく

懐かれるのだろうか?ヒビキといいセイアといい

何故だ……

 

「獣耳が生えた子に限らず大半の子は先生の事が

好きなんだよ」

 

「………」

 

ヒビキにそう言われて考えてみたが思い当たる節が

あまりにも多すぎた。客観的に見ても舐めてる途中

の飴を渡されたり窓からメイドが入ってきてご主人

と慕ってくるのは嫌われていてはあり得ない話だ。

……慕われていてもあり得ないのでは?

 

「猫塚さん、だっけ?とにかくマエストロ先生の事

は今後私が管理するから」

 

「やめといた方がいいよ。その人既に彼女居るよ」

 

「は?あんた浮気したの?」

 

「理不尽すぎないか?浮気も何もキキョウと出会う

前に私は付き合い始めた人が居るのだが?」

 

「先生なんだから言い訳しないでもらえる?

やっぱあんたの事は束縛しておかないとダメそう」

 

不味い……今束縛されたら面倒な事になる……

既に面倒ではあるが。何よりこの絵面はよくない。

両手に華?違う、自殺行為だ。もしユメにこの状態

の私を見られたらどうなると思う?死だ。だから

早く何とかしなければならないが二人とも異常な程

力が強い。……何故だ、何故人外になってもこの

キヴォトス人に力で負けるのだ。……まさか私は

あのままトリニティやミレニアムで過ごしていたら

生徒達に強姦されていた可能性もあるのか!?

急に冷や汗をかいてきた……いや、それよりも今の

この状況を打破する方法を探らなくては……

 

「そ、そういえばキキョウの身につけている羽織を

何処かで見たような気がするな」

 

「ああ、これ?百花繚乱の証みたいなもん」

 

「百花繚乱というと……ユカリと同じ組織なのか」

 

「へえ、あんたユカリの事知ってるんだ。……何?

私よりもユカリの方が好きだって言いたいの?」

 

「そういう訳ではない。それに私は静かな方が好み

なのでな。キキョウのような寡黙美人の方が……」

 

そこまで言いかけて気づいた。これだ。私はいつも

こんな発言ばかりしていた。思い返せば誰にでも

このような事を言っては誤解させていたのか……

つまり私は今地雷を自ら仕掛けて踏んだと言う事。

 

「ふぅん……あんた分かってるじゃん。ねえ先生、

今夜私の家に来なよ。特別に夕飯を作ってあげる」

 

「そ、それはありがたいが私にも用事があってな」

 

「用事?私の手料理を食べる事よりも大事な用事が

あるって言うの?」

 

「い、いや……その……」

 

藁にも縋る思いでヒビキの方を見たら既に彼女の姿

はなく『面白い発明を思いついたから帰るね』と

書かれた書き置きが置いてあるだけだった。

ヒビキの奴逃げたな。……仕方ない、多少強引だが

電話がかかってきたフリをして距離を取ろう。

 

「すまない。定期連絡の時間が来てしまったので

一度離れてくれないか?あまり人に聞かれたい内容

ではないのでな」

 

「ふぅん。私は別に構わないけど?」

 

何だこのキキョウという生徒は?何故離れない?

 

「……あんたさ。私が側に居るんだから他の生徒

の話をしないでくれる?さっきも言ったでしょ?

私とあんたが居ればそれで充分だって」

 

「(な、なんだ……なんなんだこの状況は……

何が彼女をそうさせるのだ?)」

 

「でも定期連絡ならした方がいいよ。私はこのまま

聞いてるけど気にしないで」

 

充分気にするが?なんならユメにキキョウの存在を

知られたくないんだが?……くそっ!!何故この

タイミングでユメから電話がかかってくるのだ!!

運が悪いにも程がある!!

 

「ほら、定期連絡なんでしょ?出なよ」

 

「あ、ああ……もしもし?」

 

『先生。シロコちゃんを連れて百鬼夜行に戻って

来たから合流しよ?』

 

嗚呼、終わった。私もこの世界も終わりだ。

どう返せばいいのだろうか?

 

「……電話の相手ってもしかして恋人?ちょっと

私に貸してくれない?」

 

「待て、待ってくれ!?それはダメだ!!」

 

『……先生?女の声が聞こえたけど……』

 

「違う!誤解だ!私は浮気などしていない!」

 

「そうだね。先生はあんたと別れて私の旦那になる

って言ってたからね」

 

『………』

 

「頼頼むから本当に勘弁してくれ……私が愛する

人はユメただ一人だけなんだ……」

 

『いえ、良いんです。私よりも魅力的な人なんて

沢山居るので……私に飽きてしまうのも仕方ないと

思います。だ、大丈夫ですよ。私はまた一人に戻る

だけ……なので……』

 

明らかに声色から泣きそうになってるのが伝わって

きている。もういい。

 

私は!!ユメの事を!!愛しているぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

……そうヤケになって叫んでしまった。百鬼夜行に

戻ってと言っていたので聞こえている筈だ。

しかしこれを叫んだことでより混沌とした事に

なってしまうとは思ってもみなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。