「という訳でホワイトボードを借りてきたぞ。
思う存分話し合おうじゃないか」
「あんたと私の結婚式について?」
「違う」
「照れてるの?」
「話を進めるぞ。まずそれぞれの目的から
書き出していくとしよう」
・ユメとシロコを元に戻す手掛かりを得る事
・陰陽部からの呼び出しに応じたものの話を
聞く前にそこのNTR野郎が愛を叫んでいたので
『私の』生徒が誑かされる前に阻止したい
・百花繚乱継承戦を行い委員長になる
・籍を入れる
「よし、二つほどは除外してもよさそうだな。
あとさりげなく私の事をNTR野郎とか呼ぶな」
「"私の生徒に寄って惚れさせるとかやってる事
NTRと変わらないでしょうが!反省しろ!"」
「……先生、NTRってなんですの?」
「知らなくていい世界だ」
「えっと……」
「"NTR、通称寝取りというのは……"」
「ユカリに変な知識を教えないでくれる?」
「"はい"」
「……それでな?私はキキョウと籍を入れる
つもりもなければシャーレの先生の生徒達に
興味がある訳ではない」
「"だったらあのシロコの事はどう説明するの?
あれは私が私に生徒を宜しくと頼まれて……
引き受けた大事な生徒なんだよ?"」
「何を言っているんだ?私が私に?……確かに
色彩に魅入られた者はやつの意識が赴くままに
世界間の移動も可能ではある。だがな?それは
あくまでキヴォトス人の中でも更に神秘が反転
する事に対して適応が出来る生徒のみが可能な
チートスキルのようなものだ。ただの大人の
先生にそれが出来るのか?仮に出来るとして
どのようにそれを証明する?」
「"想いと意思。それと……愛?"」
「あながち違うとも言い切れないのがな……
愛が与える結果は未だに未知数だからな」
「"とにかくあのシロコも私の生徒。誘拐する
つもりなら私はマエストロ、貴方をNTR野郎と
永遠に罵倒し続ける!"」
「罵倒されるのは慣れてるから構わん」
「えっあんたそんな趣味があったの?見た目から
して結構変わり者だとは思ってたけど」
「ばついちのホシノさんといい百鬼夜行の外から
きた方々は複雑なものを抱えていますのね……」
「"ホシノバツイチ概念なんてないんだよ"」
「どうした急に。……話が脱線しすぎているな。
多少強引に戻すぞ。ユメとシロコを戻す鍵は
クズノハという存在だ。そしてそれと会えるのは
百花繚乱の委員長……つまりユカリが委員長代理
に勝利してくれたら私の目的も叶う……という
算段ではあったのだが……私の予感が正しい
ものであればユカリ、お前キキョウに負けたの
ではないか?」
「ぼっこぼこにやられましたわ!」
「あれはユカリが私とあんたの愛を裂こうと
立ち塞がってきたから全力で倒しにいった」
「ですが次は負けませんわよ。全ては最強
ユカリ伝説を成し遂げる為に!」
「……そうか」
マエストロは気づいていた。ユカリよりも強い
キキョウが居るならそっちに頼んだ方が自らの
目的を果たせるのではないかと。しかしユカリ
の輝いている眼でこちらを見られるとそんな
無粋な事を言える筈もなくただ同調して彼女の
気を損なわないように心がけるようにしていた
「"それじゃあ私とユカリとキキョウはその
継承戦?というものを始める準備をするので
マエストロは適当に街中をぶらついてて"」
「ああ。……あ?何故私だけハブられる」
「"これ以上この二人がマエストロの近くに
いたら本当にNTRれる可能性があるからだよ!
そんな事私は耐えられない!"」
「……まあ、私は自身の目的が達成出来るなら
それでも構わないが……」
「いや、ここはあえて私とユカリ、先生の三人で
行動してシャーレの先生は街をぶらついて……」
「"断る!ダメダメ!それに二人に関わってくる
大切な話だってあるんだから私と行動しないと
大変な事になるよ!?"」
「何処まで必死なんだ……」
「そんな情報があるなら今言いなよ」
「"ついて来てくれないと話さない"」
「……はあ。あんたの方は面倒な先生なのね。
今は一応祭りの準備中だし万が一大変な事になる
のであれば困るし……仕方ない。名残惜しいけど
シャーレの先生に着いていく」
「では身共もそちらの方に着いていきますわ」
「そうか。では先生よ、私の連絡先を教えるので
何か進展があれば報告を頼む」
「"マエストロの連絡先……?嬉しくない"」
「直球すぎないか?」
「じゃあとりあえずこいつ連れて継承戦を終える
準備をしてくるから。次会う時は二人きりで
会うって約束して」
「無理だ。それでは失礼する」
「"キキョウ……メンタル強いね"」
「あれは照れ隠しだから。あの人は素直じゃない
って私はよく知ってる」
「キキョウ先輩と先生って数十分前に出会った
ばかりだと聞いていますが……」
ーーー
……ようやくキキョウから離れられた。
前に黒服から「特に何もしていない生徒から
謎の愛を捧げられていて困っている」と相談
された際にしっかりと向き合ってやればよかった
と今となっては後悔している。あの時のあいつも
このような感情だったのだろうか。
「おっとそんな事を考えている暇はない。
クズノハの件はシャーレの先生に任せるとして
早くユメと合流しなければ。ただえさえ半日の間
離れ離れだったのだ。これ以上は耐えられん。
それとホシノの件もどうするべきだろうか……
黒服を呼んで連れ帰ってもらうかあるいは……」
「マエストロ」
「今度はなんだ?まだ私に用のある奴が……」
いるのか?そう言い終える前に言い淀んでしまう
程に会いたくない人物がそこに立っていた。
……確かに記録上では存在している事を確認して
いたので接触してくるのもおかしくはない。だが
何故このタイミングでこいつが現れる?
「何の用だ……フランシス」
かのものと対峙した際に先程まで聞こえていた
喧騒の音が聞こえなくなる程、周辺の空気が
緊張に包まれていた。……何が目的なんだ?