ーーーアビドス高等学校
ホシノ「やあやあ先月振りだね〜。調子はどう?」
ホシノ「色々話したい事が……っと。その前に掃除しないとね」
ホシノ「最近砂埃の頻度が増えてきたからねぇ……うん、これでいいかな」
ホシノ「それじゃあ今回のプレゼントは……じゃーん!綺麗な水だよ!」
ホシノ「え?ただの水だって?いやいや分かってないなぁ。いいからほら飲んで飲んで」
ホシノ「おぉ、いい飲みっぷりだねぇ。一瞬で空になっちゃったよ。……それじゃあ何処から話そうかな……」
ホシノ「そうそう、前に話した後輩のセリカちゃんがね、学校の為にバイトを始めたんだって。いつも「こんな学校なんて潰れちゃいいのに!」って大声で言いつつも裏では頑張っててくれてさ…」
ホシノ「もう1人のアヤネちゃんもね、いらない部品とかを修理して売買して利益を得て借金返済に使って良いって全部寄付してくれてさぁ。ほんと出来た後輩達だよ」
ホシノ「これでアビドスも安泰だよー。……もうこんな時間かぁ…時間が経つのはあっという間だよねぇ」
ホシノ「…それじゃあまた来月ね。これからも見守っててね……ん?」
校門前から銃声が聞こえてくる。またヘルメット団が攻めてきたのだろう。朝早くからご苦労な事で。
ホシノ「それじゃあ…皆が登校してくる前に済ませちゃいますかね」
左手に盾を、右手にショットガンを持ち彼女は旧校舎を後にする。長いようで短い1日が銃撃音を合図に始まった。
ーーー数時間後
黒服「………それでこうなったと」
ホシノ「いやぁ…思っていたより数が多くてねぇ…」
黒服「この数なら今月分の返済額くらいの報酬金が貰えるでしょう。お手柄ですよ」
シロコ「ん、ならそれを元手に銀行強盗を…」
黒服「貴女は治安を悪化させたいのですか?」
シロコ「銀行強盗を襲う事で治安が悪くなってヘルメット団が増える。それを討伐する事で報酬金が貰える。ん、合理的だね」
ホシノ「なるほど〜シロコちゃん天才だねぇ。それじゃあ今日は皆で銀行強盗を…」
黒服「だからやめなさい。ホシノ、貴女も悪ノリはその辺にしておきなさい。約束が果たせなくなりますよ?」
ホシノ「それもそうだねぇ。銀行強盗はやめよっかぁ」
シロコ「ん、じゃあサイクリングに行って来るね」
黒服「自由すぎませんか?本日は活動方針の会議がありますので終わるまではダメです」
シロコ「んぅ…」
黒服「とりあえず私はこのヘルメット団を引き渡して来るので会議は始めておいてください。司会はアヤネに一任しますと伝えておいてください」
ホシノ「りょーかい。早めに戻ってきてね〜」
黒服「善処します」
善処する…とは言ったものの人数が人数なので想定の倍以上時間がかかってしまった。
黒服「申し訳ありません。随分時間が掛かってしまい…」
視界に入ってくるのは頭を抱えるアヤネと自由気ままな行動をとっている4人。呆れつつも案自体はホワイトボードに書いてあるので一通り確認してみる。
黒服「『アイドルプロジェクト』『スクールバス拉致』『マルチ商法』『銀行強盗』……何ですかこれは」
ホシノ「私達が一生懸命に考えた案だよ。……まあアヤネちゃんにほとんど却下されたけど」
黒服「それはそうでしょうね。どれも現実的ではありませんし」
シロコ「現実的…それなら振り込め詐欺と闇バイトって手も…」
黒服「ありませんよ。なぜ貴女は非合法な手段しか思いつかないのです?……この中で唯一まともそうなのがスクールアイドルですが……これの発案者は……」
ノノミ「私でーす⭐︎」
黒服「……一応詳細をお伺いしても?」
ノノミ「私達5人でアイドルグループとして活動するんです。ちゃんと衣装のデザイン案も用意してきました」
黒服「随分と用意がいいですね……充分にやる気は伝わってきますがこれも現実的ではありませんので没ですね」
ホシノ「ありゃ…全部没にされちゃったねぇ…」
シロコ「人の案を没にするなら黒服も何か提案するべき」
セリカ「そうよ!あんた先生なんだから私たちの案より良いものを出しなさいよ!」
黒服「良いでしょう。知人に聞いていくつか案は用意してきてましたので今から言うとしましょう」
ホワイトボードに新たに書き出されたものはASMRという四文字。心地よい音?を販売するというものだとか。
黒服「という訳で各自囁くような音声を録音してもらいます。録音用の機材も借りてきましたので」
セリカ「こういうのって素人がやっていいものなの?」
ノノミ「何事も挑戦あるのみですよ⭐︎」
黒服「ではそれぞれ個室に移動してください。音量調整は間違えないようにお願いしますね」
ーーー
ホシノ「うへー…まさかこんな事になるなんてねぇ…」
時々波の音は動画で聴いていたりしたけれど自分が音を出す側になるとは思っていなかった。
ホシノ「うーん…案が思いつかないなぁ……あっ」
先生が確認として音声を聞くならいっその事事今までの感謝でも囁いてみよう。彼に伝えると思って録音したらより気持ちも込められるだろうし。
ホシノ「えっと…何から伝えようかな……それじゃあ……」
ーーー
黒服「………」
ホシノ「どう…かな?」
黒服「残念ですがこの音声では商品にならないでしょう。消すのは惜しいのでこれは私が保管させていただきます」
ホシノ「…そっか…えへへ」
黒服「随分と嬉しそうですね。まるでこうなって欲しかったと思っているように感じますが」
ホシノ「んーどうだろうねぇ〜」
黒服「貴女という人は……まあいいでしょう」
ーーー数十分後
黒服「それでは知人に音声を聞いた感想をいただいたので発表していきたいと思います。まずはシロコですが…『透き通るような声から発せられる物騒な単語が新しい世界への一歩となりました。とても素晴らしいです』とのことです」
シロコ「ん、意外にも高評価。嬉しいね」
黒服「次にセリカですね。『声はとても気持ちが良いのですが内容がマルチ商法の勧誘にしか聞こえません。商品としては適さないでしょう』と真面目な回答をいただきました」
セリカ「えっあれもマルチ商法なの!?また騙されていただなんて…」
黒服「そしてアヤネ。『初々しい声が脳細胞に染み渡りますが終始恥じらいを持っているように聞こえます。もっと自信を持ってください』との事です」
アヤネ「あ…ありがとうございます…?」
黒服「最後にノノミですが…『母性を感じました。おギャリたいので即販売しましょう』との訳の分からない言葉が返ってきましたがとりあえずノノミの音声を販売する事に決まりました」
ノノミ「やりましたぁ〜」
セリカ「あれ?ホシノ先輩の音声はどうしたのよ?」
黒服「ホシノのは他の人に聞かせるべきものではないと判断したので…」
セリカ「何よそれ」
ホシノ「ちょっと恥ずかしくなっちゃってねぇ…」
ノノミ「それなら仕方ないですね。でも私達には聞かせてくれますよね♪」
ホシノ「えぇ〜勘弁してよノノミちゃーん…」
先生がいて、後輩がいる日常。皆と過ごす何気ない時間はあっという間に過ぎていく。時刻は夕方になりそれぞれが下校する。また明日と言葉を交わしながら。
ホシノ「また明日…良い言葉だよねぇ………」
余韻に浸っていたため気づくのが遅れたが何かがおかしい。いつも以上に周りが静かだ。しかし人の気配は感じる。ほんの少し身構えていると背後から声をかけられた。
???「小鳥遊ホシノだな。我々と一緒に来てもらおう」
ホシノ「えぇ〜そんな事を言って誘拐しようとするだなんて…ロリコンなの?」
???「私語は慎んでもらおうか。それと構えている銃も降ろせ。大事な後輩がどうなってもいいのか?」
ホシノ「……どういう事?」
???「お前が抵抗した時に備えて俺の仲間がお前の後輩を人質として捕まえておいたって訳だ」
ホシノ「そんな分かりやすい嘘を…」
???「撃ってもいいんだぜ?後輩の命が惜しくないならなぁ」
ホシノ「……分かった。貴方たちに従うから後輩ちゃん達は傷つけないで」
???「賢明な判断だな。……おい、こいつを連れていくぞ」
ーーー
???「ご報告します。小鳥遊ホシノの拘束に成功しました」
???「ご苦労。それじゃあ本格的に始めるとするか。各自準備をするように伝えておけ。目障りなアビドス高等学校を制圧するとな」