例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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生きている君

「どうみても花火だな。少々警戒心が強すぎた

かもしれないな」

 

「"そうだね。どうみても花火だもんね"」

 

「見惚れているところ悪いが姿は消しておけ。

知り合いと鉢合わせしたら面倒だ」

 

「"分かったよ"」

 

了承した途端先生は一瞬で視認が出来なくなった。

霊体というのは便利なものだな……

なりたいとは思わないが。

 

「……特にこれといった問題はなさそうだ。

呆れ返る程普通だ。本当に火災が起きるのか

信じられんほどにな」

 

初めて訪れた時よりも活気があるのは祭りの日

だからだろう。他学園の生徒の存在もいくらか

確認出来た。現状目立った問題がなければ

ユメとの再会をしたいがこの人混みの中から

見つけ出すのは難しいだろう。スマホは……

人が多すぎて回線が死んでいるようだ。

あの時のように叫んでみるか? ……流石に

この人数に聞かれるのは恥じらいを覚える。

 

「"この会場にシロコが居るのかな……せめて顔

だけでも見れれば……"」

 

「そう簡単に見つかるとは思えないが……」

 

「"居るなら探すしかないよね"」

 

「元から合流するつもりだからな。だが先生よ、

先程の目的を果たす為には……」

 

「"分かってる。ちゃんと姿は隠しておくよ"」

 

「それならいい。今は我慢をしていてくれ。

いずれ嫌という程に……」

 

「"マエストロ、前! 前!"」

 

「あまり声を荒げるな。前に何が……」

 

『綿飴美味しいねー』

 

『……うん』

 

……アヤメといいあっさりと見つかりすぎでは

ないだろうか? まるで一生分の運を使って

しまった気分だ。

 

「"シロコ……シロコだ……生きてるよ……

生きて綿飴食べてるよ……"」

 

「霊体でも涙は流れるのか……どんな構造

なのか興味はあるが待て私のスーツを濡らすな」

 

「"待ってマエストロ。隣にいる子は誰?

シロコみたいにヘイローが欠けてるけど"」

 

「あれは私の恋人だ」

 

………

 

「"マエストロ……君は最低だよ! まさか生徒に

手を出すなんて!! もしかして私のシロコ

にも手を出したんじゃ……!?"」

 

「待て、あれは未遂だ」

 

「"未遂って事は出そうとしたんだね!?

君は教師失格だよ!! 最低の大人だ!!"」

 

「不可抗力だ!! 男ならあのような果実が

目の前にあったら手を伸ばすに決まってる!!」

 

「"だからって生徒に手を出すのは違うよ!!

セクハラだなんて見損なったよ!!"」

 

ギャーギャーフンギャロゴロゴロギャー⁉︎‼︎⁈⁇

 

『……騒がしい』

 

『お祭りだからね。気が緩んじゃうのも仕方ない

と思うよ。……どう、楽しめてる?』

 

『……ん』

 

『そっか。それなら良かったよ』

 

キサマアマリワタシヲグロウスルナライマコデジョウブツサセテヤッテモイインダゾジバクレイフゼイガ!!

 

ヤッテミナヨドヘンタイノクソヤロウ!!

 

『花火……綺麗』

 

『そうだね。もっと近くで見よっか』

 

『ん』

 

大人二人がくだらない事で争っている間に

それぞれの目的の相手は去っていった。

その事にすら気付かず言い争いは続く。

 

「ゲマトリアを舐めるなよ!?」

 

「"そっちこそ先生舐めるな!!"」

 

「私だって今は教師だ!」

 

「"じゃあ私もゲマトリアになる!"」

 

「お前が悪い大人になれるか馬鹿が!!」

 

「"何だって!?"」

 

「シロコの為に命を捨てたお前はどう足掻いても

悪人になれん! 断言してやる!」

 

「"なれますけど!? マエストロの恋人を寝取って

私の恋人にでもしてやろうか!?"」

 

本当に消滅させてやろうか?

 

「"ごめんなさい"」

 

「……そうだ。ユメとシロコは?」

 

「"もう……いないね"」

 

………

 

「喧嘩両成敗という事にしよう」

 

「"うん……お互い大人気なかったね"」

 

「そうだな……」

 

争いは同レベルの者同士でしか生まれない。

それを痛感した二人であった。

 

「"ところで花火って終わったのかな? 音が

聞こえなくなったんだけど"」

 

「? まだ上空は光って……」

 

そう、花火はまだ夜空を照らしている。

それなら何故音が聞こえないのだろうか?

 

「"というかさ……花火が紫一色のように

見えるんだよね。なんか最近見た色というか"」

 

「……怨念の色だったりしてな」

 

「"そんな事ある筈ないよ。だってさ?

あんな大規模なら火災なんてレベルじゃなくて

都市壊滅だよ? あの花火が怨念の集合体とか

だったらの話だけどね"」

 

「まさかそんな馬鹿げた話が……」

 

ない、とは言い切れなかった。見知った知人が

合図かのように目の前に現れたからだ。

フランシス。悪い大人を気取る負けたヴィラン。

 

「随分とでしゃばるじゃないか。フランシスよ」

 

「貴様の終幕を見届けたいだけだ。不死を捨て

俗世に染まった哀れな大人をな」

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