先程のやらかし発言(当然本人は無意識)後、
芸術家は恋人の前に戻ってきた。……本来はもう
少し早くこのようになる筈だったのだが……
大人二人が子供のように言い合いをしてしまった
事がきっかけでこんな遠回りとなった。
少し馬鹿になった彼らを迎えるのは恋人のユメと
雑な扱いをされ続けているケイと何故かここに来た
アリスと黒服を精神的に負かせたシロコテラーと
見知らぬ間に元気になっていたアヤメだった。
「こっちはこっちでどうなってるんだ」
「"(何あの黒服情けない)"」
「マエ先! 私を助けてくれてありが」
「ああちょっと待ってくれ。ユメ」
『はい、何でしょうか』
芸術家は近づいてきたユメの事を思いっきり
密着するように抱きしめた。むぎゅっという
擬音が聞こえてくる程に力強く。
『!?!?!?!?』
「(嗚呼……やはり落ち着く。私の帰る場所は
ここなのだろうな。なんて甘いのだろうか)」
謎の余韻に浸っている芸術家とは裏腹に周囲の
人々は様々な反応をしていた。はいはいいつもの
やつですねと興味なさげにしているケイ、
いきなり抱きしめる大胆さに初心な反応を見せる
アヤメと顔を真っ赤にして言葉が出ないユメ。
霊体じゃなければこいつの顔面ぶん殴ってるなと
思う先生とハートマークのエフェクトが見えた
アリス。そして戦闘中の生徒達はそれらを見て
『あ、あの願いを叶えてもらうのもありかも』と
考える者、それ以上の事を想像する者、今すぐに
襲ってやろうかと欲望を曝け出そうとする者等、
様々な反応をしていた。
「それで何故アヤメがここに居るんだ? 確か
アリケイの二人に護衛を頼んでいた筈だが」
「えっその状態で喋るの?」
「何か不都合があるのか?」
「ないけど……えっと……」
彼女はなんかそこで体育座りして小さな女の子に
慰められている大人に助けてもらった事を話した
「そうか。それなら私よりもあいつに礼を言った
方がいいのではないか?」
「当然伝えたよ。でもマエ先が私を黄昏から
連れ出してくれなかったらこうはならなかった。
だからマエ先、助けてくれてありがとう!」
「……ああ」
「あー!? 皆があのモンスターを倒してしまい
そうです!? このままだとアリス達に経験値が
入ってこなくなってしまいます!!」
「では私達も戦いに行きましょうか。さっきから
チャージしかしていないので」
「あ、じゃあ私も! マエ先、続きはまた後で!」
「任せたぞ。……シロコも無事だったようだな」
『……その状態でこっちに話しかけてくるの?』
「何か不都合があるのか?」
『ないけど……』
「……ホシノが傷ついているではないか。先生の
奴は何をしているんだ」
「"私?"」
「違うから声を出すなバレるだろうが」
「"計画的にはバレてもよくない? それに私は
今のシロコと話したい!"」
「それもそうだな。満足したら戻ってこい」
「"それじゃあ永遠にシロコから離れない事になる
からある程度したら戻るよ"」
「そうか」
『……さっきから誰と話しているの?』
「シロコの先生とだ。後は二人で好きなように
語り合っているといい」
『私の先生……?』
「"……シロコ、久しぶり"」
「あの後は二人だけにしておいた方がいいな。
代わりに傷ついたホシノは私が預かろう」
「待ちなさいマエストロ。ホシノは私のものです」
「いきなりどうした黒服」
「私はもう限界ですよ。毎回ロリコンだのクソ野郎
など見に覚えのない罵倒をされて……何故私がこの
ような散々な扱いを受けなければならないのです」
「クソ野郎はともかくロリコンは事実だろう」
「貴方までそんな事を……いいですか? 私が
ホシノの事を愛しているからといってそれ即ち
ロリコンという定義に当てはまるとは限らない
のですよ」
「諦めろ。18歳のホシノと結婚した黒服が必死に
言い訳したところでロリコンというレッテルが
貼られてしまうのは避けられないんだ」
「何故……何故……なぜ……」
「でも私は先生がロリコンになってくれたから
今幸せなんだよ。だから先生はロリコンでいいの」
「ホシノ……愛してますよ」
「うへへ///」
「お前達状況を考えろ。今この百鬼夜行の命運を
賭けた戦いが行われているんだぞ」
「貴方が言わないでください。抱きしめられて
顔が真っ赤になっているユメを見てください」
『……///』
「可愛いじゃないか。それがどうかしたのか?」
『ぴぇ///』
「なんなんですかこの人」
「あ、あのー……」
「どうしたセリナ」
「終わりましたよ……?」
「………」
いつの間にか化け物は何故か異常に士気が上がった
生徒達の前になす術なく成仏させられていた。
何なら魂のような姿になっていたにも関わらず
この世から姿が消え去るまで嬲られていた。
……やはり過剰戦力だったようだ。
それと同時に生徒達の恐ろしさを理解できた。