「なんだこの液体は」
「私のホシノの共同開発した薬です。汚染された
神秘をあるべき姿に戻せるもの。ホシノが最大の
神秘を保有しているが故に作り出せました」
「……それは神秘が恐怖に反転してしまった奴も
元に戻せるのだろうか?」
「黄昏に汚染されたものが元に戻ったのです。
恐怖も例外ではないでしょう」
「そうか……これでユメとシロコを元に戻せる
なら私が百花繚乱に拘る必要はもうないな。
もうクズノハに会う理由も無くなった」
『それはいいのではよ複製してください。
何百人も助けを待っている子達が居るのですよ』
「人が感情に浸っている時に茶々をいれるな。
……だがそうだな。一度そちらに戻るとしよう」
「えっマエ先達もう行っちゃうの? まだお礼も
何も出来ていないのに……」
「気にする事はない。後の事はユカリ達と共にいる
シャーレの先生な任せておけばな。……それにまた
キキョウに粘着されたらたまったもんじゃない」
「後輩達もマエ先の世話になってたの!? 尚更
お礼させてよー!!」
「やめろ揺らすな揺らすな……分かった。では
一つ頼まれてくれ。この薬をナグサに飲ませてくれ
彼女の腕も侵蝕されていたのでな」
「……実はナグサとは喧嘩別れみたいな事をして
ちょっと気まずいんだ。だからマエ先お願い!!
一緒に来て!! ね? 良いでしょ?」
「そうしてやりたいが……生憎私達にはまだ
救わねばならない生徒達がいるんだ」
「……そうだよね。分かったよマエ先。自分で
何とかしてみる! 本当にありがとう!
でもいつか必ずお礼はするからね!!」
「ああ。楽しみにしている。……さて、百物語に
されていた生徒は全員運び終わっただろうか?」
「反応はありません。全員ゲヘナ学園に運び
終えております」
「よし。それでは全員帰るとしよう。
先程伝えた約束は後日順番に叶えていく予定
だから安心してくれ。ではさらばだ」
芸術家とそれを慕う生徒達は順番にゲートを通り
元の世界に帰っていく。先程までの喧騒が嘘の
ように静かに……
「ホシノママーに久しぶりのハグを希望します!」
「では私は父に抱きしめてもらいたいです」
なっているわけではなく黒服とその家族、元々
この世界に属しているホシノの五人はその場に残り
和気藹々としていた。
「黒先もありがとね。まさかシャーレの先生の他に
こんな頼りになる先生が居たとは思わなかったよ。
……で、何で同じ見た目の子が二人いるの? 双子
とかなの?」
「まあそういうものです。では私達もそろそろ家に
帰らないといけませんので」
「そっか。一気に寂しくなっちゃうなぁ……」
「案外そうではないかもしれませんよ?」
「えっ?」
「黄昏を汚染を治療した生徒達が増えるのです。
今まで以上に百鬼夜行は賑わうでしょうね」
「それって……最高じゃん!」
「そういう事です。……まあ、私にはホシノが
居れば他に生徒など必要はありませんが」
「そうなんだ。なんていうかさ、一途な人って
いいよね。私はそういう考え好きだよ」
「!? 貴女は私をロリコンだと言わずに肯定
してくださるのですか!?」
「えっまあうん。愛は自由だからね」
「嗚呼……救いは此処に存在していた……」
ーーー
「何日振りに帰ってきたのだろうか……まあ、
ここはゲヘナだが」
「マエストロ。よく戻ってきましたねぇ。貴方の
奮闘振りは見事なものでしたよ。ですが私の扱い
を雑にするのはいかがなものかと思います」
「小言はそれぐらいにしてくれ。今は生徒達を
治療する方が先なのだからな」
「それもそうですね。ではちゃちゃっと複製して
元の姿に戻していくとしましょうか」
「ああ」
薬を複製し、生徒に飲ませて元に戻す。実際に
黒く変色していたそれらが元の健康的な色に戻る
瞬間を見た際にこの薬の効果を実感した。まさか
黒服がこのような偉大な発明をするとはな……
この生徒達を治療した後はユメとシロコを……
ようやく、ようやくだ。やっと彼女達に普通の
生活を送ってもらう事が出来る。……それに
シロコはもう孤独ではないからな。
『せん……せ……」
「"大丈夫、もう大丈夫だからね"」
あちらはあちらで上手くやれているようだ。
……さて、本腰をいれるとしよう。まだ数百人
の治療が残っているのでな。
……2時間ほど経過してようやく治療は完了した。
いつの間にか朝日が昇っている程時間が経っている
ようで殆どの生徒達は眠りについているようだ。
「お疲れ様でした。それにしても……まさかこんな
沢山の子達を救えるなんて素晴らしいですよ」
「そうだな。……なあマダム、あの時の助言は
助かった。自己犠牲をしたところで何も意味はなく
ただ生徒を悲しませるだけ……そう気付かされた。
思っていたよりも私は大切に思われていたようで
尚更な……」
「ようやく気づきましたかクソボケ芸術家。貴方は
自身が想像しているよりも愛されているんですよ」
「ああ。……痛感したさ。マダム、彼女達の事を
任せてもいいだろうか。私は……」
「分かりました。あの計画を実行するのですよね」
「……そうか、盗聴していたのなら知っているか。
そうだ。私は今からシロコを救う」