例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

235 / 500
君の物語

「ん……」

 

透き通るような青空。眩しい太陽。そして一面の

砂漠が広がる地面。私はそこに寝転んでいる状態

で目が覚めた。とても長くて悲しい夢を見ていた

ような気がするけれど……あまり覚えていない。

今は何時なのだろうか? 腕時計を見ると朝の

8時。結構寝てしまっているようだ。

 

「あっいたいた。こんな所にいたんだねー」

 

「……ホシノ先輩?」

 

「全然帰って来ないからおじさん柄にもなく心配

しちゃったよ。……で、大丈夫? 何か具合が

悪かったりする?」

 

「特には……」

 

「よかった。じゃあ一緒に学校に行こう。今日は

先生が遊びに来るって言ってたからさ」

 

「先生が?」

 

「うん。昨日「"久しぶりに皆に会いたいな"」

って連絡が来たんだー」

 

「!! 早く戻るべき」

 

「シロコちゃんは本当に先生の事が好きだねー

それじゃあ行こっか」

 

「ん」

 

ーーー

 

「皆、シロコちゃんを連れてきたよ」

 

「……ただいま」

 

「お帰りなさい〜☆」

 

「全く何処に行っていたのよ。……あんまり心配

かけないでよね」

 

「とにかく無事で良かったです」

 

「………」

 

「シロコちゃん?」

 

「……なんで泣いてるのよ?」

 

「……分からない。分からないけど……」

 

何故か涙が止まらない。皆が居るこの光景が

とても嬉しくて……どうしようもなくて……

 

「シロコちゃん……大丈夫ですか?」

 

「シロコ先輩……?」

 

「……もしかして怖い夢でも見ちゃったのかな?

大丈夫、私達は此処に居るよ」

 

「っ……ぅ……」

 

「あっホシノ先輩! もっと泣かせてどうする

のよ!?」

 

「うぇ、おじさんはただ慰めようとして……」

 

「言い訳しない!」

 

「うへぇ後輩達が厳しいよぉ……」

 

どうして? どうしてこんなにも涙が溢れるの?

いつものような日常の風景なのに……どうして……

 

「"皆おはよ……って取り込み中だったかな?"」

 

「あっ先生! 今ね、ホシノ先輩がシロコ先輩を

泣かせたのよ!!」

 

「ち、違うよ!! 私はただシロコちゃんが安心

出来るように……」

 

「"相変わらず皆仲が良いんだね"」

 

「はい。だって……それがアビドスですから☆」

 

ーーー

 

「どうやら上手くいったようだな」

 

『……先生はシロコちゃんに何をしたんです?』

 

「私は何もしていない。少し設定を弄って箱庭を

再形成したに過ぎない」

 

『箱庭って?』

 

「キヴォトスと言った方がいいか……実はな」

 

ーー過去回想

 

黄昏でシロコの先生と出会った時、私は一つ提案

を持ちかけた。

 

「もう一度先生をやってみないか?」

 

「"えっ"」

 

当然先生は困惑した。既に死んでしまっているの

だから。もう一度だなんて出来る筈もない、と。

 

「私がシロコが居た世界を再構築する。箱庭の

再形成自体は容易ではないが可能だからな」

 

「"再形成……? そんな事が出来るの?"」

 

「ああ。当然代償はあるが……それが逆に好都合

てもある」

 

「"代償って何? 何をすれば……"」

 

「『記憶』だ。だがこの場合だとシロコが恐怖に

染まった後の記憶だけで充分だろう。色彩の眷属

であった期間の記憶さえあれば事足りる」

 

「"……つまりシロコの辛い記憶がなくなって

また普段通りの日常を送れるようになる……

そういう事?"」

 

「そうだ。だが一つ欠点がある。先生は箱庭の住民

ではない。その為肉体が元に戻る事はなく亡霊の

ままになってしまう。……そこでだ。先生を私達

同様ゲマトリアにする。安心しろ、見た目は今と

そんなに変わらない。ただ普通の人間ではなくなる

だけだ。それでもやってくれるか?」

 

「"当然やるよ。シロコが幸せに生活出来るなら

私は何だってやる"」

 

「そうか。やはり先生の覚悟は凄いな……私も

見習わないといけないな」

 

ーー回想終了

 

「という事だ。結果として再構築は上手くいき

シロコは元の日常に戻り先生もまた教師として

過ごす事が出来ている。……既に不安材料も

ユメのお陰で対処出来たからな」

 

『先生の頼みと後輩の幸せの為です』

 

「そうだな。……この後先生はうまく立ち回って

いけるだろう。私達の役目は終わった」

 

『そうですね……』

 

「ユメ?」

 

『い、いえ。何でもありません。ただ私も……』

 

「……なあ、ユメはシロコのように

記憶を消して元の日常に戻っても……」

 

『嫌です。私は先生との大切な記憶を失うなんて

耐えられません……』

 

「……そうか。ありがとう。……帰ろうか」

 

『……はい』

 

ーーー

 

「"ま、まさか朝から胃に来る量のラーメンを

食べさせられるなんて思わなかった……"」

 

「……あれくらい普通の量よね?」

 

「そうだね」

 

「はい〜」

 

「ですね」

 

「……うん」

 

「"成長期の子達は凄いね……私はお腹一杯で

一歩も動けそうにないよ……"」

 

「……先生」

 

「"シロコ? どうしたの?"」

 

「次はもっと早く食べ切るべき」

 

「"……がんばるね"」

 

「それじゃあ今度私がシャーレの当番になった時に

今日の2倍の大きさのやつを作ってあげるわ!」

 

「"2倍の大きさ!?"」

 

「ちょっと待って。次の当番はおじさんだよ?」

 

「"そ、そうだね。明日はホシノに任せて……"」

 

「ん、私も当番になりたい」

 

「いくらシロコちゃんの頼みでもこればっかりは

おじさんも譲れないよ」

 

「"私はどっちが当番でも嬉しいよ"」

 

「ん///」

 

「うへ///」

 

「……そろそろ会議を始めてもいいですか?」

 

「"あっうん。大丈夫だよ"」

 

「では本日の議題は……」

 

……ねえマエストロ。君には感謝をしても

しきれないよ。君のようなゲマトリアに会えて

本当に良かった。……ありがとう、友よ。




シロコテラーの救い方は結局こうしました。
彼女に居場所を作る方法はこれしかないのです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。