ーーーカイザーPMC本社 理事室
部下1「報告します。先程派遣した部隊がアビドス学校を制圧したとの連絡が」
理事「抵抗していた他の生徒はどうした?」
部下1「全員まとめて処理したようです」
理事「よし。速やかに帰還するように伝えておけ。……これでお前に残されたのは多額の借金だけになったな」
ホシノ「………」
理事「だが俺も鬼じゃない。お前の戦闘力は素晴らしいものだからな。俺の下で死ぬまで働くというなら借金も……」
部下2「お取り込み中のところ申し訳ありません!緊急報告です!現在我が社付近に謎の巨大な機械生命体が!」
理事「何だと!?今までそんな奴がこの砂漠に居たなんて情報はなかったぞ!」
部下2「現在応戦中ですが歯が立たずこちらに近づいて来ております!至急応援を!」
理事「仕方ない……これ以上被害が出る前に最低限の護衛を残して他全員で食い止めろ!絶対に近づけるな!」
部下2「了解です!」
理事「……話が遮られてしまったがもう一度聞こう。俺の部下になれ。無論他に選択肢は無いがな」
ホシノ「………」
理事「助けは来ない。いい加減現実を受け入れろ」
どの口が言っているのだろうか。守りたかった学校も後輩も……先生すらも奪い取ったのは目の前にいる男なのだ。
本来であれば激昂して悪態をついたりするのが正しいのかもしれない。しかし私の心はそれ以上に折れてしまっていた。『孤独になった』という事実が重くのしかかりそれから逃れる方法は全てを諦めて無気力になるしかない。
ホシノ「……分かった……部下に……」
なる、という言葉は扉が吹き飛ぶほどの爆発音にかき消された。
ーーー数十分前のアビドス砂漠
黒服「捕らえた兵士から教えていただいた座標ですと……あの建物でしょうね」
セリカ「黒いあいつみたいに大量に居るわね…強行突破は無理そうだわ」
黒服「本来はこういう使い方をするべきではないのですが……ホシノの為ですので致し方ありません」
ポケットから取り出したのはただの通信端末。今から姿を表すのはこの場を切り抜ける為の切り札とも言える。
黒服「ククッ…本拠地を砂漠に建ててしまったのが運の尽きでしたね。パスワードは…『理解を通じた結合』」
認証、という文字が画面に表示された後、カイザー本社付近を中心に地震が発生する。揺れが収まったと同時に姿を表したのはデカグラマトンの予言者『ビナー』。それの視界に映るはカイザーPMCの兵士達。
セリカ「うわぁ…なんかビーム吐いてるんだけど…」
ヒナ「砂漠の中にあんなのが居るなんて……アビドスって恐ろしいのね」
黒服「とりあえず揺動代わりにはなるでしょう。こちらに狙いをつけられる前に侵入しますか」
兵士達「お、おい!虚偽の報告をしたら解放するって約束だろ!?」
黒服「ああ、貴方の後始末を忘れていました。シロコ、身ぐるみ剥いでその辺りに放置しておいてください」
シロコ「ん、任せて」
兵士長「おい!やめ……アッー!」
ーーーカイザーPMC エントランス
ノノミ「どいてくださーい☆」ガンッ!
セリカ「邪魔なのよ!」ゴスッ!
ヒナ「……あれも貴方が教えたの?」
黒服「いえ……いくら弾が不足しているとはいえミニガン本体でぶん殴ったり蹴り飛ばすような事は……」
ヒナ「でも銃より静かに処理できるし効率的ね。私も決戦まで弾を温存しておきたいし」
黒服「そうですね。不測の事態に備えておきましょう」
セリカ「……ところでホシノ先輩って何処で捕まってるの?」
黒服「こういう時は大体主犯格と同じ部屋に居るでしょう。つまり理事室ですね」
ノノミ「まだまだ距離がありますね。ミニガン殴打も結構疲れますし…」
ヒナ「それなら私が先陣を切る。なるべく取りこぼしが居ないようにするけれどもし居たらごめん」
セリカ「それくらいはだいじょ…速いわね…人間が出していい速度じゃないわよ」
黒服「彼女は強い子ですからね。私達も参りましょう」
ーーーカイザーPMC理事室付近の上空
アル「いつまで待機していれば良いのかしら…もどかしいわね」
アヤネ「今ヒナさんが20階までの制圧を終わらせました。後半分くらいであの部屋に到着します」
アル「そう。それなら準備をするわよ」
アヤネ「はい!……あの、差し支えなければお伺いしたいのですが……昔のホシノ先輩ってどんな人でしたか?」
アル「どんな人って言われてもね…ホシノと過ごしたのは数時間程度だし……」
アヤネ「そうなんですね。こんな危ない事にまで力を貸して下さってるのでホシノ先輩と親しいのかなって思ったのですが……」
アル「過ごした時間が短かろうと関係ないわよ。……全然アウトローっぽくない台詞ね。単独で来て良かったわ。社員達に聞かれたら絶対にからかわれるもの」
アヤネ「アウトロー?っぽいかどうかは分かりませんが……充分にカッコいいですよ。その社員さん達もそう言ってくれると思います」
アル「そ、そう?ならいいんだけど……」
アヤネ「それにしても…このヘリは一体どうなっているんでしょう……プロペラ音も鳴らないし…」
アル「異物ってやつを利用して組み上げたって説明されてもよく分からないわよね。役に立ってるから良い技術なのでしょうが」
アヤネ「それは使い人によるでしょうね。……そろそろ時間でしょうか。アルさん、準備はよろしいですか?」
アル「問題ないわ。この距離なら多少足元が不安定でも余裕よ」
アヤネ「頼りにしてますね。こちら航空部隊、目標の位置で待機中です」
ーーー本社40階
黒服「おや、良いタイミングですね。こちらも今扉の前に着いたところです」
セリカ「でもこの扉パスワードとか何やらで厳重すぎるわ。銃で破壊するにしても時間がかかりそうね」
黒服「問題ありません。こういう時は大体シロコが…ほら」
シロコ「ん、ロケラン見つけた。緑色の塗装がされてて4弾同時に撃てるやつ」
ノノミ「わぁ〜10点ダメージですね⭐︎」
黒服「あの頑丈そうな扉もひとたまりもないでしょうね。……ここからは失敗は許されませんよ」
セリカ「それくらい分かってるわよ。こっちは初めから成功させるつもりで来てるんだから」
シロコ「そういう事。だから撃つね」
いくら頑丈な扉もロケットランチャー4発には耐えれずに理不尽にも吹き飛んだ。
ーーー冒頭の時間に戻る
「少々煙の量が多いですね」
「ん、爆薬マシマシにしたからいつもの4倍多い」
「このままだと火災警報がなってしまいますね〜」
「今そんな事はどうでもいいでしょ!?」
「警報装置だけでも壊しておくよ」
煙の中からそんな会話と足音が聞こえる。こんな状況でもいつも通りの騒々しさ。緊張感も何もない雰囲気が伝わってくる。
ホシノ「………」
皆の方を向きたいけれど……こんな酷い顔は皆に見せられない……そう思って俯いたままの姿勢を維持しようとした。
シロコ「ん、ホシノ先輩見つけた」
ホシノ「うわっ!?」
床を見ていたはずなのに何故か後輩と目があった。「シロコ、ハウス」という掛け声でまた煙の中に戻って行く後輩。……なんだか恥ずかしがっていた自分が馬鹿らしくなってくる。気づけば涙は引いて頬が緩んでいた。その数秒後に煙が晴れて視界に入るのはアビドスの皆と友人。
理事「……一応聞こう。何をしに来た?」
黒服「決まっているでしょう?私の大切なものを返してもらいに来ました」
そろそろ一部の最終話が近づいてまいりました。
構想段階からやりたかった事が遂に書けるのですよ。